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第十話
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「まさかここまでとは…」
くるみが机に突っ伏して呻いている。どうやら俺はくるみの求めるレベルには達していなかったみたいだ。
帰宅後、くるみ先生の下で改めて探索者についての知識を確認する事となった。Q&A方式でアンサーを順に答えていったんだが、順を追うごとに険しくなっていくくるみの表情がちょっぴり怖かった。
そして回答終了と同時に机に突っ伏して今に至る。
「あぁ…私の仲間はクロちゃんだけだったんだね。高梨さんなんか初めから居なかったんだよきっと」
膝上に乗っかったクロを撫でながらくるみが言う。辛辣すぎません?
「俺の回答ってそんなにダメだった?」
「はっきり言ってダメダメです。よくこんなレベルでダンジョンアタックしようと思ったほどです」
はい、すいません。
だがそんな事を言われたって仕方がない。そもそも俺は正規の探索者ではなくモグリだ。当然、正規のルートを辿っていないのだから一般的な探索者とは異なって当然である。あ、でもレベル5まで上がれば一端の探索者らしいから、一端のモグリ探索者が正解?
「ただの勉強不足でしょ」
はい、すみませんでした。
「まぁ、知識は追々勉強していけば身に付くものですからそれほど気にはしていないです」
ウィッス、頑張ります。
「今日のアタックでお互いの力量や戦い方は把握出来たと思います。なので今日の事をベースにして連携を深めていくことが当面の課題です」
おい、小声でそこだけ期待しようって言っただろ。聞こえてるぞ。
「とは言っても俺が中・遠距離で前衛をしながらくるみちゃんが遊撃で確定だろ?」
今日のアタックで最も得たものはくるみの能力を理解出来たことだろう。
あれだけの速度と隠密が合わさればモンスターにとっても脅威的で、俺が前衛で気を引けばくるみがモンスターに見つかる可能性はさらに下がる。
俺が前衛兼盾役として立ち回れば、視界外からくるみが一撃を与えてくれるだろう。
「えぇ、そのフォーメーションになると思います」
「とすれば、連携はほとんど無いに等しいのでは?」
くるみは遊撃ではあるが、隠密状態だ。であれば連携を取るというよりは、互いに自由に動き回る事になるだろう。俺に出来る事は攻撃をしつつ出来る限りヘイトを稼ぐ事か?
だがくるみは俺の言葉に首を横に振った。
「今日はたまたま型が嵌まっただけです。モンスターの数や地形、状況によっては苦戦していた可能性も十分にあります。高梨さんが前衛である事に変わりありませんが、モンスターが三体以上同時にポップしたら?もしくはとても狭い通路などでモンスターがポップしたら?私の攻撃が通用しない、例えば外皮が固いモンスターと対峙したら?なんらかの理由で私もしくは高梨さんが戦闘不能になったら?」
ふむ。なんとなくくるみの言いたい事はわかった。
要するにパターンを想定して事前に決めておこうという事だな。確かに時と場合によっては危険かもしれないな。それにくるみの隠密が通用しないモンスターもこの先現れるかもしれない。その時になって慌てても遅いから今から決めておこうという事だな。必ずしも想定通りになるとは限らないが、事前準備を全くしておかないのは確かに危険だな。
とはいえ今日すぐに決められる事はそれほど多くはないだろう。これから何度もアタックする中で積み上げていこう。
戦利品を換金するのはもう少し時間を置いてからにしようと結論付けた。
現状、俺もくるみも最弱の部類だ。特にくるみは下手に稼げるとわかったらどこかから横やりが入ってくるかもしれない。その時にお互い自衛出来る程度までは強くなろうと考えている。
◆◇◆◇
週末、何度目かダンジョンアタック終わり。
すでに春道ダンジョンは苦戦することが無くなっていた。
ポップするモンスターはゴブリンだけだし、同時ポップも精々が二匹まで。イレギュラーなシチュエーションが起こりえないからしっかりと互いの戦い方を見極める事が出来た。この間、くるみはレベルが1上がり、俺はそのまま。やはりくるみが言っていた俺だけレベルが高いのは事実っぽい。
