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第一話 プロローグ
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「ビッグメックバーガーセットポテトコーラエルエルサイズノマスタードソースモベツデ」
呪文のようなそれを一気に言い切り、すでに手の中に用意していた780円をコイントレーに入れた。
「タカシお前ほんとそれしか食わんよな」
隣のレジでまだ注文前だった、クラスメイトの【山田 ユウスケ】が呆れたようにそう言うが、俺はコイツにだけは言われたくない。
ちなみに俺の名前は【佐藤 タカシ】だ。二人して日本の中でもトップクラスに地味な、そして多そうな名前だと互いが自覚している。
キラキラネームの反対語というものがあったら出てきそうなくらいには地味だ。
「ダブルチーズバーガーセットサラダコーラトタンピンハンバーガーデ」
ユウスケも呪文を一気に唱え終わると、こちらもすでに手の中に用意していた790円をコイントレーに入れた。
俺がいつも同じメニューしか頼まないように、ユウスケがダブチセット以外を頼んでいるのを俺は見たことがない。単品バーガーを一緒に頼む感覚は何度見ても未だに理解出来ないが。
一貫して二人とも同じメニューしか頼まないものだから、価格改定の時はレジで焦ったものだ。たまたま二人とも価格改定前の注文代金しか手元に無かった為、二人して慌てて注文を取り消してもらうという赤っ恥をかいたものだ。
だって高校生なんて常に残金を計算しながら生きる生き物じゃん?
それからというもの、メックに入店前に必ず今日の代金をネットで確認してから向かうというルーチンが二人の間に出来た。
注文したセットを受け取り、メックの客席フロアに歩く。
俺たちが座る席はほぼいつも特定の場所だ。
メックの中でも店の一番奥の奥。窓側で道路側、なおかつ日光直射の席だ。
この席はまぁ眩しい。朝昼や夜はそうでもないだろうが、俺たちが来る夕方前のこの時間帯は特に日光の当たりが強く、日焼けを嫌がる女性はもちろん、男性ですら座るのを嫌がるほどに日光がきついと言えば少しはわかってもらえるだろうか。
日光直射というよりも直撃の方だただしいくらいかも。
今日もその席は空いていた。まぁほぼいつもこの時間帯は空いてるけどね。
俺もユウスケも何となくこの席が好きで、眩しい日光を食らいながらメックを食らうのが常だ。
「そういや、後藤のやつが彼女出来たって聞いたか?」
席に座るとユウスケがコーラを飲みつつ俺に聞く。
「…なんだって?後藤に彼女が?相手誰だよ」
「C組の前田」
「マジか…。クソッこの世は不条理だ」
「ほんとそれな」
ポテトをセットとは別で注文したマスタードソースにちょんちょんと付けながら口に入れる。俺はポテトを絶対にケチャップでは食べない。マスタードソース一択。
「あー、俺も彼女欲しいわ」
ユウスケがダブチを包装紙から広げ、端を少しだけ食べる。
こいつはなぜかダブチを端から少しずつ食べるのが好きらしい。イミフ。
「んなもん俺だって欲しいわ。なんで高2にもなっていつもお前とおらにゃならんのか」
「俺も全く同じことを今思ってたよ」
「「はぁ……」」
二人して眩しさを我慢しながら、歩く人たちを見て小さくため息を吐いた。
おおよそ半分ほどのポテトを食べ、指先に付いた塩を紙拭きで丁寧に拭き取ると、ビッグメックを包装紙からゆっくりと開く。
メックのビッグメックはそのサイズの大きさから、バーガーのてっぺんからつま先までを一口で食べる事を推奨していない。
『ご希望のお客様はレジにて使い捨て用紙トレーとフォークをご用意いたします』と公式HPでわざわざ書いている程、の大きさと言えばわかってもらえるだろうか。
だが、そこに俺は真っ向から異を唱えたい。
「ビッグメックって結局単品のバーガー二つ分でしょ?」などというバカなコメントが横行し、
「それなら単品のバーガー二つ頼めばいーじゃんw」などという草を生やしたバカなコメントに、真っ向から異を唱えたい!!
