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第2章:闇蠢者の襲来編
第67話:聖女×聖女
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「警備隊の者か!どう言う状況なのだ!さっさと名乗り出て説明しないか!」
舌打ち野郎は馬の上から高圧的にドエインにそう言った。
ドエインはその言葉を受け、それでも表情を変える事無く、前に進み出た。
「ハッ!北方警備軍街道警備隊第十五番隊隊長、ドエイン・ムルラーです!」
「ムルラー家?知らんな」
舌打ち男は眉を潜めてそう言った。
それに構わずドエインは続ける。
「昨日、この村を大量のコボルトとコボルトの上位種であろう個体が襲い、村人、十五番隊はほぼ壊滅しました!」
「・・・コボルトだと!?」
「はい!」
「コボルト程度に殺られたというのか!?」
「この被害は通常種では無く、上位種の仕業で有り、我等警備兵では全く太刀打ち出来ませんでした!」
ドエインの報告に舌打ち男とその取り巻きか何かは知らないが、他の騎士二人も驚き、そしてざわめく。
「う、嘘を付くなッ!ハイ・コボルト程度に警備隊が全滅してこの村の住人も皆殺しにされたと言うのか!?そんな話誰が信じると!?」
「ハイ・コボルトでは有りません!将軍級であります!」
ドエインのその言葉に騎士三人は絶句した。
「・・・は、はは、お前は頭がおかしいのか?こんな所にそんな伝説級の化け物が居る訳無いだろう!」
舌打ち男は見てもいないのにドエインの話を真っ向から否定した。
これ埒があかねぇな・・・
「嘘では有りません!剣も矢も効かず、自分で流暢に人語を話して言っていました。それを私は聞いています!」
「そ、そんな―――」
「私も一緒にその場に居ました。全て本当の事です」
ドエインの言葉を正当化する様にモニカが進み出て言った。
「・・・エルフか。この村の生き残りか?」
「はい。この方が言った事は全て本当です。その上位種はまだ生きていてこの森に潜んでいます。私達ではまったく歯が立たなかったので、これより撤退して援軍を呼びに行く所でした。早くこの事を貴方の上官に伝えて貰えますか?」
モニカは時間が惜しいからさっさと上に報告しろと言った。
それを受けて舌打ち男は青筋を立てて怒鳴った。
「巫山戯るな!こんな事報告出来るか!」
「何故ですか?時間が有りません。一刻も早く援軍を呼び、あの上位種を討伐すべきです」
「お前程度が我等に意見するかッ!!」
チッ
マジでうぜぇなこいつ
俺は我慢の限界が来たのでここで割って入った。
チラリとアリシエーゼを見ると笑っていた。
きっと、この後の展開を想像しているんだろう。
「おい、舌打ち野郎。いいからさっさと報告して来い。こっちは暇じゃねぇんだ」
「な、何ッ!?何だ貴様は!!」
「五月蝿ぇよ。誰だっていいんだよ。この無能が」
「む、無能だと!?貴様!誰に物を言っていけるなる!!」
「テメェだよ、無能。入口の死体見て、普通のコボルトがやったと思ったのか?この村の建物の損壊具合を見て、たかがコボルトがやったと思うのか?もし普通のコボルトがやったってんなら、一体どれ程の数で、どんな道具を持ってたらこんな破壊が出来るんだよ。あぁ?言ってみろよ」
俺が捲し立てると舌打ち男は村の惨状を一瞥する。
「そ、それはッ!そんな事より何なんだ貴様のその態度は・・・うん?貴様何処かで―――」
「んな事はどうだって良いって言ってんだよ!この程度を直ぐに判断出来ないからテメェは無能だって言ってんだよ!」
「き、貴様ぁ!そこに直れ!騎士への侮辱は許さん!たたっ斬ってやる!!」
「侮辱?お前馬鹿だろ。侮辱じゃねぇよ。評価だ評価。お前の無能さを今こうして評価して発表してるんだよ」
そこまで言うと舌打ち男は身を血走らせ、ワナワナと震えながら馬を降りて腰にある剣の柄を握った。
アホ
俺は心でそう思い舌打ち男が一瞬も気付く事無く腰の短剣を抜き、そのまま舌打ち男の首に突き刺し―――
「はーい、そこまでじゃ」
俺の短剣が舌打ち男の喉に届くほんの直前にアリシエーゼが間に割って入り、俺の短剣の刃を指で摘んで止めた。
「ッ!?」
その段階に入って舌打ち男は漸く、自分が殺される寸前であった事を理解し、そして震える。
「お主、今の全然見えなかったじゃろ?つまり、お主はその程度、妾達は何時でもお前を殺せる。それをよーく肝に命じておくんじゃな」
アリシエーゼは舌打ち男にそっと言った。
「さて無駄な時間を使ってしまったし、さっさと行くぞ」
そう言ってアリシエーゼは聖女の一団の本体が待つ村の入口へと歩いて行った。
俺達は何も言わずにアリシエーゼの後を追う。
舌打ち男の横を通り過ぎる際に俺は舌打ち男を鼻で笑いながら言った。
「はんッ、命拾いしたな、無能」
あれ・・・?
