封魔幻想記

くろたん

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ナナシの章

記憶喪失の男 その2

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「ようやく目覚めたか、●●●よ」

「お前に使命を与える。何としても封印の巫女を探し出せ」

「そして●●●のだ。それが我等一族の悲願達成に繋がるのだ」

「いいか、必ず封印の巫女を・・・」

 所々聞き取れないけど、俺の記憶か?
 それにしても、うるさいじいさんだな
 巫女を探してどうしろってんだ?


 ・・・柔らかいな

 ゆっくりと目を開けると、目の前には助けた少女の顔があった。

 どういう状況だ?
 ・・・ひざ枕か、柔らかいな

 反転して顔をうずめてみる。
「うーん、気持ちいい」
 ゴンッ
「イテッ」
 言うと同時に少女は立ち上がり、少女のひざから地面へとうずめる場所を変える。

「ご、ごめんなさい」
「いや、こっちこそ」
 ふと自分の体を見回して見ると怪我一つ無い。
「助かったよ、回復魔法使えたんだね」
「あ、あの・・簡単な物なら少し・・・」
「いや、凄いな。完全に死んだと思ったのに完治してるし、無くなった腕まで元通りだもんな」
「いえ、本当に、その・・・それより助けて頂いてありがとうございました」

 ん、何かごまかしてるような?
 ま、細かい事はいいか

「あ、あの、名前を伺っても?」
「いやぁ~実は何も覚えてなくて・・・とりあえず 名無し とでも呼んでくれ」
「ナナシさんですね。私はミリスです」
「で、ミリスはどうしてこんなところに?」
「王様に呼ばれて王都に行く途中だったんですけど、その・・・」

あぁ、ミリスを護る様に息絶えていたのは迎えの騎士だったのか
どうせ記憶もアテも無いし、ここまで首を突っ込んだからな

「嫌じゃなければここからは俺が護衛としてついて行くよ」

「・・・お願いします」
ミリスは少し考えてから返事を返した。

「こっちこそよろしく。じゃ、先ずは・・・」
言って、騎士の装備をあさり出した。

「な、何をしてるんですか!」
ミリスは急に怒鳴りだした。
何を怒ってるんだ?
「何って、召喚状が必要だろ?それとも、ミリスが持ってるのか?」
「それなら、多分馬車の方にあるかと思います。それと、死者を冒涜ぼうとくするような事はあまり・・・」

あぁ、それで怒ったのか

ミリスの手前、騎士に祈りを捧げ馬車の場所への案内をうながした。

幸いな事に馬車自体にはそれほどの被害は無く、目当ての召喚状もすんなりと見つかった。
ま、馬もやられてるからただの大きい箱でしか無いけどな

そして馬車の近くには死体が3つ。
「彼らは?」
「護衛の冒険者さんたちです」

装備品の損傷は少ないみたいだし、使えそうだな

「あのなミリス、非常に言い難いんだが彼らの装備を使わせてもらおう」
「そんな追い剥ぎみたいな・・・」
「いや待て、俺等の格好を見てみろ」
ミリスからの批判をさえぎり続ける
「着てる物はボロボロだし武器も無い、こんな状態で王都まで行けると思うか?」
「それは・・・でも・・・」

もう一押しだな

「彼らの仕事は護衛だったんだろ、護衛として少しでもミリスの生存率を上げる為にも装備を使わせてもらうべきだと思うが」
「・・・わかりました。せめて敬意をはらい祈りを捧げましょう」
ミリスも渋々だが納得したようだ
早速使えそうな物を物色する。
「弓・・・は使えないな、ショートソードは使えそうだ。こっちの僧侶クレリック風の装備はミリスが使えそうだな」
遺体からローブを脱がし、馬車で着替えてくるようにうながした。
そして、ミリスが着替えてる間に所持品も物色する事にする。
「とりあえず財布をかき集めて、アイテムバックの中はっと・・・凄いな、ポーション各種にエリクシールまで入ってる」
俺は革鎧にショートソードとアイテムバックを、ミリスはローブとマジックワンドを装備した。

なんとか旅に耐えられそうな装備にはなったな

2人はもう一度遺体に祈りを捧げ、町に向かい街道を歩き出した。
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