ヘタレ盗賊、伝説のアサシンと呼ばれメーワクする。

メカ

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ヘタレ、伝説となる。

ヘタレ、伝説となる。

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散らかった部品の中から、適当なモノを見繕い
俺は即席の「パチンコ」を作った。
ゴム製でないヒモは、目立った弾性を産むことなく
「パチンコ」と呼ぶにも、お粗末な出来と言わざるを得ない。

「・・・と、飛べばいいんだ。飛べば!」

誰に対する言い訳なのか・・・。

後になって「もっとマシな物が出来たのではないか?」と
やや後悔したものだ。

飛ぶ保証もないガラクタだ。
球など拘ってはいられない。
そこら辺に目に付くガラクタの残りや石の破片など
集められるものは何でも集めた。

そうして・・・松明の灯りだけが揺らめく闇夜で、やがて空が色付いた頃
俺は、渾身の一発を仕掛けに命中させた。

「よ・・・よっしゃぁぁぁぁ・・・・。」

嬉しさとは裏腹に、長く続いた緊張状態の糸は切れ
少しの間、その場にへたり込んだ。

・・・そして・・・。

「おう、よく出て来たじゃねぇか。・・・まずは、おめでとう。」

周囲が完全に明るくなった後
闇夜に紛れて脱出する事など、すっかり忘れ外に出た俺を

盗賊のリーダー格が出迎えた・・・。

周囲には、部下も集まっている。
もはや逃げる事は不可能だ。

「流石に見込んだだけの事はあったが・・・おせぇ。」

男の眼が鋭く光る。
同時に、後ろに控えた数名の男が
ほくそ笑みながら骨を鳴らす。

「・・・まぁいい。それよりも・・・だ。
以前、お前に言った事を覚えているな?」

「・・・仕事を手伝え・・・と。」

「そうだ。どうやらお頭の中は本物らしいな?」

「ぶっははは、お頭!そりゃ言い過ぎだぜぇ!」

「早速本題だが・・・。お前、隣国のダルトン領にある名家
<ロマニ一家>の城に・・・盗みに行ってもらう。」

「そ、そんな!無理ですよ!ダルトン領といえば
法的統制の優れた治安国家なのに!
しかも、狙うのは三大名家の一角なんて!」

「うるせぇんだよ、話は最後まで聞きやがれ。
何もお前みたいな芸人崩れに全部やらせる訳ねぇだろーが。」

「・・・。」

「つい先日、ウチの一派から独り立ちした盗賊団が居る。
まぁ独り立ちと言っても、俺達が母体である事には変わりはねぇ。
お前は、その一派に加わって
城の衛兵だの門番だの・・・誰でも良い、わざと捕まれ。
で、その夜に一派の連中が外で大暴れする。
お前はその隙に乗じて、金目のモンごっそり頂いて来い。」

当然、拒否権など無く
俺は部下数名の男に連れられ、独立したという一派へ放り込まれる事となった・・・。






そして、5年後・・・。

「おい、聞いたか?また出たらしいぜ?」

「あん?何の話だ?」

だよ、!」

「・・・出たのか?・・・が!?」

とある酒場で、屈強な男共が声を潜めて口にする。

ドンッ。
ひそひそと話す男の背に何かがぶつかった。

「おい!痛ぇな!何しやがんだ!」

「あ!そ、その・・・ごめんなさい。」

「あぁ?何だ?クソガキ。此処はガキの来る場所じゃねぇぞ。
さっさと帰りやがれ!」

「すみませんでした・・・。」

目下、男共の話題は「ある一人の旅人」の話。

出現当初、その旅人は「単なる辻斬り」として名を馳せた。
だが・・・。
確保に出向いた兵士たちが皆、返り討ちに合い深手を負って帰って来る。
終いには、ギルドから賞金首として祀り上げられた旅人。

「ストレンジア・ゴースト」

「余所者の幽霊」と呼ばれた「アサシン」だ。

目的・・・不明。
所在・・・不明。
戦力・・・不明。

全てが謎のまま、人々の口に乗って伝播してしていく不思議な旅人が
とある一人の、臆病な青年であるとは知らず・・・。
皆が血眼になって彼を探していた・・・。
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