ビッグメックのその過剰なほどのサイズそのままに一息に口に入れるからこそ味わえる充足感が「はよ食えよ」あるのだから。
「うるっせえなぁ。儀式をやってんだから静かに見とけ」
「はいはいテンプレテンプレ」
…ったく。
こいつもいつも見てんだからいい加減俺の儀式を邪魔するなってんだ。
毎回同じような時に横やり入れやがって。
仕切り直しとばかりに小さく息を吐くと、ビッグメックを上下から少し押す。
偉そうに言ってもさすがにそのままでは口には入らない。
上下から圧縮させる事によってビッグメックを俺側に寄せてくるイメージだな。
…あっ、押し加減ミスってちょっとトマトソース出ちゃった。ガッデム。
…ま、まぁいいだろう。これくらいなら誤差の範囲内「めっちゃソース出てんじゃ「うるっせぇぇぇ!」んかよ」
「黙って俺のビッグメックへの愛を見とかんかい!お前もダブチさっさと食えよ!」
「俺は端からちょっとずつチマチマ食うのが好きだからいいんだよ」
相変わらずいつものようにチマチマとダブチを食うユウスケに心底腹立つ。
あー……なんか今日はしくじったわ。ユウスケの一言でめっちゃ下がった。
ビッグメック…ごめんな?お前を最高のコンディションで食せなくて。
ほんと……申し訳ない。
お前とはうまくいかなかったけど、次、またお前に会えた時はちゃんとするから…な?
俺は目の前にあるビッグメックに心からの謝罪と、出会えた事に感謝をしつつも、自分の限界ギリギリまで口を大きく開き、ビッグメックを迎え入れる。
結婚式の入刀もこんな感じなんだろうか?違うか。
「それでは、いただきます。あーーー……………」
刹那、ガシャーーン!!という音と共にちょうど俺とユウスケが座っている席に向かって乗用車が突っ込んでくるのが横目で見えた。
一昔前のケータイ小説並みのコメントを言ってもいいだろうか?
車がドーン!とぶつかってきた。
俺と………俺とユウスケは、そして死んだ。
呪文のようなそれを一気に言い切り、すでに手の中に用意していた780円をコイントレーに入れた。
「タカシお前ほんとそれしか食わんよな」
隣のレジでまだ注文前だった、クラスメイトの【山田 ユウスケ】が呆れたようにそう言うが、俺はコイツにだけは言われたくない。
ちなみに俺の名前は【佐藤 タカシ】だ。二人して日本の中でもトップクラスに地味な、そして多そうな名前だと互いが自覚している。
キラキラネームの反対語というものがあったら出てきそうなくらいには地味だ。
「ダブルチーズバーガーセットサラダコーラトタンピンハンバーガーデ」
ユウスケも呪文を一気に唱え終わると、こちらもすでに手の中に用意していた790円をコイントレーに入れた。
俺がいつも同じメニューしか頼まないように、ユウスケがダブチセット以外を頼んでいるのを俺は見たことがない。単品バーガーを一緒に頼む感覚は何度見ても未だに理解出来ないが。
一貫して二人とも同じメニューしか頼まないものだから、価格改定の時はレジで焦ったものだ。たまたま二人とも価格改定前の注文代金しか手元に無かった為、二人して慌てて注文を取り消してもらうという赤っ恥をかいたものだ。
だって高校生なんて常に残金を計算しながら生きる生き物じゃん?
