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高鳴る鼓動
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抱きしめられた腕の中。私の耳に、クラウスの唇が微かに触れていて……。その吐息に背中はゾクゾクと悲鳴をあげ、思わず身を捩る。ドクドクと波打つ鼓動は自身のモノか、衣越しから感じるクラウスのソレなのか……。
クラウス……案外しっかりした身体付きなのね。胸板は思っていたより厚いし、抱きしめられた腕は力強くて男らしい……こんなに近くでクラウスを感じたのなんて初めてで、ドキドキするわ。
「本当に……馬鹿な女だ……」
顔にぼっと火が灯る。クラウスの囁きが甘い。私今、耳の先まで真っ赤だわ。そうに違いないわ。
ああ、だめよ、だめだめ、平常心よ。
夜這いをかけようとして失敗した上、逆ギレの告白、馬鹿と言われてるのに真っ赤になって照れるだなんて……これ以上の醜態痴態は見せられない!
ヒッヒッフゥ。静まれ、荒ぶる乙女の魂よ!ヒッヒッフゥ。いでよ、平常神!
「ばっ……馬鹿だなんて酷いわ」
そういって、クラウスの胸を押し返す。一刻も早くクラウスから離れて、HPを回復しなければ死ぬ。精神的に死ぬ。クラウスに殺されるわ。私を「馬鹿だ」と囁く、その声さえも甘く感じるだなんて……末期症状もいいところだわ!致命傷ね!
それもこれもクラウスの所為よ。だってこんな風に、クラウスが私を抱きしめるなんて有り得ないもの!ヴィスコンティ家の能面執事よ!?私が今までどんなにアプローチかけても、無表情、無反応、無慈悲に塩対応してきたあのクラウスがぎゅってしてきてるのよ!?ぎゅって……ぎゅうって……
「……クラウスいつまでこうしてるの」
懸命に押し返すのだけど、クラウスの拘束は一向に外れてくれない。私の脳みそも、オーバーヒートでショート寸前だわ。この状況、美味しくて勿体無いのだけれど、そろそろ解放してくれない?ねぇ?
「いつまで……とは?」
「え? だから、いつまで私をこう……その……だっ……抱きしめているつもり?」
うっ、上擦っちゃったじゃない。しっかりしなさいよ平常神!
「お嬢様は、嫌なのですか?」
「いっいやではないけど、心臓に悪いわ」
「……」
「くっ……クラウス?」
私、また変な事言っちゃった? クラウスの反応が怖い。
「……確かに、心臓に悪いですね。こんなに激しく早鐘が鳴っていたら、このまま死んでしまうかもしれない」
うわー!やっぱりクラウスにもドキドキがバレてた!しっかり仕事なさいよ平常神!なんの為に呼び出したと思っているの!?恥ずかしい、恥ずかしい、活動限界だわ。強制終了ボタンはどこ!?
「お嬢様」
「なっなによ!?」
「わかりますか?」
「なにをよ!?」
「ドキドキしてるんです」
知ってるわよ!あらためて言う事ないでしょ?
「俺の心臓、さっきからドクドクと騒いで煩いでしょう?」
突っ撥ねた手にクラウスの手が重ねられて、その鼓動を意識させられる。
「全部。お嬢様の所為ですよ」
「ふぇ?」
詰るようなその声に、思考が停止しかける。しっ知らないわ!こんなこんなクラウス知らない!アルカイックスマイルを貼り付けた能面執事は何処!?目の前にいる色気だだ漏れな美形はナニ!?
ーカチャリと音がする。
え? 鍵を掛けた? なんで?
「ヴィスコンティ家の令嬢で、地位もあるのにそれを傘にきない気さくさ。その可憐さや美しさ、あどけなさと時折魅せる艶やかさで周りを誑かすくせに、自分に向けられる好意に愚鈍すぎるほど気づかない」
私の手を取ると、そのままその甲へチュッと小さく口付けを落とすクラウス。
「素直で、眩しい程に真っ直ぐで、しっかりしているようで抜けていて、隙だらけで危なっかしい……」
チュッチュッと甲、節、指先へとクラウスの薄い唇の感触が残されていく。……目の前でサラサラと零れる、アイスブルーの銀髪。息を飲み見つめる。
「お嬢様……ずっとずっと、見てきました。長く貴女を想っていた。そんな貴女に可愛く強請られて……俺が私のままで居られるとお思いですか?」
「え?」
なにかしら……クラウスの様子が変だわ。
「あぁ……邪魔だな……」
そう呟くと、嵌めていた手袋を口で脱ぎ捨てる。その仕草が荒々しくて、普段の高貴さと気品を漂わせるクラウスとは別人のようで
「お嬢様……」
「あっ」
「俺は怒っているんですよ? 貴女のこの軽率な行動に……」
白く長い指が、私の顎に触れ、翡翠の視線に絡め取られる。
「どれだけ……どんな想いで、貴女に触れないよう……貴女に気持ちがバレないよう……隠してきたか」
その瞳の奥に、仄暗い熱を感じ息が詰まる。
「……本当に貴女は何もわかっていない」
つつつと親指で私の下唇をなぞりながら、吐息のかかる距離でそう囁きかけてくる。
「好きですよ。お嬢様。ずっとずっとお慕いしていました」
「え?」
熱を孕んだ瞳で、逃さないと縫い止め縛り付けられる。その言葉、視線に言葉が見つからない。今……なんて? クラウスが、すきって……いわなかった?
