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異世界編
パーティー
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ユーゴに見捨てられてしまった。何か嫌われることでもしてしまったのだろうか。無茶をして愛想をつかされたのか。思えば、私は前世でも、お父さんとの仲は良くなかった。帰りは遅いし、全然私と話してくれなかった。嫌な記憶がクルクルと、私の頭に浮かんだ。
まあ、悲劇のヒロインに浸るのはここまでだ。切り替えて行こう。今の私がやらなければいけない事は、パーティーを作ることだ。何としても、このチャンスを生かさなければ、次はいつ来るか分からない。それにライルなんかに舐められたままなのは癪だった。
私はギルド内を一望する。冒険者のパーティーは数組いる。奥のテーブルにはフードを目深にかぶった男性がエールを飲んでる。ちょっと怪しい。私は近くの冒険者パーティーに話しかけてみることにした。
「あの、私とパーティーを組んでもらえません か?」
「嫌だね。ガキのおもりをしながら、仕事なん て命がいくつあっても足りねえ」
まだ一言しか喋ってないのに、断られてしまった。
「あの、私に出来る事なら、何でもしますから。水属性と風属性の魔術なら多少できます。アルティナまでの護衛の仕事なんです」
私は負けじと食い下がってみる。
「駄目だと言ってるだろ。
魔術師ならあいにく間に合ってるんだよ。それにさっき冒険者登録してたのを見てたぞ。F級なんざと組んでも、こっちが損するだけだ。もし依頼に失敗したら、信用もなくなるしな」
「そこを何とか。
雑用でも何でもやります」
私は頭を下げてお願いしてみた。
「しつこいぞ、クソガキ!
いい加減にしねえとぶっ飛ばすぞ!
俺たちはここにダンジョン探索に来てるんだよ。護衛の仕事なんざ、アルティナに戻るときにでも、あれば受ける程度の物だ。実入りも少ねえ。そんなもんの為に、パーティーの時間を割く余裕はねえよ。こっちはお遊びでやってんじゃねえんだよ」
正論だった。ちょっと胸が痛い。私はトボトボとその場を離れ、滲んだ視界をギュッと閉じて冒険者ギルドを後にした。少し頭を冷やそう。
◇
「お前何してんだ」
とデュランが話しかけて来た。
「何って今、娘が成長する姿を観察していると ころだ。邪魔すんなよ」
「今のお前すごい怪しいぞ」
俺はロゼと別れ、ギルドを出ていくふりをして、奥でフードを被って目元まで隠してエールを飲んでいた。ロゼがギルドから出ていくのを見て、追いかけようとした際に、デュランと出くわした。俺は奴を振り切って、ロゼを追うことにする。
「待てよ。俺も行く、何か面白そうだ」
「お前、ギルドに用があったんじゃねえのかよ」
「大した用じゃない。
それにしばらく、俺らのところは休みにした から、良いんだよ。そう何時までもダンジョンなんかに潜ってられるかよ。それよりどういう状況だよ?」
こいつ大して関係ない癖に、意地でも介入する気かよ。せっかくロゼの珍しく困ってる姿が、見られるというのに。仕方ないか。
「今日娘が、冒険者デビューしたんだよ。
それで今パーティーを探してるところだ。
さっきパーティーに入れてもらおうとしたが、怒鳴られて断られたとこだ」
まあロゼは涙脆いし、良心が傷まんでもないが、あんなのは冒険者に限らず良くある事だ。
「お前が組んでやればいいじゃないか」
「それじゃあ、あいつの為にならないと思うん だよ。あいつ自身で選んだ道なんだ。困った時には 手助けしてやるが、あいつが自分で解決する機会を奪っちゃいけない」
俺があいつなら少なくとも、そうしてほしいと思う。
◇
酒場に向かいながら、私の気持ちは少し落ち着いてきていた。最初から上手くいかないのは当たり前だ。まずパーティーに話しかけたのは良くなかった。私の今回の目的は、4人パーティーを作ることだ。次は1人1人に声を掛けてみよう。
そうと決まれば、私は頬を両手で叩き、嫌な考えを吹き飛ばした。
あとは話しかけ方だ。緊張からか、今更だけど少し挙動不審だった気がする。明るく、笑顔で話しかけてみよう。その方がきっと、相手も警戒しないはずだ。
私は酒場の前に着いた。昔から慣れ親しんだ場所だ。村に来ると、たいていここで食事を摂り、泊まる。私は一度深呼吸をして、酒場に入る。すると、酒場からは怒鳴り声が聞こえた。
「おい魔人!
