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内政編
71.メリアと初デート
しおりを挟む早速二人はアルダート城から出て、アルダート城下町内で有名な飲食店の集まる「城下中央街」と呼ばれる場所に足を向けた。
一応、今回は二人きりということになっているが、実際は後方にミスティア第二大隊が目立たず近すぎない位置で護衛してくれている。
周りを護衛で固められているとはいえ、なにがあるかわからないので、俺とメリアも不測の事態に備えるため、SIG P320のCompactを携行し、防刃チョッキを着用している。
とはいえ、今日は“二人きり”でのお出かけなので、難しいことはあまり考えないで行動することにした。
起きてから一度も食事をとれていない二人は、足早に城の正門から10分ほどの場所にあるミゲル食堂へと向かっていた。この食堂は多くの地域住民に愛されているところだ。
この食堂の売りは、親会社から直接仕入れる新鮮な野菜、魚を使った料理を得意とするところで、なかでも海鮮がたっぷり入ったスープが一番人気なのだそうだ。
店につくと、丁度お昼時ともあって店内は非常に混雑していて、外には長蛇の列ができていた。
「結構混んでるな……どうする?並ぶか?」
「そうね……、朝から何も食べてないからすぐに食べたいのよね」
「そうだな、じゃあほかの店に行くか!」
「それならディーウェス・ボヌムレストランに行ってみようよ!」
「おっ!いいね!たしか高級料理店だったよね?」
「そうだよ!」
次の行き先にしたのは、ボヌム商会所属のディーウェス・ボヌムレストランという高級料理店で、この店の売りは高品質の食材と希少な食材を使った一品料理と接客対応が高級ホテル並みというところだ。
しかし、ここも昼時とあってか、店外まで列はできていないが満席じょうたいだったのでここも諦めた。
「ここも、混んでるな……」
「ほかに、しましょ!まだまだ一杯お店はあるから!」
「そうしよっか!」
この次に向かったのは、リカルド商会所属のリシャールキッチンと呼ばれる元の世界でいうところのファストフード店のようなところで、ここは新鮮な野菜や肉をパンにはさんでお手ごろな値段で提供するお店で、安いことと早く料理が出てくるということもあってか庶民から絶大な人気を誇るところだ。
ここは、ファストフード店らしく回転率が高いのか(一人のお客さんが店にいる時間が短いこと)、この時間にしては比較的席の余裕があり、運のいいことにテーブル席が空いていた。
「メリア、二人で座れるところが空いているし、ここにしないか?」
「そうね、そうしましょ!庶民の間で人気だって聞いていたから、丁度ここも気になっていたのよね!」
早速店に入る事にした二人は、まずどんなメニューがあるのか気になったので、入り口近くの小さいテーブルの上に縦長のメニュー表が置いてあったのでそれを見る事にした。
そこにはアメリカ発の有名なサンドイッチ屋のようなラインナップで、ベースとなる商品を選んだ後、パンやソース・追加トッピングを選べ、自分の好みのものにカスタマイズできるので、それを含めるとここで頼めるものは百近くある。
そして百を超えるメニューの中から頼むものを決め、店内へと足を踏み入れた。
入ってすぐ目の前に店員さんが横に4人並んでいるカウンターがあり、それぞれの店員さんの前に並び、そこで注文をして会計を済ませ、その場で料理を受け取る、まるで元いた世界でいうマ◯クみたいなスタイルのようだ。
そこで、俺とメリアが注文したのは、食パンを斜め半分に切ったものに、塩と酢・胡椒を混ぜたものがかけられたレタスとトマトと玉ねぎ・ハムが挟まれているこの世界でオーソドックスなサンドイッチにした。
この世界に調味料はあることにはあるが、最もポピュラーなものは塩や酢、胡椒、唐辛子、しょうが、生ニンニクといったもので、基本的な料理の味付けはこれらが多いそうだ。
希少なものやあまり出回らないものでいうと、はちみつや砂糖・ケチャップがあるようなのだが、理由としてまず、認知度が低いことと、生産している工場の規模がとても小さいこと、さらに希少な分価格が非常に高いということが挙げられる、このことから、貴族や大商人などの上流階級の人間しかこれを使わない。
