3流リーマンがテイマーでポリマー(改)

頑張るマン

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第十二話

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 クロを連れてサクサク進む。
 サクサク進む。サックサク進む。もう驚くほどに。

「モンスター……出なさすぎじゃね!?」
 つい俺はそばにいたくるみに言ってしまった。いやこれはどう考えても出なさすぎでしょ。
「うーん、確かにここまで一度の戦闘が無いとは……」
 くるみも渋い顔をしながら頷いた。

 ダンジョン入口でクロの件で一悶着あったとはいえ、俺達はアタックを開始した。クロの変身能力は俺達にとって歓迎すべき能力だったし、特に害は無い。
 ただ知らなかったという事と、一言言いたかっただけだ。

 だが、二人+一匹でアタックを開始したものの、驚く程にモンスターが出現しなかった。
 その理由はわからない。ゴブリンもコボルトもその姿を見せる事は無かった。

 途中、休憩を一度挟む。
 モンスターの気配が全く無いので、見晴らしの良い通路で壁に背を預ける形で休憩を取る。万が一モンスターが現れてもすぐに対処できるようにする為だ。

「ここまでモンスターが現れない理由はなんだと思う?」
「うーん……」

 来しなにコンビニで買ったおにぎりやらサンドイッチを食べながら、モンスターがポップしない理由をくるみと一緒に考える。
 ちなみにクロは普通のサイズに戻って、くるみの膝の上でぽよぽよしている。

「今までと違う事といえば、クロちゃんがいる事ですよね。というかそれ以外に違う点が無いというか」
「だよなぁ……」
 俺からサンドイッチを受け取ったまま暫し黙考していたくるみの言葉に頷く。
 そう、それしか原因が見当たらない。だが、理屈が分からない。
 おにぎりをビニールフィルムから開けて頬張る。
 うむ、アタックで汗をかいたから、塩鮭が旨い。
 レベルアップした為か、食欲が凄い。
 おにぎり五つとサンドイッチを二つ間食した。
 お茶を飲んで、空になった容器とおにぎりやサンドイッチを包んでいたフィルムをクロに食べさせる。
 もっきゅもっきゅと飲み込む姿が可愛い。
 同じように食べ終えたくるみも、横に置いていた袋をクロに食べさせようとした。

「ん?……あっ!モンスターです!」
 急にがばっと立ち上がると、短刀を取り出しながらくるみが叫んだ。
 ちょっとびっくりした。くるみが見る視線の先にある通路の向こうからゴブリンが二匹。
 先程までは気配が無かったのに、急に走ってきたようだ。状況はよくわからんが。
 クロはまだ咀嚼を続けていたので、クロを守るような形で布陣する。

 戦闘自体はすぐに終わった。
 たかだかゴブリン二匹だったし、開けた通路だったのでくるみの隠密が問題なく機能してサックリと倒せた。

「今のは一体なんだったんだろうか……」
 ミニクロを頭に乗せてダンジョンを進む。アタック後すぐに食べ終えたクロは、ミニサイズになると俺の頭の上にぽよんっ、と飛び乗っている。

「普通に考えれば、休憩中を狙って襲った。ってところですよね」
「うん、でもそれにしては急に現れたっていうのも変だし、今までそんな事は無かったよな?」
 俺の言葉にくるみが頷く。

 くるみの気配察知が問題なく作動したので、そこまでの危険には晒されなかったが、半ば不意討ち気味だった今回の戦いは、少なからず俺達に衝撃を与えた。
 今までであれば、凄く遠くからの気配が段々近づいてくる…といった感じらしく、今回のように急に気配がすぐ近くに現れるというのは無かったらしい。
 だからこそ余計に訝しんだ。

「他に考えられる点としては、私たちのレベルが上がった事によって低レベルモンスターが私達を事前に避けるという可能性です。でもこれも先程の件で消えました…」
 そう、その可能性もほぼゼロに近い。
 そもそも本当に低レベルモンスターが戦闘力を察知して避けるというのであれば、俺達以外の定期巡回がアタックしている間も避けるはずだし、第一そんな情報は聞いた事が無い。
 今までアタックしていても、モンスター達は俺達を見つければただひたすらに突撃してきたことを考えるとあり得ないだろう。
 言っているくるみ自身もその可能性は無いと思ったのか、あまり強くは言わなかった。