お前人族の村で何やってんだよ。ここはお前みたいな奴が居る場所じゃないんだよ。出ていけ!」
と修道服を着た少年が、頭に2本の角の生えた青年に言っていた。ギルが2人の間に仲裁に入ろうとしている。この人は本当に、いつも酒場に居るなあ。
「まあ落ち着けよ、ブラザー。静かに飯食ってるだけだろ」
魔人は1人でテーブルに座り、パンやスープなど質素な食事を食べていた。
「うるさい、お前には関係ないだろ。
こいつとパーティーを組んだことのある奴が大怪我を負ったり、死んだやつが何人もいるんだ」
「俺は…何もしていない。一緒に依頼を…こなしただけだ」
「信じられるか。魔族のくせに」
どうやら修道服の少年は魔族に対する差別意識があるようだ。今までは見たことがなかったし、私には縁のないものだった。前にユーゴからは魔族には角がある者が多いと聞いた事があった。魔人の青年は長身でヒョロっとしており、こめかみから数cm程度の角が2本生えている。肌はやや青白い色をしている。
「分かった…出ていく」
青年はそれだけ言うと出ていこうとした。ギルは何か声を掛けようとしている。
「出ていく必要なんてないよ」
と私は声を掛けた。
「誰だお前は?子供が出しゃばるなよ」
「私は冒険者のロゼッタです。
弱い者いじめ何て、修道士のする事じゃな い」
私は青年を守るように立った。
「フレア様は仰られている。魔族は魔物と同じ で、人族の敵であると。お前も人族の敵なの か」
「私はこの人の味方なだけです」
修道士に言った。
「そこまでだ。
俺は衛兵だ。これ以上、この酒場で騒ぐなら、俺が相手になるぞ」
「そうだぜ。喧嘩ならもっと派手にやれよ」
ギルや冒険者たちが止めてくれる。ここにはフレアの信徒は少ないようだ。まあ一部騒動を煽るような声もあったが。
「異教徒共め。
貴様らにはいずれフレア様の天罰が下るぞ」
と言って、修道士の少年は出ていった。
「あなた大丈夫?」
私は魔人の青年に声をかけた。彼は無表情だった。私はなるべく笑顔を作り、警戒を解こうと努力する。出来てるだろうか。
「すまない。迷惑をかけたな」
と言って、酒場を出ていこうとする。
「あ、待って。
あなた、私とパーティーを組んでくれない」
私は笑顔を作って頼んでみた。
「あ…ああ。」
やった意外とあっさりオッケーがもらえた。初めてのパーティーメンバー獲得成功だ。笑顔作戦の大勝利だった。何故か怯えているようにも見えるが、やった。
「ロゼちゃん、ずっと見てたけど、大人をいじめるのは良くないよ」
茶化すような声色だが、何て人聞きの悪い。私は少し打算はあったけど、彼を心配して行動したのに。声の主は、デュランのパーティーの双剣士のリリーだった。収穫祭からもう4年は経っており、少女だった彼女も、大人っぽくなっていた。酒場などで会えば、挨拶もしていた。
「いじめてないです。私今日から冒険者になったので、パーティーを組みたいんです。リリーさんも良かったらどうですか?」
だめ元でお願いしてみる。デュラン商会のメンバーだから無理なのは承知だ。
「うーん、どうしよっかな。
ロゼちゃんが可愛くお願いしてくれたら、考 えてもいいよ」
と無茶振りをしてくる。可愛くってどうしたらいいのだろう。うーん。
「リリーさんが隣にいると安心する。ずっと一 緒にいてもいい?」
と言って、腕にしがみついてみた。こんな感じかな。
「ずっと一緒にいようね。ロゼちゃん」
と言って、私を抱きしめてきた。これはオッケーという事なのだろうか。中々私は解放されず、しばらくリリーの抱擁が続いた。
まあ、悲劇のヒロインに浸るのはここまでだ。切り替えて行こう。今の私がやらなければいけない事は、パーティーを作ることだ。何としても、このチャンスを生かさなければ、次はいつ来るか分からない。それにライルなんかに舐められたままなのは癪だった。
