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内政編
73.パルティア宝飾店
しおりを挟むやっとの思いで、歩き出した俺とメリアの周りには、流石に同じことが起きてはまずいと思ったミセア大佐とその直属の部下数名がすぐそばを固めていた。
最初メリアは嫌がるそぶりを見せたが、俺がこの状況を受け入れられないなら王城に帰ると言い出すと、不承不承とった感じではあったが容認した。
今歩いている「城下中央街」には食堂のほかに洋服屋や花屋、武器屋と様々な店が軒を連ね多くの人でにぎわっている。
俺はこれから向かおうとしている宝石店は、ベリス商会所属のパルティア宝飾店(アルダート店)といって、国内だけではなく世界中にある希少で美しい宝石やガラス細工を扱っているお店だ。
そして、ベリス商会は宝飾品・高級衣服・家具・武器・希少鉱物などを扱う商社で、商品の中には貿易品が多く貴族などの上流階級に人気が高い、少数だが高級食材なども扱っていて、それを使った料理を出す高級料理店も経営している。
さらに傘下企業にはベリスホテルを持ち、こちらも上流階級をターゲットとしたホテル運営をしている。
そのほかに、貿易のための船・護衛用の戦闘艦、警備兵などを保有し比較的大きな商会となっている。
「ねぇ、これからどこへ行くの?」
目的地に向かっている途中、行先も目的も何も知らないメリアは、不安に思い始めたのか、俺の肩を腕をつかみながら上目遣いで、そう聞いてきた。
「どこ行くかって?それは秘密!でも、その場所についたらきっとさっきの出来事が吹っ飛ぶぐらいのところだよ!」
「えッ!それは楽しみ!」
何度見ても思うが、メリアが喜んだ姿はなんとも少女的な喜びのようで、可愛くそして愛らしい。
そうこうしているうちに、目的地に着いた。
「いらっしゃいませ!国王陛下!女王陛下!」
俺たちが近づいたのを確認して、店の中から店員全員が出迎えてくれた。
しかも、その中心にはべリス商会社長のパルティア・リチャードが立っていた。
「えッ!どういうこと?」
「流石に俺もびっくりだな……さては君の仕業かな?」
「は、はい……」
「いや、いいんだ、別に攻めているわけじゃないんだ、ありがとう!」
どうやら、ミセア大佐が気を利かせて、この店舗に掛け合ってくれていたようだった。
しかし、そんな本人も社長が来て出迎えてくれとは要求はしていなかったらしく、とても驚いていた。
「あなたがここの社長さんですか?」
「お初お目にかかります、わたくし当パルティア宝飾店及びべリス商会社長を務めております、パルティア・リチャードと申します、以後お見知りおきくださいませ」
「よろしく!」
「このようなところではなんですので、どうぞ内にお入りくださいませ」
そういって、リチャード社長自ら直接俺たちを店の奥にある貴賓室に案内してくれた。
店内を見てみると、高級な商品が置いてあるのにもかかわらず、多くの人でにぎわっていた。
どうやら、最近ここで結婚指輪などを買うことが庶民の中で流行っているらしく、その理由が、ここで買った指輪を身に着けているとずっと幸せになれるというらしい、本当かどうかは定かではないが、どこの世の人間も流行りや縁起のいいものにはすがりたくなるのだろう。
「どうぞ、お入りください」
リチャードに連れられ入った部屋は、まさにVIPルームと言うにふさわしい雰囲気の部屋で、高級そうな机や装飾品などが置いてあり、この部屋専門のメイドもいた。
そして、通された部屋の中心にあった机の上には珍しい宝石が所狭しと並んでいた。
それを見たメリアは、興奮と喜びが隠しきれない様子で、目を大きく開き少し鼻息が荒い。
「すごい!すごい!こんなにきれいな宝石が並んでいるところ初めて見た!」
「本当に?王城にはもっといっぱいあるんじゃないの?」
「あるはずなんだけど、城が何しろ広すぎてどこにあるのかわからないのよ、しかも、私のお父様もお母さまもそんなに宝石に興味を示さなかった人たちだったから、あんまり期待できないし」
「女王陛下にそこまで喜んでいただけるのは、この私にとって最上の喜びです!さ、さ、お茶もご用意しましたので、どうぞごゆっくりご覧になっていてください」
すると、リチャードは他の部屋へと消えていった。
俺はその姿を少し不思議そうな目で見ていたが、メリアはそんなことより目の前にある宝石に夢中になっていた。
目の前に並んでいるのは元居た世界にもあったようなものばかりであったが、そんな中に見たことのないものも並んでいた。
その見たこともない鉱石というのは「オリハルコン」と呼ばれる鉱石で(某RPGで聞いたことあるとか言わない)ダイアモンドより硬く、透き通るような水色をしている。この鉱石は主に王族や貴族が使う武器や防具の強化素材として使われていて、その硬さと相まって、非常に強力なものに仕上がることで有名。そのほかに、魔術道具としても有用で、これを使うことによって非常に制御が難しい魔法でも使いやすくなるようだ、ちなみに、この鉱石は魔術核融合炉の魔術防壁の素材としても使われている。
