転生悪役令嬢の前途多難な没落計画

一花八華

文字の大きさ
74 / 113
第2章

薔薇の枝にある棘

しおりを挟む
「それじゃ。俺様は行くからな。」

 そう言って去るオズワルド皇子。「ほら。これ。お前のだろ。」っとお菓子の詰まった紙袋を渡される。ハンスが黙ってそれを受け取り頭を下げる。私の卑・・癒し達!・・・・オズワルド皇子の護衛(?)の方が拾って下さったみたいですわ。「ちっ。撒いてきたと思っていたんだがな・・・・」っと苦々しそうに口にされながら。護衛の事ですわよね?

 オズワルド皇子の背中が見えなくなり、ため息が零れる。結局きちんとしたお礼を口にする事はできませんでしたわ。何やってるの私。




ラパーチェット女子寮までお送りします。」

 柔らかく微笑むハンスの横を歩く。少し薄暗くなったアルファフォリスの敷地内。寮へと続く、暖色でまとめられたレンガの道。コツコツと音が響く。私とハンスの足音が。

「遅かったので、心配しました。」

「レオニダスやフィロス嬢と一緒じゃなかったんですか?何故オズワルド皇子と?」

 ハンスの声が落ちてくる。その声が、今は耳に・・・・胸に痛い。私の奥に鈍い痛みを与えますわ。大好きな声。いつももっと聞きたいと願っていた声。今はそれを聞くのが辛い。

「途中まで、レオニダスと一緒だったわ。フィロスは不参加よ。」
「え?そうだったんですか?てっきりフィロス嬢も一緒だと・・・・」
「断られたのよ。・・・・レオニダスとはぐれたから、たまたま出会ったオズワルド皇子と一緒に帰宅したの。」

 貴方は・・・・

「貴方も・・・・アルテに居たわね。」

 聞くつもりなんてなかった。聞いてその答えに傷付きたくなんてなかったから。ですのに・・・・口は勝手に開き、零れた言葉は慌てて手で抑えても戻る事なんてなくて・・・・

「お嬢様に見られてたんですね。」

 私の言葉に、少し困ったように返すハンス。見られては、不味かった?私が見ては、ダメだった?

「そうなんです・・・・今日はルビアナ嬢とそれと・・・・」
「ルビアナと一緒だった・・・・」

ぐっと胸に鉛のように重くどす黒い気持ちが・・・・

「え?はい。約束していたので。すみません。お嬢様とご一緒できなくて。」

 申し訳なさそうに眉尻を下げる。そんな顔をするなら、何故一緒にいてくれなかったの!?我儘で黒い感情が溢れそうになる。

「いいえ。今日は、執事はお休みの日でしたもの。貴方の休日まで、私を優先していただかなくて構いませんわ。」

 チクリと小さな棘が、胸に刺さる。月に一度あるハンスの休日。【執事】でなく【ハンス】としての貴方と、一緒にアルテに行きたかった。でも、アルテの街で【ハンス】の横に居たのは、私じゃなくて・・・・。

「・・・・付き合っているの?」

 聞きたくなんてないのに・・・・どうして口から零れるの?お願い。否定して!

そう願ってハンスの口元を見るのに

「ああ・・・・ええっと。まだ?ですかね。私もどうしようかと思っているんですけれど・・・・。」

 苦笑しながら返された。

「うまくいけばいいな。とは、思っています。」

 ・・・・そうなのね。

「そう。」
「お嬢様は、どう思われますか?」


ー聞き間違いかしら。


ハンスのその言葉が、私の胸を抉る。鋭く尖った薔薇の棘。

今、ハンスは、私に聞いたのよね?

【ルビアナとつき合う事を、どう思うか】


ーと。




 ・・・・ねぇ。ハンス。
何故私に、そんな事を聞くの?
私の気持ちを知っているくせに
何故、そんな残酷な事を聞いてくるの?

ねぇ。  
私の7年間の想いは、ちっとも届いていなかった?

私の本気の想いは、貴方にとって取るに足らないモノだったのね。


だから、いつも
相手にすら

してくれなかった・・・・



 見上げるハンスの顔。
ぼんやりと滲んでよく見えない。




「・・・・何か、あったんですか?」

 答える事のできない私。ハンスは立ち止まり、私の方を向くと肩に触れてきた。

「お嬢様?」

 ーびくっ。肩が跳ねる。思わず手でハンスを押し退けてしまった。『ハンスに、触れられたくない。』今、触れられると色々な感情が押し寄せてきて、何を言いだすのか・・・・自分がわからない。

「お嬢様!この痣は!?」

 私の手を見て、ハンスが痣に気付く。

「それに、首筋にも傷が!?これは、刃物!?」

 私の肌に残る跡に、狼狽えるハンス。貴方が心配し取り乱すのは、私が貴女の【お嬢様】だから?

