上 下
15 / 27
異世界編

冒険者

しおりを挟む
 アルゼの村に冒険者が来ることになった。村長の要請で、村の襲撃から3日後に来たことになる。村長は冒険者を呼ぶことに最後まで反対していたらしい。今回の襲撃で仕方なく、呼んだ形だ。村長では襲撃に対処する力がないと、村人たちに判断され、押し切られた。元々村長は、領主に納める税収の為、村人の税を上げる事も度々あったそうで、仲が悪かった。

 村長は、この村の開拓を任されていたが、あまり進捗も良くなく、遅々として進んでいない。開拓での税収も上がっていないため、領主が新たに村長を任命し、新しい村長が来たらしい。元村長は、そのまま村長補佐に付くそうだ。

 私は6歳になっていた。ステータスを見るまで分からなかったが、いつの間にか誕生日を迎えていたようだ。ユーゴは私の誕生日を忘れているのか、異世界には誕生日を祝う習慣がないのか。そういえば、元の世界でも父子家庭になってから、誕生日を祝ってはくれなくなった。父親はそういうものなのかもしれない。

 私はユーゴの話を聞き、改めて決意した。いつまでも、ここでユーゴに甘えている訳にはいかない。私自身の為にもだ。私は初心に戻り、魔術の訓練に熱を上げた。私がここに来たのは、女神同士のゲームに巻き込まれたからだ。私はステータスの確認を行った。

ロゼッタ·アンダーウッド

HP 130/130
MP  160/160
SP 130/130

レベル 4
攻撃力 7
防御力 7
魔法攻撃力 30
魔法防御力 30
敏捷力 15

種族 キメラ
年齢 6歳
陣営 魔族
健康状態 良好
称号 魔王の卵
転生スキル アーカーシャ
スキル [言語理解] [毒耐性lv1] 
魔術 初級水魔術 初級風魔術

 lvは少しずつだが、上がってきている。健康状態も良好だ。攻撃力と防御力が貧弱なのは、健康状態が良くなっても改善がみられない。よく分からない[アーカーシャ]は置いとくとして、他のスキルは中々増えない。何か特殊な条件があるのか。まあ、考えても分からないし置いておこう。

 私は久しぶりに、セレスさんに連絡を取る事にした。あれからどうしているだろうか?皆とは上手くやってるだろうか?私には連絡は無かったが。

「こんにちは、芽衣さん。
 何か用ですか?」

 あれ、何か素っ気ないというか、棘がある言い方だ。いや普通かな。前と少し温度差がある気がする。

「セレスさん、こんにちは。
 少しこれからの事で相談したいんだけど、
 今大丈夫?」

「実はあれから芽衣さんに言われた通り、皆さんに積極的に連絡を取りました。転生者には異世界でのダンジョンの攻略方法やレアアイテムの情報などを教えていました。皆すごく喜んでくれて、僕もとても良いことをしてる気分でした。
 でもそしたら、女神様から叱られてしまいました。あまりにも、ゲームに干渉し過ぎだと。今度やったら、堕天させると脅されました。どうしてくれるんですか?芽衣さん」

 私は不当な怒りを受けた。確かに私は積極的にと言った。だが女神に叱られたのは、別の話だ。何だ、このヘルプ機能は、何で私がヘルプしなくちゃならないんだ。まあ、そんな事は言わないけど。

「ごめんね。でも皆喜んでくれたのは良かった じゃない。
 女神様も怒りたくて怒ったんじゃないと思うよ。私達転生者に少しでも、自分たちで考えて行動してもらいたいと思ってるはず。今回は、セレスがその機会を奪ってしまったって思われたんじゃないかな。
 同じ間違いをしないように、今回の事の良かった点と悪かった点を整理して次に活かしていこう。あんまり、凹まないで」

 私は何を言ってるんだろう、天使を相手に。

「そ、そうですよね。芽衣さんに当たってしまって、申し訳ありません。今回の事を反省してみます。
 ありがとうございます。それでは」

「ちょ、ちょっと待って。
 私も相談があって呼んだんだけど。
 実は私このままここで居るのは駄目だと思って、強くなって独り立ちしたいと思ってるんだけどどうしたらいいかな?」

 セレスが通信を切りそうだったので、私は急いで止めて、要件を言った。

「あ、そうでした。すみません。
 すぐに反省をしようかと思い、つい。強くですか、具体的にはどのくらいですか?」

 そう言われると難しい。とりあえずこの世界で、自立して生きていくことが必要だとは思っている。この異世界でお金を稼げて、食べるのに困らず、様々な場所へ移動でき、なおかつ強くなれる、そんな理想の仕事はないだろうか、聞いてみた。

「そうですね。それでしたら、一番敷居が低い のは冒険者かと思います。彼らは基本冒険者ギルドの斡旋を受け、仕事を請負い、お金を稼ぎます。場所に縛られず、ギルドから自由に仕事が受けられるのが魅力です。まあ紹介料は取られますが。ランクが上がっていけば、より難しい仕事も受けられ、依頼を達成したときはさらに強くなっていることでしょう。まあ実力に見合わない依頼を受けると、死んだり、依頼失敗の場合違約金も発生しますが。
 それに有名冒険者になれば、ギルドを通さず、仕事も受けられたり、貴族に召し抱えられる方々もいます。
 誰でも一発当てるチャンスがある、庶民には 夢のある職業です」

 最近よく聞くようになった冒険者を勧められた。確かに後半はともかく、場所を移動でき、お金を稼げるのは魅力的に思えた。死んだり、お金を払わされるのは嫌だが。ただそれ以前に、冒険者ギルドとやらは魔族でも参加できるのだろうか。私は今まで人から指摘された事はないが、一応魔族なのだが。

「魔物は人族、魔族どちらの種族においても共通した敵です。魔族を敵視する国またフレア教徒からは迫害されていますが、魔族に友好的な国や冒険者ギルドのように偏見の少ない組織も存在します」

 なるほど魔族だからと言って、人族全員が敵ではないと言うことか。どうもゲームに頭が毒されすぎている。前の世界でもそうだった、人間は表面的な部分が全てではない、色々な面があるのだ。それにしてもフレアはこっちの世界では宗教となっているのか。

「冒険者以外だとどんな選択肢があるの?」

「そうですね。移動を伴うものですと、ポーターや行商人、ダンジョンの探索者、アウトローなものですと奴隷商人や花を売る仕事などなど色々ありますね」

 ポーターというのは荷物運びの事らしい。だけど私の身体は、貧弱すぎて重い物を持つのには向いてない。行商人をするにも、知識もなく、何より先行投資するお金がない。ダンジョン探索者はいわゆるお宝ハンターだ。興味はあるが、一箇所に長期間いる必要がある。後半は異世界では珍しくないそうだが、前の世界の倫理観で私は拒絶した。

「決めた。セレスさん、私冒険者になろうと思 う。
 どうしたらなれるかな」

「そうですね。まずは、最寄りの冒険者ギルドに行ってみるのが良いかと思います。
 ここからですと、南方の都市アルティナに行 くと冒険者ギルドがありますね。ただ、芽衣さんくらいの年齢ですと、その、言いにくいですが、誰か他の冒険者と一緒でないと、試験さえ受けさせて貰えないかと思います」

 まあ、それもそうだよね。見た目は6歳な訳だし。こんな子供の姿じゃあ信用してくれと言っても無理があると自分でも思う。色々ありがとうと言って、私は通信を終わらせた。冒険者を目指す事は、決めた。自由な仕事だが、なるのも、なってからも色々大変そうだ。私はまずはユーゴに相談してみることにした。
しおりを挟む

処理中です...