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2章 交易都市の錬金術士

029 転移魔法陣

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「面白いです、もう1回やっていいですか?」

「サクヤ、交代するべき、はよ」

2人は転移魔法陣で人形を移動させ遊んでいる。

「やめないか2人とも、オモチャじゃないんだぞ、ゴメンなタリアム」

「別に構わないわよ、アンタ達みたいに私の研究を馬鹿にしない人って珍しいから私も嫌な気分じゃないわ」

「凄い研究だと思うんだけどな、馬鹿にされる理由がわからない」

「『神々の七問』って錬金術士の中で不可能とされてる理論の中の1つなの、先生は周りに馬鹿にされても本気で研究を続けていたわ、そのせいで『狂人』なんて呼ばれていたけどね」

『狂人ジンク』思い出したぞ、リザードマンの巣を壊滅させた魔核を作った錬金術士だ。

「私は先生の研究を引き継いで基礎理論を完成させたわ、後は実用化に向けて改良をするだけなんだけど実験には大量の魔石が必要な事がわかったの」

「それなのに魔石が手に入らない様に領主が嫌がらせをしてるって訳か、噂は他にも聞いたが本当にロクでもないヤツだな」

「アイツ私が基礎理論を完成させたのを嗅ぎつけると手のひらを返してスポンサーになるって申し出てきたわ、その代わり完成させたら自分の名前で発表するってね、今まで散々先生の事を馬鹿にしてきた癖に」

俺も元の世界で大口の契約が取れたと思ったら何故か上司の手柄になっていた事があった、あの時は悔しくて泣いてしまったな。

「転移魔法陣は先生の研究の成果よ、私は先生の残した研究結果を組み合わせただけ、賞賛されるのは私じゃない、もちろんあの馬鹿領主なんて論外よ」

「よし、代金は要らない、あの魔石を研究に使ってくれ、必要なら他の魔石も無償で提供するよ」

「頑張った人は報われるべきです!領主さんの事また嫌いになりました!」

「タリアム、ふぁいと」

いつの間にか2人もタリアムの話を聞き入っていた様だ、これでまた俺達の中で領主の株が下がったな。

「アンタ達…本当にいいの?私は返せる物は何も無いわよ?」

「俺も昔手柄を横取りされた事があってね、その時の自分とタリアムを重ねてしまったんだ、俺の自己満足さ、今持ってる魔石はこれくらいだけど大丈夫か?」

俺はゴロゴロとアイテムバッグから魔石を取り出す。

「コレって…全部ファームライノの魔石!?アンタ達何者なの?商人には見えないし凄腕の冒険者か何か?」

「ただの旅人だよ、探し物をして3人で旅をしてるんだ、しばらくは黄昏の巨人亭って宿屋に滞在する予定だから何かあれば連絡をよこしてくれ」

「わかったわ、ありがとうねユイト、サクヤとアイギスも、絶対に完成させて見せるわ」

ギルドとタリアム、魔石が大量に必要になったな、しばらくは魔石狩りの日々が続くことになるだろう。
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