なんだろ、この悪役感・・・
「お主、まさか本気であそこで殺そうとするとは思わなかったぞ・・・」
入口に向かって歩いているとアリシエーゼが俺の横に来てそう言った。
「あー、悪い。ちょっとムカついてみんなが見てるの忘れてたわ」
「やれやれ・・・もうちょっと冷静で居るんじゃな」
「分かったよ・・・ありがとう」
「・・・良い」
舌打ち男があまりにもテンプレ過ぎて、俺も頭に血が登ってしまったのは反省する。
殺るなら皆が見て無い所で
殺るなら皆に知られない様に
そして間も無く俺達は村の入口に到着する。
先程の一連の流れをやり取り自体は聞こえて無かったにせよ、目撃しているのでかなり警戒していた。
俺達の後を追って直ぐに舌打ち男達も入口に戻って来たが、若干顔色は悪い。
「イヴァン、これはどう言う事だ」
騎士の中で一際身体が大きい男が舌打ち男に向かって言った。
「は、はい、この者達は村の生き残りと、警備隊の生き残りです」
イヴァンと呼ばれたこの舌打ち男は、大きな男の威圧感に圧されながらそう言った。
いや、俺達は村の生き残りじゃねぇし
そんな事を思ったがとりあえず黙っておく。
「そうか・・・警備兵、所属は?」
大男はドエインに向かってそう言った。
またこの件かよ・・・
「ハッ!北方警備軍街道警備隊第十五番隊隊長、ドエイン・ムルラーです!」
「ムルラー家か、聞いた事は無いな・・・」
さっきとまったく一緒じゃねぇかよ!!
俺はイラ立ったが、ふとアリシエーゼを見ると此方の目をジッと見ていた。
分かってるよ・・・
そこからドエインは先程の話に加え、警備兵を北の関所に二名、ダリスに一名をに援軍要請として送った事、街道警備中にこの辺りに異様な数のコボルトが出現しており、この村へは情報収集と注意喚起の為立ち寄った事を付け加えた。
「ダリスにも送ったのか?我等もダリス方面から来たが、その様な者は見なかったが・・・」
「たぶん、殺されています」
そこで大男とドエインの会話にアルアレが割って入った。
「お前は?」
そう問われアルアレは右手を頭から胸に掛けてスッと静かに下ろした。
「む、教会の者か?」
「はい、今は傭兵をしておりますが・・・」
「そうか・・・で、殺されているとは?」
先程のアルアレのあの動作は何だったんだろうか?
エル教関係者である事のサイン?
たぶんそうなんだろうと思いながらアルアレが全てを説明するのを黙って聞いた。
そして全てを話終えると、聞いていた者は皆一様にざわめき、事の真偽を見定められずにいる様であった。
「俄には信じられんな・・・だが、教会信者が聖女様や私達に嘘を付くとも思えん・・・」
おー、さすがエル教信者
信用が違いますなぁ
「全て事実です。そして、こうしている間にもそのコボルトが我々を襲って来るかも知れません。早急にここから離れる必要があります」
「うむ・・・」
大男は腕を組み何かを考えていた。
そして、聖女へと振り向き言った。
「イリア様、私はこの者達の言葉が真実であると判断しますが、如何致しますか」
突然話を振られた聖女―――イリアは焦った様に答えた。
「え、そこで私に聞く―――おほん、そうですね。私もこの者達が嘘を言っている様には思えません。一旦引いて援軍を待つなりした方が良いでしょう」
一瞬、素が出るが、俺達が居たのを思い出し直ぐに取り繕った。
既に化けの皮が剥れ始めてるんだが・・・
そんな事を思ったが、アルアレは真面目に聞いている為に黙っておいた。
「それでは直ぐに撤退準備を―――」
「聖女様、貴方はこのドエインが命に変えてもお守りしますからね!」
やや大きめの声でドエインは明莉にそう言った。
あ、バカ・・・
「今何と言った?この者は聖女を名乗っているのか!?」
ほーら・・・
ドエインの言葉を聞き、大男は驚きと困惑が入り交じった様な表情をしてドエインを詰めた。
聖女を見ると、え?みたいな顔をして明莉を見ていた。
聖女と聖女
さーて、どっちが本物なのかね
舌打ち野郎は馬の上から高圧的にドエインにそう言った。
ドエインはその言葉を受け、それでも表情を変える事無く、前に進み出た。
「ハッ!北方警備軍街道警備隊第十五番隊隊長、ドエイン・ムルラーです!」
「ムルラー家?知らんな」
