可愛いは正義 では男前は?

丹葉 菟ニ

文字の大きさ
5 / 17

身内と初対面

しおりを挟む
目の前のシェルターの中に大事な番が居るとわかっているので動けずにいる。諸々の報告や手続きは申し訳ないが父に丸投げして今は朝陽の身内がこちらに来るとの報告でなにもせずにただ待っていると1時間もしない内に朝陽の身内が来たと連絡を受けた。

何事にも動揺することなく今日まで来たが、生まれて初めて言い知れぬ恐怖を味わってる。番になるご両親に嫌われたらどうしようと心臓が爆発しそうな思いで待っていると明らかにαだとわかる20歳前後の長身男と30代前半の男の2人がやって来た。
本当に朝陽の身内なのかと疑っているとαが駆け寄ってきた。

「藤代朝陽の身内の者です。朝陽がご迷惑をおかけして申し訳ございません」

2人の男性が同時に頭を下げてきた。

身内だと言われても、はいそうですか。とは引き下がれない。どう見積もっても朝陽の親だとも思えないしもう1人は朝陽にベッタリ付いていた匂いと年齢的に恋人です。と言われたらどうやって別れさせるか瞬時に思い浮かべながらも本当に身内だとしたら失礼のないようにしなければならないと、無理やり顔に笑みを浮かべながら応える。

「大変失礼ですが、お身内と言われてもヒートを起こしている朝陽にαの方が来るのはどうかと、それと朝陽とはどの様な関係なのか教えもらえますか」

「初めての方にはよく間違われてしまうのですが、私が朝陽の父親で、この子は朝陽の兄のまひるです」

よく間違われると言いながら、父親は手馴れた手つきでパスケースの中から写真と免許証を出しながら説明してきた。
藤代真広、30代前半にしか見えないのに本来の年齢は45歳だ。そして父さんが手渡してくれた書類に書かれていた朝陽と同じ住所、写真を見れば両親の間に今目の前に居るα男性と笑顔を浮かべる朝陽が写っている。
いい笑顔、この写真欲しいなと思いながらもαも免許証を取りだした。
藤代真陽、年齢21歳、父親と住所が同じ、疑いようが無いとわかれば自然に警戒も緩和出来た。

「お恥ずかしい話ですが私も妻もβなんですが」

「恥ずかしくないから。俺がαで弟がΩなんです。だからいつも親子なのかとか疑われてしまうから父さんと母さんは写真を持ち歩いてるんです。それも毎年更新したものを。コレでわかって貰えましたか?
それで貴方は?朝を助けてくれた人がシェルターの前に居ると聞いてたんですが」

αには余り出逢える事は少ないと思われがちだがα同士は良く出会う傾向が多い。逆を言えばΩに出会える方が少ないのだ。
それもそのはず、全世界のΩの数は全人口の1%も居ない事がわかってるが世界的に隠されてる事実である。

昔、魔女狩りならぬΩ狩りは当然の権利とされ、罪に問われない時代があった。Ω狩りの時代が終わったかと思えばΩはそのまま軽視され続け、迫害されてきた時代、そして自ら死を選ぶ者が多くなっていたが、誰もが目を背けていた。
そんな中、女性は子を産まない、産みたくない。同性愛の権利を叫ぶもの達で溢れて来た。
小さな訴えは段々と規模が大きくなり、世界的問題へと繋がった。女性が子を産みたくないのであれば子宮を持つ男も居る、それがΩだと目を向けた時に初めてバース性の数を調べた時にわかった。
βが97%、そしてαよりも多いのがΩだと思われていたが事実は残酷なもので細かく調査をした結果、αが2.8%に対してΩは0.2%と圧倒的に少ないと初めて知った時に保護活動が急速に始まり約50年でオメガの数が0.3%増えた事がわかったがαの俺達からしたらΩは雲の上の人、尊い存在なのだ。
そして、αがいる家にΩが居れば自然と守るべき存在になるだろう。

目の前のαを改めてよく見てしまった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 全8話 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

αが離してくれない

雪兎
BL
運命の番じゃないのに、αの彼は僕を離さない――。 Ωとして生まれた僕は、発情期を抑える薬を使いながら、普通の生活を目指していた。 でもある日、隣の席の無口なαが、僕の香りに気づいてしまって……。 これは、番じゃないふたりの、近すぎる距離で始まる、運命から少しはずれた恋の話。

「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。

キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ! あらすじ 「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」 貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。 冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。 彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。 「旦那様は俺に無関心」 そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。 バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!? 「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」 怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。 えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの? 実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった! 「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」 「過保護すぎて冒険になりません!!」 Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。 すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

奇跡に祝福を

善奈美
BL
 家族に爪弾きにされていた僕。高等部三学年に進級してすぐ、四神の一つ、西條家の後継者である彼が記憶喪失になった。運命であると僕は知っていたけど、ずっと避けていた。でも、記憶がなくなったことで僕は彼と過ごすことになった。でも、記憶が戻ったら終わり、そんな関係だった。 ※不定期更新になります。

人生はままならない

野埜乃のの
BL
「おまえとは番にならない」 結婚して迎えた初夜。彼はそう僕にそう告げた。 異世界オメガバース ツイノベです

鳥籠の夢

hina
BL
広大な帝国の属国になった小国の第七王子は帝国の若き皇帝に輿入れすることになる。

処理中です...