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第2章 学園編
第23話
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コストナー男爵家は爵位返上。男爵一家は国外追放となった。高位貴族の命を狙った罪の償いとしては軽いのだが、ヴィルシュタイン公爵令嬢フィルミナが情状酌量を申し出たのだ。
王宮舞踏会でなおも言い訳をしようとするコストナー男爵に、今までの悪事を集めた証拠をつきつけたのだ。
エドワルドとトームスは独自でコストナー男爵の悪事の証拠を集めていた。
不正取引、人身売買など調べれば調べるほど悪事が露見してきたのだ。言い逃れができないよう、徹底的に潰すための証拠を集めていた。
「主に俺が証拠集めであちこち走り回ったんだけどな」
叙勲式で手柄を立てた褒美としてトームスは伯爵に陞爵した。
「おかげで今日からマルク伯爵だ。嬉しいだろう」
叙勲式の後、いつもどおりエドワルドの執務室でこき使われているトームスだ。
「エレナは伯爵家の令嬢ですもの。嫁ぐのであれば、伯爵以上でないといけませんわ(トームスには似合いませんけれど)」
「悪かったな。王宮舞踏会でのしおらしさはどこにいった?」
フィルミナとエレナはトームスが一生懸命働いている横で優雅にソファで寛ぎながら、お茶を飲んでいる。
「あれは演技です(最近ハマっていた悪役令嬢の物語が役に立ちましたわ)」
「おまえ、王太子妃じゃなくて役者になれば?」
刹那、トームスの頭に衝撃が走る。エドワルドが書類を丸めてトームスの頭を殴ったのだ。
「フィーは私の妃になるのだ! それにしてもすまなかったな、フィー。君にあんなことをさせてしまった」
実のところ、王宮舞踏会でフィルミナが植え込みで見たという黒い影は、フィルミナに近づく前にトームスが捕らえたのだ。黒い影の正体はコストナー男爵家の執事だった。彼は再三、男爵とアンジェリカに諫言をしてきたのだが、聞き入れてもらえず、それどころか妻子がどうなってもいいのかと脅されていたそうだ。
気の毒に思ったトームスは、執事をはじめコストナー男爵家で働いていた使用人に仕事を斡旋するようにエドワルドに提案をした。フィルミナを狙った執事は許さんと怒っていたエドワルドを何とか宥(なだ)めるのは大変だったが……。
ちなみにアンジェリカが雇った男たちはヴィルシュタイン公爵領の鉱山で生涯強制労働となった。
「エド、気にしないでください(結構楽しかったですわ)」
「ああ。フィーは優しいな。抱きしめていいか?」
フィルミナを熱い眼差しで見つめているエドワルドにトームスが釘をさす。
「やめろ。このバカップル!」
「ところでフィルミナ様。本当によろしかったのですか? コストナー男爵の罪は決して軽いものではありません。情状酌量を申し出られるなど」
エレナの言うことはもっともだ。ヴィルシュタイン公爵領へ向かう途中、襲撃された馬車の中には王太子であるエドワルドも乗っていた。王族を襲撃するなど処刑されても文句は言えない。
「あれで良いのです。爵位返上のうえに国外追放された貴族がまともに生きていけるとは思えません(悪役令嬢の物語では悪役が国外追放でざまぁが定番ですもの)」
「本音がおかしいぞ、おまえ」
要するにフィルミナは物語のヒロインを演じてみたかったのだろう。
「そういえば、アンジェリカ嬢は王太子殿下とトームスが時々入れ替わっていることはご存じではありませんでしたのね」
コストナー男爵親子を捕縛する際、トームスが眼鏡を外すと彼らは声にならない声をあげていた。
「あの狸親父は前の王宮舞踏会での出来事を知らなかったみたいだな」
「私たちを見分けることができるのはフィーとエレナ嬢くらいだろうな」
つむじで人を見分けるフィルミナはともかく、エレナはなぜ見分けることができるのかトームスは疑問に思う。以前、気品が違うとか言っていたが、最近のトームスは洗練されてさらにエドワルドに近づいている。
「なあ、エレナはどうやって俺と殿下を見分けているんだ?」