舌打ち男は眉を潜めてそう言った。
それに構わずドエインは続ける。
「昨日、この村を大量のコボルトとコボルトの上位種であろう個体が襲い、村人、十五番隊はほぼ壊滅しました!」
「・・・コボルトだと!?」
「はい!」
「コボルト程度に殺られたというのか!?」
「この被害は通常種では無く、上位種の仕業で有り、我等警備兵では全く太刀打ち出来ませんでした!」
ドエインの報告に舌打ち男とその取り巻きか何かは知らないが、他の騎士二人も驚き、そしてざわめく。
「う、嘘を付くなッ!ハイ・コボルト程度に警備隊が全滅してこの村の住人も皆殺しにされたと言うのか!?そんな話誰が信じると!?」
「ハイ・コボルトでは有りません!将軍級であります!」
ドエインのその言葉に騎士三人は絶句した。
「・・・は、はは、お前は頭がおかしいのか?こんな所にそんな伝説級の化け物が居る訳無いだろう!」
舌打ち男は見てもいないのにドエインの話を真っ向から否定した。
これ埒があかねぇな・・・
「嘘では有りません!剣も矢も効かず、自分で流暢に人語を話して言っていました。それを私は聞いています!」
「そ、そんな―――」
「私も一緒にその場に居ました。全て本当の事です」
ドエインの言葉を正当化する様にモニカが進み出て言った。
「・・・エルフか。この村の生き残りか?」
「はい。この方が言った事は全て本当です。その上位種はまだ生きていてこの森に潜んでいます。私達ではまったく歯が立たなかったので、これより撤退して援軍を呼びに行く所でした。早くこの事を貴方の上官に伝えて貰えますか?」
モニカは時間が惜しいからさっさと上に報告しろと言った。
それを受けて舌打ち男は青筋を立てて怒鳴った。
「巫山戯るな!こんな事報告出来るか!」
「何故ですか?時間が有りません。一刻も早く援軍を呼び、あの上位種を討伐すべきです」
「お前程度が我等に意見するかッ!!」
チッ
マジでうぜぇなこいつ
俺は我慢の限界が来たのでここで割って入った。
チラリとアリシエーゼを見ると笑っていた。
きっと、この後の展開を想像しているんだろう。
「おい、舌打ち野郎。いいからさっさと報告して来い。こっちは暇じゃねぇんだ」
「な、何ッ!?何だ貴様は!!」
「五月蝿ぇよ。誰だっていいんだよ。この無能が」
「む、無能だと!?貴様!誰に物を言っていけるなる!!」
「テメェだよ、無能。入口の死体見て、普通のコボルトがやったと思ったのか?この村の建物の損壊具合を見て、たかがコボルトがやったと思うのか?もし普通のコボルトがやったってんなら、一体どれ程の数で、どんな道具を持ってたらこんな破壊が出来るんだよ。あぁ?言ってみろよ」
俺が捲し立てると舌打ち男は村の惨状を一瞥する。
「そ、それはッ!そんな事より何なんだ貴様のその態度は・・・うん?貴様何処かで―――」
「んな事はどうだって良いって言ってんだよ!この程度を直ぐに判断出来ないからテメェは無能だって言ってんだよ!」
「き、貴様ぁ!そこに直れ!騎士への侮辱は許さん!たたっ斬ってやる!!」
「侮辱?お前馬鹿だろ。侮辱じゃねぇよ。評価だ評価。お前の無能さを今こうして評価して発表してるんだよ」
そこまで言うと舌打ち男は身を血走らせ、ワナワナと震えながら馬を降りて腰にある剣の柄を握った。
アホ
俺は心でそう思い舌打ち男が一瞬も気付く事無く腰の短剣を抜き、そのまま舌打ち男の首に突き刺し―――
「はーい、そこまでじゃ」
俺の短剣が舌打ち男の喉に届くほんの直前にアリシエーゼが間に割って入り、俺の短剣の刃を指で摘んで止めた。
「ッ!?」
その段階に入って舌打ち男は漸く、自分が殺される寸前であった事を理解し、そして震える。
「お主、今の全然見えなかったじゃろ?つまり、お主はその程度、妾達は何時でもお前を殺せる。それをよーく肝に命じておくんじゃな」
アリシエーゼは舌打ち男にそっと言った。
「さて無駄な時間を使ってしまったし、さっさと行くぞ」
そう言ってアリシエーゼは聖女の一団の本体が待つ村の入口へと歩いて行った。
俺達は何も言わずにアリシエーゼの後を追う。
舌打ち男の横を通り過ぎる際に俺は舌打ち男を鼻で笑いながら言った。
「はんッ、命拾いしたな、無能」
あれ・・・?
