バランスブレイカー〜ガチャで手に入れたブッ壊れ装備には美少女が宿ってました〜

7章 人魔戦争

337 名もなき港

「この度は誠に申し訳ありませんでした！！」

この世界に来て誰かに土下座されるのはこれで二度目だ。今俺の前で地面に頭を擦り付けている中年の男性、どうやら彼はこの港を管理している責任者らしい。

「もうよして下さい、俺は何も気にしてませんし誤解が解けたならそれで十分です」

「そうは参りません！我がグランズ王国救国の英雄であるユイト殿を幽閉…この様な不祥事を起こしてしまうなど言語道断！かくなる上は我が命をもってこの失態のお詫びを…」

「だからそれはやめて下さい！元々何も考えずにいきなり空から街中に降りた俺にも問題があったんですから！魔族の襲撃だと勘違いされても仕方ありません！」

自らの首に短剣を突き立てようとする男を慌てて静止する。こうなってしまった原因は俺にある。数時間前港の中心部へと空中から降りたった俺は港の警備隊に魔族と勘違いされ身柄を拘束されてしまったのだ。

「ユイトの言う通りさ、アンタは真面目に自分の仕事を全うしようとしただけじゃないか？ほんの少しばかり早とちりしただけだ」

「奥様の仰る通りで御座います、貴方の様に職務に熱心なお方をこの様な事で失うのは王国にとって大きな損失。陛下とて決してその様な事は望まれないと思います」

どうやって目の前の男性を落ち着かせようか途方にくれていた時部屋のドアが開いた。そして俺が幽閉されていた部屋に良く知る顔の2人が入ってきたのだ。

「ラッカさん！？それにペーギさんまで！なんでこんな場所に？」

「久しぶりだねユイト、いやびっくりしたよ。魔族を捕らえたって話を聞いて慌てて様子を見に来たらアンタが捕まってるんだからさ。見たところ元気だったみたいだね」

「ご無沙汰しておりますユイト様。いやはや捕らえられたのがユイト様だと知った時には驚きました。我が弟子も元気にしてましたでしょうか？」

王都グランズでお世話になったラッカさんとペーギさん。その2人がどうしてこの港に？

『師匠！久しぶりだね！そっかこのままじゃ師匠に声が届かないや。ユイト、ボクの憑依を解いてもらっていいかな？』

「悪い悪い、皆ももう憑依を解いてもらって大丈夫だ。窮屈な思いをさせてしまったな」

神靴ヘルメスに憑依したルメスが念話で自由になりたいと訴えてきた。ペーギさんは記憶を失っていた間ルメスの面倒を見てきた彼女の恩人だ、久しぶりの再会にいてもたってもいられなくなったみたいだな。

「なんと、一体どこから大勢の人間が…？これは…一体？」

ルメス達6人の憑依を解除すると一瞬部屋の中に光が満ち彼女達が姿をあらわす。目の前で土下座をしていた男性は何が起きたか分からずに手に持っていた短剣を落としてしまった。

「シノーペさんて言ったかい？この港の責任者であるアンタとも話がしたい。だけどこの部屋はちょいと狭くなってしまったからね」