花間の高手

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第0193話 夜独酔

秋羽は鼻を鳴らし、双拳を振るった。

「ドン！」

という音と共に鉄の拳が相手の頬に当たり、同時に二人とも血を吐きながら地面に倒れた。

痛みで歯を食いしばっている様子だった。

そのうち一人が起き上がろうとした時、秋羽は足を上げて転びさせた。

「ギャア！」

と悲鳴が連続する。

瞬間、五人の不良が秋羽の前に並んでいた。

周囲の人々は驚きの目で見つめ、尊敬の目線を向け始めた。

見た目からは想像できないほどの強さだ。

一人で五人相手に完勝したのだ。

「わあ！秋羽さんすごーい！」

と紫雪が両手を広げて叫んだ。

彼女は秋羽に頼りきりの様子で、残る不良に向かって足蹴りを繰り返す。

「この野郎！強姦しようとしたくせに……」

その長い脚の力は相当なものだった。

相手は鼻血を流しながら必死に謝罪する。

「ごめんなさい！もうやめます！」

紫雪はようやく足を止めた。

彼女は胸を張って言った。

「どういたしまして。

この混蛋が目障りだからね。

私のスーパーガードだよ」

雲萱が眉をひそめる。

「つまり……秋羽さんの雇い主なの？」

雅青が近づいてきて、肩に手をかけた。

「お兄ちゃんありがとさァ。

助かったぜ」

「どういたしまして。

些細なことですよ。

みんな無事でよかった」

紫雪は憤りの目線で地面の男たちを見つめた。

「この卑怯者ども！許せないわ！雅青、お姉さんじゃない？警察に連絡しなさいよ」

「ハイ」雅青がスマホを操作し始めた。

画面をスクロールさせながら電話番号を探しているようだ。

「小青ちゃん！大丈夫か？すぐ行くから！」

その時、血まみれの男が顔を上げた。

「お見知り違いでごめんなさい……」と懇願するように言った。

他の男たちも同様に必死に謝罪している。

秋羽は鼻をつまんで冷めた目線を向け、「どうせやるなら彼女たちの許可を得てからだよ」と言い放った。

男たちは次々と紫雪と藍眸の少女に頭を下げた。

「お許しください……」

「ふん！この野郎ども！秋羽さんがいなければ、私たち姉妹は汚されちゃうところだったんだわ」

髪型が派手なグループの女の子たちが近づいてきた。

特に紫髪ブルー目線の少女は特別に美しいと感じさせた。



女の子たちは秋羽のそばに集まり、楚雲香は自然と腕を組んで優しく言った。

「親愛の、彼女たちがお前の友達なの？」

周囲の観客は一瞬驚いた。

この美少女こそが若者のお相手なのか？

秋羽が周りからの視線に気づき頬を染めながらも平静を保つように努めた。

「皆さん紹介します、彼女たち二人は私の学妹で唐亜青と蘇紫雪ちゃん、そしてこちらは……」

楚雲香はすぐに続けた。

「初めまして。

私は秋羽の恋人です」

恋人？二人の女の子は困惑した目線を向かい合った。

唐亜青は直球に訊いた。

「おかしいわね秋雨、お前の彼女は校花徐洛瑶さんでしょう？どうしてまた変わっちゃったの？」

秋羽が困った表情で「その……」と口ごもると

観客たちは笑いを堪えながら頷いた。

なんだこの展開、第三者まで出てきたのか。

この子は本当に口の利き手なのか？

楚雲香は眉をひそめて不機嫌そうに言った。

「徐洛瑶……彼女はうちの秋羽さんをずっと追いかけてきてるのよ。

でも秋羽さんは彼女には『いいえ』と言ったんだ」

比べて二人組は徐洛瑶の方がまだマシだと考えていたようだ。

そのため蘇紫雪が意地悪そうに付け加えた。

「でもね、秋雨と徐洛瑶さんがキスしてるのを私たちが目撃したわよ？しかもパリッとしたキスで……」

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鋤穂宜当かずがんじょうだったのか？

唐亜青もからかいながら訊いた。

「秋羽さん、一人の責任は一人でね。

紫雪ちゃんは嘘ついてないわよ」

二人組がその場でその出来事を暴露すると秋羽の顔は真っ赤になりため息をつくように頷いた。

「えぇ、確かにキスしたことはある……」

そう言うと太ったような女の子たちが笑い声を上げた。

「姐夫さん、まさか君も浮気性なのね？」

「用心してね。

うちの萱ちゃんは目に入らないものなんてないんだから」

「姐夫さん、私たちの萱ちゃんと遊ぶのはやめなよ。

もし許可が出たらいいけど……」

観客たちは一目で紫髪の少女がこのグループのリーダーであると悟った。

明らかに問題児だ。

彼女は恋人が外で浮気していることを知りながらも黙っているはずがない。

今にも大爆発しそうだ。

彼らは目を丸くしてその女の子を見つめた。

予想外のことに楚雲香は怒るどころか笑みを浮かべて言った。

「男ってのは外でちょっと遊ぶくらいは仕方ないわよ。

彼の心の中には私がいるからいいの。

構わないわ、キスなんて大したことじゃない」

これに周囲の男性たちは胸打たれるものがあった。

なんて広い胸襟なんだ

遠くから警笛の音が響き三台のパトカーが駆けつけてきた。

急ブレーキでバーの前に停車すると女巡査と五人の男巡査が降りて店内に入ってくる。

彼らは中に入ると「どいて！すぐに！」

と叫んだ

観客たちが道を作ると六人がカウンター近くまで進む。

その中の女巡査が唐亜青に慌てて訊いた。

「小青ちゃん、大丈夫？この連中に暴行されたの？」

唐亜青は「表姐さんようやく来たわね。

彼女たちが私たちを奪おうとしたのよ。

あの野郎ども！」

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