32 / 40
第二部
2章-2
しおりを挟む
フィンラスが軽々とカテリアーナを抱きかかえ、ドラゴンの背に乗せると自らの前に座らせる。カテリアーナを後ろから抱える形だ。
フィンラスに守られているようで、カテリアーナは安心する。しかし、同時に胸が高鳴った。この気持ちの表し方が分からないカテリアーナはドラゴンの乗ることができて興奮しているのだと錯覚する。
「振り落とされないように、しっかり掴まっていろ」
カテリアーナは咄嗟にドラゴンの鞍に掴まる。
フィンラスが手綱を握るとドラゴンが翼を広げ、ゆっくりと浮上していく。ある程度の高度に達すると、ドラゴンは翼をはためかせ、スピードをあげていく。
みるみるうちにエルファーレン王宮が遠ざかっていった。
「ドラゴンはこんなに早く飛べるのですね。エルファーレン王宮がもうあんな遠くに見えます」
怖がるどころか、遥か下を眺めながらカテリアーナははしゃぐ。楽しそうなカテリアーナにフィンラスはふっと微笑む。
「カティ、二人きりの時は敬語を使わなくても良い」
「え! でも護衛の方たちが後からついてくるのでは?」
「今日は離れてついてくるように言ってある」
フィンラスは護衛たちに今日は思い切り距離をとれと言いくるめた。ちなみに護衛たちは二人きりになりたいという意味だと勘違いしている。
「どこに連れていってくれるの?」
「それは着いてからのお楽しみだ」
ドラゴンが降り立った場所は見覚えのある風景だった。
ラストリアの北の塔とつながっていたあの場所だ。虐げられ孤独だったカテリアーナの唯一の憩いの場所だった。
「フィル。約束を覚えていてくれたのね?」
「当たり前だ」
エルファーレン王宮に来たら、必ず案内するとノワールが約束してくれた懐かしい場所。
最後に目にした時と変わらない佇まいだ。いや。カテリアーナがノワールと過ごした家から少し離れた場所にあらたな建物が建っている。
建物から見慣れた顔が姿を現す。ルゥナの森のリーダー、イアンとソゥレの森のリーダー、ロイと仲間たちだった。
「イアン! ロイ!」
「カティ……いや。カテリアーナ様」
フィンラスにぎろりと睨まれて、イアンはカテリアーナの名を呼びなおす。
「姐さん、久しぶりです」
ロイからはなぜか「姐さん」と呼ばれてカテリアーナは首を傾げる。
「二人とも久しぶりね。元気そうで何よりだわ。それよりどうしてここに?」
「国王陛下からここでの労役を命じられまして」
知らなかったこととはいえ、『悪しきマタタビ』を市場に流してしまった罰だという。
「それは罰と言えるのかしら?」
「国王陛下の恩情には感謝してるんだ。カテリアーナ様の大切な場所を守れるんだからな」
見渡すと、カテリアーナが育てていた野菜や薬草はしっかり手入れがされている。
「ありがとう、皆。わたくしの大切な場所を守ってくれて」
イアンやロイたちの行方が気になっていたカテリアーナは、ほっとすると同時に彼らに感謝する。
「じゃあ、仕事があるから俺は行くわ。またな、カテリアーナ様」
「陛下と姐さんには後ほどお茶を持っていかせますんで」
イアンとロイは頭を下げると、畑に駆けていく。
「ありがとう、フィル。彼らを保護してくれたのでしょう?」
「あやつらを元の場所に帰して死なれては寝覚めが悪いからな」
ルゥナの森とソゥレの森の猫たちは命を狙われる危険があるのだ。『悪しきマタタビ』ことマタタビモドキを彼らに売った人物がいる。
しかし、イアンたちに接触してきた人物は常にフードを被っていたので、顔は見ていないという。ただ、耳障りな声で、道化のような物言いだったという。それくらいしか特徴がなかったとイアンたちは語った。
「この場所が知られることはない?」
「ここは王族と俺が許可した者以外は立ち入れないようにしてある」
「王家の直轄地なの?」
「まあ、そのようなものだ」
フィンラスはなぜ王家の直轄地などという重要な場所を自分に与えてくれたのかカテリアーナは気になる。しかし、その理由を聞くのは怖かった。
フィンラスに守られているようで、カテリアーナは安心する。しかし、同時に胸が高鳴った。この気持ちの表し方が分からないカテリアーナはドラゴンの乗ることができて興奮しているのだと錯覚する。
「振り落とされないように、しっかり掴まっていろ」
カテリアーナは咄嗟にドラゴンの鞍に掴まる。
フィンラスが手綱を握るとドラゴンが翼を広げ、ゆっくりと浮上していく。ある程度の高度に達すると、ドラゴンは翼をはためかせ、スピードをあげていく。
みるみるうちにエルファーレン王宮が遠ざかっていった。
「ドラゴンはこんなに早く飛べるのですね。エルファーレン王宮がもうあんな遠くに見えます」
怖がるどころか、遥か下を眺めながらカテリアーナははしゃぐ。楽しそうなカテリアーナにフィンラスはふっと微笑む。
「カティ、二人きりの時は敬語を使わなくても良い」
「え! でも護衛の方たちが後からついてくるのでは?」
「今日は離れてついてくるように言ってある」
フィンラスは護衛たちに今日は思い切り距離をとれと言いくるめた。ちなみに護衛たちは二人きりになりたいという意味だと勘違いしている。
「どこに連れていってくれるの?」
「それは着いてからのお楽しみだ」
ドラゴンが降り立った場所は見覚えのある風景だった。
ラストリアの北の塔とつながっていたあの場所だ。虐げられ孤独だったカテリアーナの唯一の憩いの場所だった。
「フィル。約束を覚えていてくれたのね?」
「当たり前だ」
エルファーレン王宮に来たら、必ず案内するとノワールが約束してくれた懐かしい場所。
最後に目にした時と変わらない佇まいだ。いや。カテリアーナがノワールと過ごした家から少し離れた場所にあらたな建物が建っている。
建物から見慣れた顔が姿を現す。ルゥナの森のリーダー、イアンとソゥレの森のリーダー、ロイと仲間たちだった。
「イアン! ロイ!」
「カティ……いや。カテリアーナ様」
フィンラスにぎろりと睨まれて、イアンはカテリアーナの名を呼びなおす。
「姐さん、久しぶりです」
ロイからはなぜか「姐さん」と呼ばれてカテリアーナは首を傾げる。
