19 / 30
ヘビを使った殺人は可能か?
容疑者
しおりを挟む取り調べが一通り終わると、酒井は背伸びをして体の疲れを取る。あれ?そういえば・・・
「そういえば、一緒にいた若い刑事さんは?」
「若い刑事?あぁ、駒木のことか。あいつなら取り調べしてるよ」
「そーですか」
すると、酒井は手を差し出す。
「ん?何だ?この意味深な手は」
「なにって?決まってるじゃないですか~、容疑者リスト的なやつですよ。約束じゃないですか警部さん」
「そんなん渡せるわけないだろ」
さも当然、といったように、言い放った岡橋警部に酒井は非難の声をあげた。
「なッ!約束でしょう?守って下さいよ、教えてくれるんでしょう!守ってくんなきゃ男じゃねぇよ!」
「一般人に渡せるわけないだろ!それに、守らないわけじゃないぞ」
「へ?」
「待機室に、容疑者たちを一時的に集めている。もともとお前にはそこで待機させるつもりだったからな。そこで好き勝手に情報収集してくれてかまわん」
あぁ、ならいいか。実際に話を聞けるし・・・あれ?
「それって、さっき警部さんに頼まなくても出来たってことじゃ・・・」
「ふははははッ!では、存分に情報収集したまえ!」
高らかに笑うと、去っていく岡橋警部。してやったり、そんな顔をしている。
「チクショー!早く言えよな、その事をーッ!」
待機室の中に入ると、どうやら3人いるようだった。
一人は、かなり痩せている男で・・・あれ、見たことある。もう一人はあの女性従業員か。後は、高原さんだった。
「やぁ、今晩は」
「あれ、酒井さんじゃないですか!あなたも容疑者だったんですか」
「そうっぽいですね」
この会話を聞いていた女性従業員は意外そうにそうに酒井と高原を見た。
「あれ、お二人はお知り合いだったんですか?」
「はいそうです。実は、彼は僕の依頼人なんです」
彼、と言いながら酒井は高原のことを指した。
それを聞いて、女性従業員は不思議そうな顔をした。
「依頼人?というのは・・・」
「僕は探偵をしていてね、彼の依頼を引き受けたんです」
「ええ~!そうなんですか!私、本物の探偵見たの初めてです!」
聞き込みの時に出会ったあのおばちゃんのような反応があって、酒井の機嫌が良くなる。
「で?で?この事件を解決しに来たんですか?」
「まぁ、そんなところですね。色々と、情報収集したいので皆さんで、自己紹介といきませんか?」
そう言ってガリガリに痩せている男にも声をかけた。頷いたため、了承したのだろう。
「では、まず僕から。僕は酒井浩一といいます。探偵をしています。以後よろしく」
「次に、僕が。僕は高原厚志といいます。まだ手に職をつけていないフリーターです」
「じゃあ次、私!私は梅川小春です!ここでアルバイトをしています!」
「最後は俺か、俺は原井健吾だ。とある会社のサラリーマンといったところか」
原井が話終わり、一通り自己紹介が終わったと思われたのだが・・・
「いや、まだ最後じゃない」
「え?」
酒井の否定した言葉に梅川は首をかしげる。
「だって、もう皆さん終わったじゃないですか?」
「警部さんは、容疑者は5人いると言っていた。この場には僕を含め4人しかいない、あと一人くるはずだ」
その時、待機室のドアが開いて、かなり太った男が入ってきた。
訳を話し、彼とも自己紹介をし合う事となった。
「俺は友田丸尾だ!コンピュータ関連の仕事をしてるぞ」
「・・・さて、これで5人揃いましたね。ではこれから質問・・・といっても先ほどの取り調べで答えたことを教えていただけたら良いです」
聞いてみた結果、容疑者であった理由は権藤の死亡推定時刻にあの綾根湖畔ホテルにいて、かつアリバイがなかったからであった。
その時間に、原井はトイレにいた。丸尾は自分の泊まっている部屋で一人で見ていた。高原も同じようなもので、部屋で一人くつろいでいた。そして、梅川は一人で掃除していたらしい。
そして、梅川は何やら変な目で権藤から見られていて、権藤に怒りを覚え、原井は前に酒を一人で飲んでいるときに権藤に絡まれて、権藤を嫌っていた。
高原は、大事なペットを権藤が無理矢理横取りしようとしてくるから、丸尾は自分を笑い者にした権藤が許せないと言っていた。しかし、皆容疑を否認していた。
ちなみに、酒井は権藤からも依頼を受けていたことを話すと皆驚いた顔をしていた。
「役立てたでしょうか?探偵さん」
「ええ梅川さん、参考になりました。皆さんありがとう」
そして、静かになり、沈黙が続いて約1時間くらいした後、自分の泊まっている部屋で就寝することになった。
「推理、できましたか?」
ふと、高原が酒井に聞いてきた。
「うーん、まだ難しいですね。ただ、明日何か進展があるかもしれない。なにしろ、僕の弟子が帰ってくるんでね。彼は意外なところで有能ですよ」
0
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
わたしのことがお嫌いなら、離縁してください~冷遇された妻は、過小評価されている~
絹乃
恋愛
伯爵夫人のフロレンシアは、夫からもメイドからも使用人以下の扱いを受けていた。どんなに離婚してほしいと夫に訴えても、認めてもらえない。夫は自分の愛人を屋敷に迎え、生まれてくる子供の世話すらもフロレンシアに押しつけようと画策する。地味で目立たないフロレンシアに、どんな価値があるか夫もメイドも知らずに。彼女を正しく理解しているのは騎士団の副団長エミリオと、王女のモニカだけだった。※番外編が別にあります。
冷徹公爵の誤解された花嫁
柴田はつみ
恋愛
片思いしていた冷徹公爵から求婚された令嬢。幸せの絶頂にあった彼女を打ち砕いたのは、舞踏会で耳にした「地味女…」という言葉だった。望まれぬ花嫁としての結婚に、彼女は一年だけ妻を務めた後、離縁する決意を固める。
冷たくも美しい公爵。誤解とすれ違いを繰り返す日々の中、令嬢は揺れる心を抑え込もうとするが――。
一年後、彼女が選ぶのは別れか、それとも永遠の契約か。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる