花間の高手

きりしま つかさ

文字の大きさ
70 / 262
0000

第0070話 真っ向対決

しおりを挟む
校門前には大勢の人が集まり、人だかりが形成されていた。

紫髪碧眼の異色美と短髪中性的容姿の少女が場を支配し、周囲からは暗に喝采が沸き起こる。

特に二人の美女が男のために決闘するという奇聞は珍しい光景で、人々は秋羽という名の少年の正体に興味津々だった。

「どけろ」徐洛瑶が手を振ると、佟丹云ら三人の仲間は慌てて後退した。

彼女たちの声援は熱いものだ。

「徐少頑張れ!相手を叩き潰せ」

楚雲萱は牌子を下に下げ、鼻で笑った。

「どうぞご期待あれ。

貴方様の実力をご覧に入れます」

「痛痒を感じてないのか?」

徐洛瑶が冷ややかに笑みながら、李小龍のポーズを取る。

「よし、始めるぞ」

彼女の動きは確かにプロ級だ。

普通の大男なら一撃で倒れるほどの力技だが、楚雲萱も負けじと身を翻す。

その目には驚きが浮かぶ。

「なるほど、空手の達人なのか?」

二人の激闘が始まった。

蹴りや拳技はプロ級の散打さながらに繰り広げられ、観客の視線を釘付けにする。

「徐少!全力で殴れ!」

佟丹云らが叫ぶ声が校門を揺らす。

楚雲萱の側には二人の大型男が墨鏡越しに緊張している。

彼女たちの仲間は秋羽の存在を恐れていた。

もし単独戦なら彼らも構わなかったが、今は傍観者として黙っているしかない。

「どうしたんだ?保険車が通れないよ」夏蘭のポルシェや自転車で来ていた生徒たちが混乱する。

「何かあったのか?」

「前で見物してるんだよ」知り合いの男子が答える。

「五班の文化委員さんもいたか?秋羽君に関連した騒動だ」

「誰?」

蘇玉敏が興味津々に聞く。

「もちろん秋羽君さ。

彼女たち二人は彼のために喧嘩してるんだよ」

「あ、そうなんだ……」五班の生徒たちは沸き立つ。

「また秋羽君か!もう校内スターだね」

「秋羽君!早くこっち来い!女の子がお前を殴り合いやってるぞ!」

その声に反応したのは四大天王と秋羽だった。

彼らは駆け寄ろうとするが、何大剛らの顔には笑みが浮かぶ。

「どうやら羽君のために騒動になってるようだな」

「おっさん、ほんとにおいしいねえ」

「はやぎちゃんめっちゃカッコウだよ」

「早く行こうぜ、はやぎちゃんを守ってやろうぜ……」

四人の巨漢たちが軽々しく自転車を脇に置き、プロの護衛のように前の生徒を押しのけて、降りずにいた秋羽を連れていく。

後ろには好奇心で目を輝かせる夏蘭と、五班の生徒たちがついてくる。

秋羽は首を傾げた。

「どうしてまた俺に絡んできたんだろう? 一体誰なんだ?」

彼は無意識に群衆に囲まれながら、ゆっくりとペダルを漕いでいく。

四人の巨漢は意気軒昂で、「どけよ、どけよ、主人公が来たぞ」と大音声を上げた。

「はやぎちゃんが出れば日月も暗くなる」

「早くどけろ、殴り合いになりそうだぜ?」

胡州は鼻を尖らせて、「第一高校の超絶美形男子秋羽様が到着です。

皆さーん?」

と太い声で宣言した。

1000

「きゃあっ!」

生徒たちが押し潰されながら悲鳴を上げたが、その巨漢たちの体格を見れば、口に出しかねる汚い言葉も飲み込んでしまった。

秋羽の到来を聞いた生徒たちはさらに騒ぎ立て、「早く道を開けろ、はやぎちゃんにデートさせてあげようぜ。

彼女が選ぶのは誰かな?」

と叫んだ。

「みんなどいて! 一刻も早くはやぎちゃんに出して! 次には人命に関わるぞ……」

生徒たちがギリギリで道を開けると、秋羽たちは外に出た。

この新入生の秋羽は既に校内有名人だったため、彼が現れた瞬間、「はやぎちゃん来た!」

という声が上がった。

「自転車に乗ってる男の子、それがはやぎちゃんだ……」

楚雲萱は横に身を避けながら、「人が来てるよ。

あとで戦おう」と言った。

徐洛瑤も手を止めた。

秋羽は好奇の目線を向けたが、紫髪の楚雲萱は確かに女性だが、もう一人の徐妖娆は明らかに男性だ。

彼は内心で「あいつらは双雄のやつらか」と思った。

五班の生徒たちも驚きを隠せない。

「法拉利姫以外にもバオロン校花がはやぎちゃんを好きなんだね……でも徐洛瑶ってのは女性しか好かないはずだぜ、どうして変わったんだよ」

「羽哥、いつから徐少と仲良くしてるの?」

何大剛が訊いた。

徐洛瑶は校内で「本様」と自称していたため、生徒たちもそのように呼んでいた。

秋羽は頬を赤らめ、「え……」と口ごもる。

樹陰での出来事を思い出し、あの変態男が彼の唇にキスしたことを思い出した。

人々の視線を感じて背筋が寒くなり、顔がさらに熱くなった。

楚雲萱と徐洛瑶は慌てて近づき、「はやぎちゃん、私たちふたりでどちらを選ぶ?」

と訊ねた。

「はやぎちゃん、私の彼氏になってよ」

特に後者は相手の正体も知らないが、旗袍美少女より自分の魅力の方が勝つと確信し、初めて秋羽に色目を使うのである。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...