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5章 邪なる者達

158 粛正

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「お…お前は何者だ!?魔人になった俺達の仲間をこうも簡単に…ありえねぇ!」

「コイツが例の商人の言っていた『鬼』か!?」

「出くわしたら逃げろって言ってたヤツだよな、魔人になった俺達より強いヤツなんている筈ないと思っていたが…」

ヤツらの仲間を1人倒した事で残された魔人達に動揺が走る、人智を超えた力を得て自分が無敵になったと思いこんでいた矢先の出来事だ、混乱するのも仕方ないだろう。

「どうだ?降参するつもりになったか?名乗り出るなら今だ、投降するなら危害を加えない」

「ほ…本当か!?俺はアンタに投降する!だから命だけは…グフっ!?」

1人の魔人が戦意喪失し俺に投降しようとしたその時、彼は背後から仲間の腕に胸を貫かれた、貫いた手には禍々しく光る宝石が握られている、偽核だ。

「な…何故?俺は死にたく無かった…だけなの…に」

「誇り高き魔人に臆病者は必要ない、お前の偽核は回収しといてやるよ、もっと魔人に相応しいヤツを仲間にした方がこの偽核も喜ぶってもんだ」

胸を貫かれた魔人の全身が赤黒い粒子へと変化し…やがて跡形も無く消滅した。

「…何故だ…何故彼を殺した?彼は既に戦意を喪失していた、どうして仲間だった男を躊躇なく殺す事ができたんだ…」

「何故だって?俺達魔人がこんな臆病者と一緒だと思われたく無いからな、それにお前を倒す事が出来れば侯爵様はきっと褒賞を出してくれるだろうさ、頭数が少ない方が取り分が多くなる、それが理由だ」

「そんな事の為に…最後にもう一度だけ聞く…他に投降するヤツはいないか?仲間の粛正が怖いなら俺が守ってやる、これが最後の勧告だ、どうか自分の意思で考え欲しい」

魔人達の顔を見渡すが投降の意思を持つ者はいない様だ、残された魔人達は全員ニヤニヤと薄ら笑いを浮かべながらこちらを見つめている。

「お前はとことん甘ちゃんだな!そんなヤツに俺達がやられる訳がねぇ!掛かれ!」

3人の魔人が一斉に攻撃を仕掛けてくる、先陣を切って突撃してきた1人の頭蓋に咲夜の切っ先を突き立てる、刃先は何の抵抗も無く魔人の頭に吸い込まれ貫通した。

「まず1人…」

刃を突き立てたまま咲夜の刀身に青龍の力を宿らせる、魔人は瞬時に全身を氷像へと変化させ砕け散った、辺りに氷の破片がキラキラと舞い散る。

「何が起こっ…ギャァァ!!」

「おいどうしたん…ヘブッ!」

砕け散った魔人の背後から並んで触手を伸ばしていた2人の背後に移動し首を一振りで同時に切りとばした、切断面から発生した朱雀の炎が2人の魔人を包み込む

「これで3人、次は誰だ?」

「ひ!怯むな!数で押し込め!同時に攻撃するんだ!」

先程仲間の命を奪ったリーダー格の男が絶叫する、その叫び声を合図に残された魔人が一斉に俺目掛け飛び掛かって来た。
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