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第6章:迷宮勇者と巨人王編
第260話:打ち砕く力
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「マ、マジかよ・・・」
今目の前で起きている事を目で見て認識しているが、どうにもそれが何なのかが理解出来なかった。
「・・・・・・」
俺の隣に居るアリシエーゼもその光景に目を奪われている様で無言で見つめている。
俺達はラルファ達と共に再度十三層のボスである巨人に戦いを挑んだ。
作戦的には前回と変わらず俺とアリシエーゼが時間を稼ぎ、その間にラルファが神造遺物に封じられた堕天使―――だと俺は思っている―――アザエルをラルファに降ろさせると言うものだ。
それが出来れば巨人の纏う鎧も打ち砕けると自信満々だったので失敗しても撤退出来る様に注意を払いながら戦いに望んだのだが―――
「み、見えねぇぞ・・・」
「・・・・・・」
俺とアリシエーゼは無事にラルファのアザエル降ろしの時間を稼ぎきった。
アザエルも約束通り今回はごねる事無く協力を行い、ラルファはその禁忌とも言える技を体現させた。
特に何か合図があったりだとかそう言った事は無かったのだが、巨人と相対する俺の背後で得体の知れない、これまで感じた事の無い感覚が俺の全身を包み込まれた様に感じ、瞬時にその場を離脱した。
アリシエーゼも同じだった様で同じ位置に引くと俺達の横を音も風も置き去りにする何かが通り抜けた気がしたのだが、それに気付いた時には巨人が吠えていた。
その通り抜けた何かは一直線に巨人へと向かい十メートル以上ある巨人の頭頂付近へと飛び込んでいた。
巨人は反射的に左腕を上げてガードしていたが、その何かは今迄俺達では傷一つ付ける事の出来なかった巨人の纏う全身甲冑の手甲部分を簡単に打ち砕いた。
凄まじい音と巨人の咆哮で漸くそれらを認識するが、同時にその駆け抜けた何かがラルファだと気付き瞠目した。
ラルファはその後、流れるように、そして縦横無尽に駆け回り巨人を翻弄し、確実に鎧を打ち砕いて巨人にダメージを与え行く。
巨人もあの、鎧が光るエフェクトを発動させて反撃を行うが、ラルファの動きとは数瞬ズレておりラルファを捉える事が出来ないので様だった。
だが、簡単に頑丈な鎧を打ち砕く割には巨人自体への致命傷を与えられずに居たのだが、それは巨人が致命的な場面になると反撃よりも防御を優先して凌いでいた事に起因する。
しかし、完全にラルファが主導権を握り巨人を追い詰めているのは確かで、俺とアリシエーゼはそれをただ離れた位置から見ている事しか出来なかった。
「ラルファのあの技なのか何なのか、どう呼ぶのかは分からないけど、アレって俺はてっきり魔法とか必殺技みたいな分かり易いものを想像してたんだけどさ―――」
「・・・・・・」
アリシエーゼに投げかけるその言葉は独白に近い。
そんな俺の言葉をアリシエーゼは黙って聞いている。
「―――全然違うな。どちらかと言うとアリシエーゼの暴走覚醒モードに似てる、か・・・?」
「・・・・・・・・・確かにもしかしたら行き着く先や源流は同じ様な場所なのかも知れんのう。じゃが、人の身でここまでの事を成せるものかの」
もう目の前で繰り広げられている光景は、とても人間が行っているとは思えなかった。
ラルファの一挙手一投足は目で追えないし、それはその速度に伴って身体に掛かる負荷も相当―――いや、人間に耐えられるものなのか?と思うが、身体強化や魔力障壁等があるのでその辺りは何とかなるのかも知れないが、兎に角アリシエーゼが言う様に人間にここまでの動きは可能なのかと疑いたくなる。
苛烈な攻撃を連続で繰り出したかと思うといつの間にか巨人と距離を空けており、次には真後ろに回り込んで一撃を繰り出したりとやりたい放題だった。
徐々に巨人の纏う鎧は傷が増してゆき、今迄見る事が叶わなかった地肌を露出していた。
その露出した肌も切り裂かれ、真っ赤な血が垂れ、吹き出し、満身創痍の様相を呈している。
「――ガァァアアアアアッッ」
完全に圧されていた巨人が突然凄まじい咆哮を上げ、両手をブンブンと振り回す。
なりふり構わないその動きにラルファは一旦距離を取る。
肩で息をし、かなり消耗している巨人を見てこのまま畳み掛けろとラルファにそう言おうとしてギョッとした。
彼奴・・・
もしかしてもう限界なのか・・・?
