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第6章:迷宮勇者と巨人王編
第257話:再共闘
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『近付くんじゃねぇよ、このクソガキがッ』
「あぁッ!?俺は近付いてねぇ!ラルファが俺に近付いて来てんだろ!」
『ラルファッ、こんな奴に近付くな!バイ菌が伝染るぞ!』
「なにッ!?」
言うに事欠いてバイ菌だと!?
この屑鉄がッ!!
結局、アザエルから何も情報を得られず、あれから話し合いはかなりグダグダだった。
ラルファ―――アザエルの能力の話に及ぶと必ずアザエルが割り込んで来て情報を隠そうとする。
本当に話が進まないので一旦休憩として今の状態なのだが、俺がアザエルであるこの長剣に触れられないのが本当に厄介だと思った。
やはり、認められた所有者以外が触ると大変な事になるらしい。
それはアザエルがどうこう出来る問題では無いらしく、アギリーやリルカと言った勇者パーティの面々も同じ事の様だった。
触れられるなら砕き割ってやるなり、溶岩に沈めるなりしてやるのに・・・
休憩と言う事で俺は小部屋の一角に座り状況を整理しようとしていた所にラルファが此方に近付いて来てアザエルの冒頭の一言である。
「屑鉄は本当に役に立たねぇな。そんなの捨てちまった方がいいんじゃねぇか?」
巨人の時も何もしなかっただろとラルファにそう言って床に唾を吐く。
『んだとッ!?誰がテメェと共闘なんかするかってんだ!』
まぁ、そう言う事らしい。
ラルファが五分と言っていたが、どうにもアザエルが渋り結局行おうとしていた何かは出来なかった様で、それに関してはラルファから何度も謝られた。
「止めてよアザエル。何でそんな態度になるのかなぁ・・・」
ラルファが言っても聞かない相棒のアザエルをため息混じりに見つめながらこの後どうしようかと聞いてくるラルファだが、正直此奴らが何をしたいのかが分からない。
そんな状態で俺も共闘などしたくは無いし、これ以上話しても無駄かなと思い始めていた。
「もういいんじゃねぇか、お互い別々にこの魔界攻略を進め様って事でさ?」
「ダメだよー、あの巨人は本当に強いよ。協力した方が絶対にいいってー」
そうは言うが、ラルファは恐らくアザエルを使い何かをしようとしているのは分かるが、それであの巨人を倒せると言う保証が無いと言うか、先程も言ったが何をしようとしているのかが分からないので判断出来ない。
『ラルファ、さっさとこんな奴から離れろって。他の傭兵達と協力した方がいい』
「もう、アザエルだって認めてる癖に――――って、あれ?」
アザエルと話すラルファが急に俺を見て目をパチクリしだすが、何が気になっているのか分からず俺もラルファと顔を見合せて目をパチクリしてしまう。
「なんだ、どうした?」
「いや、その、かなり今更なんだけどさ・・・」
そう言ってラルファほ言い淀むが、そんなに言い辛い事なんだろうか?
「・・・なんだよ?」
また面倒な事を言われるのかもと身構えると、ラルファは頬をポリポリと掻きながら上目遣いで俺を見て言った。
「・・・キミ達の名前、知らないなぁと」
「・・・・・・」
『・・・・・・』
まぁ、確かに俺達は名乗って無い気がするが、本当に今更だ。
共闘と言う形で一時的にではあるにしろ、相手の名前すら分からないとか有り得ないだろうと思ったが、俺達も特にその辺を思い至らなかったのでお互い様かと思い、仕方無くラルファに仲間達を紹介した。
「―――って訳でこの十一人でこの西魔界を攻略中だ」
全員集められ何事かとザワついていた仲間達も唯の自己紹介だと分かると、今更かよと言った表情を浮かべていた。
「やっぱりこの前も思ったけど、人数多いよねー」
この西魔界内部は、迷路の様な通路が永遠と続きボス部屋だけは大きな空間となっている。
今居るこう言った小部屋も稀にあったりはするのだが、基本的には迷宮で通路もそこまで広くは無い。
大人二人が余裕を持って戦闘を行える位には広さはあるにせよ、その程度だ。