「そ……それは……」
言葉に詰まってしまったエレナに代わってフィルミナが堂々と言い切る。
「愛の力ですわ!」
「フィルミナ様!」
赤くなり、フィルミナの名前を叫ぶエレナは可愛く、抱きしめたいとトームスは不覚にも思ってしまった。
「ところでトームス。マルク子爵……じゃなかった伯爵領で挙げる結婚式の手配はしてあるのだろうな?」
「手配したぞ。お望みどおりの教会を選んだぜ。ついでに必要な単位がとれたから、学園の卒業手続きも済ませておいた」
4人とも学園では優秀だったため、夏休みまでに単位をとりきってしまったのだ。通常1年~4年かかるはずの単位取得を半年足らずで成し遂げたので、あっさり卒業許可がとれた。
「いよいよフィーと結婚できるのか。楽しみだ」
エドワルドとフィルミナの結婚式は三ヶ月後だ。フィルミナは婚礼の支度で忙しいはずなのだが、なぜかエドワルドの執務室でのんびりとしていることが多い。
「フィルミナ、おまえ婚礼の支度はいいのか? ウェディングドレスの仮縫いとかあるんだろ?」
「それはエレナに任せていますので大丈夫です」
エレナは今、フィルミナの筆頭侍女となるため王宮で働いている。
「ウェディングドレスの仮縫いはもう済ませてありますし、婚礼の支度もご実家でされていますので、実のところフィルミナ様がされることは今のところないのです」
王宮でのエレナの仕事ぶりはトームスの耳にも入ってくるが、かなり優秀らしい。
「ああ、そういえばトームス。おまえは来月から宰相補佐官も兼任してもらうからな」
「何だと!? 俺を過労死させる気か!」
そんな話は初耳だ。トームスは我が耳を疑った。
「将来、お前には宰相として、私が即位したら右腕となって働いてもらう」
「まあ、良かったですわね、トームス(実はお父様もトームスを後継として狙っていたのよね)」
「過労死など許しませんわよ。私を未亡人にするつもりですか?」
トームスは頭を抱えてしまう。
「俺の意思はどうなるんだ!?」
「「「トームスに拒否権はない!」」」
エドワルドは後に賢王と呼ばれる。その陰で優秀な宰相が馬車馬のごとく働いていたのだが、歴史書には記されていない。ただ、宰相は国王と瓜二つだったという伝説だけは語り継がれた。
王宮舞踏会でなおも言い訳をしようとするコストナー男爵に、今までの悪事を集めた証拠をつきつけたのだ。
エドワルドとトームスは独自でコストナー男爵の悪事の証拠を集めていた。
不正取引、人身売買など調べれば調べるほど悪事が露見してきたのだ。言い逃れができないよう、徹底的に潰すための証拠を集めていた。
「主に俺が証拠集めであちこち走り回ったんだけどな」
叙勲式で手柄を立てた褒美としてトームスは伯爵に陞爵した。
「おかげで今日からマルク伯爵だ。嬉しいだろう」
叙勲式の後、いつもどおりエドワルドの執務室でこき使われているトームスだ。
「エレナは伯爵家の令嬢ですもの。嫁ぐのであれば、伯爵以上でないといけませんわ(トームスには似合いませんけれど)」
「悪かったな。王宮舞踏会でのしおらしさはどこにいった?」
フィルミナとエレナはトームスが一生懸命働いている横で優雅にソファで寛ぎながら、お茶を飲んでいる。
「あれは演技です(最近ハマっていた悪役令嬢の物語が役に立ちましたわ)」
「おまえ、王太子妃じゃなくて役者になれば?」
刹那、トームスの頭に衝撃が走る。エドワルドが書類を丸めてトームスの頭を殴ったのだ。
「フィーは私の妃になるのだ! それにしてもすまなかったな、フィー。君にあんなことをさせてしまった」
実のところ、王宮舞踏会でフィルミナが植え込みで見たという黒い影は、フィルミナに近づく前にトームスが捕らえたのだ。黒い影の正体はコストナー男爵家の執事だった。彼は再三、男爵とアンジェリカに諫言をしてきたのだが、聞き入れてもらえず、それどころか妻子がどうなってもいいのかと脅されていたそうだ。
気の毒に思ったトームスは、執事をはじめコストナー男爵家で働いていた使用人に仕事を斡旋するようにエドワルドに提案をした。フィルミナを狙った執事は許さんと怒っていたエドワルドを何とか宥(なだ)めるのは大変だったが……。
