異世界コーディネーター〜貴方の理想の世界探します〜

タカミキュウタ

文字の大きさ
14 / 31
開店前夜編

第13話 みんなで転移してみた

しおりを挟む

「おーい!シュウ!大丈夫だって!」

「あんナメた動画送ったら殺されるに決まってるだろ!」

ヒデが送った動画のせいで、オレは今から来る親友から身を守るため、トイレに隠れていた。

「大丈夫だって!あんなスキル使えるシュウなら殺される訳がないだろ!」

確かにそうだ。今のオレのステータスなら、マナブの攻撃なんて、大した事ない。

「…確かに。わかったよ!出ればいいんでしょ」

そう言うとオレはトイレから出て部屋に戻り静かに待っていた。

すると勢いよく玄関のドアを開ける音が聞こえた。
そして、ドスドスと言う音がこちらに近づいてくる。

バン!

乱暴に開けられた扉の向こうには、鼻息荒い親友のマナブが立っていた。

「よ、よう!久しぶり!」

彼はオレの言葉を無視して、オレの肩に重いパンチを放った。

「馬鹿野郎!どこに行ってたんだ!!」

マナブは涙を流し震えている。

「マナブ…悪かった…」

「シュウ……おい!どうやって転移した!?教えろ!早く!」

「本当に申し訳な…っていきなりそれぶっこむのー!?」

「当たり前だろ!シュウが異世界転移したなんて…俺悔しくて悔しくて…涙が出るわ!」

あ、思い出した…こいつヒデよりアレ・・だったんだ…

俺はヒデと同じ説明をして、デモンストレーションを行った。

---

「なるほど…酔っ払って、気づいたら転移してたと…」

マナブは神妙な面持ちで何かを考えている。

「ヒデ。酒くれ!俺も記憶なくなるまで飲む!」

そう言うと、マナブはテーブルのビールをハイペースで飲み始めた。

「わー!やめろ!お前は毎日記憶なくなるまで飲んでるだろ!」

「うるせー!俺だって異世界に行きたいんだよ!」

そう言いながら、三本目のビールに手をかけていた!

「早すぎだって!…ぎゃあ!お前こぼすな!シュウも何とか言ってくれよ!」

ぼーっと二人を見ながら、とある実験の事を考えていた。

「おい!シュウ!」

「わかった!わかったから二人とも落ち着け!」

落ち着く様子はない。

そこでオレは二人が黙るであろう、会心の一言を放った。

「落ち着け!異世界に行きたいんだろ?」

二人は時間が止まったかの様にピタっと争いを止めた。

「…異世界に行けるのか?」

マナブが真面目な顔で聞いてきた

「おそらくな…。まずはオレがどうやって帰ってきたか話すよ。オレはとある事を成し遂げて、その報酬でユニークスキルを手に入れたんだ」

「ユニークスキル?滅多に手に入らないスキルって事?」

「うん。そしてそのスキルの名前が…異世界転移」

『異世界転移!』

二人同時にハモってバツが悪いのか、お互い苦笑いを浮かべていた。

「このスキルは心に思い浮かべた世界へ転移出来るスキルだったんだ。まずは最初に使用する時に転移しても安全な場所を選んだ…」

「…日本か」

「ああ。日本に転移出来れば、最悪力を失っても、何とかやって行けるしね。無事に転移出来た後は色々実験をしてたんだ。未知の世界に行けるのかだったり、短距離転移が出来るのかとか…」

「短距離転移?」

「ああ。異なる世界を経由せずに、今いる世界の違う地点に転移出来るのか…簡単に言えば、瞬間移動だな」

「じゃあさっきのは」

「そう。あれは異世界転移スキルだったって訳。実験は成功したよ。あとはアイテムを所持したまま転移出来るのかとか…」

「なるほど…わかったぞ…」

マナブが笑みを浮かべた。これから行う事がわかったみたいだ。

「俺らを実験台にするって事だな?」

「実験台!?どういう事?」

ヒデは困惑した表情でマナブに問いただした。

「つまりはこうだ。まだ試していない事…それは人間…いや生物と一緒に転移が出来るかを試したいと…」

「流石マナブだな。大正解~!」

「つまり…その実験が成功したら俺とマナブも異世界に行けるって事?」

「そう…そうなんだが…」

オレは深刻な顔をして、話を続けた。

「失敗した場合は、良くて死。最悪は時空を永遠に彷徨うかもしれない…」

「…」

二人は黙り込んだ。

もちろん嘘。失敗したら単純にオレだけが転移する、もしくはスキルキャンセルされるだけだろう。確証はないけどね。

ヒデにクレジットカードを勝手に使われたお返しに、ビビらせる為のお茶目なジョークだ。

「覚悟は出来てるさ」

マナブは笑いながら答えた。ヒデはと言うと…

「マジかよ?…俺は怖くて無理だ…」

ビビってるビビってるw

「ヒデ君。オレへの借りを返そうよ…どっちがいい?実験に参加するか、君が勝手にカード使った事を通報して、刑務所転移するか…」

「…刑務所の方がいいに決まってるだろ!」

どちらにしても地獄の選択に、ヒデは顔面蒼白だ。

妖怪ぬりかべの様な顔をしている。

これ以上やるのは可愛そうなので許してあげることにしよう。

あの顔が見れただけで満足だ。

「ハハハ!嘘だよ嘘!死んだり時空に取り残されたりはしないよw」

「ふぇ!?」

「転移出来ない場合は、何も起こらないだけだと思うよ。一回一度も行った事がない場所を想像してスキルを使った時は、キャンセルされたみたいに、何も起きなかったよ。」

「心臓が痛い…怖い冗談はやめてくれよ…」

「勝手にカード使ったお返しだよ!これで済んで良かったな!」

オレとヒデのやり取りを笑いながら見ていたマナブ

「懐かしいな…こうやって集まるのは3年ぶりか…よく話してたよな。ゲームの世界へ行けるなら、何になりたい?って。ヒデが勇者で俺はナイト。シュウは…」

「オレは…魔王だったな」

「そうそう!懐かしいね!何でシュウは魔王になりたかったの?」

「お前達に気を使ってたんだよ!ヒデは100%主人公キャラを選ぶだろ?マナブは必然的にライバルキャラだし。そうなったらオレは3番手のキャラか、対を成すキャラ以外選べないだろ」

