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第3章:雷速姫と迷宮街編
第93話:物流拠点
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「あーあ、ハルのせいで出発がこんな時間になっちまったなぁ」
「・・・悪かったって」
「この時間なんだったら昼飯食べてから出発でも良かったよねぇ」
「・・・ソウデスネ」
「なんじゃ、落ち込んでおるのか?じゃったら妾が慰め―――」
「うっせ」
「な、なに!?」
「・・・ハルハウソツキ」
「ご、ごめんって・・・でも流石に俺からあの能力取ると詰みと言うか、なんと言うか」
「あッ!こら!ユーリー!妾が話しておるんじゃぞ!」
「なんとも騒がしいですねぇ」
「いつもこうなんですよ」
「なーに、モニカくんも直ぐに慣れるとも!何なら私が―――」
「結構です!」
「あ、いや、まだ何も―――」
「結構です!!」
「・・・旦那、アンタ関所の人間に何したんだよ、マジで」
「・・・・・・・・・」
結局、関所は難民問題が解決した後にすぐ出発したが、既に昼頃になっていた。
俺達は馬上でセンビーンを頬張ってそのままホルスを目指しているが、それに対して色々と言われているのだが・・・
「何で馬乗ってんのに皆でこんな密集してるんだよ!!」
「何故って、近付かないと話せないじゃろうが」
「んなの分かってんだよ!兎に角離れろ!」
俺はそう言って、周りに集まる馬を蹴って押しやろうとした。
しかし、傭兵やモニカは馬の扱いに長けている為、その蹴りをヒョイと躱しまた近付いて来る。
「とりあえず、次のデカい街はミザウアだけどそこには寄るでいいのか?」
完全に流れをぶった斬る様にドエインが俺に聞いて来た。
「そのミザウアってのはデカいのか?」
「そうだな、関所とホルスの物資の中継基地としても使われてるし、関所だけじゃなくて、他の街や村、あとはエバンシオ王国の方からの交易拠点でもあるな」
「へぇ、もの凄くデカそうだな」
「んー、まぁデカいんだが・・・」
「なんだ?含みのある言い方だな?」
ドエインは少し言いにくそうにしていた。
「いや、今交易の拠点と言ったが、交易と言うよりは物資の中継拠点の意味合いが強い。っていうか、物資が集まる場所ってだけだ」
「言い切っちゃうのかよ・・・」
「あぁ、もし何か買うってんなら、結局今はホルスに全部流れるしな。だったらホルスで買ってもいいんじゃないかと思う」
「なるほどな。じゃあ食料とか補給するくらいでいいかな?」
「じゃが、ミザウアに到着するのが夕方とかじゃったらそのまま街の宿を取るじゃろ?」
「うん?まぁ、そうだ―――」
「いやいや、ここはホルスに急いだ方がいいんじゃないか?」
態々日が暮れる頃に街に到着したのに街を素通りして野宿をする意味が無いので、アリシエーゼの言う通りだと思ったが、何故かドエインはホルスへ急いだ方がいいと言った。
何かあるのか・・・?
ドエインが俺達をミザウアの街に寄らせたく無い理由が見当たらず困惑していると、明莉が急に会話に入って来た。
「暖くん、忘れて無いですよね?」
「え?何が―――」
急に話を明莉から振られて何事かと振り向くとそこには能面の様な感情の見えない表情をしながら口元だけ笑っている明莉の顔があった。
「ひ、ひぃぃぃッ!?」
「暖くん。私との約束、忘れて、ないですよね?」
な、ななな、何なんだ!?
約束??
明莉と何か約束したか?と思ったが直ぐに思い出した。
「あ、宿屋・・・風呂ですね・・・」
「・・・良かった。覚えてくれてたんだね」
そう言ってはにかんで笑った明莉は先程の感情の見えない表情はしていなかった。
「・・・はい」
「何の話だ?風呂?」
俺と明莉のやり取りに着いていけずにドエインが思わず声を上げる。
「・・・なんだ、その風呂のある宿屋がある時は必ずそこに宿泊しようと、明莉と・・・」
「何だ?聖女様。毎日でも風呂に入りたいってか?そりゃ贅沢ですよ。多少汗臭くったって誰も文句なんて―――」
そう言ってドエインはハッハッハと笑いながら明莉を見た。
因みに俺はドエインのその恐れ知らずな発言に恐怖して震えた。
「あびゃぁぁあああッ!!??せ、聖女様ぁぁああ!?」
目ん玉が飛び出るのかと言う位目を見開き、ドエインは明莉の顔を見て驚き、そして叫んだ。
ドエイン、チビったなこりゃ・・・
「私が何か?」
「い、いい、いえぇぇッ!時間的に丁度良かったら、ミザウアで宿とりましょう!えぇ!取りましょうとも!!」
「時間は私達が合わせればいいんですよ。分かります?」
「はぃぃぃッ」
確実にドエインを泣かせに入っている明莉だが、他の面々は明莉の雰囲気が変わるや否や、俺達からさっさと離れていってしまっていた。
薄情な奴らめッ!