「何があったんですか!?お嬢様!もしや暴漢に!?ーっ俺が傍にいなかったから!?」

 貴方がそんな顔をするのは、【執事】として大切な【お嬢様】を護れなかったから?

「お嬢様!他に怪我は!?どうして!?フィロス嬢とレオニダスがいれば大丈夫かと・・・・俺はなんて馬鹿なんだっ!!」

「大丈夫よ。ハンス。私は何もなかったわ。」

オズワルド皇子が助けてくれましたから。

「・・・・今日は【お休み】でしょう?休みの日まで【執事】をしなくていいわ。」

 チク。
吐いた筈の棘が、私の胸に突き刺さる。

「ねぇ。ハンス。放っておいて。」



「今日はとても・・・・疲れたのよ。」
しおりを挟む
感想 91

あなたにおすすめの小説

【長編版】悪役令嬢は乙女ゲームの強制力から逃れたい

椰子ふみの
恋愛
 ヴィオラは『聖女は愛に囚われる』という乙女ゲームの世界に転生した。よりによって悪役令嬢だ。断罪を避けるため、色々、頑張ってきたけど、とうとうゲームの舞台、ハーモニー学園に入学することになった。  ヒロインや攻略対象者には近づかないぞ!  そう思うヴィオラだったが、ヒロインは見当たらない。攻略対象者との距離はどんどん近くなる。  ゲームの強制力?  何だか、変な方向に進んでいる気がするんだけど。

悪役令嬢の心変わり

ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。 7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。 そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス! カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!

転生ヒロインは悪役令嬢(♂)を攻略したい!!

弥生 真由
恋愛
 何事にも全力投球!猪突猛進であだ名は“うり坊”の女子高生、交通事故で死んだと思ったら、ドはまりしていた乙女ゲームのヒロインになっちゃった! せっかく購入から二日で全クリしちゃうくらい大好きな乙女ゲームの世界に来たんだから、ゲーム内で唯一攻略出来なかった悪役令嬢の親友を目指します!!  ……しかしなんと言うことでしょう、彼女が攻略したがっている悪役令嬢は本当は男だったのです! ※と、言うわけで百合じゃなくNLの完全コメディです!ご容赦ください^^;

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

すべてを思い出したのが、王太子と結婚した後でした

珠宮さくら
恋愛
ペチュニアが、乙女ゲームの世界に転生したと気づいた時には、すべてが終わっていた。 色々と始まらなさ過ぎて、同じ名前の令嬢が騒ぐのを見聞きして、ようやく思い出した時には王太子と結婚した後。 バグったせいか、ヒロインがヒロインらしくなかったせいか。ゲーム通りに何一ついかなかったが、ペチュニアは前世では出来なかったことをこの世界で満喫することになる。 ※全4話。

転生したら悪役令嬢になりかけてました!〜まだ5歳だからやり直せる!〜

具なっしー
恋愛
5歳のベアトリーチェは、苦いピーマンを食べて気絶した拍子に、 前世の記憶を取り戻す。 前世は日本の女子学生。 家でも学校でも「空気を読む」ことばかりで、誰にも本音を言えず、 息苦しい毎日を過ごしていた。 ただ、本を読んでいるときだけは心が自由になれた――。 転生したこの世界は、女性が希少で、男性しか魔法を使えない世界。 女性は「守られるだけの存在」とされ、社会の中で特別に甘やかされている。 だがそのせいで、女性たちはみな我儘で傲慢になり、 横暴さを誇るのが「普通」だった。 けれどベアトリーチェは違う。 前世で身につけた「空気を読む力」と、 本を愛する静かな心を持っていた。 そんな彼女には二人の婚約者がいる。 ――父違いの、血を分けた兄たち。 彼らは溺愛どころではなく、 「彼女のためなら国を滅ぼしても構わない」とまで思っている危険な兄たちだった。 ベアトリーチェは戸惑いながらも、 この異世界で「ただ愛されるだけの人生」を歩んでいくことになる。 ※表紙はAI画像です

人見知りと悪役令嬢がフェードアウトしたら

渡里あずま
恋愛
転生先は、乙女ゲーの「悪役」ポジション!? このまま、謀殺とか絶対に嫌なので、絶望中のルームメイト(魂)連れて、修道院へ遁走!! 前世(現代)の智慧で、快適生活目指します♡ 「この娘は、私が幸せにしなくちゃ!!」 ※※※ 現代の知識を持つ主人公と、異世界の幼女がルームシェア状態で生きていく話です。ざまぁなし。 今年、ダウンロード販売を考えているのでタイトル変更しました!(旧題:人見知りな私が、悪役令嬢? しかも気づかずフェードアウトしたら、今度は聖女と呼ばれています!)そして、第三章開始しました! ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

処理中です...