ドロップした魔石は全部クロに食べさせた。半分はくるみに渡そうとしたが、ゴブリンから取れる魔石を換金に持って行ったところで、買いたたかれるのがオチだから不要だそうだ。それなら少しでも早くクロがレベルアップした方がいいだろうとの事。
それでも、と食い下がったが、100個持って行っても五千円にすらならないと聞いて納得した。春道ダンジョンに誰もアタックしない理由がよくわかったよ。
「順調ですが、これ以上春道ダンジョンにアタックしてもあまり意味はないかもしれませんね」
ふと、くるみが帰りの車内でそう言った。
「え、そうなの?」
「はい、たぶんこれ以上春道ダンジョンにアタックしてもほとんどレベルは上がらないと思います。主に経験値的な意味で」
「やっぱりゴブリンだと少なすぎるのかな」
俺の言葉にくるみが頷いた。
それは俺も考えていた事だ。数回アタックしても俺は上がらず、くるみが1上がっただけ。このペースだと墓資金の前に俺が破産するな。
「ゴブリン自体の持つ経験値もそうですが、一度のアタックで倒す数が少なすぎます」
くるみの言葉に頷かざるを得なかった。ソロ初アタックの時に比べたら多いとはいえ、一度のアタックで倒すゴブリンの数は多くても五、六匹程度。数時間アタックしてと考えればほとんどの時間を無駄にしていると言えた。
「他のダンジョンだとここまで少なくないの?」
「えぇ、どれだけ少なくても一時間に二、三回程度の戦闘は発生します。そう聞けばいかに春道ダンジョンが少ないのかがわかってもらえると思います。だから星無しダンジョンに認定されたんですけどね」
なるほど。敵は弱いし数も少ない。そりゃ脅威に感じなくなるわな。しかも旨味もゼロとくれば、いくら未知の存在たるダンジョンとはいえ警備に金はかけたくない。このあたりの裏情報はやはりくるみに聞かないと分からないな。
「ちなみにこの程度の情報は常識ですからね。悪しからず」
お後がよろしいようでして……。
結局、次のアタックでも同じような結果なら他のダンジョンアタックも視野に入れる事でこの日は終わった。本当なら即決で決めても良かったんだが、何分、俺は探索者登録していないからな…。もし他のダンジョンにアタックするとしても、十分に下調べしてからじゃないとリスクが高い、という判断になったのだ。全部くるみが決めた事だけどね。
くるみが机に突っ伏して呻いている。どうやら俺はくるみの求めるレベルには達していなかったみたいだ。
帰宅後、くるみ先生の下で改めて探索者についての知識を確認する事となった。Q&A方式でアンサーを順に答えていったんだが、順を追うごとに険しくなっていくくるみの表情がちょっぴり怖かった。
そして回答終了と同時に机に突っ伏して今に至る。
「あぁ…私の仲間はクロちゃんだけだったんだね。高梨さんなんか初めから居なかったんだよきっと」
膝上に乗っかったクロを撫でながらくるみが言う。辛辣すぎません?
「俺の回答ってそんなにダメだった?」
「はっきり言ってダメダメです。よくこんなレベルでダンジョンアタックしようと思ったほどです」
はい、すいません。
だがそんな事を言われたって仕方がない。そもそも俺は正規の探索者ではなくモグリだ。当然、正規のルートを辿っていないのだから一般的な探索者とは異なって当然である。あ、でもレベル5まで上がれば一端の探索者らしいから、一端のモグリ探索者が正解?
「ただの勉強不足でしょ」
はい、すみませんでした。
「まぁ、知識は追々勉強していけば身に付くものですからそれほど気にはしていないです」
ウィッス、頑張ります。
「今日のアタックでお互いの力量や戦い方は把握出来たと思います。なので今日の事をベースにして連携を深めていくことが当面の課題です」
おい、小声でそこだけ期待しようって言っただろ。聞こえてるぞ。
「とは言っても俺が中・遠距離で前衛をしながらくるみちゃんが遊撃で確定だろ?」
今日のアタックで最も得たものはくるみの能力を理解出来たことだろう。
あれだけの速度と隠密が合わさればモンスターにとっても脅威的で、俺が前衛で気を引けばくるみがモンスターに見つかる可能性はさらに下がる。
俺が前衛兼盾役として立ち回れば、視界外からくるみが一撃を与えてくれるだろう。
「えぇ、そのフォーメーションになると思います」
「とすれば、連携はほとんど無いに等しいのでは?」
くるみは遊撃ではあるが、隠密状態だ。であれば連携を取るというよりは、互いに自由に動き回る事になるだろう。俺に出来る事は攻撃をしつつ出来る限りヘイトを稼ぐ事か?
