儚い恋色

忍者

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二人っきり

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 夕焼けの羽衣が、幾重に柔わらかく空一色に光らせている。
いよいよ上り坂からトンネルに近づいたと思う頃、日差しが、あちこちの木々を茜色に染めながら、離れてゆく。タクシーがトンネルにはいって、凄まじい早さで暗闇の底へと入り、わたしを、包み込むような天使の羽衣が逃げていった。
 私は15歳、中学校の制服を着て、学生カバンを背中に背負っていた。1人山口の旅に出てから三日目のことだった。
湯田温泉街に一晩泊り、スーパーホテルに2日泊り、そしてタクシーの中で勝坂という坂道を登ってトンネルに入ってきたのだった。くぐる前の幾千にも囲んでいる山々や深い緑色の森林に見とれながら、トンネルをでたあと、下り坂である期待をして、ときめいていた。後座席ながらも、目的地に急ぐように、足をバタつかていた。下り坂を走っているうちに、雨が降り始めた。車に打ちはじめた。車の中は、無音のため、ぽつぽつと、雨音が、頭上から、忍ばせつつ、響かせている。下り坂を過ぎ、ようやく平坦な道なりになり、ほっとすると同時に、私は、コンビニに車を止め、はいった。
そこには、期待通り小学校時代の友達が、コンビニでポテトチップスを買っていた。
こみ上げてくる喜びで、つったている私をみた直子がすぐに自分のポテトチップスを隠し、回れ右、会計へと向かった。
「え?」とだけ言って、私は直子に向かって追いかけた。
ポテトチップスを隠した驚きと、会えた嬉しさで、「やったね!」という言葉が喉元から、出ようにも出なかった。




    
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