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数学なんて大嫌い!
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「ああああああ。もうわかんない!こんなのわかんないよ!なんで点P動くわけ?
まずそもそも現実の世界で点Pとかないし。こんな計算することある?
数学とかマジでなんの役に立つかわからなくない?」
ナギは、隣りで黙々と勉強をするコウタに愚痴を吐いた。
性別は違うけれど中学校の時から二人は親友だった。
二人は高校入学後初めての定期テストを迎えようとしていた。
閑散とした館内にはナギの声は大きすぎた。ちらほらといる高校生らしき人影が一斉にナギの方を向いた。ナギは慌ててペンを持ち直し、恥ずかしさを隠すようにノートと向き合った。
「そうだな。まあでも仕方ないさ。成績悪いと今後の人生に響くかもしれないし。我慢だよ。我慢」
コウタは先の教訓を生かし、聞こえるギリギリのささやき声で答えた。
「なんかゲームみたいに頭良くなれたらいいのになあ」
ナギはペンを走らせながら呟く。すると突然、ナギとコウタの間に置いてあった数学の教科書がガタガタと震え出した。
「え、な、なに?」
二人はシンクロした。驚く様子も同じだった。
教科書の震えはさらに激しさを増した。すると突然、ひとりでにページが開いた。
二人は唖然とした。一度顔を見合わせた。無言の時間が流れた。そして二人は興味本位でページを覗き込んだ。ページはなぜだか空白だった。
二人はもう一度顔を見合わせた。コウタが首をかしげる。ナギも同じように首をかしげる。
そして再びページを見る。今度は左ページの中心にポツリと黒い点が現れていた。
「この点、さっきはなかったよな?」
コウタが尋ねると、ナギは首を縦に振った。長い髪がなびく。
その間に黒は範囲を広げ、点というよりは円のようになっていた。二人はその様子をまじまじと見ていた。円は拡大し、さらには中心付近が渦を巻いていった。
「ねえ、私の見間違いじゃなければだけど、真ん中らへん動いてない?」
「お前もそう見えるのか。俺もだ。どういうことなんだこれは」
目の前で起こるあまりにも不自然な状況に困惑する二人。渦は徐々にその速度を速めていった。ある時その渦は、びっくり箱から飛び出る人形のように高さを持ち始めた。それはまるで台風のようだった。
「なんか変だよ。おかしいよ。閉じよう。怖いよ」
ナギは目の前の光景を恐れ、教科書を閉じようとした。両手でページの両端を保ち力を加える。しかし渦の勢いが勝り、閉じることはできなくなっていた。
「逃げよう」
コウタはそう言うや否やナギの右手をつかみ、席を離れようとした。
その時だった。
渦の中心部から非常に大きな引力が生じた。二人はそれでも必死に離れようとする。
「な、なんだよこれ。逃げなきゃ」
それまでは冷静だったコウタも形相を変えて、慌てふためいていた。
引力は二人の斥力に勝り、徐々に彼らを引き込んでいく。
「いやあああああああああああ」
ナギの叫び声が図書館に響く。それと同時に彼らの姿は…
教科書の中に消えていった。
まずそもそも現実の世界で点Pとかないし。こんな計算することある?
数学とかマジでなんの役に立つかわからなくない?」
ナギは、隣りで黙々と勉強をするコウタに愚痴を吐いた。
性別は違うけれど中学校の時から二人は親友だった。
二人は高校入学後初めての定期テストを迎えようとしていた。
閑散とした館内にはナギの声は大きすぎた。ちらほらといる高校生らしき人影が一斉にナギの方を向いた。ナギは慌ててペンを持ち直し、恥ずかしさを隠すようにノートと向き合った。
「そうだな。まあでも仕方ないさ。成績悪いと今後の人生に響くかもしれないし。我慢だよ。我慢」
コウタは先の教訓を生かし、聞こえるギリギリのささやき声で答えた。
「なんかゲームみたいに頭良くなれたらいいのになあ」
ナギはペンを走らせながら呟く。すると突然、ナギとコウタの間に置いてあった数学の教科書がガタガタと震え出した。
「え、な、なに?」
二人はシンクロした。驚く様子も同じだった。
教科書の震えはさらに激しさを増した。すると突然、ひとりでにページが開いた。
二人は唖然とした。一度顔を見合わせた。無言の時間が流れた。そして二人は興味本位でページを覗き込んだ。ページはなぜだか空白だった。
二人はもう一度顔を見合わせた。コウタが首をかしげる。ナギも同じように首をかしげる。
そして再びページを見る。今度は左ページの中心にポツリと黒い点が現れていた。
「この点、さっきはなかったよな?」
コウタが尋ねると、ナギは首を縦に振った。長い髪がなびく。
その間に黒は範囲を広げ、点というよりは円のようになっていた。二人はその様子をまじまじと見ていた。円は拡大し、さらには中心付近が渦を巻いていった。
「ねえ、私の見間違いじゃなければだけど、真ん中らへん動いてない?」
「お前もそう見えるのか。俺もだ。どういうことなんだこれは」
目の前で起こるあまりにも不自然な状況に困惑する二人。渦は徐々にその速度を速めていった。ある時その渦は、びっくり箱から飛び出る人形のように高さを持ち始めた。それはまるで台風のようだった。
「なんか変だよ。おかしいよ。閉じよう。怖いよ」
ナギは目の前の光景を恐れ、教科書を閉じようとした。両手でページの両端を保ち力を加える。しかし渦の勢いが勝り、閉じることはできなくなっていた。
「逃げよう」
コウタはそう言うや否やナギの右手をつかみ、席を離れようとした。
その時だった。
渦の中心部から非常に大きな引力が生じた。二人はそれでも必死に離れようとする。
「な、なんだよこれ。逃げなきゃ」
それまでは冷静だったコウタも形相を変えて、慌てふためいていた。
引力は二人の斥力に勝り、徐々に彼らを引き込んでいく。
「いやあああああああああああ」
ナギの叫び声が図書館に響く。それと同時に彼らの姿は…
教科書の中に消えていった。
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