風紀委員長は××が苦手

乙藤 詩

文字の大きさ
10 / 252
嵐のような怒涛の1学期

不穏な夜と姫川の弱点

しおりを挟む
風紀委員室に着くと、早速先程仕上げだ書類の束を机の引き出しに仕舞う。いつもは風紀委員達で騒がしいこの部屋だが、1人だとやけに広くて寂しく感じる。陽が落ちているのも、余計寂しさを感じさせた。机の上には、チョコレート菓子が置いてあり、その下に置き手紙があった。
“疲れた体には甘いものが1番。お疲れ様。“
きっと佐々木だなと姫川はクスッと笑った。自分が生徒会室から直帰せず、ここに立ち寄る事がわかっていたのだろう。
姫川はそのお菓子とメッセージをポケットにしまう。そして、そのまま寮へ帰ろうとした所で風紀委員室の扉がゆっくりと開いた。
時間も時間なので、風紀の誰かが忘れ物でもしたのかと思っていたが、扉を開けた人物が余りにも予想外で姫川は目を丸くした。
「正木•••」
その人物の名前を姫川が呼ぶが、当の正木は暗い瞳でその場に立ち尽くしたままだ。
「風紀に何の用だ?しかもこんな時間に。」
一瞬驚いた姫川だったが直ぐにいつもの調子で正木に声をかける。
「満足か?俺たちの仕事を手伝って、伊東を懐柔して。優越感にでも浸っているのか?」
余りの正木の言い分に姫川は顔を顰める。
「わざわざそれを言うためにここに来たのか?そもそもお前たちが転校生に入れ込んで、仕事を放棄したから生じた事だろ。お前にそれを言う資格はない。」
正論で返すと、ゆらっと正木が近づいてきた。
「本当にムカつくよなお前。正論振りかざして聖者面して。伊東を助けたのもお前の計算か?目論見通りお前にメロメロでよかったな。」
1人で生徒会の仕事を全て背負い、寝る間も惜しんで働いていた伊東を馬鹿にする言葉に、姫川がカッとなり、近づいてきた正木の胸ぐらを掴む。
「ふざけるなよ!あんな量の仕事を1人に押し付けて遊び回ってたお前が何言ってんだ!伊東はずっとお前たちが帰ってくるのを待ってたのに、そんな伊東の思いを裏切ったのはお前だろう。俺に見当違いな言いがかりをつけてくるな!」
一気に捲し立て、正木を睨む姫川だが、正木は相変わらず暗い瞳で姫川を見つめ返す。
「その目が嫌いなんだよな。」
「はっ?何言ってー」
「その目だよ!冷めた目でいつも俺たちのことを見やがって!どうせお前は俺たちのこと、見下してるんだろ!そりぁそうだよなぁ!なんてったって天下の姫川のご子息だもんなぁ。」
突然声を荒げた正木に驚いて、一瞬襟元を掴む力が緩んだ所を逆に手を取られ、近くの机に押し倒された。
ダンっ!
「⁉︎」
衝撃に目を瞑った姫川だが次に目を開けた時には正木に腕を押さえられ、上から見下ろされていた。
「くそっ!離せ。」
上半身だけを机に預けているような無理な体制で姫川は思うように正木の腕から逃れることができなかった。
「なぁ、知ってるか?」
正木が姫川に顔を近づけながら話してくる。その間も姫川は身を捩って逃げようとするが上手くいかなかった。正木はそんな姫川の耳元に口を近づけると囁くように言った。
「お前のその冷めた目を見てるとな、メチャクチャに乱したくなるんだよ。」
その言葉に姫川は目を見開く。正木が何をしようとしているのかがわからなくて一気に不安が押し寄せてきた。
「くくっ、お前そういう顔の方がいいよ。」
正木は姫川の顔を見て、揶揄うように笑うと姫川の首筋を舐めた。
ゾワッ
「や、やめろっ!正木!」
経験したことのない感覚に本格的に姫川が焦りだす。
「何だ?男は初めてか?それともヤラレるのが初めてか?」
正木の言葉にこれからされるであろう事を理解した姫川の顔が青ざめる。
「お前なんでこんな事、俺の事が嫌いなら殴ればいいだろ!」
「だって、姫川プライド高そうじゃん。そんな奴の鼻っ柱を折るにはこれが1番だろ?」
姫川の顔が歪む。怖くて体が竦む。そういう体質なのは自覚していたが、まさか自分がこんな目に遭うとは想像もしていなかった。心臓があり得ないくらい早く鼓動を刻む。
「いやだっ!正木、べっ別に俺はお前たちを見下してない。」
「焦ってる姫川は新鮮でいいなぁ。でも、今更そんな事言っても信じられる訳ないだろ。」
ガリッ!
「い“っ!」
乳首を噛まれ、姫川が苦痛の声を上げる。しかし次にはそこを服の上から優しく舐められる。
「ふっんっ•••」
ジンジンする様な感覚が姫川を襲う。これ以上何かされると発狂してしまいそうな自分を何とか抑える為に、固く固く目を閉じて、唇を引き結び必死に耐える。こんな姿見られたくないのに、怖くて自然に目からも涙が零れ落ちる。そんな姫川の様子を見て一瞬正木が固まった。
「お前•••これだけでなんで泣いてんだよ。」
途端に正木が戸惑ったような声を上げた。
その瞬間、姫川は我武者羅に暴れて正木の拘束を解くと、胸を押し退け逃げようとした。
しかし、恐怖で思う様に足に力が入らず、這う様な形になる。それでも構わず姫川は出口を目指す。焦った正木が直ぐに姫川の足を持ち、うつ伏せに姫川を倒し、その上に乗っかった。すると、
「いやだっ!離せっ!もう、やめてくれ。」
姫川が必死に懇願し、正木の腕から逃れようとする。
これが姫川か?正木は一気に混乱した。しかし、姫川の嫌がり方は尋常じゃない。取り敢えず姫川を落ち着かせる為に言葉を和らげる。
「何もしない。もう何もしないから、落ち着け。悪かったよ。」
はぁはぁはぁはぁ
姫川の息が物凄く上がっていた。それを落ち着かせるように正木が背中を優しく撫でる。
はぁ•••はぁ•••はぁ
段々と息が落ち着いてきた。そして、
「はぁ•••もう、退けろ。大丈夫だから。」
暫く経つといつもの冷静な声が返ってきた。正木が体を退けると、ゆっくりと姫川が起き上がった。そして座ったまま、正木を睨む。しかし、その顔はまだ赤く火照っており、目も泣いたため少し濡れていた。その姫川の姿に何故か正木はドキッとした。
「•••」
「•••」
その後暫く、何を話す訳でも無く2人の間に沈黙が流れた。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

