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初め手を繋ぐ
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診察室の前の長椅子に座ってる番を見つけ隣に座った。
「朝陽は痩せすぎだから念の為にこのまま健康診断しないか」
「僕だけ?」
反対されたらどうやって宥めるかばかり考えてたので、予想外の返答に面食らったが、ここで返答を間違えたら後が大変だなと感じる。
「俺も一緒に受ける」
「ふーん」
信じてるの信じてないのかわからないあやふやな返答にドキドキしながら朝陽を見るが、少し落ち着きがないようにも見える。
「昔から朝は病院嫌いだよね」
あっさりと朝陽の落ち着きのなさの答えを言える兄に嫉妬してしまうが仕方ないと自分に言い聞かせ、俺も朝陽について気がついた点を言うことにした。
「朝陽は一つ一つの所作が綺麗だよな。何か習いごとしてた?」
「空手を少し」
少しにしては立ったり座ったりする姿が美しい。そして、先ほどの運転手にした何気ない礼1つとっても綺麗だったのだ。一朝一夕で出来るものではない。それは兄にも言えたが、それはスルーする。
「今もしてるの?」
「暇があれば少しやるくらい」
「今度俺と組手してくれるか」
「時間が合えば?」
調子よく会話でき始めたと思ったら突然の疑問形で返され俺も少し慌てた。
「ああ、そうだな。先ずは朝陽の予定を聞いてから、俺が合わせるから気にするな」
「ふーん」
ふーんって、俺なにか間違えたか?と思っていると『藤代朝陽さん3番にお入り下さい』スピーカーから朝陽を呼ぶ声にピクリと反応を示した朝陽はすかさず兄に「採血あるの?」と聞いてる。
「あるみたい。頑張れ」
朝陽は注射が苦手なんだな。代われるものなら代わってあげたいが無理だな。兄はそのまま座ったままだが朝陽はゆっくり立ち上がると、ノロノロと歩き始めた朝陽の後ろに付いて採血室に一緒に入った。
生年月日と名前を告げゆっくり座る朝陽の横の椅子に座る。
看護師の指示に従い腕を差し出す朝陽の腕は白くて細すぎる腕になぜか心が痛む。
「て、手にぎってていい」
一瞬何を言ってるのか分からなかったが直ぐに理解でき手を出してやる。
「あぁ、もちろん」
女性とまではいかない、でも男らしい手とも言いがたいが、ほっそりと長い指だなと自分の手に重ねられた朝陽の手を幸せな気持ちで見ていたら突然握力でも測るかの如く馬鹿力で手を握ってきた。
馬鹿力で握ってきた朝陽を見れば目をつぶり必死に採血に堪えてる姿で、振りほどけない。ここは我慢するしかない。が、兄なら当然この状況になる事は知ってるなら教えてくれてもいいはず。
「終わったぞ」
サッと離された手を見ればどこからあんな馬鹿力が出せるのかと疑問に思いながらも、自分の指が折れてない事をソッと確認して胸を撫で下ろした。
初めて手を繋いで指が折れたなんて冗談にもならない。
「カルテを持って5番に行ってください」
カルテを渡され採血室を出た。
「お疲れ様。次は何番」
「5番だって」
5番は身長体重腹部心電図を測るところだ。
「1人で行けるね。ここで待ってるから行っておいで」
「うん、行ってくる」
本当に病院が嫌いなんだろうとぼとぼ歩く後ろ姿に行かなくてもいい。と、言ってしまうそうになる。
「手、繋ぎました?」
朝陽の後ろ姿が見えなくなって直ぐに質問されたが言いたいことはよくわかる。
「ええ、初めて番と手を繋げて幸せな気持ちになれました」
「さすが、運命の人は言うことが違いますね。あのボンヤリ父さんでも朝の採血には二度と付き合わないのに」
