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第0176話 女は男に劣らぬ
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澄んだ目を斜めに向けた夏蘭は、秋羽の焦がれる様子を見て軽く尋ねた。
「どうした?女性ユーザーとチャットしたいのか?」
「い、いいや……」秋羽は慌てて否定するも、内心では初めて自分のQQアカウントを持つことに胸騒ぎを覚えていた。
「うっせえ、本音じゃないだろ。
じゃあ行くわよ、私は走りに行こう」夏蘭が鼻を鳴らして立ち上がった。
その姿は若さ溢れるものだった。
「へへ、じゃあちょっとネットにしようか」秋羽にとっては周囲の女性は高嶺の花のように遠く、全く意識することもなかった。
そのまま椅子に座り込んだ。
「くそっ、この子は私の容姿を気にしないのか?まったく……」夏蘭が憤って去った後も、秋羽はQQパネルを見つめながら笑みを浮かべていた。
既に30人以上の女性ユーザーがリストアップされ、どれと話そうか迷っていた。
「あー、この子は興味津々だわ」彼女たちは様々な年代のもので、幼いロリータから成熟した御姐まで網羅されていた。
突然、ある女性ユーザーのオンラインマークが明るくなった。
プロフィール写真には背を向ける少女の姿があった。
黒髪が肩に垂れ、スラリとした体格にチェックシャツとミニスカートを着ていて、顔は見えないものの美しさと品のある雰囲気が伝わってきた。
「よしよし、さっそく可愛い子が来たぞ」秋羽はキーボードを叩き始めた。
「こんにちは」と打った瞬間、相手からメッセージが返ってきた。
「????」
大きな問号が表示された。
「あなたは誰ですか?私と知り合いですか?なぜ私のアカウントに加えたのですか?」
秋羽は髪を搔きながら少し考えてから、「お姉さん、友達になりたいです」と打った。
「????」
相手の返信が来た。
「ネットで女の子を狙っているのかい?」
この鋭い言葉に秋羽は黙り込んだ。
まさかこんな積極的な女性ユーザーがいるとは思ってもいなかった。
「えーと……」
「まあいいわ、私も男の友達がいないからどうぞよろしくね」
秋羽は目を輝かせた。
「お姉さん、私はあなたに恋をしたわ」と即座に返信した。
「????」
相手が驚きの表情でタイプする。
「本名は?何をしているの?」
ネットでのやり取りに関して秋羽は初心者だったため、個人情報を出すのは危険だと気付いていた。
「私は秋羽と申します。
高校生です」
「あら、私も同じ学年よ。
あなたはどの学校ですか?クラスは何番?」
秋羽が正直に答えると、相手も名前を告げた。
「冬如花と言います。
第二高等学校の三年六組です……」
秋羽は内心で「名前も悪くないし、見た目も美人だろう」と思いながらキーボードを叩いた。
「僕の名字は秋、貴方の名字は冬だね。
運命を感じるわ」
似酒醉人嫣然笑(ここは登場人物のニックネーム)が微笑んで答えた。
「そうね、運命よね。
でも貴方は彼女いないのかしら?」
「ないよ。
普通の女の子には目もくれないんだ」
「ふーん、結構な自信家ね……貴方のクラスに可愛い子はいるわよね?」
「あるさ。
うちのクラスはまあまあ。
特に二人の子がすごく美人だよ」
「ほんと? どんな子なの?」
「僕の前の人、鄭語菡(ていごはん)さんと同席の夏蘭(からん)さん。
二人とも超絶美形さ」
「うわー……」ここでハートマーク付きのQチャットが送られてきた。
「お兄ちゃん、貴方の同席が校花ならどうして告白しないの?」
「その子は驕慢でね、僕には無理があるんだよ」
「彼女を簡単に形容詞で表現できるかな?」
秋羽は迷わず打った。
「横暴、理屈に合わない、人に怒鳴り散らす……」
三階の部屋。
リクライニングソファに運動着姿の夏蘭が座っていた。
長い脚を組み合わせて膝上にMacBookを置きチャットしていた。
護花使者からのメッセージを見た瞬間、彼女は眦(まなじり)を剥いた。
「この野郎! 今すぐ階段から降りてきてやるわ」
実は夏蘭は秋羽のQアカウントを作成後、即座に相手と友達申請。
実際には二階に戻ってログインし、護花使者としてチャットしていたのだ。
彼女は「似酒醉人嫣然笑」というニックネームで登場した。
ネットは虚構の世界だ。
多くの人々が仮面をかぶる中、秋羽のような無防備な存在は珍しい。
現実の夏蘭は大小姐気取りだが成績優秀。
ネットでは非主流派の辣腕(らつまん)キャラクターとして登場。
Qプロフィールには鮮やかな赤髪に棒球帽を斜めにかぶり、目を細めるポーズ。
明らかに小悪魔だ。
辣妹像で秋羽のネット世界に現れたこの娘は、相手が彼女を褒めるたびに笑みを浮かべるものの、「横暴」「理屈に合わない」などの形容詞に怒りを爆発させ「この野郎! 待ってろよ、これで終わらないわ」と呟いた。
我慢汁を飲み込んで夏蘭は指先を動かした。
「汗、彼女がそういう人だったのか……恐ろしい」
階下の秋羽は相手が当事者本人であることを知らずに返信した。
「そうださ。
同席だから僕は水深火熱の毎日だよ」
「くっ! 本気で沸騰させたいわ! 私のような容姿なら、貴方と同席するだけで男たちは羨望の目を向けるのに……この野郎! 貴方が貴方の同席にいるのが悔しいんだわ。