ちなみに、現在の馬は六頭となっており、関所から一頭、大隊長に許可?を貰って譲り受けている。
ペアは、俺とユーリー、モニカと明莉、ソニとアルアレ、パトリックとアリシエーゼ、ドエインと篤、そしてナッズと言う形になっているが、モニカは何故か泣きながら馬を操り、ドエインの後ろに乗っている篤は寝て――いや、寝たフリをしている。
明莉がドエインを説得?したので、とりあえずはミザウアの街を目指して進む事にした。
途中休憩をしながら進み、その日は野営を行い、次の日の夕刻にミザウアの街へと到着した。
「あー、マジで時間も丁度良く到着するとは・・・」
そんな事をドエインがボヤく。
「何なんだ?この街に寄りたく無い理由でも何かあるのか?」
俺がそうドエインに尋ねると、ドエインは左手の人差し指で頬をポリポリと掻きながら答えを迷っていた。
「いやぁ、まぁ、その、この街に会いたく無い奴がいると言うかなんと言うか・・・」
どうもハッキリとしないが、ドエインの苦手な人物がこのミザウアの街に居ると言う事だろうかと考える。
「何だ?別れた女でもいるのか、この街に?」
横からナッズが入って来てドエインに問い掛ける。
「その程度のレベルなら別に気にしないんだけどな・・・」
「勿体ぶるで無い。お主の色恋なんぞ誰も興味無いんじゃ」
若干苛立ちながらアリシエーゼも入って来る。
「微妙にひでぇな・・・まぁ、何て言うか、軍関係者だよ」
「この街に居るのか?」
「あぁ、街道警備隊のこの街の拠点を任されてる奴だ」
って事は大隊長か何かだろうか?
ドエインより階級が上と言う事は、同期でライバルで・・・とかを想像してしまうが。
「この街の警備隊責任者って事は大隊長か何かだろ?だったら普段は現場何かに出て無いんだろうし、バッタリ遭遇なんて事は無いんじゃないか?」
俺はドエインに対する優しさに見せ掛けた、フラグ立てをした。
それを察知して、アリシエーゼと篤が微妙に反応していたが、こちらは無視する。
「ま、まぁそうだな。一泊するだけだ、そんな偶然があって溜たまるかっての」
ドエインは悪態を付きながら、目前に迫ったミザウアの街の正門を見詰めていた。
フラグ立ったな・・・ふふ
「・・・悪かったって」
「この時間なんだったら昼飯食べてから出発でも良かったよねぇ」
「・・・ソウデスネ」
「なんじゃ、落ち込んでおるのか?じゃったら妾が慰め―――」
「うっせ」
「な、なに!?」
「・・・ハルハウソツキ」
「ご、ごめんって・・・でも流石に俺からあの能力取ると詰みと言うか、なんと言うか」
「あッ!こら!ユーリー!妾が話しておるんじゃぞ!」
「なんとも騒がしいですねぇ」
「いつもこうなんですよ」
「なーに、モニカくんも直ぐに慣れるとも!何なら私が―――」
「結構です!」
「あ、いや、まだ何も―――」
「結構です!!」
「・・・旦那、アンタ関所の人間に何したんだよ、マジで」
「・・・・・・・・・」
結局、関所は難民問題が解決した後にすぐ出発したが、既に昼頃になっていた。
俺達は馬上でセンビーンを頬張ってそのままホルスを目指しているが、それに対して色々と言われているのだが・・・
「何で馬乗ってんのに皆でこんな密集してるんだよ!!」
「何故って、近付かないと話せないじゃろうが」
「んなの分かってんだよ!兎に角離れろ!」
俺はそう言って、周りに集まる馬を蹴って押しやろうとした。
しかし、傭兵やモニカは馬の扱いに長けている為、その蹴りをヒョイと躱しまた近付いて来る。
「とりあえず、次のデカい街はミザウアだけどそこには寄るでいいのか?」
完全に流れをぶった斬る様にドエインが俺に聞いて来た。
「そのミザウアってのはデカいのか?」
「そうだな、関所とホルスの物資の中継基地としても使われてるし、関所だけじゃなくて、他の街や村、あとはエバンシオ王国の方からの交易拠点でもあるな」
「へぇ、もの凄くデカそうだな」
「んー、まぁデカいんだが・・・」
「なんだ?含みのある言い方だな?」
ドエインは少し言いにくそうにしていた。
「いや、今交易の拠点と言ったが、交易と言うよりは物資の中継拠点の意味合いが強い。っていうか、物資が集まる場所ってだけだ」
「言い切っちゃうのかよ・・・」
「あぁ、もし何か買うってんなら、結局今はホルスに全部流れるしな。だったらホルスで買ってもいいんじゃないかと思う」
「なるほどな。じゃあ食料とか補給するくらいでいいかな?」
「じゃが、ミザウアに到着するのが夕方とかじゃったらそのまま街の宿を取るじゃろ?」
「うん?まぁ、そうだ―――」
「いやいや、ここはホルスに急いだ方がいいんじゃないか?」
態々日が暮れる頃に街に到着したのに街を素通りして野宿をする意味が無いので、アリシエーゼの言う通りだと思ったが、何故かドエインはホルスへ急いだ方がいいと言った。
何かあるのか・・・?