それからというもの、メックに入店前に必ず今日の代金をネットで確認してから向かうというルーチンが二人の間に出来た。
注文したセットを受け取り、メックの客席フロアに歩く。
俺たちが座る席はほぼいつも特定の場所だ。
メックの中でも店の一番奥の奥。窓側で道路側、なおかつ日光直射の席だ。
この席はまぁ眩しい。朝昼や夜はそうでもないだろうが、俺たちが来る夕方前のこの時間帯は特に日光の当たりが強く、日焼けを嫌がる女性はもちろん、男性ですら座るのを嫌がるほどに日光がきついと言えば少しはわかってもらえるだろうか。
日光直射というよりも直撃の方だただしいくらいかも。
今日もその席は空いていた。まぁほぼいつもこの時間帯は空いてるけどね。
俺もユウスケも何となくこの席が好きで、眩しい日光を食らいながらメックを食らうのが常だ。
「そういや、後藤のやつが彼女出来たって聞いたか?」
席に座るとユウスケがコーラを飲みつつ俺に聞く。
「…なんだって?後藤に彼女が?相手誰だよ」
「C組の前田」
「マジか…。クソッこの世は不条理だ」
「ほんとそれな」
ポテトをセットとは別で注文したマスタードソースにちょんちょんと付けながら口に入れる。俺はポテトを絶対にケチャップでは食べない。マスタードソース一択。
「あー、俺も彼女欲しいわ」
ユウスケがダブチを包装紙から広げ、端を少しだけ食べる。
こいつはなぜかダブチを端から少しずつ食べるのが好きらしい。イミフ。
「んなもん俺だって欲しいわ。なんで高2にもなっていつもお前とおらにゃならんのか」
「俺も全く同じことを今思ってたよ」
「「はぁ……」」
二人して眩しさを我慢しながら、歩く人たちを見て小さくため息を吐いた。
おおよそ半分ほどのポテトを食べ、指先に付いた塩を紙拭きで丁寧に拭き取ると、ビッグメックを包装紙からゆっくりと開く。
メックのビッグメックはそのサイズの大きさから、バーガーのてっぺんからつま先までを一口で食べる事を推奨していない。
『ご希望のお客様はレジにて使い捨て用紙トレーとフォークをご用意いたします』と公式HPでわざわざ書いている程、の大きさと言えばわかってもらえるだろうか。
だが、そこに俺は真っ向から異を唱えたい。
「ビッグメックって結局単品のバーガー二つ分でしょ?」などというバカなコメントが横行し、
「それなら単品のバーガー二つ頼めばいーじゃんw」などという草を生やしたバカなコメントに、真っ向から異を唱えたい!!
ビッグメックのその過剰なほどのサイズそのままに一息に口に入れるからこそ味わえる充足感が「はよ食えよ」あるのだから。
「うるっせえなぁ。儀式をやってんだから静かに見とけ」
「はいはいテンプレテンプレ」
…ったく。
こいつもいつも見てんだからいい加減俺の儀式を邪魔するなってんだ。
毎回同じような時に横やり入れやがって。
仕切り直しとばかりに小さく息を吐くと、ビッグメックを上下から少し押す。
偉そうに言ってもさすがにそのままでは口には入らない。
上下から圧縮させる事によってビッグメックを俺側に寄せてくるイメージだな。
…あっ、押し加減ミスってちょっとトマトソース出ちゃった。ガッデム。
…ま、まぁいいだろう。これくらいなら誤差の範囲内「めっちゃソース出てんじゃ「うるっせぇぇぇ!」んかよ」
「黙って俺のビッグメックへの愛を見とかんかい!お前もダブチさっさと食えよ!」
「俺は端からちょっとずつチマチマ食うのが好きだからいいんだよ」
相変わらずいつものようにチマチマとダブチを食うユウスケに心底腹立つ。
あー……なんか今日はしくじったわ。ユウスケの一言でめっちゃ下がった。
ビッグメック…ごめんな?お前を最高のコンディションで食せなくて。
ほんと……申し訳ない。
お前とはうまくいかなかったけど、次、またお前に会えた時はちゃんとするから…な?
俺は目の前にあるビッグメックに心からの謝罪と、出会えた事に感謝をしつつも、自分の限界ギリギリまで口を大きく開き、ビッグメックを迎え入れる。
結婚式の入刀もこんな感じなんだろうか?違うか。
「それでは、いただきます。あーーー……………」
刹那、ガシャーーン!!という音と共にちょうど俺とユウスケが座っている席に向かって乗用車が突っ込んでくるのが横目で見えた。
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車がドーン!とぶつかってきた。
俺と………俺とユウスケは、そして死んだ。
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