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第3話 澤山と土師 ~彼に平穏はない~
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土師那八。入社2年目の彼は、「(株)SUGUTORE 資格学校」に来るまでは実家住み&アルバイト経験のみだったので、実は社会人歴もメンバーの中では一番浅い。
ただ、それは彼が就職活動をサボっていたからでも、長めの自分探しの旅をしていたからでも無い。
それは、彼の特性『究極のドジ気質』の仕業だった。
「澤山係長、お茶入れましたんでよかったら……」
「あっ、土師ストップ。俺が取りに行くからそのまま動くな」
「あい……」
素晴らしき澤山の先読み能力のおかげで事務所の床は難を逃れたが、もしそのまま土師が澤山のデスクに向かっていたら、
①なぜか土師の足元にスティックのりが転がる
②土師がスティックのりを踏み、お茶(熱)が宙を舞う
③お茶(熱)は澤山のデスクに逆さで着地し、提出直前の書類を全て濡らす
④転んだ土師の足が延長コードの根本をひっかけ、作業中のメンバーのPCを強制シャットダウンさせる
という、ピタゴラスイッチもびっくりの大掛かりな事件に発展してしまうところだった。
今でこそ澤山には、対土師先読みセンサーが搭載されたが、最初のころは「えっ、この子俺に恨みでも持ってんのかな?」と思わざるを得なかった。
土師のひどいドジっぷりは、一周回ってわざとやっているといわれたほうが納得できるレベルなのだ。
だがしかし、実際の土師はとても優しく、細かな気遣いができる人間である。先ほど熱いお茶を持っていこうとしたのも、事務所内のクーラーの効きすぎで鳥肌を立たせていた澤山を気遣ってのことだったのだ。
にもかかわらず今まで仕事が長続きせず、多種多様なアルバイトを渡り歩いていたのは、お察しの通り彼の『究極のドジ気質』のせいである。
レジを打てば小銭が花火のごとく飛び散り、皿を運べば調味料を巻き込んで粉砕し、配るティッシュは局地的豪雨によりずぶ濡れに。
彼は悪くない。どの仕事に対しても、土師は一生懸命真摯に取り組んでいるのだ。ただ、ドジの神に愛されすぎているのだ。
「土師、お前の午後の予定は?」
「はい、新しい講座が始まったので教室の見学と、そのあと外回りです!」
土師は、主に既存顧客への追加提案を主な担当している。新規顧客のところに行くと流石に引かれてしまうが、既存顧客からはその流れるような一連のドジが、一種のショーとして人気が出ているのだ。
「とりあえず救急車を呼ぶレベルのドジはしないでくれよな」
「大丈夫です! ここ何年かは回避しているので!!」
「それをフラグというんだ、土師ぃ…」
2時間後、土師からの電話に「まさかフラグ回収か?!」と119番通報の準備をした澤山だったが、無事に外回りが終わり先方の感触も上々という報告に、ほっと胸をなでおろす。
「そうか、よかった。このまま事務所帰ってくるなら、一緒にプレゼン資料作るか?」
終業時間まではまだ余裕があるため、事務所で一緒に作成すれば今日中に大枠は出来上がるだろうと思って提案した澤山に、気まずそうに土師が答えた。
「す、すいません、もしよろしければ、今日はこのまま直帰してテレワークをしたいのですが、ダメでしょうか……?」
「いや、構わないが……まさか……」
聞きたいような聞きたくないような気持ちで、土師の次の返答を促す。
「先方のオフィスを出た瞬間、目の前でごみ回収車の回収部分がなぜか逆回転して、全身細かいゴミだらけに……家は徒歩圏内なので帰ってシャワーを浴びたく……」
「流石に同情する。すぐに帰りなさい」
ただ、それは彼が就職活動をサボっていたからでも、長めの自分探しの旅をしていたからでも無い。
それは、彼の特性『究極のドジ気質』の仕業だった。
「澤山係長、お茶入れましたんでよかったら……」
「あっ、土師ストップ。俺が取りに行くからそのまま動くな」
「あい……」
素晴らしき澤山の先読み能力のおかげで事務所の床は難を逃れたが、もしそのまま土師が澤山のデスクに向かっていたら、
①なぜか土師の足元にスティックのりが転がる
②土師がスティックのりを踏み、お茶(熱)が宙を舞う
③お茶(熱)は澤山のデスクに逆さで着地し、提出直前の書類を全て濡らす
④転んだ土師の足が延長コードの根本をひっかけ、作業中のメンバーのPCを強制シャットダウンさせる
という、ピタゴラスイッチもびっくりの大掛かりな事件に発展してしまうところだった。
今でこそ澤山には、対土師先読みセンサーが搭載されたが、最初のころは「えっ、この子俺に恨みでも持ってんのかな?」と思わざるを得なかった。
土師のひどいドジっぷりは、一周回ってわざとやっているといわれたほうが納得できるレベルなのだ。
だがしかし、実際の土師はとても優しく、細かな気遣いができる人間である。先ほど熱いお茶を持っていこうとしたのも、事務所内のクーラーの効きすぎで鳥肌を立たせていた澤山を気遣ってのことだったのだ。
にもかかわらず今まで仕事が長続きせず、多種多様なアルバイトを渡り歩いていたのは、お察しの通り彼の『究極のドジ気質』のせいである。
レジを打てば小銭が花火のごとく飛び散り、皿を運べば調味料を巻き込んで粉砕し、配るティッシュは局地的豪雨によりずぶ濡れに。
彼は悪くない。どの仕事に対しても、土師は一生懸命真摯に取り組んでいるのだ。ただ、ドジの神に愛されすぎているのだ。
「土師、お前の午後の予定は?」
「はい、新しい講座が始まったので教室の見学と、そのあと外回りです!」
土師は、主に既存顧客への追加提案を主な担当している。新規顧客のところに行くと流石に引かれてしまうが、既存顧客からはその流れるような一連のドジが、一種のショーとして人気が出ているのだ。
「とりあえず救急車を呼ぶレベルのドジはしないでくれよな」
「大丈夫です! ここ何年かは回避しているので!!」
「それをフラグというんだ、土師ぃ…」
2時間後、土師からの電話に「まさかフラグ回収か?!」と119番通報の準備をした澤山だったが、無事に外回りが終わり先方の感触も上々という報告に、ほっと胸をなでおろす。
「そうか、よかった。このまま事務所帰ってくるなら、一緒にプレゼン資料作るか?」
終業時間まではまだ余裕があるため、事務所で一緒に作成すれば今日中に大枠は出来上がるだろうと思って提案した澤山に、気まずそうに土師が答えた。
「す、すいません、もしよろしければ、今日はこのまま直帰してテレワークをしたいのですが、ダメでしょうか……?」
「いや、構わないが……まさか……」
聞きたいような聞きたくないような気持ちで、土師の次の返答を促す。
「先方のオフィスを出た瞬間、目の前でごみ回収車の回収部分がなぜか逆回転して、全身細かいゴミだらけに……家は徒歩圏内なので帰ってシャワーを浴びたく……」
「流石に同情する。すぐに帰りなさい」
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