ならまち、食べ尽くそうや!

おろしちみ

文字の大きさ
29 / 36
Period 1 ならまちを知りましょう。

第29話 どうしよう 後編

しおりを挟む
 翌日、希咲は朝の登校には来なかった。なんとなく察してはいたが、こっちの方が打ち合わせしやすい。希咲がいなくて嬉しいわけはないけど、三人で自然に顔を合わせられるのは登下校の時ぐらいだし。
「どんな品目にするか、よりはまずいつ渡すかを決めないとな。希咲がまず何に対して怒ってるのかが分かればいいんだけど、いつまで続きそうだと思う?」
「分からない。でも、このままギスギスの感じで文化祭の劇の練習は正直キツいよな……。それは普通に悠里とか他の友達にも悪いし……。向こうが平静を保って私に接してくれるんならありがたいけど」
 春夏は文化祭の劇で、悠里ゆうりが作ったストーリーのメインヒロインをすることになっている。そして、その劇の悪役として春夏と対峙するのが、運悪く希咲なのだ。もちろん同じクラスだし、主役級の二人の練習時間は相当多くなるだろう。
「じゃあ文化祭の前?」
「そうだね。でも私、今週から結構練習多くなると思う」
「私はダンスがヤバいから絶対居残りでやらされると思う……」
「そっかぁ。じゃああんまり時間取れないかもね。あ、そうだ。作る時は私に言ってね。場所はうちの実家の方の家使っていいし、おばあちゃんとお母さん、時雨先生もやりたいってさ」
 叶恋が自転車をわざわざ停めた。
「なんでそこに伊納いのう先生の名前が出てくるわけさ。あーそっか、でも料理部の顧問だったっけ? 紗穂、仲良いの?」
 そうか、叶恋には言っていなかったか。そりゃああんなにわざわざ皮を被ってまで素晴らしい教師をやっているのだから、疑問に思うのも当たり前か。ホント、時雨先生は家にいる時と数学を教えている時とではまるで人間が違うみたいだ。
時雨しぐれ先生は、私のお兄ちゃんの奥さん。だから私からすれば義理のお姉ちゃんなんだ。言ってなかったよね」
 叶恋は驚いたような顔をしたが、なんとなく納得したように「そうか」と頷いた。
「じゃあ文化祭までに作るってことで。日程は今後調整しようか。なんだか希咲には悪いけど、秘密に進めような」
 こうきちんと言葉にして言われると希咲を仲間外れにしているみたいで悪い。しかしよくよく考えてみればサプライズって、仲間外れだ。仲間外れがサプライズになるというわけではない。サプライズに仲間外れは付き物になってしまう、という意味だ。すっごいジレンマだけどどうしようもない。
「アプリで共有カレンダー作っとく? そしたら空いてる日が分かるしさ」
「いいね、学校に着いたら入れておくよ」
 24号線に出たところで、横断歩道の向こう側に希咲を見つけたが、なんとも言えない気持ちになって、それはきっと三人とも同じで誰も話題に出さなかった。希咲でなくても、誰が見ても立派な虐めの構図が出来上がっていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

近すぎて見えない物

あんど もあ
ファンタジー
エルリック王子と一夜を共にした男爵令嬢。エルリックの婚約者シルビアが、優しく彼女に言った一言とは。

処理中です...