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第五話、厄介なチート神様がやる気なさ過ぎて憑かれるんですが?
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しおりを挟む番が四人に増えてから二週間あまりが経過していた。
「引越したい……」
ワンルームの室内に百八十センチ以上の人物が四人もいると暑苦しくて敵わない。朝陽は本気で引越しを考えていた。
広々と使える一軒家とかがいい。
何なら事故物件とかでも良かった。地縛霊は自身で祓ってしまえばいい話なので値段も手頃になりお得だ。スマホでまた検索してみたがそんな条件の良い物件は無かった。
それに最近隣に引っ越してきた男の事も起因している。『この人霊感強いのかな?』と思う様なクレームを入れられるからだ。
平日の日中なんて朝陽は仕事に行っていていないので〝視えない側の人〟からすれば誰もいないのと同じ筈なのに、朝から深夜まで絶え間なく物音や話し声が聞こえてきて煩いと言われたのだ。これには参った。
視える側からすれば、朝陽の部屋なんて、大型悪霊&物怪で、満員御礼……すし詰め状態だ。物音、話し声、喧騒など日常茶飯事である。朝陽を取り合って誰かしら絶対いがみあっているし騒がしい。静かなのは晴明だけだ。朝陽でさえ耐えられないくらい騒がしい時があるくらいだった。今現在進行形で……。
「ボールで遊ぶなら外へ行けトカゲ!」
「朝陽が買ってくれたボールに文句言うな!」
「将門とオロが出てけば良いんじゃないの?」
「何だと、狐!」
「お前ら全員うるっせーよ!」
ついに怒鳴った所で、隣の部屋から壁ドン攻撃が来た。ごめんなさい、と心の中で謝る。
「今度の隣人はやたらと気が短いな。前の隣人は、朝陽がいない時にコッソリこの部屋に入ってきては何かを仕掛けるだけだったが」
将門の言葉にギョッとする。そっちの方が大問題だった。
「は? 待って……今なんて?」
「だから、この部屋にたまに忍びこんでいたと言った。一度脅かしてやってからは来なくなったけどな」
——グッジョブ人外0円セコム!
将門に対する朝陽の好感度が一つ上がった。
「将門っ、良くやった! 次からはそういう事は先に言ってくれるとすっげー有難い! その仕掛けられた機械も取り外して壊しておいてくれ」
「あ? 分かった」
「ありがとう!」
思わず抱きつくと「ん゛ん゛」とくぐもった妙な声が聞こえた。
きつく抱きしめすぎたか? と朝陽が的の外れた心配をしている間、将門は顔面を片手で押さえて天を仰いでいた。そんな将門には、他の番からの非難めいた視線が向けられている。
「にしても、参ったな」
人外だけじゃなく、どうやら人間にもストーキングされていたらしい。全くと言っていい程気がついてもいなかった。
何故男にばかり好かれるのだろうと少し泣けてくる。相手は引っ越したのだからもう大丈夫なんだろうけど、朝陽の引っ越したい気持ちに拍車がかかった。
ボンヤリとテレビに視線を移す。昨夜、神社の一つが土砂崩れで半壊したらしい。それを知らせるニュースだった。
外した事のない嫌な予感がする。連動するかのようにスマホが鳴った。言わずもがな博嗣だ。
「はい、もしも……『遅い。儂を待たせるな。さっさと出ろ』……」
声が聞こえた瞬間耳鳴りに襲われる。
しかも博嗣の声とダブって知らない男の声がした。朝陽は何も答えずに一度通話を切った。直後またスマホが鳴り響く。
『この儂を無下に扱うとは良い度胸をしておるな』
出るとやはり別人だった。目頭を揉む。
——憑依されたか。
博嗣も上の中あたりであれば物怪や悪霊を祓える。例え憑かれたとしても、勤めている神社や自宅に戻ればそこには朝陽の張った結界がある為、霊は自動的に強制浄霊される仕組みにしていた。それが機能していない。
「アンタ誰だ? うちのじいさんは無事なんだろうな?」
『儂にそんな口を聞く輩なぞお前くらいだぞ。桜木朝陽』
——名前を知られている?
博嗣はただ巻き込まれただけの可能性が出てきて、朝陽は動揺した。
「じいさんから出ていけ!」
『お前が此処に来るならな』
「本当に無事なんだろうな? じいさんを出せ」
『シシ、兄に指図するか。無事かどうかは直接来て確かめればいいだろう?』
——兄?
通話が途切れた。朝陽は思いっきり舌打ちする。
——兄と言う事は先祖絡みか?
朝陽は一人っ子だ。
すぐにスマホで検索をかけた。てっきり直接的な繋がりがある祖先側の家系かと思ったが違う。兄弟はいない。次に出てきたのは夫であるニニギノミコトという神だった。
一人だけ兄弟がいる。兄だ。名前はニギハヤヒノミコト。
——コイツか?
重要な役割を担っていたにもかかわらずに参考文献が殆どない謎多き神だ。またウェブページでも、日本最古の神だとか史上最大の祟り神など諸説ある。天神とも書かれていたくらいだ。調べた情報は朝陽の不安ばかりを煽っていく。
「俺、ちょっとじいさんとこ行ってくる」
「ダメだ、朝陽!」
オロ以外の全員に首を振られてしまい、面食らった。
「やめておいた方がいい。其奴は匹敵するものがいないくらいには格が違う」
いつもは物静かに静観している晴明が声を上げる。
「関わるな」
将門にまで言われた。だが、そんなわけにはいかなかった。
「じいさんは、俺のたった一人の肉親なんだよ。行かないと……。悪い、心配してくれてありがとな。お前らは待っていてくれ」
四人に微笑みかけ、朝陽は自分の荷物を纏めた。
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