花間の高手

きりしま つかさ

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第0128話 意気軒昂

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緑の絨毯のように美しいキャンパスで、彼女たちの悲鳴を聞いた秋羽は微笑みながら車から降り、軽やかな足取りで教室棟へ向かう。

山奥出身の彼が想像したこともなかったのは、ある日突然女性からの憧れを感じることだった。

学校生活は秋羽にとって楽しいものだ。

同年代たちと会話したり笑ったりする時間は、山間部での老人との毎日よりもずっと楽しかった。

クラスには夏蘭や鄭語菡という校花級の存在があり、彼らの美しさを見るのは悦びそのものだった。

夏蘭が短いスカートに身を包むと、彼女のプロポーションはより際立つようになり、さらに若々しく見えた。

しかし、顔には北国の三九天のような厳粛な表情が浮かんでいた。

「この不良少年め、夜も帰らないなんて…どうしようもないやつだわ」と心の中で呟きながら。

秋羽が昨晩自宅に戻らなかったことへの怒りは夏蘭の顔に表れていた。

彼女は彼を不快に感じ、その態度から誰かに二百万円でも借りたように見えた。

秋羽が軽い調子で教室に入ってきた瞬間、彼女の憤りはさらに増した。

「おーい!久しぶりだぜ!」

と声を上げて迎えようとする何大剛たちの熱烈な歓迎に、夏蘭は我慢の限界を迎えつつも耐えていた。

やがて授業開始のベルが鳴り、秋羽が席に戻ると隣の女の子から冷たい質問が飛んできた。

「どこ行ってたの?一晩中帰ってこなかったんだよ」

その口調に不快感を覚えた秋羽は、「俺には用事があった」と淡々と返した。

夏蘭はさらに憤り、「勝手に外に出るなんて許可しないわ!必ず許可を得てからでないと…」と叫ぶ。

「珊姐に休暇を申請してたんだよ」そう言い放ち、秋羽は机に肘をつけて彼女の方を見ないようにしていた。

夏蘭は歯噛みしながら拳を握り、「あの野郎め…その腕には殴りたい衝動が沸き上がるけど、あの男の格闘術を考えると無理だわ」と諦めていた。

教師が教室に入ると授業が始まった。

秋羽は気まぐれに授業を聞くこともあれば携帯電話や睡眠を選ぶことが多く、誰も彼の行動を咎めなかった。

第一高校では静かだが暗躍が渦巻いていた。

雄鶏・聞慕白が一時姿を消したことで、もう二つの悪少グループである蛙・冷成強と水生虫・要玉堂が勢力を拡大し始めた。

冷成強は『英雄会』という組織を作り、脅迫や誘惑でメンバー数を100人以上に増やし、「校内最強」と名乗っていた。

一方の要玉堂は『凌玉堂』と称し、現在70人ほどの規模だが、その質は高く多くの部下が散打や空手の経験を持っていた。

二人は暗躍しながら勢力を拡大させ、特に凶暴な人物を勧誘するようになり始めていた。

そして秋羽という存在も彼らの視線から外れることはなかった。



第二限界の休み時間、四五組の外校男子が肩を並べ教室に侵入した。

その横暴な態度は教室中に緊張を走らせた。

刀削顔の男が鋭い視線で室内を掃くと、喧騒は一瞬で消えた。

秋羽と何大剛らが後ろで談笑している間に、他の生徒たちが無言になることに気付き、振り返った。

何大剛らが驚きの表情を見せる中、刀削顔男が近づいてくる。

その視線は秋羽に注がれ、「秋羽だな?」

と傲慢に尋ねた。

「はい、何か用ですか?」

「小刀と申します。

老二の手下です。

噂通り強いんですね。

老二が会いたいと言っています。

このまま来てください」

その男の目には軽蔑の色があった。

最近の評判とは裏腹に、ただ雄鶏を倒しただけだなどと嗤っているようだった。

小刀は蒋泊利の通称で、老二の得え手な部下第一号。

英豪会設立後は第一香主として重用され、この日も老二の命令で秋羽を迎えに来た。

老二という名前は秋羽も聞いたことがあるが、三大悪少とは無関係だと思っていた。

もし本当に仲良くしたいなら構わないが、この小刀の態度は気に入らない。

彼女は淡々と答えた。

「会いたいと言っているなら本人が来ればいいでしょう。

申し訳ありませんが今は都合が悪い」

蒋泊利の眉が跳ね上がり、険しい表情になった。

「どういうつもりだ?老二に無礼をなすのか?」

「面子は相互です」

彼女の言葉に反応して何大剛らが立ち上がった。

四人の体格から想像できるほどの迫力があった。

「どうする気だ?喧嘩か?」

「この五組で暴れるつもりか?羽哥を脅すのか?」

第一高校では双雄、三大悪少の次に秋羽の名が知られていた。

その下には四大剛腕、六猛といったグループも存在した。

蒋泊利は強烈な戦闘力を持ちながらも、四人の厳しい表情を見て息を呑んだ。

彼の手下たちも脅かすように叫んだ。

「お前らは見なかったのか?小刀様がここにいるんだぞ」

「こいつらは老二の傘下だ。

一筋毛触れたら第一高校から出ていけ」

秋羽は手を上げて仲間達を制し、蒋泊利に向かって言った。

「老二と会うなら誠意を見せないとね。

尻尾で押しつけるようなことはやめてくれ。

私は無能でも問題ないが、トラブルは避けてほしい。

お互しが井戸水を飲むように仲良くしておこう。

帰ってくれ」

蒋泊利の目から凶気が増した。

「ずいぶんと大それたことを言うね……」

秋羽は笑みを浮かべ、「生まれつきだからね。

十秒以内に出ていけないなら、そのまま出るしかないわよ」

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