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1 彼女は会社員に甘んずるを潔しとしなかった
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彼女はとある同人界隈ではそこそこ名の売れた作家だった。壁には行かないが誕生日席常連、そんな辺りの絵描きだった。
彼女は日中は会社員として勤め、夜自宅に帰ってから絵を描く、そんな日々を送っていたが、同人誌の売上がそこそこになった時、それまで勤めた会社を辞め、専業となった。本来であれば会社勤めをしたまま副業として続けていきたかったのだが、副業禁止の規則を会社は当然のこと、正義感の強かった自分自身も認められず、それならばと意を決して同人作家としての道を歩むべく、それまで十年勤めた会社を辞めたのだった。
しかし文名は容易に揚らない。それでも、生活に困窮することがないのは、幸いにも伴侶を得ていたためである。旦那の稼ぎとこれまでの貯蓄を頼ればあと2年程度、専業としての活動を続けていくことができる。旦那の同人活動に対する理解もそこそこにある、理想の環境に置かれていた。にも関わらず、彼女は焦っていた。半年も過ぎた頃から彼女の容貌はそれまでの溌剌としたものとは異なり、目の下の隈や肌荒れが目立つようになった。理想的な環境に身を置いているにも関わらず、現代のレッドオーシャンである専業イラストレーターの道を歩むに、あまりにも彼女は精神的な強度が足りていなかった。インターネットには自分のフォロワーを遥かに超えた神と呼ばれる商業絵師から、自分よりもずっと若いにも関わらず技量と発想力を兼ね備えた絵描きたちがごろごろ集っている。そんな彼、彼女らの絵を眺める時間が、会社員時代よりぐっと増えたのは時間的な余裕ができてしまったからこそである。それが、誕生日席で多少列ができる程度で鼻高々としてた彼女の自尊心を如何に傷つけたかは想像に難くない。
彼女は日中は会社員として勤め、夜自宅に帰ってから絵を描く、そんな日々を送っていたが、同人誌の売上がそこそこになった時、それまで勤めた会社を辞め、専業となった。本来であれば会社勤めをしたまま副業として続けていきたかったのだが、副業禁止の規則を会社は当然のこと、正義感の強かった自分自身も認められず、それならばと意を決して同人作家としての道を歩むべく、それまで十年勤めた会社を辞めたのだった。
しかし文名は容易に揚らない。それでも、生活に困窮することがないのは、幸いにも伴侶を得ていたためである。旦那の稼ぎとこれまでの貯蓄を頼ればあと2年程度、専業としての活動を続けていくことができる。旦那の同人活動に対する理解もそこそこにある、理想の環境に置かれていた。にも関わらず、彼女は焦っていた。半年も過ぎた頃から彼女の容貌はそれまでの溌剌としたものとは異なり、目の下の隈や肌荒れが目立つようになった。理想的な環境に身を置いているにも関わらず、現代のレッドオーシャンである専業イラストレーターの道を歩むに、あまりにも彼女は精神的な強度が足りていなかった。インターネットには自分のフォロワーを遥かに超えた神と呼ばれる商業絵師から、自分よりもずっと若いにも関わらず技量と発想力を兼ね備えた絵描きたちがごろごろ集っている。そんな彼、彼女らの絵を眺める時間が、会社員時代よりぐっと増えたのは時間的な余裕ができてしまったからこそである。それが、誕生日席で多少列ができる程度で鼻高々としてた彼女の自尊心を如何に傷つけたかは想像に難くない。
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