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混沌を極める2学期
三十三話
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正木の声がした事で、山田は当初の目的を達成出来たのかゆっくりと唇を離した。
「何をしてるのかって聞いてるんだよ。」
苛立った声を隠そうともせず、正木が低い声で唸る様に問い詰めてくる。
姫川はこれが柏木や山田が仕掛けた罠だったとわかっているのに、どうしても今の正木と顔を合わせることが出来きず、振り向くことさえ憚られた。
「恭治・・・俺、姫ちゃんと山田が見えたから、恭治の気持ちも考えろって注意しようと追いかけてきたんだ。でもまさかこんな・・・」
わざとらしく正木を気遣うような言葉を吐く柏木に姫川は悔しくて奥歯を噛み締める。
「おい、姫川。お前は俺に何か言うことはないのか?」
一度柏木の話を無視した正木が姫川にそう声を掛けてきた。
「・・・。」
しかし、姫川は山田に唇を奪われた事とそれを正木に見られたショックで上手く言葉を発せずにいた。
はぁぁぁ。
後ろから大きな溜息が聞こえる。その声に姫川がビクッと反応する。
「わかった。もういい。」
短い言葉と共に正木が自分の元を去って行く気配がした。
「恭治!」
その後ろを柏木が追いかける。
「あ~あ、正木怒って行っちゃったけどいいの?かなり怖い顔してたけど大丈夫?関係は修復できそう?」
山田が心底楽しそうな目を姫川に向ける。それを姫川が暗い目で見つめ返した。
「そんなに正木が好きだった?傷ついた顔して。俺が慰めてやろうか?」
そう言いながら手を伸ばしてくる山田の手を姫川は強く払い落とした。
「俺に触るな。」
そしてそれだけ言うと姫川はその場を立ち去った。
「あいつあんな顔もするんだな。なかなか面白かった。」
遠ざかる姫川の後ろ姿を見つめながら山田はそう呟いて舌舐めずりをした。
人気のないところまで歩いてきた姫川はそこで力尽きるようにかがみ込んだ。
途端に先程の山田の唇の感触が蘇り、気持ち悪さに腕で自分の唇を何度も擦った。
そして何よりもその行為を正木に見られたことにどうしようもないほどショックを受けていた。
一際低い声で自分に話しかける正木に何も言葉を返すことが出来なかった。それ以前に冷たい視線で見られていると感じただけで、目を合わすことも出来なかった。
本当はそばに居て1番に助けてほしいのに・・・
山田や柏木に嵌められても、何をされても正木が自分を信じて側にいてくれるなら乗り切れるような気がした。そこまで考えて姫川は頭を抱える。
実際はその逆で、正木は柏木を信じて姫川を見限った。築き上げていたと思った関係もあの優しい笑顔も、柏木の思惑によって簡単に崩されるものだったと思うと、何故か胸を握りつぶされたような感覚に陥った。
殆ど無意識に姫川は目元を拭う。すると拭った手がしっとりと濡れていることに気づいた。
俺は泣いているのか?
母親が死んだ時、めちゃくちゃに泣いた。この先それ以上に悲しい事なんてないと姫川は思っていたのに•••
それほどまでに傷ついている自分に今更ながら姫川は戸惑いも感じたのであった。
「何をしてるのかって聞いてるんだよ。」
苛立った声を隠そうともせず、正木が低い声で唸る様に問い詰めてくる。
姫川はこれが柏木や山田が仕掛けた罠だったとわかっているのに、どうしても今の正木と顔を合わせることが出来きず、振り向くことさえ憚られた。
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「おい、姫川。お前は俺に何か言うことはないのか?」
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「・・・。」
しかし、姫川は山田に唇を奪われた事とそれを正木に見られたショックで上手く言葉を発せずにいた。
はぁぁぁ。
後ろから大きな溜息が聞こえる。その声に姫川がビクッと反応する。
「わかった。もういい。」
短い言葉と共に正木が自分の元を去って行く気配がした。
「恭治!」
その後ろを柏木が追いかける。
「あ~あ、正木怒って行っちゃったけどいいの?かなり怖い顔してたけど大丈夫?関係は修復できそう?」
山田が心底楽しそうな目を姫川に向ける。それを姫川が暗い目で見つめ返した。
「そんなに正木が好きだった?傷ついた顔して。俺が慰めてやろうか?」
そう言いながら手を伸ばしてくる山田の手を姫川は強く払い落とした。
「俺に触るな。」
そしてそれだけ言うと姫川はその場を立ち去った。
「あいつあんな顔もするんだな。なかなか面白かった。」
遠ざかる姫川の後ろ姿を見つめながら山田はそう呟いて舌舐めずりをした。
人気のないところまで歩いてきた姫川はそこで力尽きるようにかがみ込んだ。
途端に先程の山田の唇の感触が蘇り、気持ち悪さに腕で自分の唇を何度も擦った。
そして何よりもその行為を正木に見られたことにどうしようもないほどショックを受けていた。
一際低い声で自分に話しかける正木に何も言葉を返すことが出来なかった。それ以前に冷たい視線で見られていると感じただけで、目を合わすことも出来なかった。
本当はそばに居て1番に助けてほしいのに・・・
山田や柏木に嵌められても、何をされても正木が自分を信じて側にいてくれるなら乗り切れるような気がした。そこまで考えて姫川は頭を抱える。
実際はその逆で、正木は柏木を信じて姫川を見限った。築き上げていたと思った関係もあの優しい笑顔も、柏木の思惑によって簡単に崩されるものだったと思うと、何故か胸を握りつぶされたような感覚に陥った。
殆ど無意識に姫川は目元を拭う。すると拭った手がしっとりと濡れていることに気づいた。
俺は泣いているのか?
母親が死んだ時、めちゃくちゃに泣いた。この先それ以上に悲しい事なんてないと姫川は思っていたのに•••
それほどまでに傷ついている自分に今更ながら姫川は戸惑いも感じたのであった。
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