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第1話 ポンコツ営業ズ
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資格取得スクール「(株)SUGUTORE 資格学校」。大手というわけではないが、都内にも何校か店舗展開のある中堅スクールだ。
スクール運営をするには、講師の質・サービスの質が求められる一方、営業部門の働きも重要となってくる。顧客獲得、新規営業、得意先への挨拶、果てはスクール自体の手伝い、なんて仕事も湧いて出てくる。
そんな「(株)SUGUTORE 資格学校」には、優秀な営業マンたちが集まっている…はずなのだが。
「おいこら安保、この前の見積依頼だが…」
「あ、澤山係長。ちゃんと作りましたよ、先方の依頼もばっちり聞きましたー」
澤山九郎。彼は「(株)SUGUTORE 資格学校」の営業係長を務めており、非常に優秀な営業マンだ。彼が「(株)SUGUTORE 資格学校」の成長に一役買っているといっても過言ではない。
そんな澤山は、係長職に昇進してからは部下の育成にも一層力を入れている。が、しかし、これが一筋縄ではいかないのだった。
「そうだな金額設定は概ね問題ない――『猫一式』という項目を除いてなぁ!! なんだこれは!」
澤山がずいと突き出した見積書には、『備品準備費』『講師採用費』などの項目に並んで、『猫一式(猫購入費、グッズ費、予防接種費、餌代初期費用)』が、自分も必要経費ですけど?といった顔で記載されていた。
「え、先方が『新校舎には癒しがほしいですよね』っていうから……ダメでしたか?」
「癒しで校舎内に猫を放し飼いしようとするなダメに決まっているだろ何故いいと思った」
「一息で喋るじゃないですか、ウケますね」
ちぇー、と口をとがらせながら見積書を修正するのは、澤山の部下である、安保野子。カタカタと素早い作業で見積書を修正していき、再度印刷した見積書を澤山のデスクまで持っていく。
「澤山サン、これで確認お願いします」
「はぁ……」
澤山は、目の前に差し出された見積書を、上から順番に確認していく。
安保は基本的には仕事ができる部類の人間であるため、基本的な書式のずれ・記載漏れなどの凡ミスはまず無い。ただ、先ほどのこともあるため改めてじっくり確認する。
必要経費はきちんと含んでいるか、価格設定におかしなところはないか、桁数は間違っていないか、先方が納得する内容か。
「……暖炉設置費ってなんだ」
「癒しの演出です。必要経費です」
「癒しについての要望は一回忘れろ! 雑談レベルで出た話だろそれ!! 再提出!!!」
頭を抱えながら見積書を安保へ突き返す。うえーん鬼上司ー、とふてくされる安保を見て、うるせぇ泣きたいのはこっちだわ、と澤山は心の中で毒づく。
安保一人であれば良かった。仕事はできるが、ちょっと変わったタイプというのは、むしろ職場において良い刺激になることもある。
もちろん、そうではないからこそ澤山は、日々心の中で涙を流す事態に陥っているわけで。
目下、澤山の頭を悩ませている原因は、
「澤山係長!! コピー機が、コピー機が変な音立てて煙吹いてます!!」
土師那八と、
「澤山係長……あの、先日の訪問先からクレームが……! どどどどうしましょう、靴を舐めれば許してもらえるでしょうかばばばば」
馬路明。
安保と同じ、優秀なポンコツがあと2名いることだ。
スクール運営をするには、講師の質・サービスの質が求められる一方、営業部門の働きも重要となってくる。顧客獲得、新規営業、得意先への挨拶、果てはスクール自体の手伝い、なんて仕事も湧いて出てくる。
そんな「(株)SUGUTORE 資格学校」には、優秀な営業マンたちが集まっている…はずなのだが。
「おいこら安保、この前の見積依頼だが…」
「あ、澤山係長。ちゃんと作りましたよ、先方の依頼もばっちり聞きましたー」
澤山九郎。彼は「(株)SUGUTORE 資格学校」の営業係長を務めており、非常に優秀な営業マンだ。彼が「(株)SUGUTORE 資格学校」の成長に一役買っているといっても過言ではない。
そんな澤山は、係長職に昇進してからは部下の育成にも一層力を入れている。が、しかし、これが一筋縄ではいかないのだった。
「そうだな金額設定は概ね問題ない――『猫一式』という項目を除いてなぁ!! なんだこれは!」
澤山がずいと突き出した見積書には、『備品準備費』『講師採用費』などの項目に並んで、『猫一式(猫購入費、グッズ費、予防接種費、餌代初期費用)』が、自分も必要経費ですけど?といった顔で記載されていた。
「え、先方が『新校舎には癒しがほしいですよね』っていうから……ダメでしたか?」
「癒しで校舎内に猫を放し飼いしようとするなダメに決まっているだろ何故いいと思った」
「一息で喋るじゃないですか、ウケますね」
ちぇー、と口をとがらせながら見積書を修正するのは、澤山の部下である、安保野子。カタカタと素早い作業で見積書を修正していき、再度印刷した見積書を澤山のデスクまで持っていく。
「澤山サン、これで確認お願いします」
「はぁ……」
澤山は、目の前に差し出された見積書を、上から順番に確認していく。
安保は基本的には仕事ができる部類の人間であるため、基本的な書式のずれ・記載漏れなどの凡ミスはまず無い。ただ、先ほどのこともあるため改めてじっくり確認する。
必要経費はきちんと含んでいるか、価格設定におかしなところはないか、桁数は間違っていないか、先方が納得する内容か。
「……暖炉設置費ってなんだ」
「癒しの演出です。必要経費です」
「癒しについての要望は一回忘れろ! 雑談レベルで出た話だろそれ!! 再提出!!!」
頭を抱えながら見積書を安保へ突き返す。うえーん鬼上司ー、とふてくされる安保を見て、うるせぇ泣きたいのはこっちだわ、と澤山は心の中で毒づく。
安保一人であれば良かった。仕事はできるが、ちょっと変わったタイプというのは、むしろ職場において良い刺激になることもある。
もちろん、そうではないからこそ澤山は、日々心の中で涙を流す事態に陥っているわけで。
目下、澤山の頭を悩ませている原因は、
「澤山係長!! コピー機が、コピー機が変な音立てて煙吹いてます!!」
土師那八と、
「澤山係長……あの、先日の訪問先からクレームが……! どどどどうしましょう、靴を舐めれば許してもらえるでしょうかばばばば」
馬路明。
安保と同じ、優秀なポンコツがあと2名いることだ。
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