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Period 1 ならまちを知りましょう。
第29話 どうしよう 後編
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翌日、希咲は朝の登校には来なかった。なんとなく察してはいたが、こっちの方が打ち合わせしやすい。希咲がいなくて嬉しいわけはないけど、三人で自然に顔を合わせられるのは登下校の時ぐらいだし。
「どんな品目にするか、よりはまずいつ渡すかを決めないとな。希咲がまず何に対して怒ってるのかが分かればいいんだけど、いつまで続きそうだと思う?」
「分からない。でも、このままギスギスの感じで文化祭の劇の練習は正直キツいよな……。それは普通に悠里とか他の友達にも悪いし……。向こうが平静を保って私に接してくれるんならありがたいけど」
春夏は文化祭の劇で、悠里が作ったストーリーのメインヒロインをすることになっている。そして、その劇の悪役として春夏と対峙するのが、運悪く希咲なのだ。もちろん同じクラスだし、主役級の二人の練習時間は相当多くなるだろう。
「じゃあ文化祭の前?」
「そうだね。でも私、今週から結構練習多くなると思う」
「私はダンスがヤバいから絶対居残りでやらされると思う……」
「そっかぁ。じゃああんまり時間取れないかもね。あ、そうだ。作る時は私に言ってね。場所はうちの実家の方の家使っていいし、おばあちゃんとお母さん、時雨先生もやりたいってさ」
叶恋が自転車をわざわざ停めた。
「なんでそこに伊納先生の名前が出てくるわけさ。あーそっか、でも料理部の顧問だったっけ? 紗穂、仲良いの?」
そうか、叶恋には言っていなかったか。そりゃああんなにわざわざ皮を被ってまで素晴らしい教師をやっているのだから、疑問に思うのも当たり前か。ホント、時雨先生は家にいる時と数学を教えている時とではまるで人間が違うみたいだ。
「時雨先生は、私のお兄ちゃんの奥さん。だから私からすれば義理のお姉ちゃんなんだ。言ってなかったよね」
叶恋は驚いたような顔をしたが、なんとなく納得したように「そうか」と頷いた。
「じゃあ文化祭までに作るってことで。日程は今後調整しようか。なんだか希咲には悪いけど、秘密に進めような」
こうきちんと言葉にして言われると希咲を仲間外れにしているみたいで悪い。しかしよくよく考えてみればサプライズって、仲間外れだ。仲間外れがサプライズになるというわけではない。サプライズに仲間外れは付き物になってしまう、という意味だ。すっごいジレンマだけどどうしようもない。
「アプリで共有カレンダー作っとく? そしたら空いてる日が分かるしさ」
「いいね、学校に着いたら入れておくよ」
24号線に出たところで、横断歩道の向こう側に希咲を見つけたが、なんとも言えない気持ちになって、それはきっと三人とも同じで誰も話題に出さなかった。希咲でなくても、誰が見ても立派な虐めの構図が出来上がっていた。
「どんな品目にするか、よりはまずいつ渡すかを決めないとな。希咲がまず何に対して怒ってるのかが分かればいいんだけど、いつまで続きそうだと思う?」
「分からない。でも、このままギスギスの感じで文化祭の劇の練習は正直キツいよな……。それは普通に悠里とか他の友達にも悪いし……。向こうが平静を保って私に接してくれるんならありがたいけど」
春夏は文化祭の劇で、悠里が作ったストーリーのメインヒロインをすることになっている。そして、その劇の悪役として春夏と対峙するのが、運悪く希咲なのだ。もちろん同じクラスだし、主役級の二人の練習時間は相当多くなるだろう。
「じゃあ文化祭の前?」
「そうだね。でも私、今週から結構練習多くなると思う」
「私はダンスがヤバいから絶対居残りでやらされると思う……」
「そっかぁ。じゃああんまり時間取れないかもね。あ、そうだ。作る時は私に言ってね。場所はうちの実家の方の家使っていいし、おばあちゃんとお母さん、時雨先生もやりたいってさ」
叶恋が自転車をわざわざ停めた。
「なんでそこに伊納先生の名前が出てくるわけさ。あーそっか、でも料理部の顧問だったっけ? 紗穂、仲良いの?」
そうか、叶恋には言っていなかったか。そりゃああんなにわざわざ皮を被ってまで素晴らしい教師をやっているのだから、疑問に思うのも当たり前か。ホント、時雨先生は家にいる時と数学を教えている時とではまるで人間が違うみたいだ。
「時雨先生は、私のお兄ちゃんの奥さん。だから私からすれば義理のお姉ちゃんなんだ。言ってなかったよね」
叶恋は驚いたような顔をしたが、なんとなく納得したように「そうか」と頷いた。
「じゃあ文化祭までに作るってことで。日程は今後調整しようか。なんだか希咲には悪いけど、秘密に進めような」
こうきちんと言葉にして言われると希咲を仲間外れにしているみたいで悪い。しかしよくよく考えてみればサプライズって、仲間外れだ。仲間外れがサプライズになるというわけではない。サプライズに仲間外れは付き物になってしまう、という意味だ。すっごいジレンマだけどどうしようもない。
「アプリで共有カレンダー作っとく? そしたら空いてる日が分かるしさ」
「いいね、学校に着いたら入れておくよ」
24号線に出たところで、横断歩道の向こう側に希咲を見つけたが、なんとも言えない気持ちになって、それはきっと三人とも同じで誰も話題に出さなかった。希咲でなくても、誰が見ても立派な虐めの構図が出来上がっていた。
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