過保護な父の歪んだ愛着。旅立ちを控えた俺の身体は、夜ごとに父の形で塗り潰される

中山(ほ)
BL
「パックの中、僕の形になっちゃったね」 夢か現か。耳元で囁かれる甘い声と、内側を執拗に掻き回す熱。翌朝、自室で目覚めたパックに、昨夜の記憶はない。ただ、疼くような下腹部の熱だけが残っていた。 相談しようと向かった相手こそが、自分を侵食している張本人だとも知らずに、パックは父の部屋の扉を開く。 このお話はムーンライトでも投稿してます〜

【完結】我が兄は生徒会長である!

tomoe97
BL
冷徹•無表情•無愛想だけど眉目秀麗、成績優秀、運動神経まで抜群(噂)の学園一の美男子こと生徒会長・葉山凌。 名門私立、全寮制男子校の生徒会長というだけあって色んな意味で生徒から一目も二目も置かれる存在。 そんな彼には「推し」がいる。 それは風紀委員長の神城修哉。彼は誰にでも人当たりがよく、仕事も早い。喧嘩の現場を抑えることもあるので腕っぷしもつよい。 実は生徒会長・葉山凌はコミュ症でビジュアルと家柄、風格だけでここまで上り詰めた、エセカリスマ。実際はメソメソ泣いてばかりなので、本物のカリスマに憧れている。 終始彼の弟である生徒会補佐の観察記録調で語る、推し活と片思いの間で揺れる青春恋模様。 本編完結。番外編(after story)でその後の話や過去話などを描いてます。 (番外編、after storyで生徒会補佐✖️転校生有。可愛い美少年✖️高身長爽やか男子の話です)

どうせ全部、知ってるくせに。

楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】 親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。 飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。 ※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。

平凡な俺が完璧なお兄様に執着されてます

クズねこ
BL
いつもは目も合わせてくれないのにある時だけ異様に甘えてくるお兄様と義理の弟の話。 『次期公爵家当主』『皇太子様の右腕』そんなふうに言われているのは俺の義理のお兄様である。 何をするにも完璧で、なんでも片手間にやってしまうそんなお兄様に執着されるお話。 BLでヤンデレものです。 第13回BL大賞に応募中です。ぜひ、応援よろしくお願いします! 週一 更新予定  ときどきプラスで更新します!

処理中です...