値段は、日本円にすると1円ぐらいの価値という驚きの値段で、これで10×10×3(厚さ)㎝の大きさのパン二枚に野菜がたっぷり入っているのだからさらに驚いた。
コンダート王国の貨幣価値(コンダート“メル”)と日本の貨幣価値を比べてみると以下の通り(参考にデスニア帝国のデスニアテルも)。
日本円で一円の場合
コンダートメル=100M
デスニアテル=1,000T
となる
この“メル”という通貨単位はコンダート王国の同盟国のエンペリア王国も使用していて、“テル”という通貨単位はデスニア帝国以外に、イスフェシア皇国・テレン聖教皇国が使っている。
コンダートメルの硬貨の種類は以下の通り。
1コンダートメル 銅貨1枚
10コンダートメル 大銅貨1枚
100コンダートメル 銀貨1枚
1000コンダートメル 大銀貨1枚
10000コンダートメル 金貨1枚
すべての硬貨の中心には大きくMのアルファベットが書かれ、M右の縦線の部分に二本線が引かれ、その周りを取り囲むように月桂樹の葉ののようなものがあしらわれている。
このコンダートメル硬貨のすごいところは、大量生産されているものにもかかわらず一切偽造されたものが紛れ込まないことだった。
それはなぜがというと、硬貨一個一個に小さな魔術式が書き込まれており、これによって偽造を防いでいるのだという。
最初に見たカードといい硬貨といい、現代世界顔負けの技術を持っていることに感動さえ覚える。
閑話休題
そんなことより、二人はやっとありつけた食事のことしか頭になく出てきた瞬間、小走り気味にテラス席に向かい、何も言うことなくすぐに、そのサンドイッチにかぶりついていた。
「う、うますぎる!」
「初めて食べたけど、こんなにうまいものなのね!」
「かかっているタレみたいなものが素材の味を邪魔しないようになっているから、なおさらおいしいね!」
「そうね!最高!これもそうだけど、何より二人っきりで食べれていることが幸せ」
「俺もだよ」
そんな、バカップルみたいな発言をしてしまった二人は、お互いに恥ずかしくなってしまい、しばらく無言でサンドイッチをむさぼるように食べていた。
「メリア、のど乾かないか?」
「そういえば、飲み物は何も注文していなかったわね、何か買ってこようか?」
「いや、水を“もらってくるよ”」
「え?水は“買うもの”よ?」
「え?」
どうやらコンダート王国内では、水はそこら辺にありそうな井戸水を汲んできたものではなく、加工されたものを購入して飲んでいるようだ。
これには理由があって、過去に井戸水や川等でとってきた水による伝染病が流行し、この伝染病で当時の国民の6割が死亡し、当時の国王(今か4代前にあたる)がこれが原因とみられる病で命を落としている。
これを受けて、コンダート王国内全土の国民に対して“法律”として、水を飲料水として使う場合は必ず沸騰させ消毒したものを使うようにと定めた。
この影響を受けた隣のエンペリア王国もこれに倣い同じ法律を制定している。
ただし、コンダート王国やエンペリア王国以外の国は川や井戸水をそのまま飲んでいるようだ(コンダート王国軍は非常時や緊急時はそのまま使っているようだ)
正直驚きを隠せない俺は、頭の中がすっきりとしないまま、レジへと向かい水を頼んだ(価格は1Ⅿ)。
それをもって、席に行くとメリアが座っている席を取り囲むようにして、こわもてのお兄さん5人がとりかこんでいた。
「よう、そこの可愛いねーちゃん、俺らと一緒に遊ばない?」
「俺たち、そこそこ名の売れた冒険者だから、お金はもってるよ」
「いい酒場もあるし一緒に来ない?」
そんな男たちに対して、まるで汚いものを見るかのような目つきで拒否反応を示していた。
「いいえ、結構です、私には連れがいるので」
「そんな、やつよりきっと楽しめるぜ?なぁ?お前たち?」
「ゲルダ兄さんの言う通りっす!」
あまりにもテンプレすぎる展開で、思わず俺は笑ってしまいそうだったがそれをこらえて、俺は水をゆっくり飲むことを諦め、メリアをその場から連れ出しさっさとどこかへ行ってしまおうとした。
「メリア、行くぞ?」
「うん!」
当然こいつらは、そんな俺のことが気に食わないので、予想通り背中から声をかけられた。
やっぱりどこかへ行かせてくれないようだ。
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