ラルファを見ると、此方も巨人同様に肩で大きく息をしており、表情はかなり苦しげだった。
こんな中途半端な状態で打ち止めッ!?
焦りつつ巨人を再び見ると、また鎧が輝き出している。
だが、ラルファによって所々破壊されている鎧はその能力を十全に発揮出来ないのか、光は明滅を繰り返している。
それでも巨人は反撃に出ようと試みているのが分かるが、ラルファは動くのもキツそうだった。
そんな俺の視線を感じたのか、ラルファが一度此方を見る。
その眼は何を語りたかったのだろうか。
分からないが、何かを決意している様に見えた。
「――ッ」
巨人が動き出す前に先手を取ろうと駆け出すラルファだが、最初の勢いはもう無い。
それでも疾風の如く巨人に迫る中、ラルファはもう一度俺を見た。
―――――そして、頷いた。
「ッ!?」
その顔を見て俺は反射的に身体が動いていた。
「アリシエーゼッ!ラルファに続け!!」
「ッ!!」
俺の叫びがアリシエーゼを動かす。
ラルファの表情から何かを察したが、それが正解かは分からない。
分からないが、恐らく最後の力を振り絞り巨人に向かっている。
死んだら後は頼むとか、そんな後ろめたい気持ちや行動では無く、鎧は何とかするからその後は頼むと、美味しい所はくれてやると言ってる様に感じたのだ。
やってやるよ!!
今目の前で起きている事を目で見て認識しているが、どうにもそれが何なのかが理解出来なかった。
「・・・・・・」
俺の隣に居るアリシエーゼもその光景に目を奪われている様で無言で見つめている。
俺達はラルファ達と共に再度十三層のボスである巨人に戦いを挑んだ。
作戦的には前回と変わらず俺とアリシエーゼが時間を稼ぎ、その間にラルファが神造遺物に封じられた堕天使―――だと俺は思っている―――アザエルをラルファに降ろさせると言うものだ。
それが出来れば巨人の纏う鎧も打ち砕けると自信満々だったので失敗しても撤退出来る様に注意を払いながら戦いに望んだのだが―――
「み、見えねぇぞ・・・」
「・・・・・・」
俺とアリシエーゼは無事にラルファのアザエル降ろしの時間を稼ぎきった。
アザエルも約束通り今回はごねる事無く協力を行い、ラルファはその禁忌とも言える技を体現させた。
特に何か合図があったりだとかそう言った事は無かったのだが、巨人と相対する俺の背後で得体の知れない、これまで感じた事の無い感覚が俺の全身を包み込まれた様に感じ、瞬時にその場を離脱した。
アリシエーゼも同じだった様で同じ位置に引くと俺達の横を音も風も置き去りにする何かが通り抜けた気がしたのだが、それに気付いた時には巨人が吠えていた。
その通り抜けた何かは一直線に巨人へと向かい十メートル以上ある巨人の頭頂付近へと飛び込んでいた。
巨人は反射的に左腕を上げてガードしていたが、その何かは今迄俺達では傷一つ付ける事の出来なかった巨人の纏う全身甲冑の手甲部分を簡単に打ち砕いた。
凄まじい音と巨人の咆哮で漸くそれらを認識するが、同時にその駆け抜けた何かがラルファだと気付き瞠目した。
ラルファはその後、流れるように、そして縦横無尽に駆け回り巨人を翻弄し、確実に鎧を打ち砕いて巨人にダメージを与え行く。
巨人もあの、鎧が光るエフェクトを発動させて反撃を行うが、ラルファの動きとは数瞬ズレておりラルファを捉える事が出来ないので様だった。
だが、簡単に頑丈な鎧を打ち砕く割には巨人自体への致命傷を与えられずに居たのだが、それは巨人が致命的な場面になると反撃よりも防御を優先して凌いでいた事に起因する。
