道诡异仙

きりしま つかさ

文字の大きさ
327 / 809
0300

第0354話 男

「中は……あまりにも悲惨だ、本当に悲惨なんだ……」洪大がため息をつきながら続けた。

「心浊の業障の中で、死にたいのに死ねない、生きたくても生きられない。

飢えさせられずも苦しませられずもないのに、その両方の苦しみを耐え抜かなければならない。

ずっと苦しめられるまま……」

「知ってるかい? 彼女が入ってきたとき、彼女の父親は私に言ったんだ。

彼は娘を怨んでいないと。

なぜなら、あの場所で苦しむことが、少なくとも娘が生きている証拠だからって」

洪大がこれらの話を終えると、深くため息をついた。

明らかに以前の経験が彼を大きく傷つけたようだ。

李火旺はその話に聞き入り、しばらく平静になれないでいた。

腕を上げて背中の心浊を抱きしめながら、複雑な表情でその人を見つめた。

「もし意識があれば、きっと家族や友人にこんな苦しみを与えるのは嫌だろうよ。

最も可哀想なのは彼女自身だ。

無意識の行動が周囲の人々にまで苦痛をもたらすなんて」

彼と比べれば、自分の心素はまだましかもしれない。

「道長さん、彼女はあまりにも悲惨です。

我々は解放してあげませんか?」

和尚が近づき、懐かしそうに言った。

李火旺がため息をついたものの、首を横に振った。

「解放できない。

まず、彼女の存在が我々の坐忘道への情報源であることを無視するわけにはいかないし、重要なのは、放ったらもっと多くの人々が傷つくだろう。

本当にそれでいいのか?」

彼女は害する気はないかもしれないが、ただ見ているだけで他人を傷つける。

この村がかつて住んでいた人間の数を考えれば、明らかに何らかの理由があるはずだ。

その言葉を聞いた和尚は表情を険しくした。

善事を行うのが目的なのに、二つの善事が衝突するときにはどうすればいいのか分からない。

李火旺は以前から監天司が心素に対してなぜここまで酷いのか疑問に思っていた。

しかし心浊の行動と能力を見てからはようやく理解した。

他のこととは別に、この問題に関しては彼らは確かに天下を守っているのだ。

彼女のような心浊と自分のような心素はあまりにも危険だ。

無意識のうちに大規模な災禍を引き起こしかねない。

「耳賢弟? 今誰かと話しているのか?」

拓跋丹青が驚いたように李火旺を見つめた。

李火旺が目を開き、腹に手を当てた。

「元嬰と会話をしている」

しばらくの間、誰も口を閉じて武器を下ろし、リラックスした表情になった。

申屠剛は伸びをしてくつろいだ。

李火旺が村寨の中へ歩み始めたとき、拓跋丹青が彼に近づき、意図的に距離を置いた。

「耳賢弟、兄貴が内緒話するぞ。

もし記相が上京してから十日半月経っても何の音沙汰もないなら、我々は一緒に青丘へ行って風邪ひかないようにしよう。

どこで働くにせよ同じことだ」

李火旺が驚いた。

「拓跋さん、何か知っているのか?」



拓跋丹青は李火旺の問いかけにため息をついたが、何も答えずに手で前方を指し示して歩き出した。

「心浊が手に入れたなら、記相様は大丈夫だろうか?もし何かあったら、約束した情報をどうするのか……」

心浊の能力と記相の慌てた態度から、李火旺は監天司が急いで心浊を欲しがっている理由に重大な事情を感じていた。

しかし新人である自分には関係ないと考え、周囲を見ずに進んだ。

柳宗元が村外の白霧の中から近づいてきた時、記相は疲れた表情で馬車を呼ぶよう指示した。

申屠剛が「二牛、人情は終わったぞ」と言い残して去ろうとした瞬間、李火旺は声をかけた。

「申屠兄、質問してもよいか?」

申屠剛の眉がわずかに動いたが、汚い言葉は出なかった。

「早くしろ、俺には用があるんだ」

李火旺は相手の革鼓を見つめた。

「跳大神者は仙家奴隷で一生解放されないという話だが、申屠兄は違うようだ。

なぜか教えてくれるか?」

申屠剛が胸を抱いてうなずくと、耳元で囁いた瞬間、李火旺の目が驚きに開いた。

「本当なのか?」

申屠剛は拳で彼の傷口を叩き、馬車が近づくのを見計らって去った。

李火旺がその情報を整理していると、紅中の声がした。

「李火旺、起きろ!どうして前に人が増えたんだ?」

李火旺が顔を上げると、そこには破衣に骨ばりの男がいた。

洪大は目を見開いて叫んだ。

「なぜ出てきた!?」

男は周囲を見回し、呆然と告げた。

「急に思い出した……俺も心浊だったみたいだ。

この女を頼んで隠しておいたんだけど、彼女が忘れちゃったから俺も忘れてたんだ」

感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

傷物転生令嬢マグダリーナと原初の魔法使いエステラの幻想譚-女神とスライムの光とともに- (旧タイトル:ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる―― ※他サイトでも掲載しています ※ちょいちょい手直ししていってます 2026.12.14 タイトル変更 旧タイトル:ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

37才にして遂に「剣神」の称号を得ましたが、20年前に自分を振った勇者のパーティのエルフの女剣士に今更求婚されました。

カタナヅキ
ファンタジー
20年前、異世界「マテラ」に召喚された「レオ」は当時の国王に頼まれて魔王退治の旅に出る。数多くの苦難を乗り越え、頼りになる仲間達と共に魔王を打ち倒す。旅の終わりの際、レオは共に旅をしていた仲間のエルフ族の剣士に告白するが、彼女から振られてしまう。 「すまないレオ……私は剣の道に生きる」 彼女はそれだけを告げると彼の前から立ち去り、この一件からレオは彼女の選んだ道を追うように自分も剣一筋の人生を歩む。英雄として生きるのではなく、只の冒険者として再出発した彼は様々な依頼を引き受け、遂には冒険者の頂点のSランクの階級を与えられる。 勇者としてではなく、冒険者の英雄として信頼や人望も得られた彼は冒険者を引退し、今後は指導者として冒険者ギルドの受付員として就職を果たした時、20年前に別れたはずの勇者のパーティの女性たちが訪れる。 「やっと見つけた!!頼むレオ!!私と結婚してくれ!!」 「レオ君!!私と結婚して!!」 「頼む、娘と結婚してくれ!!」 「はあっ?」 20年の時を迎え、彼は苦難を共に乗り越えた仲間達に今度は苦悩される日々を迎える。 ※本格的に連載するつもりはありませんが、暇なときに投稿します。

エレンディア王国記

火燈スズ
ファンタジー
不慮の事故で命を落とした小学校教師・大河は、 「選ばれた魂」として、奇妙な小部屋で目を覚ます。 導かれるように辿り着いたのは、 魔法と貴族が支配する、どこか現実とは異なる世界。 王家の十八男として生まれ、誰からも期待されず辺境送り―― だが、彼は諦めない。かつての教え子たちに向けて語った言葉を胸に。 「なんとかなるさ。生きてればな」 手にしたのは、心を視る目と、なかなか花開かぬ“器”。 教師として、王子として、そして何者かとして。 これは、“教える者”が世界を変えていく物語。

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。