ちなみにアンジェリカが雇った男たちはヴィルシュタイン公爵領の鉱山で生涯強制労働となった。
「エド、気にしないでください(結構楽しかったですわ)」
「ああ。フィーは優しいな。抱きしめていいか?」
フィルミナを熱い眼差しで見つめているエドワルドにトームスが釘をさす。
「やめろ。このバカップル!」
「ところでフィルミナ様。本当によろしかったのですか? コストナー男爵の罪は決して軽いものではありません。情状酌量を申し出られるなど」
エレナの言うことはもっともだ。ヴィルシュタイン公爵領へ向かう途中、襲撃された馬車の中には王太子であるエドワルドも乗っていた。王族を襲撃するなど処刑されても文句は言えない。
「あれで良いのです。爵位返上のうえに国外追放された貴族がまともに生きていけるとは思えません(悪役令嬢の物語では悪役が国外追放でざまぁが定番ですもの)」
「本音がおかしいぞ、おまえ」
要するにフィルミナは物語のヒロインを演じてみたかったのだろう。
「そういえば、アンジェリカ嬢は王太子殿下とトームスが時々入れ替わっていることはご存じではありませんでしたのね」
コストナー男爵親子を捕縛する際、トームスが眼鏡を外すと彼らは声にならない声をあげていた。
「あの狸親父は前の王宮舞踏会での出来事を知らなかったみたいだな」
「私たちを見分けることができるのはフィーとエレナ嬢くらいだろうな」
つむじで人を見分けるフィルミナはともかく、エレナはなぜ見分けることができるのかトームスは疑問に思う。以前、気品が違うとか言っていたが、最近のトームスは洗練されてさらにエドワルドに近づいている。
「なあ、エレナはどうやって俺と殿下を見分けているんだ?」
「そ……それは……」
言葉に詰まってしまったエレナに代わってフィルミナが堂々と言い切る。
「愛の力ですわ!」
「フィルミナ様!」
赤くなり、フィルミナの名前を叫ぶエレナは可愛く、抱きしめたいとトームスは不覚にも思ってしまった。
「ところでトームス。マルク子爵……じゃなかった伯爵領で挙げる結婚式の手配はしてあるのだろうな?」
「手配したぞ。お望みどおりの教会を選んだぜ。ついでに必要な単位がとれたから、学園の卒業手続きも済ませておいた」
4人とも学園では優秀だったため、夏休みまでに単位をとりきってしまったのだ。通常1年~4年かかるはずの単位取得を半年足らずで成し遂げたので、あっさり卒業許可がとれた。
「いよいよフィーと結婚できるのか。楽しみだ」
エドワルドとフィルミナの結婚式は三ヶ月後だ。フィルミナは婚礼の支度で忙しいはずなのだが、なぜかエドワルドの執務室でのんびりとしていることが多い。
「フィルミナ、おまえ婚礼の支度はいいのか? ウェディングドレスの仮縫いとかあるんだろ?」
「それはエレナに任せていますので大丈夫です」
エレナは今、フィルミナの筆頭侍女となるため王宮で働いている。
「ウェディングドレスの仮縫いはもう済ませてありますし、婚礼の支度もご実家でされていますので、実のところフィルミナ様がされることは今のところないのです」
王宮でのエレナの仕事ぶりはトームスの耳にも入ってくるが、かなり優秀らしい。
「ああ、そういえばトームス。おまえは来月から宰相補佐官も兼任してもらうからな」
「何だと!? 俺を過労死させる気か!」
そんな話は初耳だ。トームスは我が耳を疑った。
「将来、お前には宰相として、私が即位したら右腕となって働いてもらう」
「まあ、良かったですわね、トームス(実はお父様もトームスを後継として狙っていたのよね)」
「過労死など許しませんわよ。私を未亡人にするつもりですか?」
トームスは頭を抱えてしまう。
「俺の意思はどうなるんだ!?」
「「「トームスに拒否権はない!」」」
エドワルドは後に賢王と呼ばれる。その陰で優秀な宰相が馬車馬のごとく働いていたのだが、歴史書には記されていない。ただ、宰相は国王と瓜二つだったという伝説だけは語り継がれた。
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