可愛いは正義 では男前は?

丹葉 菟ニ

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運命の道への1歩

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大学生が声を張り上げながらもどうにか興味を持ってもらおうと新入生にビラを差し出す合間をすり抜けながら、自分が入りたい部に足を向ける。

「ちょっと待ってよ颯馬」

一心不乱に突き進む幼なじみの後を追うのは、線の細い体に精悍な顔つきの中にもまだ幼さが残る藤代朝陽。

「空手部に行くんでしょ」

幼なじみの渡辺颯馬とは3歳で通い始めた空手教室で出会った。2人は同い年、そして家が斜め向かいという事ですぐに仲良くなった。2人は同じ幼稚園に通い、小学校、中学、高校と通い、そして同じ大学に合格して無事に入学できた。

「あぁ、空手辞めるつもりないから、あさも一緒に入るだろ」


幼なじみを横から少し見上げた。
空手教室から始まり中学、高校と同じ空手部に通い、颯馬と同じだけの運動量をこなしてたはず。同じ男性だからと思っててもやはりオメガ性である自分には颯馬の様な筋肉は全くつかないのだ。自分と違い服の上からも分かるガッシリとした筋肉を朝陽は羨ましいと思ってしまう自分が少し嫌いになってた。自分自身が嫌いになるなら少しだけ違うことをしようと思うようになっていた。
ちょうど大学生にもなったんだし新しいことを始めるのもちょうど良いとも考えてた。

「うーん、ごめん。」

「え?入らないつもりか」

ショックと驚きが混じった顔で動きが止まってしまった颯馬にもう一度ごめんと繰り返した。

「空手は嫌いじゃない。けど、大学は違うことしてみたいなって思って」

「初めて聞いた。そんなこと一言も言ってなかった」

やっぱり先に言っておくべきだったと反省しながらも人の往来の邪魔になりつつあるので、戸惑う颯馬の背を押してカフェテリアにやって来た。お互いの好みは分かりきってるので颯馬に席取りに行かせて勝手に注文を済ませ、颯馬の前に座ったのを確認すると直ぐに話し始めた。

「俺 ずっと一緒に空手やるもんだと思ってた」

飲み物を両手に持ちながらもぽつりぽつり話し始めた。嫌いではない。でも、これ以上は伸びない、頑張れたとしてもΩの自分では限界に近い、そもそも筋肉が付きにくいこと。そして熱心にやるのでなく趣味としてやるなら新たに他のこともしたくなっただけ。一度話してるから要点はまとめて言えてる。

「少し前にさ今の気持ちをハッちゃんに話したらいつでも道場使えって言ってくれたから」

ハッちゃんとは3歳から通いだした道場の師範の八幡さん。みんなからはハッちゃんと呼ばれてる。僕達から見たら頼りになる兄貴的な存在でもある。

「俺はハッちゃんの次かよ」

少しぶすくれてるが最後まで話を聞いてくれた颯馬は、はァーと長いため息をつくと短髪の髪の毛を掻きむしった。

「変わらず一緒に空手やれると思ってたのになぁー、
わかったよ。俺は空手続けたいから空手部に行く。で、あさは何やるの」

「まだ決めてない。けど少し興味があるのがこれかな」

朝陽は配られていたビラを1枚見せた。実は前から気になって、動画とかは何となく見てたものでもある。

「ああ、最近よく見てるなとは思ってたら、自分でもやりたくなったのか」

「自分でするのはまだハードル高いけど、そのうちやるかも。この人たちって凄いよね!段々とその人になりたいって熱意で確実に別人になれるのってすごいなって」

初めはオススメで流れてきた動画を見ただけ。純粋にへー凄いなって思ってスルスルと他の関連動画を見始めたら止まらなくなってしまった。きっかけはたまたまでも今1番興味を持ってることは間違いない。

「へー、あさのおすすめは誰」

颯馬も携帯を片手に聞いてくれる。自分が興味あるとこに付き合ってくれる幼なじみにおすすめを説明するのも力が入る。

「えー、コイツがこんなになるの?怖ぇよ、間違ってナンパしそう」

冴えない男がまん丸タレ目のキュートな女の子になったのだ。

「なぁー、凄いでしょ」

おすすめ動画を一通り見終える頃には迷いは決心に変わり二人で帰る前に、颯馬は空手部に僕はコスプレ同好会に入部届けを出した。
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