風紀委員長は××が苦手

乙藤 詩

文字の大きさ
221 / 252
混沌を極める2学期

百十八話

しおりを挟む
「結果は子を為す力がなかったのは私の方だったんだ。無精子症だった。私はその事を父に直ぐに報告した。私自身ショックを受けたのは事実だったが、これで透子が責められなくて済むとその時はそう簡単に考えてしまっていた。報告を受け父は相当なショックを受けているようだった。自分が作り上げた歳明治が私の代で終わるかもしれない。父の中では血の繋がりのない者に継がせる気などは到底なかった。そして父の中にどうしても跡継ぎを得なければという、強迫観念のようなものが生まれた。そんな父の狂気に私は気付かずにいた。仕事も忙しかったし、透子も父から小言を言われることも無くなっただろうと私は1人で勝手にそう考えていた。そのまま数ヶ月が過ぎた頃、透子が妊娠したんだ。」
「えっ?」
今まで黙っていた柏木が思わず声を上げた。今の話を聞く限り疑いようがない。自分の本当の父親という存在に思い至ってしまった。
「葵も気づいただろう。お前の本当の父親は私の父だ。彼は私が会社に行っている間に、何度も何度も何度も無理やり彼女を犯していたんだ。」
忌々しそうに歳明治が拳を震わせる。今思い出してもとても享受できない事実だった。
「それでも私は父を信じたかった。まさかそこまでするはずないと、だから彼女を問い詰めた。すると彼女は狂ったように泣き叫んだんだ。ごめんなさい貴方って。何回も謝りながら・・・。そして父に体の関係を強要された事を告白した。恐ろしくてずっと私にも言えなかったと苦しそうに嗚咽を漏らしながらそう言った。私は父が許せなくなった。まさか私の妻に手を出してまで後継を得ようとするなんて普通じゃ考えられない。怒りのままに私は父を罵倒した。でもそんな私を父は嘲笑った。子も作れない出来損ないのくせにって。幼い頃から父に何度も出来損ないと言われてきたが、この時の言葉が1番キツかった。その後も父は在らん限りの言葉で私を愚弄した。だから私はそれ以上反論する事を諦めたんだ。」
「なんでだよ!爺ちゃんがした事は許せる事じゃないだろ。あんたが母さんを守ってあげなかったら誰が母さんを守るんだよ!」
「お前には分からないだろう。幼い頃から何度も暴力を振るわれ罵倒されて育った私は、幼少期に植え付けられた恐怖心が払拭出来なかった。最後に彼はこう言ったんだ。お前に種子がないから代わりに俺があいつを抱いてやったんだって。俺にとっては何の魅力もない女だったが、こうして子を為せた。お前に感謝される事はあっても、憎まれる筋合いはない。憎むならまぁ精々種子のない自分を恨むんだなって。」
そこまで言って歳明治は顔を覆った。
鼻を啜るような音だけが室内に響く。誰も口を開かなかった。寧ろ口を開けるような雰囲気ではなかった。
「父の前で崩れ落ちる私に彼女が駆け寄ってきた。そして、涙を流しながら小さい声で私、産みますって言ったんだ。それで全てが上手くいくなら、貴方が傷つかないのならそれでいいって彼女は言ったんだ。」
母親を思っているのか柏木の目から一筋の涙が溢れた。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

過保護な父の歪んだ愛着。旅立ちを控えた俺の身体は、夜ごとに父の形で塗り潰される

中山(ほ)
BL
「パックの中、僕の形になっちゃったね」 夢か現か。耳元で囁かれる甘い声と、内側を執拗に掻き回す熱。翌朝、自室で目覚めたパックに、昨夜の記憶はない。ただ、疼くような下腹部の熱だけが残っていた。 相談しようと向かった相手こそが、自分を侵食している張本人だとも知らずに、パックは父の部屋の扉を開く。 このお話はムーンライトでも投稿してます〜

【完結】我が兄は生徒会長である!

tomoe97
BL
冷徹•無表情•無愛想だけど眉目秀麗、成績優秀、運動神経まで抜群(噂)の学園一の美男子こと生徒会長・葉山凌。 名門私立、全寮制男子校の生徒会長というだけあって色んな意味で生徒から一目も二目も置かれる存在。 そんな彼には「推し」がいる。 それは風紀委員長の神城修哉。彼は誰にでも人当たりがよく、仕事も早い。喧嘩の現場を抑えることもあるので腕っぷしもつよい。 実は生徒会長・葉山凌はコミュ症でビジュアルと家柄、風格だけでここまで上り詰めた、エセカリスマ。実際はメソメソ泣いてばかりなので、本物のカリスマに憧れている。 終始彼の弟である生徒会補佐の観察記録調で語る、推し活と片思いの間で揺れる青春恋模様。 本編完結。番外編(after story)でその後の話や過去話などを描いてます。 (番外編、after storyで生徒会補佐✖️転校生有。可愛い美少年✖️高身長爽やか男子の話です)

どうせ全部、知ってるくせに。

楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】 親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。 飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。 ※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。

平凡な俺が完璧なお兄様に執着されてます

クズねこ
BL
いつもは目も合わせてくれないのにある時だけ異様に甘えてくるお兄様と義理の弟の話。 『次期公爵家当主』『皇太子様の右腕』そんなふうに言われているのは俺の義理のお兄様である。 何をするにも完璧で、なんでも片手間にやってしまうそんなお兄様に執着されるお話。 BLでヤンデレものです。 第13回BL大賞に応募中です。ぜひ、応援よろしくお願いします! 週一 更新予定  ときどきプラスで更新します!

処理中です...