しかし、完全にラルファが主導権を握り巨人を追い詰めているのは確かで、俺とアリシエーゼはそれをただ離れた位置から見ている事しか出来なかった。
「ラルファのあの技なのか何なのか、どう呼ぶのかは分からないけど、アレって俺はてっきり魔法とか必殺技みたいな分かり易いものを想像してたんだけどさ―――」
「・・・・・・」
アリシエーゼに投げかけるその言葉は独白に近い。
そんな俺の言葉をアリシエーゼは黙って聞いている。
「―――全然違うな。どちらかと言うとアリシエーゼの暴走覚醒モードに似てる、か・・・?」
「・・・・・・・・・確かにもしかしたら行き着く先や源流は同じ様な場所なのかも知れんのう。じゃが、人の身でここまでの事を成せるものかの」
もう目の前で繰り広げられている光景は、とても人間が行っているとは思えなかった。
ラルファの一挙手一投足は目で追えないし、それはその速度に伴って身体に掛かる負荷も相当―――いや、人間に耐えられるものなのか?と思うが、身体強化や魔力障壁等があるのでその辺りは何とかなるのかも知れないが、兎に角アリシエーゼが言う様に人間にここまでの動きは可能なのかと疑いたくなる。
苛烈な攻撃を連続で繰り出したかと思うといつの間にか巨人と距離を空けており、次には真後ろに回り込んで一撃を繰り出したりとやりたい放題だった。
徐々に巨人の纏う鎧は傷が増してゆき、今迄見る事が叶わなかった地肌を露出していた。
その露出した肌も切り裂かれ、真っ赤な血が垂れ、吹き出し、満身創痍の様相を呈している。
「――ガァァアアアアアッッ」
完全に圧されていた巨人が突然凄まじい咆哮を上げ、両手をブンブンと振り回す。
なりふり構わないその動きにラルファは一旦距離を取る。
肩で息をし、かなり消耗している巨人を見てこのまま畳み掛けろとラルファにそう言おうとしてギョッとした。
彼奴・・・
もしかしてもう限界なのか・・・?
ラルファを見ると、此方も巨人同様に肩で大きく息をしており、表情はかなり苦しげだった。
こんな中途半端な状態で打ち止めッ!?
焦りつつ巨人を再び見ると、また鎧が輝き出している。
だが、ラルファによって所々破壊されている鎧はその能力を十全に発揮出来ないのか、光は明滅を繰り返している。
それでも巨人は反撃に出ようと試みているのが分かるが、ラルファは動くのもキツそうだった。
そんな俺の視線を感じたのか、ラルファが一度此方を見る。
その眼は何を語りたかったのだろうか。
分からないが、何かを決意している様に見えた。
「――ッ」
巨人が動き出す前に先手を取ろうと駆け出すラルファだが、最初の勢いはもう無い。
それでも疾風の如く巨人に迫る中、ラルファはもう一度俺を見た。
―――――そして、頷いた。
「ッ!?」
その顔を見て俺は反射的に身体が動いていた。
「アリシエーゼッ!ラルファに続け!!」
「ッ!!」
俺の叫びがアリシエーゼを動かす。
ラルファの表情から何かを察したが、それが正解かは分からない。
分からないが、恐らく最後の力を振り絞り巨人に向かっている。
死んだら後は頼むとか、そんな後ろめたい気持ちや行動では無く、鎧は何とかするからその後は頼むと、美味しい所はくれてやると言ってる様に感じたのだ。
やってやるよ!!
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