「なるほど…気が付かなかったわ」

「俺とシュウとヒデ。3人で本当に異世界に行けるんだな。妄想が現実へとなるんだな…」

「ああ…でも魔王は嫌だぞ……さてと…じゃあ行きますか!」

『おう!』

3人集まると何歳になっても、子供に戻ってしまう…。でも子供の頃からの共通の夢が叶うと思うと胸に込み上げるものがある。

その夢を叶える為にオレは異世界転移スキルを使用した。

「ありゃ?……駄目だ失敗だ」

『ええぇ!』

「3人で転移してるシーンを想像したけど駄目だった…」

「そんな…」

マナブは膝から崩れ落ちた

「ただ想像するだけじゃ駄目っぽいな……そうだ!二人とも手を繋ごう」

「キモ…」

「俺だって好きこのんで38のおっさんの手を繋ぎたくないわ!俺と触れる事で関連性が出来て、転移出来るかもと思ったの!ほら所持品だってオレが身に着けているって関連性があるだろ?」

「確かにな…やってみるか」

3人で手を繋いだ姿は確かにキモかった…

「あ、そうそう。転移する時一瞬で景色が変わるから、目を瞑った方がいいかも」

そう言うと二人は素直に目を瞑った。

「目を瞑ると更にキモいな…」

『いいから早くやれ!』

「はいはい…」

再び異世界転移スキルを使用した。

「うお!浮いた?」

「うわ!」

身体が一瞬浮く感覚があった。今度は上手く行きそうだ…


◇◇◇◇◇◇◇◇


「もう目を開けてもいいぞ」

二人はゆっくりと目を開けた。目の前に広がるは、こげ茶の木目調で揃えられた家具がある部屋だ。

オレ達はフィリーミの宿屋へ無事に転移した。

「ほんとに…」

「ああ…転移したぞ!やった!」

予め転移の説明をしていたおかげか、狼狽えている様子はない。

ヒデに至っては…

「見ろよマナブ!映画に出てくる様なバカでかいベット!」

もちろんダイブして大はしゃぎだ。

「いい年したおっさんがはしゃぐなw」

「落ち着いていられるかよ~。シュウは慣れてるかもしれないけど、俺達は初めての異世界なんだから!」

確かにオレも同じ状況だったら大はしゃぎしてるな。多分…他の誰よりも。

「二人ともそこのバルコニーから外を見てみなよ。びっくりするぞ」

目を合わせた二人はバルコニーへ走った。

「なんだこれ……」

「すごい…」

宿から見える大きな山の中腹にそびえ立つ、巨大な城。

統一されたデザインの家々が立ち並び、その家々は山の麓から城までへビがうねっているように続いていた。

そしてバルコニー見える彼方には、水晶で出来た山脈が立ち並んでいた。

二人ともこれ以上の言葉は出なかった。ただただ圧巻されていた。


「ヒデ!マナブ!オレの第二の故郷、フィリーミ王国へようこそ!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

俺、何しに異世界に来たんだっけ?

右足の指
ファンタジー
「目的?チートスキル?…なんだっけ。」 主人公は、転生の儀に見事に失敗し、爆散した。 気づいた時には見知らぬ部屋、見知らぬ空間。その中で佇む、美しい自称女神の女の子…。 「あなたに、お願いがあります。どうか…」 そして体は宙に浮き、見知らぬ方陣へと消え去っていく…かに思えたその瞬間、空間内をとてつもない警報音が鳴り響く。周りにいた羽の生えた天使さんが騒ぎたて、なんだかポカーンとしている自称女神、その中で突然と身体がグチャグチャになりながらゆっくり方陣に吸い込まれていく主人公…そして女神は確信し、呟いた。 「やべ…失敗した。」 女神から託された壮大な目的、授けられたチートスキルの数々…その全てを忘れた主人公の壮大な冒険(?)が今始まる…!

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~

北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。 実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。 そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。 グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・ しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。 これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。

異世界転生特典『絶対安全領域(マイホーム)』~家の中にいれば神すら無効化、一歩も出ずに世界最強になりました~

夏見ナイ
ファンタジー
ブラック企業で過労死した俺が転生時に願ったのは、たった一つ。「誰にも邪魔されず、絶対に安全な家で引きこもりたい!」 その切実な願いを聞き入れた神は、ユニークスキル『絶対安全領域(マイホーム)』を授けてくれた。この家の中にいれば、神の干渉すら無効化する究極の無敵空間だ! 「これで理想の怠惰な生活が送れる!」と喜んだのも束の間、追われる王女様が俺の庭に逃げ込んできて……? 面倒だが仕方なく、庭いじりのついでに追手を撃退したら、なぜかここが「聖域」だと勘違いされ、獣人の娘やエルフの学者まで押しかけてきた! 俺は家から出ずに快適なスローライフを送りたいだけなのに! 知らぬ間に世界を救う、無自覚最強の引きこもりファンタジー、開幕!

処理中です...