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番外編
カミングアウト
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少し暗めの照明に、色とりどりのカラフルな光が交差する落ち着いた雰囲気の幻想的な空間は今宵も女性達を癒す為奮闘する、ホスト達の戦場でもあった。
このラ•ポーズでの冬馬の人気はまだまだ衰える様子を見せず、今日も順調に指名客を増やし、あちらこちらのテーブルに引っ張りだこだった。
また、もうすぐ働き出して4ヶ月が経つラティーヌも女性の扱いに慣れてきており、以前の様な突拍子もない行動に出る事はなくなり、指名客も何名か付き始めていた。
しかし、何故かラティーヌは圧倒的に冬馬とセットで呼ばれる事が多い。なぜなら、ラティーヌが冬馬を好きなのをお店でも隠そうとしない為、その様子を楽しみにやってくる女性客が後をたたないからだ。
この日も冬馬とラティーヌは2人揃って指名された。指名客はなっちゃんで、2人の関係をずっと応援している1人でもあった。前、初めて来店したなっちゃんの友達もあの日から常連になり、一緒によく2人を指名していた。
「また3人で来てくれたんだね。嬉しいよ。」
「えぇ、いつも指名して頂いて私たちの話もいっぱい聞いてくれるので本当に3人と話すのは楽しいんですよね。」
そう言って柔らかく笑う2人に3人の客は顔を赤らめる。
「ラティーヌさん、すっかりここのお店に慣れましたね。最初会った時なんか本当に•••ふふっ、あっごめんなさい。」
客の前で跪き、挨拶をするラティーヌの姿を思い出してなっちゃんが笑い声を漏らす。ラティーヌは慣れた仕草で席につきながら、
「その話はもう勘弁してください。私も思い出すだけで恥ずかしいですから。」
と苦笑しながら言った。
「あれでも、俺たちの姿見て、勉強したから大丈夫だって大口叩いてたんだからな。」
すかさず冬馬もなっちゃんの言葉に加勢する。
すると他の2人の客も笑い出し、たちまち場が和やかな雰囲気となった。
それからは他愛のない話で盛り上がる。なっちゃん達の仕事の話や愚痴から始まり、段々と自然に恋愛の話へと移行していた。
「で、最近の2人の関係はどうなの?」
なっちゃんが興味津々に話題を振ってくる。
「まだラティーヌさんの片思いなの?」
ラティーヌの気持ちを知っている他の2人も嬉しそうに尋ねてくる。
「いや、俺らの話よりなっちゃん達の話をー」
と冬馬が言いかけると、
「実は最近大きな進展があったんですよ。」
とラティーヌが言う。
「黙れ!」
ラティーヌが何かを言い出す前に冬馬が乱暴な言葉で慌てて止める。
「えっ?何?めっちゃ気になる。」
「気にしなくていいから。そんな大した話でもないし。」
なっちゃんの食い付き方に焦りを覚えた冬馬が必死に誤魔化そうとするが、
「もう、冬馬は少し黙ってて!」
となっちゃんに怒られてしまう。
「それで、どんな進展があったの?」
冬馬を除いた4人が身を寄せ合い、内緒話をするかの様に小声で話し始めた。
「なんと•••あの冬馬が•••僕の気持ちを受け入れてくれたんです!」
溜めるだけ溜めてラティーヌが嬉しそうに報告する。なっちゃんに怒られ、何も言えない冬馬は只々額を押さえて項垂れる。
「うそーっ!おめでとう!よかったね、ラティーヌさん!」
「すごーい!めっちゃ嬉しい。」
「今日来てよかったー。」
まるで自分の事のように喜ぶ3人に益々冬馬は口を挟めなくなり、ラティーヌを無言でキッと睨む。
「ほら、今も熱い眼差しで見つめてくれているでしょう。こういう顔も、態度も何もかも俺は堪らなく好きなんですよね。」
そう言うとラティーヌは冬馬に近づき冬馬の腕を取ると、キスをするのかというくらい顔を近づける。
「お前っ、何してんだ。顔が近いって。」
急に自分に近寄ってきたラティーヌに冬馬が顔を赤らめる。
その様子を目をキラキラさせながら3人が見守る。
「尊い•••」
3人の呟きが聞こえていないかの様に、無理やり体を引き剥がした冬馬がラティーヌの頭を小突く。
「お前は調子に乗りすぎだ。お客様に俺たちの関係をペラペラ喋るんじゃねぇよ。」
冬馬のお説教が始まり、ラティーヌの体がみるみる縮こまる。
「でも、私たちは正直に話してくれて嬉しいよ。2人をずっと応援してたもん。」
そんなラティーヌを、庇う様になっちゃんが口を開いた。
「内緒にされるよりずっといいよ。それに、2人が付き合ってる設定の方がお客さんも増えそうだよね。」
「そうそう、2人の事を見ながら色んな妄想が出来そうだし。」
「ラティーヌさんも冬馬も男前だし、最高のカップルだよね。」
ラティーヌの冬馬の関係について熱く語り始めた3人に冬馬は呆然となる。
いくらそういった偏見がなくなってきたからと言って、冬馬はここまで自分たちが祝福されるとは思ってもみなかった。仮にも自分を推して指名してくれる客が、自分と違う人と付き合っているにも関わらず、それを嬉しそうに語る姿は何だか冬馬を複雑な気持ちにさせた。