なので基本的にこの魔界に挑む者は、五人から六人のパーティを組み完全にロールを分けている。
前衛、中衛、後衛と言った具合だが、それを言ったらラルファのパーティは少ないのでは無いかと思う。
「お前らはさ、逆に少な過ぎじゃねぇか?」
「そう?俺とアギリーが前衛で中衛無しの後衛二人だからバランスは良いと思うけどなー」
まぁ、その辺りは当事者が良ければ別に良いのでそれ以上は突っ込まない。
「まぁ俺達は俺とアリシエーゼが前に出るパターンと二人が殿をやるパターンに分けてるけどな」
「それが出来るのがいいよねー、こっちは前衛、後衛固定だからバックアタックが一番怖い」
パーティを組んだ際に一番気を付けなければならない事の一つに、背後からの奇襲――バックアタックがある。
強敵と戦っている最中にバックアタックで陣形を崩されれば一瞬で戦況が引っ繰り返る恐れがあるので、この西魔界だけに限らないが常にその辺りは意識していないといけないのだ。
そんな会話を少しして少しずつだが俺達と、ラルファ達双方の距離が縮まった気がしていると、ラルファは「さてッ」と言って手をパンと叩く。
因みにアザエルはラルファの腰に収まっている。
「そろそろ、次の作戦を考えよー」
それはそれで良いとは思うのだが、超えなければならないハードルがある・・・
「・・・手の内を見せない、明かさない奴は信用ならないんだが」
「そうか、そうだよねー、俺とアザエルはさ―――」
『わーッ!わーッ!いきなり何言い出すんだ!!』
「え、何って―――」
『お前ッ、もうちょっと人を選べって言ってんだよ!此奴はダメだ!』
「だから何でさー?」
『何でも何もねぇよ!俺達には俺達の目的があるんだろうが!こんな奴居ても役に立たないどころか邪魔でしかねぇよ!』
目的・・・?
それが何なのかは分からないが、どうせ聞いても教えてくれないので黙っておく事にした。
『お前は俺様の言う通りにしてればいいんだッ』
「なんでさー?何時もそう言うけど、結局何も結果を残せないじゃないかー」
『うッ―――そ、それは他の連中が使えねぇからだッ』
そう、巨人との戦闘や他の連中が噂として頭の中に入っていた情報からラルファはアザエルを使い何かを行おうとするのだが、それには時間が掛かる。
なので、それを行う為に誰かが自身の身を呈してラルファを護り時間稼ぎを行う必要がある様なのだ。
そんなものを赤の他人が好んでやるとは到底思えないし、アギリーやリルカだけでは戦力的に足りないのだろう。
あぁ、フィフリーも居たかと思ったが、同時に彼奴はいいかとも思った。
「だからさー、その点ハル達は強いし戦力的には申し分無いよー。それはアザエルだって分かってるだろー?」
『・・・・・・い、嫌だねッ!俺様は此奴とは組まない!』
アザエルが何故ここまで俺を嫌って―――敵視しているのか分からない。
そこには何かしらの理由はあるのだろうが、正直俺はどうでも良いと思っていた。
もう面倒臭ぇよ・・・
この喋る剣が一体何なのか気になるし、恐らく神や悪魔に関しても何らかの情報は持っている。
だからその情報は出来るなら入手したいとも思うが、ここまでの絡みからそれらを加味してもコイツらと関係を保ち続ける必要性を見い出せなかった。
そんな事を思っていると、アザエルと話していたラルファが腰に付けていた鞘をガチャガチャと外し始める。
『お、おい、何やってんだ?』
「えー?何って、アザエルちょっと邪魔だからさー」
『へ?』
間抜けな声をアザエルが出す間にラルファはアザエルの収まった鞘を両手で持っており、「ちょっと黙っててー」とそれをポイッと横に投げ捨てた。
「え?」
『お前何やってえぇぇ―――――――――』
ガチャンッとアザエルが地面に落とされ、それと同時に喧しい声が止む。
「俺とアザエルがある程度離れると、声が聞こえなくなるんだよー」
アザエルの言葉は当然口や声帯が無いのでどう発しているのかは分からないのだが、頭に響いて来るのでは無く、耳の鼓膜を振動させて普通の声として感じるのだ。
最初は本当に混乱したが、そんなアザエルの声はラルファが遠くへ放り投げた事で今は聞こえない。
って言うか、神造遺物ってすんげぇ貴重な物じゃないのか・・・?