ドエインが俺達をミザウアの街に寄らせたく無い理由が見当たらず困惑していると、明莉が急に会話に入って来た。
「暖くん、忘れて無いですよね?」
「え?何が―――」
急に話を明莉から振られて何事かと振り向くとそこには能面の様な感情の見えない表情をしながら口元だけ笑っている明莉の顔があった。
「ひ、ひぃぃぃッ!?」
「暖くん。私との約束、忘れて、ないですよね?」
な、ななな、何なんだ!?
約束??
明莉と何か約束したか?と思ったが直ぐに思い出した。
「あ、宿屋・・・風呂ですね・・・」
「・・・良かった。覚えてくれてたんだね」
そう言ってはにかんで笑った明莉は先程の感情の見えない表情はしていなかった。
「・・・はい」
「何の話だ?風呂?」
俺と明莉のやり取りに着いていけずにドエインが思わず声を上げる。
「・・・なんだ、その風呂のある宿屋がある時は必ずそこに宿泊しようと、明莉と・・・」
「何だ?聖女様。毎日でも風呂に入りたいってか?そりゃ贅沢ですよ。多少汗臭くったって誰も文句なんて―――」
そう言ってドエインはハッハッハと笑いながら明莉を見た。
因みに俺はドエインのその恐れ知らずな発言に恐怖して震えた。
「あびゃぁぁあああッ!!??せ、聖女様ぁぁああ!?」
目ん玉が飛び出るのかと言う位目を見開き、ドエインは明莉の顔を見て驚き、そして叫んだ。
ドエイン、チビったなこりゃ・・・
「私が何か?」
「い、いい、いえぇぇッ!時間的に丁度良かったら、ミザウアで宿とりましょう!えぇ!取りましょうとも!!」
「時間は私達が合わせればいいんですよ。分かります?」
「はぃぃぃッ」
確実にドエインを泣かせに入っている明莉だが、他の面々は明莉の雰囲気が変わるや否や、俺達からさっさと離れていってしまっていた。
薄情な奴らめッ!
ちなみに、現在の馬は六頭となっており、関所から一頭、大隊長に許可?を貰って譲り受けている。
ペアは、俺とユーリー、モニカと明莉、ソニとアルアレ、パトリックとアリシエーゼ、ドエインと篤、そしてナッズと言う形になっているが、モニカは何故か泣きながら馬を操り、ドエインの後ろに乗っている篤は寝て――いや、寝たフリをしている。
明莉がドエインを説得?したので、とりあえずはミザウアの街を目指して進む事にした。
途中休憩をしながら進み、その日は野営を行い、次の日の夕刻にミザウアの街へと到着した。
「あー、マジで時間も丁度良く到着するとは・・・」
そんな事をドエインがボヤく。
「何なんだ?この街に寄りたく無い理由でも何かあるのか?」
俺がそうドエインに尋ねると、ドエインは左手の人差し指で頬をポリポリと掻きながら答えを迷っていた。
「いやぁ、まぁ、その、この街に会いたく無い奴がいると言うかなんと言うか・・・」
どうもハッキリとしないが、ドエインの苦手な人物がこのミザウアの街に居ると言う事だろうかと考える。
「何だ?別れた女でもいるのか、この街に?」
横からナッズが入って来てドエインに問い掛ける。
「その程度のレベルなら別に気にしないんだけどな・・・」
「勿体ぶるで無い。お主の色恋なんぞ誰も興味無いんじゃ」
若干苛立ちながらアリシエーゼも入って来る。
「微妙にひでぇな・・・まぁ、何て言うか、軍関係者だよ」
「この街に居るのか?」
「あぁ、街道警備隊のこの街の拠点を任されてる奴だ」
って事は大隊長か何かだろうか?
ドエインより階級が上と言う事は、同期でライバルで・・・とかを想像してしまうが。
「この街の警備隊責任者って事は大隊長か何かだろ?だったら普段は現場何かに出て無いんだろうし、バッタリ遭遇なんて事は無いんじゃないか?」
俺はドエインに対する優しさに見せ掛けた、フラグ立てをした。
それを察知して、アリシエーゼと篤が微妙に反応していたが、こちらは無視する。
「ま、まぁそうだな。一泊するだけだ、そんな偶然があって溜たまるかっての」
ドエインは悪態を付きながら、目前に迫ったミザウアの街の正門を見詰めていた。
フラグ立ったな・・・ふふ
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