私はギルド内を一望する。冒険者のパーティーは数組いる。奥のテーブルにはフードを目深にかぶった男性がエールを飲んでる。ちょっと怪しい。私は近くの冒険者パーティーに話しかけてみることにした。
「あの、私とパーティーを組んでもらえません か?」
「嫌だね。ガキのおもりをしながら、仕事なん て命がいくつあっても足りねえ」
まだ一言しか喋ってないのに、断られてしまった。
「あの、私に出来る事なら、何でもしますから。水属性と風属性の魔術なら多少できます。アルティナまでの護衛の仕事なんです」
私は負けじと食い下がってみる。
「駄目だと言ってるだろ。
魔術師ならあいにく間に合ってるんだよ。それにさっき冒険者登録してたのを見てたぞ。F級なんざと組んでも、こっちが損するだけだ。もし依頼に失敗したら、信用もなくなるしな」
「そこを何とか。
雑用でも何でもやります」
私は頭を下げてお願いしてみた。
「しつこいぞ、クソガキ!
いい加減にしねえとぶっ飛ばすぞ!
俺たちはここにダンジョン探索に来てるんだよ。護衛の仕事なんざ、アルティナに戻るときにでも、あれば受ける程度の物だ。実入りも少ねえ。そんなもんの為に、パーティーの時間を割く余裕はねえよ。こっちはお遊びでやってんじゃねえんだよ」
正論だった。ちょっと胸が痛い。私はトボトボとその場を離れ、滲んだ視界をギュッと閉じて冒険者ギルドを後にした。少し頭を冷やそう。
◇
「お前何してんだ」
とデュランが話しかけて来た。
「何って今、娘が成長する姿を観察していると ころだ。邪魔すんなよ」
「今のお前すごい怪しいぞ」
俺はロゼと別れ、ギルドを出ていくふりをして、奥でフードを被って目元まで隠してエールを飲んでいた。ロゼがギルドから出ていくのを見て、追いかけようとした際に、デュランと出くわした。俺は奴を振り切って、ロゼを追うことにする。
「待てよ。俺も行く、何か面白そうだ」
「お前、ギルドに用があったんじゃねえのかよ」
「大した用じゃない。
それにしばらく、俺らのところは休みにした から、良いんだよ。そう何時までもダンジョンなんかに潜ってられるかよ。それよりどういう状況だよ?」
こいつ大して関係ない癖に、意地でも介入する気かよ。せっかくロゼの珍しく困ってる姿が、見られるというのに。仕方ないか。
「今日娘が、冒険者デビューしたんだよ。
それで今パーティーを探してるところだ。
さっきパーティーに入れてもらおうとしたが、怒鳴られて断られたとこだ」
まあロゼは涙脆いし、良心が傷まんでもないが、あんなのは冒険者に限らず良くある事だ。
「お前が組んでやればいいじゃないか」
「それじゃあ、あいつの為にならないと思うん だよ。あいつ自身で選んだ道なんだ。困った時には 手助けしてやるが、あいつが自分で解決する機会を奪っちゃいけない」
俺があいつなら少なくとも、そうしてほしいと思う。
◇
酒場に向かいながら、私の気持ちは少し落ち着いてきていた。最初から上手くいかないのは当たり前だ。まずパーティーに話しかけたのは良くなかった。私の今回の目的は、4人パーティーを作ることだ。次は1人1人に声を掛けてみよう。
そうと決まれば、私は頬を両手で叩き、嫌な考えを吹き飛ばした。
あとは話しかけ方だ。緊張からか、今更だけど少し挙動不審だった気がする。明るく、笑顔で話しかけてみよう。その方がきっと、相手も警戒しないはずだ。
私は酒場の前に着いた。昔から慣れ親しんだ場所だ。村に来ると、たいていここで食事を摂り、泊まる。私は一度深呼吸をして、酒場に入る。すると、酒場からは怒鳴り声が聞こえた。
「おい魔人!