その子には一長一短あるんじゃない?」
「見た目以外は一切欠点だよ。
罵倒するだけの飾り物さ、分かるか?」
「どうした?女性ユーザーとチャットしたいのか?」
「い、いいや……」秋羽は慌てて否定するも、内心では初めて自分のQQアカウントを持つことに胸騒ぎを覚えていた。
「うっせえ、本音じゃないだろ。
じゃあ行くわよ、私は走りに行こう」夏蘭が鼻を鳴らして立ち上がった。
その姿は若さ溢れるものだった。
「へへ、じゃあちょっとネットにしようか」秋羽にとっては周囲の女性は高嶺の花のように遠く、全く意識することもなかった。
そのまま椅子に座り込んだ。
「くそっ、この子は私の容姿を気にしないのか?まったく……」夏蘭が憤って去った後も、秋羽はQQパネルを見つめながら笑みを浮かべていた。
既に30人以上の女性ユーザーがリストアップされ、どれと話そうか迷っていた。
「あー、この子は興味津々だわ」彼女たちは様々な年代のもので、幼いロリータから成熟した御姐まで網羅されていた。
突然、ある女性ユーザーのオンラインマークが明るくなった。
プロフィール写真には背を向ける少女の姿があった。
黒髪が肩に垂れ、スラリとした体格にチェックシャツとミニスカートを着ていて、顔は見えないものの美しさと品のある雰囲気が伝わってきた。
「よしよし、さっそく可愛い子が来たぞ」秋羽はキーボードを叩き始めた。
「こんにちは」と打った瞬間、相手からメッセージが返ってきた。
「????」
大きな問号が表示された。
「あなたは誰ですか?私と知り合いですか?なぜ私のアカウントに加えたのですか?」
秋羽は髪を搔きながら少し考えてから、「お姉さん、友達になりたいです」と打った。
「????」
相手の返信が来た。
「ネットで女の子を狙っているのかい?」
この鋭い言葉に秋羽は黙り込んだ。
まさかこんな積極的な女性ユーザーがいるとは思ってもいなかった。
「えーと……」
「まあいいわ、私も男の友達がいないからどうぞよろしくね」
秋羽は目を輝かせた。
「お姉さん、私はあなたに恋をしたわ」と即座に返信した。
「????」
相手が驚きの表情でタイプする。
「本名は?何をしているの?」
ネットでのやり取りに関して秋羽は初心者だったため、個人情報を出すのは危険だと気付いていた。
「私は秋羽と申します。
高校生です」
「あら、私も同じ学年よ。
あなたはどの学校ですか?クラスは何番?」
秋羽が正直に答えると、相手も名前を告げた。
「冬如花と言います。
第二高等学校の三年六組です……」
秋羽は内心で「名前も悪くないし、見た目も美人だろう」と思いながらキーボードを叩いた。
「僕の名字は秋、貴方の名字は冬だね。
運命を感じるわ」
似酒醉人嫣然笑(ここは登場人物のニックネーム)が微笑んで答えた。
「そうね、運命よね。
でも貴方は彼女いないのかしら?」
「ないよ。
普通の女の子には目もくれないんだ」
「ふーん、結構な自信家ね……貴方のクラスに可愛い子はいるわよね?」
「あるさ。
うちのクラスはまあまあ。
特に二人の子がすごく美人だよ」
「ほんと? どんな子なの?」
「僕の前の人、鄭語菡(ていごはん)さんと同席の夏蘭(からん)さん。
二人とも超絶美形さ」
「うわー……」ここでハートマーク付きのQチャットが送られてきた。
「お兄ちゃん、貴方の同席が校花ならどうして告白しないの?」
「その子は驕慢でね、僕には無理があるんだよ」
「彼女を簡単に形容詞で表現できるかな?」
秋羽は迷わず打った。
「横暴、理屈に合わない、人に怒鳴り散らす……」
三階の部屋。
リクライニングソファに運動着姿の夏蘭が座っていた。
長い脚を組み合わせて膝上にMacBookを置きチャットしていた。
護花使者からのメッセージを見た瞬間、彼女は眦(まなじり)を剥いた。
「この野郎! 今すぐ階段から降りてきてやるわ」
実は夏蘭は秋羽のQアカウントを作成後、即座に相手と友達申請。
実際には二階に戻ってログインし、護花使者としてチャットしていたのだ。
彼女は「似酒醉人嫣然笑」というニックネームで登場した。
ネットは虚構の世界だ。
多くの人々が仮面をかぶる中、秋羽のような無防備な存在は珍しい。
現実の夏蘭は大小姐気取りだが成績優秀。
ネットでは非主流派の辣腕(らつまん)キャラクターとして登場。
Qプロフィールには鮮やかな赤髪に棒球帽を斜めにかぶり、目を細めるポーズ。
明らかに小悪魔だ。
辣妹像で秋羽のネット世界に現れたこの娘は、相手が彼女を褒めるたびに笑みを浮かべるものの、「横暴」「理屈に合わない」などの形容詞に怒りを爆発させ「この野郎! 待ってろよ、これで終わらないわ」と呟いた。
我慢汁を飲み込んで夏蘭は指先を動かした。
「汗、彼女がそういう人だったのか……恐ろしい」
階下の秋羽は相手が当事者本人であることを知らずに返信した。
「そうださ。
同席だから僕は水深火熱の毎日だよ」
「くっ! 本気で沸騰させたいわ! 私のような容姿なら、貴方と同席するだけで男たちは羨望の目を向けるのに……この野郎! 貴方が貴方の同席にいるのが悔しいんだわ。
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