そして、このカミングアウトをきっかけに冬馬とラティーヌを指名する客達は2人の関係をどんどん知っていくことになり、冬馬はそれに毎回頭を悩ませるのだった。
このラ•ポーズでの冬馬の人気はまだまだ衰える様子を見せず、今日も順調に指名客を増やし、あちらこちらのテーブルに引っ張りだこだった。
また、もうすぐ働き出して4ヶ月が経つラティーヌも女性の扱いに慣れてきており、以前の様な突拍子もない行動に出る事はなくなり、指名客も何名か付き始めていた。
しかし、何故かラティーヌは圧倒的に冬馬とセットで呼ばれる事が多い。なぜなら、ラティーヌが冬馬を好きなのをお店でも隠そうとしない為、その様子を楽しみにやってくる女性客が後をたたないからだ。
この日も冬馬とラティーヌは2人揃って指名された。指名客はなっちゃんで、2人の関係をずっと応援している1人でもあった。前、初めて来店したなっちゃんの友達もあの日から常連になり、一緒によく2人を指名していた。
「また3人で来てくれたんだね。嬉しいよ。」
「えぇ、いつも指名して頂いて私たちの話もいっぱい聞いてくれるので本当に3人と話すのは楽しいんですよね。」
そう言って柔らかく笑う2人に3人の客は顔を赤らめる。
「ラティーヌさん、すっかりここのお店に慣れましたね。最初会った時なんか本当に•••ふふっ、あっごめんなさい。」
客の前で跪き、挨拶をするラティーヌの姿を思い出してなっちゃんが笑い声を漏らす。ラティーヌは慣れた仕草で席につきながら、
「その話はもう勘弁してください。私も思い出すだけで恥ずかしいですから。」
と苦笑しながら言った。
「あれでも、俺たちの姿見て、勉強したから大丈夫だって大口叩いてたんだからな。」
すかさず冬馬もなっちゃんの言葉に加勢する。
すると他の2人の客も笑い出し、たちまち場が和やかな雰囲気となった。
それからは他愛のない話で盛り上がる。なっちゃん達の仕事の話や愚痴から始まり、段々と自然に恋愛の話へと移行していた。
「で、最近の2人の関係はどうなの?」
なっちゃんが興味津々に話題を振ってくる。
「まだラティーヌさんの片思いなの?」
ラティーヌの気持ちを知っている他の2人も嬉しそうに尋ねてくる。
「いや、俺らの話よりなっちゃん達の話をー」
と冬馬が言いかけると、
「実は最近大きな進展があったんですよ。」
とラティーヌが言う。
「黙れ!」
ラティーヌが何かを言い出す前に冬馬が乱暴な言葉で慌てて止める。
「えっ?何?めっちゃ気になる。」
「気にしなくていいから。そんな大した話でもないし。」
なっちゃんの食い付き方に焦りを覚えた冬馬が必死に誤魔化そうとするが、
「もう、冬馬は少し黙ってて!」
となっちゃんに怒られてしまう。
「それで、どんな進展があったの?」
冬馬を除いた4人が身を寄せ合い、内緒話をするかの様に小声で話し始めた。
「なんと•••あの冬馬が•••僕の気持ちを受け入れてくれたんです!」
溜めるだけ溜めてラティーヌが嬉しそうに報告する。なっちゃんに怒られ、何も言えない冬馬は只々額を押さえて項垂れる。
「うそーっ!おめでとう!よかったね、ラティーヌさん!」
「すごーい!めっちゃ嬉しい。」
「今日来てよかったー。」
まるで自分の事のように喜ぶ3人に益々冬馬は口を挟めなくなり、ラティーヌを無言でキッと睨む。
「ほら、今も熱い眼差しで見つめてくれているでしょう。こういう顔も、態度も何もかも俺は堪らなく好きなんですよね。」
そう言うとラティーヌは冬馬に近づき冬馬の腕を取ると、キスをするのかというくらい顔を近づける。
「お前っ、何してんだ。顔が近いって。」
急に自分に近寄ってきたラティーヌに冬馬が顔を赤らめる。
その様子を目をキラキラさせながら3人が見守る。
「尊い•••」
3人の呟きが聞こえていないかの様に、無理やり体を引き剥がした冬馬がラティーヌの頭を小突く。
「お前は調子に乗りすぎだ。お客様に俺たちの関係をペラペラ喋るんじゃねぇよ。」
冬馬のお説教が始まり、ラティーヌの体がみるみる縮こまる。
「でも、私たちは正直に話してくれて嬉しいよ。2人をずっと応援してたもん。」
そんなラティーヌを、庇う様になっちゃんが口を開いた。
「内緒にされるよりずっといいよ。それに、2人が付き合ってる設定の方がお客さんも増えそうだよね。」
「そうそう、2人の事を見ながら色んな妄想が出来そうだし。」
「ラティーヌさんも冬馬も男前だし、最高のカップルだよね。」
ラティーヌの冬馬の関係について熱く語り始めた3人に冬馬は呆然となる。
いくらそういった偏見がなくなってきたからと言って、冬馬はここまで自分たちが祝福されるとは思ってもみなかった。仮にも自分を推して指名してくれる客が、自分と違う人と付き合っているにも関わらず、それを嬉しそうに語る姿は何だか冬馬を複雑な気持ちにさせた。
そして、このカミングアウトをきっかけに冬馬とラティーヌを指名する客達は2人の関係をどんどん知っていくことになり、冬馬はそれに毎回頭を悩ませるのだった。
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