「お嬢様……貴女に触れる許可を」
「俺は貴女にキスしたい」
クラウス……案外しっかりした身体付きなのね。胸板は思っていたより厚いし、抱きしめられた腕は力強くて男らしい……こんなに近くでクラウスを感じたのなんて初めてで、ドキドキするわ。
「本当に……馬鹿な女だ……」
顔にぼっと火が灯る。クラウスの囁きが甘い。私今、耳の先まで真っ赤だわ。そうに違いないわ。
ああ、だめよ、だめだめ、平常心よ。
夜這いをかけようとして失敗した上、逆ギレの告白、馬鹿と言われてるのに真っ赤になって照れるだなんて……これ以上の醜態痴態は見せられない!
ヒッヒッフゥ。静まれ、荒ぶる乙女の魂よ!ヒッヒッフゥ。いでよ、平常神!
「ばっ……馬鹿だなんて酷いわ」
そういって、クラウスの胸を押し返す。一刻も早くクラウスから離れて、HPを回復しなければ死ぬ。精神的に死ぬ。クラウスに殺されるわ。私を「馬鹿だ」と囁く、その声さえも甘く感じるだなんて……末期症状もいいところだわ!致命傷ね!
それもこれもクラウスの所為よ。だってこんな風に、クラウスが私を抱きしめるなんて有り得ないもの!ヴィスコンティ家の能面執事よ!?私が今までどんなにアプローチかけても、無表情、無反応、無慈悲に塩対応してきたあのクラウスがぎゅってしてきてるのよ!?ぎゅって……ぎゅうって……
「……クラウスいつまでこうしてるの」
懸命に押し返すのだけど、クラウスの拘束は一向に外れてくれない。私の脳みそも、オーバーヒートでショート寸前だわ。この状況、美味しくて勿体無いのだけれど、そろそろ解放してくれない?ねぇ?
「いつまで……とは?」
「え? だから、いつまで私をこう……その……だっ……抱きしめているつもり?」
うっ、上擦っちゃったじゃない。しっかりしなさいよ平常神!
「お嬢様は、嫌なのですか?」
「いっいやではないけど、心臓に悪いわ」
「……」
「くっ……クラウス?」
私、また変な事言っちゃった? クラウスの反応が怖い。
「……確かに、心臓に悪いですね。こんなに激しく早鐘が鳴っていたら、このまま死んでしまうかもしれない」
うわー!やっぱりクラウスにもドキドキがバレてた!しっかり仕事なさいよ平常神!なんの為に呼び出したと思っているの!?恥ずかしい、恥ずかしい、活動限界だわ。強制終了ボタンはどこ!?
「お嬢様」
「なっなによ!?」
「わかりますか?」
「なにをよ!?」
「ドキドキしてるんです」
知ってるわよ!あらためて言う事ないでしょ?
「俺の心臓、さっきからドクドクと騒いで煩いでしょう?」
突っ撥ねた手にクラウスの手が重ねられて、その鼓動を意識させられる。
「全部。お嬢様の所為ですよ」
「ふぇ?」
詰るようなその声に、思考が停止しかける。しっ知らないわ!こんなこんなクラウス知らない!アルカイックスマイルを貼り付けた能面執事は何処!?目の前にいる色気だだ漏れな美形はナニ!?
ーカチャリと音がする。
え? 鍵を掛けた? なんで?
「ヴィスコンティ家の令嬢で、地位もあるのにそれを傘にきない気さくさ。その可憐さや美しさ、あどけなさと時折魅せる艶やかさで周りを誑かすくせに、自分に向けられる好意に愚鈍すぎるほど気づかない」
私の手を取ると、そのままその甲へチュッと小さく口付けを落とすクラウス。
「素直で、眩しい程に真っ直ぐで、しっかりしているようで抜けていて、隙だらけで危なっかしい……」
チュッチュッと甲、節、指先へとクラウスの薄い唇の感触が残されていく。……目の前でサラサラと零れる、アイスブルーの銀髪。息を飲み見つめる。
「お嬢様……ずっとずっと、見てきました。長く貴女を想っていた。そんな貴女に可愛く強請られて……俺が私のままで居られるとお思いですか?」
「え?」
なにかしら……クラウスの様子が変だわ。
「あぁ……邪魔だな……」
そう呟くと、嵌めていた手袋を口で脱ぎ捨てる。その仕草が荒々しくて、普段の高貴さと気品を漂わせるクラウスとは別人のようで
「お嬢様……」
「あっ」
「俺は怒っているんですよ? 貴女のこの軽率な行動に……」
白く長い指が、私の顎に触れ、翡翠の視線に絡め取られる。
「どれだけ……どんな想いで、貴女に触れないよう……貴女に気持ちがバレないよう……隠してきたか」
その瞳の奥に、仄暗い熱を感じ息が詰まる。
「……本当に貴女は何もわかっていない」
つつつと親指で私の下唇をなぞりながら、吐息のかかる距離でそう囁きかけてくる。
「好きですよ。お嬢様。ずっとずっとお慕いしていました」
「え?」
熱を孕んだ瞳で、逃さないと縫い止め縛り付けられる。その言葉、視線に言葉が見つからない。今……なんて? クラウスが、すきって……いわなかった?
「お嬢様……貴女に触れる許可を」
「俺は貴女にキスしたい」
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