お前人族の村で何やってんだよ。ここはお前みたいな奴が居る場所じゃないんだよ。出ていけ!」
と修道服を着た少年が、頭に2本の角の生えた青年に言っていた。ギルが2人の間に仲裁に入ろうとしている。この人は本当に、いつも酒場に居るなあ。
「まあ落ち着けよ、ブラザー。静かに飯食ってるだけだろ」
魔人は1人でテーブルに座り、パンやスープなど質素な食事を食べていた。
「うるさい、お前には関係ないだろ。
こいつとパーティーを組んだことのある奴が大怪我を負ったり、死んだやつが何人もいるんだ」
「俺は…何もしていない。一緒に依頼を…こなしただけだ」
「信じられるか。魔族のくせに」
どうやら修道服の少年は魔族に対する差別意識があるようだ。今までは見たことがなかったし、私には縁のないものだった。前にユーゴからは魔族には角がある者が多いと聞いた事があった。魔人の青年は長身でヒョロっとしており、こめかみから数cm程度の角が2本生えている。肌はやや青白い色をしている。
「分かった…出ていく」
青年はそれだけ言うと出ていこうとした。ギルは何か声を掛けようとしている。
「出ていく必要なんてないよ」
と私は声を掛けた。
「誰だお前は?子供が出しゃばるなよ」
「私は冒険者のロゼッタです。
弱い者いじめ何て、修道士のする事じゃな い」
私は青年を守るように立った。
「フレア様は仰られている。魔族は魔物と同じ で、人族の敵であると。お前も人族の敵なの か」
「私はこの人の味方なだけです」
修道士に言った。
「そこまでだ。
俺は衛兵だ。これ以上、この酒場で騒ぐなら、俺が相手になるぞ」
「そうだぜ。喧嘩ならもっと派手にやれよ」
ギルや冒険者たちが止めてくれる。ここにはフレアの信徒は少ないようだ。まあ一部騒動を煽るような声もあったが。
「異教徒共め。
貴様らにはいずれフレア様の天罰が下るぞ」
と言って、修道士の少年は出ていった。
「あなた大丈夫?」
私は魔人の青年に声をかけた。彼は無表情だった。私はなるべく笑顔を作り、警戒を解こうと努力する。出来てるだろうか。
「すまない。迷惑をかけたな」
と言って、酒場を出ていこうとする。
「あ、待って。
あなた、私とパーティーを組んでくれない」
私は笑顔を作って頼んでみた。
「あ…ああ。」
やった意外とあっさりオッケーがもらえた。初めてのパーティーメンバー獲得成功だ。笑顔作戦の大勝利だった。何故か怯えているようにも見えるが、やった。
「ロゼちゃん、ずっと見てたけど、大人をいじめるのは良くないよ」
茶化すような声色だが、何て人聞きの悪い。私は少し打算はあったけど、彼を心配して行動したのに。声の主は、デュランのパーティーの双剣士のリリーだった。収穫祭からもう4年は経っており、少女だった彼女も、大人っぽくなっていた。酒場などで会えば、挨拶もしていた。
「いじめてないです。私今日から冒険者になったので、パーティーを組みたいんです。リリーさんも良かったらどうですか?」
だめ元でお願いしてみる。デュラン商会のメンバーだから無理なのは承知だ。
「うーん、どうしよっかな。
ロゼちゃんが可愛くお願いしてくれたら、考 えてもいいよ」
と無茶振りをしてくる。可愛くってどうしたらいいのだろう。うーん。
「リリーさんが隣にいると安心する。ずっと一 緒にいてもいい?」
と言って、腕にしがみついてみた。こんな感じかな。
「ずっと一緒にいようね。ロゼちゃん」
と言って、私を抱きしめてきた。これはオッケーという事なのだろうか。中々私は解放されず、しばらくリリーの抱擁が続いた。
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