狐メイドは 絆されない

一花八華

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狐メイドは、英雄を拾う

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無事に買い物を済ませ、帰路に着く。なんのトラブルもミスもなくスムーズにミッションクリア。

儂ってば、なんとも優秀なお子様ではないか。

ぽてぽてとのんびり、小川の畔を歩く。天気快晴、視界良好。気分晴々。これは、帰宅次第、ご褒美にプリンをねだっても罰は当たらんのぉ。なんとも良いお使い日和じゃ。


足元で儂にすがり付く不審者を除けば…。



「はぁはぁ…。おっ…お嬢ちゃん。いい所に…きてくれた。」


おおうっ。
大の大人の男が、幼女の足にすがり付き、はぁはぁ息を荒げておる。



「あ…怪しくなんてないから…ちょっ…ちょっと俺の話を…聞いてくれる?」
「怖い事なんて…何もしないから…」


すがるように、こちらを見つめる赤毛の男…。ううむ。目も血走っており、怪しさ満載じゃな。怪しくないというのが無理じゃ。

引き気味な儂を離すまいと、力を込めてきよる。うぬっ。元九尾の大妖狐といえども、それは前世の話。今は、お尻尾がひとつしかないこぎつねじゃ。先日、記憶を取り戻した儂は、妖力らしき力も発揮できてはおらぬ。こんなぼろ雑巾のような赤毛の変態など、妖力さえあれば 焔で焼きあげ 捨て置けるというに…。口惜しや。

なんとか追い払おうと、もがく儂に 男は、何かに気付き クンクンと鼻を動かす。

うむ。なんじゃ、こやつ。まさか…まさか、匂いを嗅いでおるのでは、ないであろうな!?



【「世の中には、幼女趣味という輩がいまして 可愛い女の子を見るや はぁはぁと息をあらげ 近寄り 匂いをかぎ、あわよくば触れてこようとする変態がいるのです。」】




出掛けのセイの言葉が、儂の頭でリフレインする。

「あれ?この匂い。…もしかしてお嬢ちゃん。セ…」
「ぎゃああぁあ!!変態!!変態!!幼女趣味!!儂に何をする気じゃ!離せ!離せぇ!寄るな!キモい!気色悪いぃ!」

ゲシゲシとその頭と顔を、容赦なく踏みつける。
残念な事に、この赤毛の変態は怯む事なく儂を離そうとせず寧ろ手をとり顔をあげる。心なしか、顔が笑っておるではないか!うぎゃあ!へんたい!

「ちょっ。いたっイタタ。お嬢ちゃん、頼むから話を聞いて。俺、多分知り合いだから。」
「こんな赤毛の変態などしらぬ!覚えていても、抹殺する!」
「ぶっ!物騒だな!だから、俺、君の保護者の知り合いだから。君にマーキングされた匂い、知ってるから!セイ!セイの知り合い!俺、あいつの無二の親友だから!」

「セイ?」

思わずポカンとし、男を見つめる。セイの知り合い?こやつが?変態仲間というやつか?

「僕は、こんな変態の知り合いはいません。むしろ親友だなんて持った覚えもありませんね。」

頭上から、馴染みの声がする。

「遅かったので、心配しましたよ。たまもさん。迎えにきました。」

儂が見上げると、眉尻を下げ ほっとした表情で目を細めるセイがいた。そして、視線を儂の足元に戻すと 底冷えのするような冷たい色を瞳に宿し、汚物に向ける視線を赤毛の男に投げた。

「…何をしているんですか?汚物…いや、アル…。貴方、宮廷騎士になったはずじゃ?というか、さっさとたまもさんから離れなさい。元英雄といえども、たまもさんに手を出すのであれば、僕直々に引導を渡してあげますよ?」



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