なんだろ、この悪役感・・・
「お主、まさか本気であそこで殺そうとするとは思わなかったぞ・・・」
入口に向かって歩いているとアリシエーゼが俺の横に来てそう言った。
「あー、悪い。ちょっとムカついてみんなが見てるの忘れてたわ」
「やれやれ・・・もうちょっと冷静で居るんじゃな」
「分かったよ・・・ありがとう」
「・・・良い」
舌打ち男があまりにもテンプレ過ぎて、俺も頭に血が登ってしまったのは反省する。
殺るなら皆が見て無い所で
殺るなら皆に知られない様に
そして間も無く俺達は村の入口に到着する。
先程の一連の流れをやり取り自体は聞こえて無かったにせよ、目撃しているのでかなり警戒していた。
俺達の後を追って直ぐに舌打ち男達も入口に戻って来たが、若干顔色は悪い。
「イヴァン、これはどう言う事だ」
騎士の中で一際身体が大きい男が舌打ち男に向かって言った。
「は、はい、この者達は村の生き残りと、警備隊の生き残りです」
イヴァンと呼ばれたこの舌打ち男は、大きな男の威圧感に圧されながらそう言った。
いや、俺達は村の生き残りじゃねぇし
そんな事を思ったがとりあえず黙っておく。
「そうか・・・警備兵、所属は?」
大男はドエインに向かってそう言った。
またこの件かよ・・・
「ハッ!北方警備軍街道警備隊第十五番隊隊長、ドエイン・ムルラーです!」
「ムルラー家か、聞いた事は無いな・・・」
さっきとまったく一緒じゃねぇかよ!!
俺はイラ立ったが、ふとアリシエーゼを見ると此方の目をジッと見ていた。
分かってるよ・・・
そこからドエインは先程の話に加え、警備兵を北の関所に二名、ダリスに一名をに援軍要請として送った事、街道警備中にこの辺りに異様な数のコボルトが出現しており、この村へは情報収集と注意喚起の為立ち寄った事を付け加えた。
「ダリスにも送ったのか?我等もダリス方面から来たが、その様な者は見なかったが・・・」
「たぶん、殺されています」
そこで大男とドエインの会話にアルアレが割って入った。
「お前は?」
そう問われアルアレは右手を頭から胸に掛けてスッと静かに下ろした。
「む、教会の者か?」
「はい、今は傭兵をしておりますが・・・」
「そうか・・・で、殺されているとは?」
先程のアルアレのあの動作は何だったんだろうか?
エル教関係者である事のサイン?
たぶんそうなんだろうと思いながらアルアレが全てを説明するのを黙って聞いた。
そして全てを話終えると、聞いていた者は皆一様にざわめき、事の真偽を見定められずにいる様であった。
「俄には信じられんな・・・だが、教会信者が聖女様や私達に嘘を付くとも思えん・・・」
おー、さすがエル教信者
信用が違いますなぁ
「全て事実です。そして、こうしている間にもそのコボルトが我々を襲って来るかも知れません。早急にここから離れる必要があります」
「うむ・・・」
大男は腕を組み何かを考えていた。
そして、聖女へと振り向き言った。
「イリア様、私はこの者達の言葉が真実であると判断しますが、如何致しますか」
突然話を振られた聖女―――イリアは焦った様に答えた。
「え、そこで私に聞く―――おほん、そうですね。私もこの者達が嘘を言っている様には思えません。一旦引いて援軍を待つなりした方が良いでしょう」
一瞬、素が出るが、俺達が居たのを思い出し直ぐに取り繕った。
既に化けの皮が剥れ始めてるんだが・・・
そんな事を思ったが、アルアレは真面目に聞いている為に黙っておいた。
「それでは直ぐに撤退準備を―――」
「聖女様、貴方はこのドエインが命に変えてもお守りしますからね!」
やや大きめの声でドエインは明莉にそう言った。
あ、バカ・・・
「今何と言った?この者は聖女を名乗っているのか!?」
ほーら・・・
ドエインの言葉を聞き、大男は驚きと困惑が入り交じった様な表情をしてドエインを詰めた。
聖女を見ると、え?みたいな顔をして明莉を見ていた。
聖女と聖女
さーて、どっちが本物なのかね
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