 と、なればやはりクロ関連だが、理屈が分からないから原因究明も出来ない。

 結局その後もモンスターは現れず、気づけばいつもは来ない春道ダンジョン最奥まで俺達は足を延ばしていた。


「ここが春道ダンジョンのゴール……か?」
「えぇ、ゴールというか行き止まりというか。とにかくここで終わりです」

 唐突に表れた壁。というか行き止まり。
 ダンジョンの最奥ゴールだというのに何の変哲もない。
 道間違えましたよ、さっきの通路を逆に行ったらいいですよと言われたら、すんなりと納得してしまいそうなほどには何の変哲も無かった。

「なんか、初めて最奥まで到達したにしては、ショボいね」
 俺の言葉にジトッとした目線をくるみが送ってきたが仕方ないと思う。だってさ、ここまで来たのに何も無しなの?普通やっぱり踏破してボーナスとか、もしくはダンジョンボスとかいないのかね?

「踏破ボーナスもダンジョンボスもいませんよ」
「……えっ!?」
「高梨さんの考えそうな事は大体わかりますって…」
 驚く表情の俺を見ながらくるみがそう言って、大きくため息を吐いた。

「まぁでも、高梨さんの言いたいこともわかりますけどね」
「だろう? なんか達成感も何も無いしさぁ……」
「確かにそうですよね。これだとなんでダンジョンが存在するのかもわからないし、対処方法も不明……」
「そうそう。だってダンジョンって定期的に巡回して間引くんだろ?こんなのダンジョンが増え続けている以上、そのうち無理が出るだろうよ」
「もう無理だとすでに言われていますもんね……」

 最奥まで来てもモンスターの気配は無い。俺とくるみが考えている事は恐らくダンジョンにアタックした全ての者が考えた事なのだろうけれど、それでも俺達は考えずにはいられなかった。
 それくらいにダンジョン最奥の壁は違和感でしかなかったからだ。

「クロだったら何か知ってるんじゃないか? なぁクロは何か知らないか?」
 頭の上に乗っかっているクロに声を掛ける。クロは小さく、ぷるぷる、と震えた後、頭の上から飛び降りた。

「うぉっと、どうしたクロ? 本当に何か知ってるのか?」
 飛び降りたクロは通常サイズまで大きくなると、俺とくるみを見ながら二度、ぷるぷると震えた。
 俺もくるみも首を傾げる。クロは暫く俺とくるみを見ていたが、急に反転して背中を見せると、壁際まですり寄った。

 何となくふざける雰囲気じゃない事を理解した俺は、そのままクロの事をじっと見た。横目でちらりと見たくるみも同じようで、クロの事を見ている。

 ぽよん、ぽよん、ぽよーん、ぽよーーん……。

 クロが上下に段々と大きくなっていく。それはブランコのように一度目よりも二度目、二度目よりも三度目の方が大きくなっていき、やがて最大限まで大きくなったのか、そのままピタリ、と大きいままで止まると、口を大きく開けた。

「お、おいおい……なんだよアレは……」

 ズズズズゥ……。

 何の変哲も無かった最奥の壁から、まるで引き抜かれるようにして赤色に輝く小さな何かがゆっくりとその姿を現した。
 何というか、あれって……。

「りん、ご……?」

 くるみがポツリ、と言った言葉に俺も無言で頷いた。
 どこからどう見てもソレはりんごで、でも輝いていた。クロはりんごが出てきてもそのまま口を開け続け、やがて煌々と輝くりんごは、そのままクロの口内に吸い込まれるようにして消えていった。

 その時だった。
 ポーーーン、というダンジョンアタックの場に似つかわしくない奇妙な音が鳴り響いた。

『人類ではじめてダンジョンを鎮静化しました。』
『人類ではじめてダンジョンの実を収穫しました』
『人類ではじめてダンジョンを攻略しました』
『人類ではじめてレベル0ダンジョンを攻ました』
『ダンジョンを鎮静化しました。このまま制圧化へ進みますか? Y/N 』

 ピロン♪『レベルがアップしました』
 ピロン♪『レベルがアップしました』
 ピロン♪『レベルがアップしました』
 ピロン♪『レベルがアップしました』
 ピロン♪『レベルが……』



 ……これは一体、なにごと?


 ……これは一体なにごと!?
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