もう一つ「メルケニカ」と呼ばれる黒く透き通っていて鉱石で、これは最近ガレア郊外にある鉱山でたまたま発見されたばかりもので、まだ細かい特徴や性質などは分かっていないが、現時点でわかっていることは、オリハルコンよりも硬く魔法を一切通さないということだ。この鉱石を採取するとき困難を極めたようで、当初オリハルコン製のピッケルで試みたが全く歯が立たずとても硬かったので超大規模な爆発魔法を使ってが、それでもようやく小さなかけらがとれるほどなのだという。これは未確認の情報だがどうやら魔力を注ぎ込むと浮力を発生させるようだ。
お互い目を光らせながら、宝石を見ていると、先ほどまで姿を消していたリチャードが部屋に戻ってきた。
「大変長らくお待たせいたしました国王陛下、“例の物”がご用意できましたのでこちらまでお越しください」
「お、おう、ありがとう」
正直俺はリチャードが何を用意したのかわかっていないし頼んだ覚えがなかったので、返事があいまいなものになってしまった。
恐らくこれも、ミセア大佐の差し金なのだろうと、後ろに武装したまま立っていたミセア大佐に顔を向けると、首を横に振るどころか首をかしげていた。
誰だが知らないがもうすでにここでも話が通っているようだったし、大体何か察しがついていたので“例の物”を見るべくそれが用意してある部屋に向かった。
するとそこには一対の指輪が用意されていた。
「いかがでしょうか?こちらはイリア様からの依頼によって作成されたこの世に一つだけのペアリングです、材質はオリハルコンによってできていて、ダイヤモンドをところどころに埋め込んでいるので非常に価値の高いものとなっています」
「すごくきれいだ!これは気に入ったよ!……というよりこの指輪はいつ依頼されたんだ?」
「気に入ってい頂いて何よりです。依頼は確かハミルトン奪還作戦後かと思われます、何でもイリア様がおっしゃるには、今度二人のだけの為に極上の指輪を送りたいからとのことだったので」
「そうだったのか、それでこの指輪の値段は?」
「はい、こちらは9千億メルです!」
リチャードの口からとんでもない額を伝えられ、驚きのあまり俺はキョトンとしてしまった。
ただ、言った本人さも当然のことのようにさらっと言いのけているが、日本円にしても9億円もするので相当高いことがわかる。
「そ、そんなにするのか……」
「ええ、これを作る為だけに名のある職人ギルドに特注品として頼んだことはもちろん、オリハルコン自体が加工しづらく、そしてとてつもなく高価なものなので……値段を聞いた時は正直私も飛び上がりそうになりました、しかし、ここまで手をかけているとなると頷かざるをえません」
「しかし、お金があったとしてもこんな大金どうやって払うんだ?」
「そのことについては、すでにイリア様と話がついていますので、お手数ですが詳細はイリア様に直接訪ねた方が早いかと」
「わかった、後で直接乗り込めばいいんだな?」
「何もそこまでなさらなくても……、そ、それより女王陛下がお待ちなのでは?」
「お、おう、長々と悪かったな、とりあえずこの指輪はいただいていいんだな?」
「どうぞお持ちください、さ、さ、ではどうぞお戻りください」
リチャードにせかされ部屋を出ると、メリアはまだ宝石に食らいついていた。
「メリア、お待たせ!」
「もう戻ったの?おかえり!」
「メリア、左手を貸して」
「へ?うん、でもなんで?」
「いいから、いいから、はい、これで良し!」
俺はさっき隣の部屋でもらった指輪を、さっそくメリアの左手の薬指にはめてあげた。
すると、メリアは喜びを通り越して、感動のあまり号泣し始めてしまった。
俺からすると、急に泣き出されたものだから軽いパニックを起こし冷や汗まで出てきた。
どうも男というのは女の涙(特に怒りと悲しみ)には弱く、対処に困る場面が多いような気がする。
しばらくすると、落ち着きを取り戻し、何とか喋れるまでになった。
それでも俺は体が硬直して何もできず、ただただその場に立ち尽くすだけだった。
「ック、ご、ごめんね、うれしすぎて、ッ、泣いちゃったの、本当にありがと!私今すごく幸せだよ!大好き!」
まだほんの少し涙を流していたが、これまで以上の満面の笑みで喜んでくれた。
「よかった、何事かと思っt……、ッッ!」
やっと硬直が解け、近くにあった椅子に座ろうとした瞬間、メリアは俺に抱き着き、唇にキスをしてくれた。
「私からのお礼よ!本当にありがとう!」
「喜んでくれてよかった!リチャードもありがとう!」
「いえいえ、両陛下が喜んで頂けるだけでこれ以上の喜びはありません」
「それじゃあ、メリアそろそろ帰ろっか!」
「そうね!帰りましょ!」
俺らが入り口に向かって歩き出していくと、店内にいた店員全員で退店のあいさつしてくれた
「「「「ありがとうございます、またお持ちしております」」」」
今日は最後にメリアが普段勤務している、“銀行”へと向かった。
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