「二人とも久しぶりね。元気そうで何よりだわ。それよりどうしてここに?」
「国王陛下からここでの労役を命じられまして」
知らなかったこととはいえ、『悪しきマタタビ』を市場に流してしまった罰だという。
「それは罰と言えるのかしら?」
「国王陛下の恩情には感謝してるんだ。カテリアーナ様の大切な場所を守れるんだからな」
見渡すと、カテリアーナが育てていた野菜や薬草はしっかり手入れがされている。
「ありがとう、皆。わたくしの大切な場所を守ってくれて」
イアンやロイたちの行方が気になっていたカテリアーナは、ほっとすると同時に彼らに感謝する。
「じゃあ、仕事があるから俺は行くわ。またな、カテリアーナ様」
「陛下と姐さんには後ほどお茶を持っていかせますんで」
イアンとロイは頭を下げると、畑に駆けていく。
「ありがとう、フィル。彼らを保護してくれたのでしょう?」
「あやつらを元の場所に帰して死なれては寝覚めが悪いからな」
ルゥナの森とソゥレの森の猫たちは命を狙われる危険があるのだ。『悪しきマタタビ』ことマタタビモドキを彼らに売った人物がいる。
しかし、イアンたちに接触してきた人物は常にフードを被っていたので、顔は見ていないという。ただ、耳障りな声で、道化のような物言いだったという。それくらいしか特徴がなかったとイアンたちは語った。
「この場所が知られることはない?」
「ここは王族と俺が許可した者以外は立ち入れないようにしてある」
「王家の直轄地なの?」
「まあ、そのようなものだ」
フィンラスはなぜ王家の直轄地などという重要な場所を自分に与えてくれたのかカテリアーナは気になる。しかし、その理由を聞くのは怖かった。
0
あなたにおすすめの小説
お飾りの婚約者で結構です! 殿下のことは興味ありませんので、お構いなく!
にのまえ
恋愛
すでに寵愛する人がいる、殿下の婚約候補決めの舞踏会を開くと、王家の勅命がドーリング公爵家に届くも、姉のミミリアは嫌がった。
公爵家から一人娘という言葉に、舞踏会に参加することになった、ドーリング公爵家の次女・ミーシャ。
家族の中で“役立たず”と蔑まれ、姉の身代わりとして差し出された彼女の唯一の望みは――「舞踏会で、美味しい料理を食べること」。
だが、そんな慎ましい願いとは裏腹に、
舞踏会の夜、思いもよらぬ出来事が起こりミーシャは前世、読んでいた小説の世界だと気付く。
不貞の子を身籠ったと夫に追い出されました。生まれた子供は『精霊のいとし子』のようです。
桧山 紗綺
恋愛
【完結】嫁いで5年。子供を身籠ったら追い出されました。不貞なんてしていないと言っても聞く耳をもちません。生まれた子は間違いなく夫の子です。夫の子……ですが。 私、離婚された方が良いのではないでしょうか。
戻ってきた実家で子供たちと幸せに暮らしていきます。
『精霊のいとし子』と呼ばれる存在を授かった主人公の、可愛い子供たちとの暮らしと新しい恋とか愛とかのお話です。
※※番外編も完結しました。番外編は色々な視点で書いてます。
時系列も結構バラバラに本編の間の話や本編後の色々な出来事を書きました。
一通り主人公の周りの視点で書けたかな、と。
番外編の方が本編よりも長いです。
気がついたら10万文字を超えていました。
随分と長くなりましたが、お付き合いくださってありがとうございました!
【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜
白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。
舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。
王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。
「ヒナコのノートを汚したな!」
「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」
小説家になろう様でも投稿しています。
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。
ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」
その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。
編み物好き地味令嬢はお荷物として幼女化されましたが、えっ?これ魔法陣なんですか?
灯息めてら
恋愛
編み物しか芸がないと言われた地味令嬢ニニィアネは、家族から冷遇された挙句、幼女化されて魔族の公爵に売り飛ばされてしまう。
しかし、彼女の編み物が複雑な魔法陣だと発見した公爵によって、ニニィアネの生活は一変する。しかもなんだか……溺愛されてる!?
捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。
蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。
これで、貴方も私も自由です。
……だから、もういいですよね?
私も、自由にして……。
5年後。
私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、
親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、
今日も幸せに子育てをしています。
だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。
私のことは忘れて……。
これは、すれ違いの末に離れ離れになった夫婦の物語。
再会したとき、二人が選ぶのは「離婚」か、それとも「再構築」か。
妻を一途に想い続ける夫と、
その想いを一ミリも知らない妻。
――攻防戦の幕が、いま上がる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる