せっかく異世界から帰ってきたのに、これじゃあ意味がない

乙藤 詩

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二十五話

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1週間後、冬馬は無事に病院を退院する事ができた。退院の時には晴翔とラティーヌが来てくれた。
「いやー、私たちの目の癒しだった冬馬くんが居なくなっちゃうなんて、本当に寂しいわぁ。」
「お見舞いに来てくれる人たちも皆カッコよくて、それが見られなくなるなんて。」
「でも、良くなってよかったわね。元気になってもたまに会いに来てほしいわ。」
見送りの看護師達が口々に言うセリフに冬馬が笑って返す。
「俺こそいつでも待ってますよ。晴翔だって、ラティーヌだって、ここに来たらいつでも会えますから。」
そう言ってラ・ポーズの名刺を皆に配る。
「僕たちもいつでも待ってますから。仕事に疲れたりした時はぜひ来て下さい。」
晴翔が人好きのする顔で笑う。それに続いてラティーヌも笑顔を見せると、途端に看護師達は目をときめかせた。
「まぁ、ちゃっかりしてるわね。」
「私、絶対行っちゃう。」
「冬馬くん退院おめでとう!元気でね。」
冬馬は看護師たちに惜しまれながら、病院を後にした。
帰り道、病院から然程遠くない場所でふと足を止めた。
「ラティーヌも晴翔も、今日は迎えに来てくれてありがとう。あと、入院中もいろいろ世話になって、本当に感謝してる。」
冬馬は二人を前に素直にお礼を伝える。二人とも、にっこり笑ってそれに応える。
「今日はお祝いですね。うちでお祝いしましょう!」
ラティーヌが嬉しそうに言う。
「おい、お前の家じゃなくて、俺の家な。」
冬馬が突っ込むとラティーヌは楽しそうに笑った。
「晴翔も来るだろ?」
晴翔を誘うと、申し訳なさそうに頭を下げた。
「ごめん!すごく行きたいんだけど、最近お店に新しい子が入ってね。僕がその子の教育係になったんだ。その子、今日が初めてお客さんにつく日だから、どうしても休めなくて。」
「いいよ、いいよ。晴翔も大変だな。新しい子ってどんな子?ラティーヌも知ってんのか?」
「私は冬馬が入院してから、あまり仕事に行ってないのでわかりませんが・・・」
ラティーヌがそう言うと、晴翔が目を輝かせて話す。
「とってもいい子だよ。男の子なんだけど、目なんかすっごく大きくて、本当に女の子みたいに可愛いの。素直だし、飲み込みも早いし。あっ!冬馬とラティーヌの話したら、早く会いたいって言ってたよ。」
晴翔の嬉しそうな顔に冬馬もラティーヌも顔を綻ばす。冬馬が怪我をしてから、塞ぎ込むことも多かった晴翔だが、その後輩のお陰ですっかり元気を取り戻したようだった。
「あぁ、また紹介してくれ。しかし、晴翔が先輩かぁ。ちゃんと上手く教えられてんのかよ。」
「晴翔はお人好しですからね。逆に後輩くんの尻に敷かれていそうですね。」
2人で晴翔を揶揄うと、途端に晴翔が拗ねる。
「うるさいな。2人して。僕だって1人や2人教えることができるよ。むしろ2人より僕の方が教え方は上手いと思うよ。冬馬が帰ってきた時びっくりさせてやるんだから!」
「そうか。じゃあ早く復帰しないとな。」
冬馬の言葉に今まで拗ねていた晴翔も素直にコクンと頷いた。
「うん、早く復帰してね。2人が居ないと、やっぱり仕事の楽しさも半減だからね。」
晴翔の言葉に今度は2人とも優しく微笑んだ。
それから途中で晴翔と別れ、2人はすぐに帰路についた。
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