そんな貴重な物をまるで玩具を放り投げる様に雑にぶん投げたラルファに驚愕しつつ、俺も漸く真面に話が出来ると少しだけ安堵する。
どうにも、やろうと思っていた事が出来ない、当初の計画から外れこうすれば良いと思っていた事が宛が外れると言う事があると異様にイラついてくる。
それは、俺の能力でどうにかなると思っていた事が出来ないと言う事態がこのところ頻発している事を指すが、そう言った事の積み重ねでフラストレーションは溜まって行く一方だった。
その後、ラルファに話を聞き改めて共闘を結び巨人を倒す事になるのだが、結局の所ラルファも神だの悪魔だのについてはアザエルから何か確信的な事を聞いていた訳では無かったので特にこれと言った情報は無かった。
ただ、巨人を相手にラルファがやろうとしていた事は分かった。
「アザエル自身をラルファに降ろすって、それ大丈夫なのか?」
「んー、何回か練習でやってみたんだけど特に問題は無かったよー」
アザエルは神造遺物(アーティファクト)であるあの長剣に実体―――この場合は幻幽体だと思う―――が封印されていると言う。
何故かは分からないらしいが兎に角封印されていて、アザエルが所有者と認めたラルファへなら、ラルファを依代として実体化出来ると言うのだ。
先ず意味が分からないのは、封印されていると言っていたがラルファを依代に実体を持つ事が出来る時点でもう封印の意味は無くなっているんじゃないだろうかと思ったりするのだが―――
「アザエルが封印されてるって言ってたんだよー」
つまりラルファは詳しい事情や、アザエルが言っている事が本当なのか分からないと言う事だった。
ただ、神造遺物の長剣を媒介としてその神降ろしならぬ堕天使降ろしは可能となるらしい。
色々と制限があり、降ろすのに時間が掛かるのもそうだが、憑依と言っても良いその現象は永くは続かないとの事だった。
しかし其れが成されている間、憑依とは言うもののラルファの意識事態はあり、ラルファの意思で身体を動かせる様でつまりはアザエルの能力を使える状態になると言うのが正しいのかも知れない。
ただ、そう言われてもそれがどれ程凄い事なのかイマイチ分からなかった。
アザエルの能力自体もよく分からないのだが、ラルファ曰く―――
「あの状態になるとすっごい力が湧いて来るんだよー。だからあんな巨人なんか簡単に倒せると思うよー」
だそうだ・・・
不安だ・・・
俺は一抹どころか、大いに不安を感じながら次の作戦に向けてラルファ立ちと話を詰めて行った。
本当に大丈夫かな・・・
「あぁッ!?俺は近付いてねぇ!ラルファが俺に近付いて来てんだろ!」
『ラルファッ、こんな奴に近付くな!バイ菌が伝染るぞ!』
「なにッ!?」
言うに事欠いてバイ菌だと!?
この屑鉄がッ!!
結局、アザエルから何も情報を得られず、あれから話し合いはかなりグダグダだった。
ラルファ―――アザエルの能力の話に及ぶと必ずアザエルが割り込んで来て情報を隠そうとする。
本当に話が進まないので一旦休憩として今の状態なのだが、俺がアザエルであるこの長剣に触れられないのが本当に厄介だと思った。
やはり、認められた所有者以外が触ると大変な事になるらしい。
それはアザエルがどうこう出来る問題では無いらしく、アギリーやリルカと言った勇者パーティの面々も同じ事の様だった。
触れられるなら砕き割ってやるなり、溶岩に沈めるなりしてやるのに・・・
休憩と言う事で俺は小部屋の一角に座り状況を整理しようとしていた所にラルファが此方に近付いて来てアザエルの冒頭の一言である。
「屑鉄は本当に役に立たねぇな。そんなの捨てちまった方がいいんじゃねぇか?」
巨人の時も何もしなかっただろとラルファにそう言って床に唾を吐く。
『んだとッ!?誰がテメェと共闘なんかするかってんだ!』
まぁ、そう言う事らしい。
ラルファが五分と言っていたが、どうにもアザエルが渋り結局行おうとしていた何かは出来なかった様で、それに関してはラルファから何度も謝られた。
「止めてよアザエル。何でそんな態度になるのかなぁ・・・」
ラルファが言っても聞かない相棒のアザエルをため息混じりに見つめながらこの後どうしようかと聞いてくるラルファだが、正直此奴らが何をしたいのかが分からない。
そんな状態で俺も共闘などしたくは無いし、これ以上話しても無駄かなと思い始めていた。
「もういいんじゃねぇか、お互い別々にこの魔界攻略を進め様って事でさ?」
「ダメだよー、あの巨人は本当に強いよ。協力した方が絶対にいいってー」
そうは言うが、ラルファは恐らくアザエルを使い何かをしようとしているのは分かるが、それであの巨人を倒せると言う保証が無いと言うか、先程も言ったが何をしようとしているのかが分からないので判断出来ない。
『ラルファ、さっさとこんな奴から離れろって。他の傭兵達と協力した方がいい』
「もう、アザエルだって認めてる癖に――――って、あれ?」
アザエルと話すラルファが急に俺を見て目をパチクリしだすが、何が気になっているのか分からず俺もラルファと顔を見合せて目をパチクリしてしまう。
「なんだ、どうした?」
「いや、その、かなり今更なんだけどさ・・・」
そう言ってラルファほ言い淀むが、そんなに言い辛い事なんだろうか?
「・・・なんだよ?」
また面倒な事を言われるのかもと身構えると、ラルファは頬をポリポリと掻きながら上目遣いで俺を見て言った。
「・・・キミ達の名前、知らないなぁと」
「・・・・・・」
『・・・・・・』
まぁ、確かに俺達は名乗って無い気がするが、本当に今更だ。
共闘と言う形で一時的にではあるにしろ、相手の名前すら分からないとか有り得ないだろうと思ったが、俺達も特にその辺を思い至らなかったのでお互い様かと思い、仕方無くラルファに仲間達を紹介した。
「―――って訳でこの十一人でこの西魔界を攻略中だ」
全員集められ何事かとザワついていた仲間達も唯の自己紹介だと分かると、今更かよと言った表情を浮かべていた。
「やっぱりこの前も思ったけど、人数多いよねー」
この西魔界内部は、迷路の様な通路が永遠と続きボス部屋だけは大きな空間となっている。
今居るこう言った小部屋も稀にあったりはするのだが、基本的には迷宮で通路もそこまで広くは無い。
大人二人が余裕を持って戦闘を行える位には広さはあるにせよ、その程度だ。
なので基本的にこの魔界に挑む者は、五人から六人のパーティを組み完全にロールを分けている。
前衛、中衛、後衛と言った具合だが、それを言ったらラルファのパーティは少ないのでは無いかと思う。
「お前らはさ、逆に少な過ぎじゃねぇか?」
「そう?俺とアギリーが前衛で中衛無しの後衛二人だからバランスは良いと思うけどなー」
まぁ、その辺りは当事者が良ければ別に良いのでそれ以上は突っ込まない。
「まぁ俺達は俺とアリシエーゼが前に出るパターンと二人が殿をやるパターンに分けてるけどな」
「それが出来るのがいいよねー、こっちは前衛、後衛固定だからバックアタックが一番怖い」
パーティを組んだ際に一番気を付けなければならない事の一つに、背後からの奇襲――バックアタックがある。
強敵と戦っている最中にバックアタックで陣形を崩されれば一瞬で戦況が引っ繰り返る恐れがあるので、この西魔界だけに限らないが常にその辺りは意識していないといけないのだ。
そんな会話を少しして少しずつだが俺達と、ラルファ達双方の距離が縮まった気がしていると、ラルファは「さてッ」と言って手をパンと叩く。
因みにアザエルはラルファの腰に収まっている。
「そろそろ、次の作戦を考えよー」
それはそれで良いとは思うのだが、超えなければならないハードルがある・・・
「・・・手の内を見せない、明かさない奴は信用ならないんだが」
「そうか、そうだよねー、俺とアザエルはさ―――」
『わーッ!わーッ!いきなり何言い出すんだ!!』
「え、何って―――」
『お前ッ、もうちょっと人を選べって言ってんだよ!此奴はダメだ!』
「だから何でさー?」
『何でも何もねぇよ!俺達には俺達の目的があるんだろうが!こんな奴居ても役に立たないどころか邪魔でしかねぇよ!』
目的・・・?
それが何なのかは分からないが、どうせ聞いても教えてくれないので黙っておく事にした。
『お前は俺様の言う通りにしてればいいんだッ』
「なんでさー?何時もそう言うけど、結局何も結果を残せないじゃないかー」
『うッ―――そ、それは他の連中が使えねぇからだッ』
そう、巨人との戦闘や他の連中が噂として頭の中に入っていた情報からラルファはアザエルを使い何かを行おうとするのだが、それには時間が掛かる。
なので、それを行う為に誰かが自身の身を呈してラルファを護り時間稼ぎを行う必要がある様なのだ。
そんなものを赤の他人が好んでやるとは到底思えないし、アギリーやリルカだけでは戦力的に足りないのだろう。
あぁ、フィフリーも居たかと思ったが、同時に彼奴はいいかとも思った。
「だからさー、その点ハル達は強いし戦力的には申し分無いよー。それはアザエルだって分かってるだろー?」
『・・・・・・い、嫌だねッ!俺様は此奴とは組まない!』
アザエルが何故ここまで俺を嫌って―――敵視しているのか分からない。
そこには何かしらの理由はあるのだろうが、正直俺はどうでも良いと思っていた。
もう面倒臭ぇよ・・・
この喋る剣が一体何なのか気になるし、恐らく神や悪魔に関しても何らかの情報は持っている。
だからその情報は出来るなら入手したいとも思うが、ここまでの絡みからそれらを加味してもコイツらと関係を保ち続ける必要性を見い出せなかった。
そんな事を思っていると、アザエルと話していたラルファが腰に付けていた鞘をガチャガチャと外し始める。
『お、おい、何やってんだ?』
「えー?何って、アザエルちょっと邪魔だからさー」
『へ?』
間抜けな声をアザエルが出す間にラルファはアザエルの収まった鞘を両手で持っており、「ちょっと黙っててー」とそれをポイッと横に投げ捨てた。
「え?」
『お前何やってえぇぇ―――――――――』
ガチャンッとアザエルが地面に落とされ、それと同時に喧しい声が止む。
「俺とアザエルがある程度離れると、声が聞こえなくなるんだよー」
アザエルの言葉は当然口や声帯が無いのでどう発しているのかは分からないのだが、頭に響いて来るのでは無く、耳の鼓膜を振動させて普通の声として感じるのだ。
最初は本当に混乱したが、そんなアザエルの声はラルファが遠くへ放り投げた事で今は聞こえない。
って言うか、神造遺物ってすんげぇ貴重な物じゃないのか・・・?
そんな貴重な物をまるで玩具を放り投げる様に雑にぶん投げたラルファに驚愕しつつ、俺も漸く真面に話が出来ると少しだけ安堵する。
どうにも、やろうと思っていた事が出来ない、当初の計画から外れこうすれば良いと思っていた事が宛が外れると言う事があると異様にイラついてくる。
それは、俺の能力でどうにかなると思っていた事が出来ないと言う事態がこのところ頻発している事を指すが、そう言った事の積み重ねでフラストレーションは溜まって行く一方だった。
その後、ラルファに話を聞き改めて共闘を結び巨人を倒す事になるのだが、結局の所ラルファも神だの悪魔だのについてはアザエルから何か確信的な事を聞いていた訳では無かったので特にこれと言った情報は無かった。
ただ、巨人を相手にラルファがやろうとしていた事は分かった。
「アザエル自身をラルファに降ろすって、それ大丈夫なのか?」
「んー、何回か練習でやってみたんだけど特に問題は無かったよー」
アザエルは神造遺物(アーティファクト)であるあの長剣に実体―――この場合は幻幽体だと思う―――が封印されていると言う。
何故かは分からないらしいが兎に角封印されていて、アザエルが所有者と認めたラルファへなら、ラルファを依代として実体化出来ると言うのだ。
先ず意味が分からないのは、封印されていると言っていたがラルファを依代に実体を持つ事が出来る時点でもう封印の意味は無くなっているんじゃないだろうかと思ったりするのだが―――
「アザエルが封印されてるって言ってたんだよー」
つまりラルファは詳しい事情や、アザエルが言っている事が本当なのか分からないと言う事だった。
ただ、神造遺物の長剣を媒介としてその神降ろしならぬ堕天使降ろしは可能となるらしい。
色々と制限があり、降ろすのに時間が掛かるのもそうだが、憑依と言っても良いその現象は永くは続かないとの事だった。
しかし其れが成されている間、憑依とは言うもののラルファの意識事態はあり、ラルファの意思で身体を動かせる様でつまりはアザエルの能力を使える状態になると言うのが正しいのかも知れない。
ただ、そう言われてもそれがどれ程凄い事なのかイマイチ分からなかった。
アザエルの能力自体もよく分からないのだが、ラルファ曰く―――
「あの状態になるとすっごい力が湧いて来るんだよー。だからあんな巨人なんか簡単に倒せると思うよー」
だそうだ・・・
不安だ・・・
俺は一抹どころか、大いに不安を感じながら次の作戦に向けてラルファ立ちと話を詰めて行った。
本当に大丈夫かな・・・
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