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第一部
2章-4
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北の塔ではアデライードのヒステリックな声が響く。
「『取り替え子』はどこに行ったの!?」
「塔の中にはいると思いますが……」
「探しなさい!」
ダンスのレッスンでステップが上手く踏めず、イライラしていたアデライードは憂さ晴らしをしようとカテリアーナを訪ねてきたのだ。しかし妹は部屋にいなかった。
見張りの兵士たちがカテリアーナを連れてくるまで待とうと椅子にどかりと座り、爪をかじる。
しばらくすると、扉が開きカテリアーナが姿を現す。
「おまえ、どこに行っていたの!?」
「物置の整理をしながら、本を探しておりました」
「掃除をしていたの。おまえは掃除好きな妖精の子供なのかしら?」
アデライードは扇を取り出すと、口元を隠しオホホと笑う。口元は見えずとも嘲笑しているのが分かる。目元が醜く歪んでいるからだ。
「感心なことだけれど、わたくしが訪ねてきた時くらいはじっとしていなさい」
それは無理な話だ。アデライードは前触れもなしに来るので、部屋で迎えることは難しい。
「ですが、おねえさまっ!」
その瞬間に頬に鋭い痛みが走る。アデライードが扇でカテリアーナの頬を打ったのだ。
「何度言わせるの! おまえはわたくしの妹ではないわ! 『取り替え子』なのよ!」
「……失礼いたしました。アデライード様」
何かを思いついたようにアデライードはにやりと口の端をつりあげる。
「そうだわ。お父様におまえをこの部屋から出られなように言ってあげるわ」
「それは!?」
「安心しなさい。大好きな本はたくさん届けさせるわ」
鍵のペンダントを使えば、この部屋にもあの場所へ道をつなぐことはできる。だが、この部屋にいないことがアデライードにばれてしまう。
しかし、カテリアーナの心配は杞憂に終わる。
国王である父はアデライードのわがままを聞かなかったのだ。
「いかに可愛いそなたの願いといえど、それは聞くわけにはいかぬ」
「なぜですの!? お父様。『取り替え子』など一室に閉じ込めてしまえばいいのです!」
「そういうわけにはいかぬのだ、アデライード。そなたはカテリアーナの下へ度々訪れているそうだが、それも控えよ」
アデライードが度々カテリアーナを虐げていることは、国王の耳にも入っていた。
今まで自分のわがままを聞いてくれた父に願いを拒否されたことでアデライードの頭に血が上る。
「お父様はあれが『取り替え子』ではなく実の娘だというのですか! それに姉が妹を訪ねるのに不都合があるとは思えませんわ!」
カテリアーナを『取り替え子』という一方で妹と呼ぶ。怒りで言葉の矛盾に気づいていないアデライードに国王はため息を吐く。
「そなたにオルヴァーレン帝国から縁談の話がきておる。相手は第二皇子グリージオ殿だ」
「え?」
オルヴァーレン帝国はラストリア王国の北隣の国で大国だ。第二皇子グリージオは今年十七歳で皇太子ユージオの補佐役をしており、優秀で名高い。容姿も整っていると宰相の令嬢から聞いたことがある。
それを聞いたアデライードは癇癪がおさまり、頬を赤く染める。
「それは本当ですの? お父様」
「もちろんだ。来月オルヴァーレン帝国でそなたとグリージオ皇子の顔合わせが予定されておる。私はともに行けぬが、ラグネヴィアが代わりに行く」
ラグネヴィアとはアデライードの母。ラストリア王国の王妃だ。
「まあ! それでは急いでドレスを新調しないと! お父様、失礼いたしますわ」
アデライードは執務室を飛び出していく。
「これでカテリアーナに構う暇はあるまい。カテリアーナが成人前に死んでしまっては困るのだ。大切な駒だからな」
国王は机に肘をつくと、ふうと安堵の息を吐いた。
「『取り替え子』はどこに行ったの!?」
「塔の中にはいると思いますが……」
「探しなさい!」
ダンスのレッスンでステップが上手く踏めず、イライラしていたアデライードは憂さ晴らしをしようとカテリアーナを訪ねてきたのだ。しかし妹は部屋にいなかった。
見張りの兵士たちがカテリアーナを連れてくるまで待とうと椅子にどかりと座り、爪をかじる。
しばらくすると、扉が開きカテリアーナが姿を現す。
「おまえ、どこに行っていたの!?」
「物置の整理をしながら、本を探しておりました」
「掃除をしていたの。おまえは掃除好きな妖精の子供なのかしら?」
アデライードは扇を取り出すと、口元を隠しオホホと笑う。口元は見えずとも嘲笑しているのが分かる。目元が醜く歪んでいるからだ。
「感心なことだけれど、わたくしが訪ねてきた時くらいはじっとしていなさい」
それは無理な話だ。アデライードは前触れもなしに来るので、部屋で迎えることは難しい。
「ですが、おねえさまっ!」
その瞬間に頬に鋭い痛みが走る。アデライードが扇でカテリアーナの頬を打ったのだ。
「何度言わせるの! おまえはわたくしの妹ではないわ! 『取り替え子』なのよ!」
「……失礼いたしました。アデライード様」
何かを思いついたようにアデライードはにやりと口の端をつりあげる。
「そうだわ。お父様におまえをこの部屋から出られなように言ってあげるわ」
「それは!?」
「安心しなさい。大好きな本はたくさん届けさせるわ」
鍵のペンダントを使えば、この部屋にもあの場所へ道をつなぐことはできる。だが、この部屋にいないことがアデライードにばれてしまう。
しかし、カテリアーナの心配は杞憂に終わる。
国王である父はアデライードのわがままを聞かなかったのだ。
「いかに可愛いそなたの願いといえど、それは聞くわけにはいかぬ」
「なぜですの!? お父様。『取り替え子』など一室に閉じ込めてしまえばいいのです!」
「そういうわけにはいかぬのだ、アデライード。そなたはカテリアーナの下へ度々訪れているそうだが、それも控えよ」
アデライードが度々カテリアーナを虐げていることは、国王の耳にも入っていた。
今まで自分のわがままを聞いてくれた父に願いを拒否されたことでアデライードの頭に血が上る。
「お父様はあれが『取り替え子』ではなく実の娘だというのですか! それに姉が妹を訪ねるのに不都合があるとは思えませんわ!」
カテリアーナを『取り替え子』という一方で妹と呼ぶ。怒りで言葉の矛盾に気づいていないアデライードに国王はため息を吐く。
「そなたにオルヴァーレン帝国から縁談の話がきておる。相手は第二皇子グリージオ殿だ」
「え?」
オルヴァーレン帝国はラストリア王国の北隣の国で大国だ。第二皇子グリージオは今年十七歳で皇太子ユージオの補佐役をしており、優秀で名高い。容姿も整っていると宰相の令嬢から聞いたことがある。
それを聞いたアデライードは癇癪がおさまり、頬を赤く染める。
「それは本当ですの? お父様」
「もちろんだ。来月オルヴァーレン帝国でそなたとグリージオ皇子の顔合わせが予定されておる。私はともに行けぬが、ラグネヴィアが代わりに行く」
ラグネヴィアとはアデライードの母。ラストリア王国の王妃だ。
「まあ! それでは急いでドレスを新調しないと! お父様、失礼いたしますわ」
アデライードは執務室を飛び出していく。
「これでカテリアーナに構う暇はあるまい。カテリアーナが成人前に死んでしまっては困るのだ。大切な駒だからな」
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