だがくるみは俺の言葉に首を横に振った。
「今日はたまたま型が嵌まっただけです。モンスターの数や地形、状況によっては苦戦していた可能性も十分にあります。高梨さんが前衛である事に変わりありませんが、モンスターが三体以上同時にポップしたら?もしくはとても狭い通路などでモンスターがポップしたら?私の攻撃が通用しない、例えば外皮が固いモンスターと対峙したら?なんらかの理由で私もしくは高梨さんが戦闘不能になったら?」
ふむ。なんとなくくるみの言いたい事はわかった。
要するにパターンを想定して事前に決めておこうという事だな。確かに時と場合によっては危険かもしれないな。それにくるみの隠密が通用しないモンスターもこの先現れるかもしれない。その時になって慌てても遅いから今から決めておこうという事だな。必ずしも想定通りになるとは限らないが、事前準備を全くしておかないのは確かに危険だな。
とはいえ今日すぐに決められる事はそれほど多くはないだろう。これから何度もアタックする中で積み上げていこう。
戦利品を換金するのはもう少し時間を置いてからにしようと結論付けた。
現状、俺もくるみも最弱の部類だ。特にくるみは下手に稼げるとわかったらどこかから横やりが入ってくるかもしれない。その時にお互い自衛出来る程度までは強くなろうと考えている。
◆◇◆◇
週末、何度目かダンジョンアタック終わり。
すでに春道ダンジョンは苦戦することが無くなっていた。
ポップするモンスターはゴブリンだけだし、同時ポップも精々が二匹まで。イレギュラーなシチュエーションが起こりえないからしっかりと互いの戦い方を見極める事が出来た。この間、くるみはレベルが1上がり、俺はそのまま。やはりくるみが言っていた俺だけレベルが高いのは事実っぽい。
ドロップした魔石は全部クロに食べさせた。半分はくるみに渡そうとしたが、ゴブリンから取れる魔石を換金に持って行ったところで、買いたたかれるのがオチだから不要だそうだ。それなら少しでも早くクロがレベルアップした方がいいだろうとの事。
それでも、と食い下がったが、100個持って行っても五千円にすらならないと聞いて納得した。春道ダンジョンに誰もアタックしない理由がよくわかったよ。
「順調ですが、これ以上春道ダンジョンにアタックしてもあまり意味はないかもしれませんね」
ふと、くるみが帰りの車内でそう言った。
「え、そうなの?」
「はい、たぶんこれ以上春道ダンジョンにアタックしてもほとんどレベルは上がらないと思います。主に経験値的な意味で」
「やっぱりゴブリンだと少なすぎるのかな」
俺の言葉にくるみが頷いた。
それは俺も考えていた事だ。数回アタックしても俺は上がらず、くるみが1上がっただけ。このペースだと墓資金の前に俺が破産するな。
「ゴブリン自体の持つ経験値もそうですが、一度のアタックで倒す数が少なすぎます」
くるみの言葉に頷かざるを得なかった。ソロ初アタックの時に比べたら多いとはいえ、一度のアタックで倒すゴブリンの数は多くても五、六匹程度。数時間アタックしてと考えればほとんどの時間を無駄にしていると言えた。
「他のダンジョンだとここまで少なくないの?」
「えぇ、どれだけ少なくても一時間に二、三回程度の戦闘は発生します。そう聞けばいかに春道ダンジョンが少ないのかがわかってもらえると思います。だから星無しダンジョンに認定されたんですけどね」
なるほど。敵は弱いし数も少ない。そりゃ脅威に感じなくなるわな。しかも旨味もゼロとくれば、いくら未知の存在たるダンジョンとはいえ警備に金はかけたくない。このあたりの裏情報はやはりくるみに聞かないと分からないな。
「ちなみにこの程度の情報は常識ですからね。悪しからず」
お後がよろしいようでして……。
結局、次のアタックでも同じような結果なら他のダンジョンアタックも視野に入れる事でこの日は終わった。本当なら即決で決めても良かったんだが、何分、俺は探索者登録していないからな…。もし他のダンジョンにアタックするとしても、十分に下調べしてからじゃないとリスクが高い、という判断になったのだ。全部くるみが決めた事だけどね。
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