「自分の父親をボンヤリとは、ご本人が聞いたら傷つきますよ。それに前はどうあれ今は俺が居ますから手なんて簡単に繋いだりさせませんよ。まぁ、中のいい兄弟は別ですが」
「喧嘩らしい喧嘩もした事ないですね。って、あんた相手に駆け引きはアホらしくなってきた」
少し構えた言い方だったのが完全に崩れた兄は遠くを見つめて話し始めた。
「本当にいい子に育ってくれた自慢の弟なんです。父さんは素直な人で、母さんは和み系のふんわりした人。
どちらも聞こえは良いですけど、どちらも深く考えない人、良くも悪くも2人によく似てるから目が離せない。
俺がαだとわかった時は親戚が先祖返りって騒いで祝福してくれた。朝陽の期待が高まってたからこそのΩと分かった時の落胆は凄かった。でも、両親と母方の祖父母だけは違った。朝陽が元気ならそれでいいってバース性にこだわらなかった。
バース性を重視したのが父方の祖父母と親戚で俺を巡る醜い争いが起きた。αによる恩恵とかなんとか。あの時は大変だったな。親戚の話を鵜呑みにして朝陽が俺を誘惑して兄弟でって。有り得ないのに俺の親権を誰に渡すかって話にまで勝手に進んでるとわかった時は母方の祖父母に助けを求めて先ずはシェルターを作れば問題ないって両親を説得。あとは俺が誰の養子になっても働かずに恩恵なんて1mmも与えるつもりは無いって言ってやったら、養子の話は無くなった」
「αの恩恵ってどれだけ昔ばなしなんだって話だな。αが総じて優秀って勘違いされてた時代の話だろ」
αってだけで優秀と思われてたが事実は違う。α同士でどちらが上でどちらが下と無意識に階級を付けている。
それは動物の本能に近く誰も上手く説明出来ないが、α同士はわかってる。そんな事はβにはわかるはずも無いが、世の中には上があれば下がある。βよりかは少しばかり頭の出来が良かったαでもβ達にしたら格好の甘い汁に見えてたのだろう。総じてαに富があると思われてた時代の昔ばなしとは言いきれない話だ。
「朝陽は痩せすぎだから念の為にこのまま健康診断しないか」
「僕だけ?」
反対されたらどうやって宥めるかばかり考えてたので、予想外の返答に面食らったが、ここで返答を間違えたら後が大変だなと感じる。
「俺も一緒に受ける」
「ふーん」
信じてるの信じてないのかわからないあやふやな返答にドキドキしながら朝陽を見るが、少し落ち着きがないようにも見える。
「昔から朝は病院嫌いだよね」
あっさりと朝陽の落ち着きのなさの答えを言える兄に嫉妬してしまうが仕方ないと自分に言い聞かせ、俺も朝陽について気がついた点を言うことにした。
「朝陽は一つ一つの所作が綺麗だよな。何か習いごとしてた?」
「空手を少し」
少しにしては立ったり座ったりする姿が美しい。そして、先ほどの運転手にした何気ない礼1つとっても綺麗だったのだ。一朝一夕で出来るものではない。それは兄にも言えたが、それはスルーする。
「今もしてるの?」
「暇があれば少しやるくらい」
「今度俺と組手してくれるか」
「時間が合えば?」
調子よく会話でき始めたと思ったら突然の疑問形で返され俺も少し慌てた。
「ああ、そうだな。先ずは朝陽の予定を聞いてから、俺が合わせるから気にするな」
「ふーん」
ふーんって、俺なにか間違えたか?と思っていると『藤代朝陽さん3番にお入り下さい』スピーカーから朝陽を呼ぶ声にピクリと反応を示した朝陽はすかさず兄に「採血あるの?」と聞いてる。
「あるみたい。頑張れ」
朝陽は注射が苦手なんだな。代われるものなら代わってあげたいが無理だな。兄はそのまま座ったままだが朝陽はゆっくり立ち上がると、ノロノロと歩き始めた朝陽の後ろに付いて採血室に一緒に入った。
生年月日と名前を告げゆっくり座る朝陽の横の椅子に座る。
看護師の指示に従い腕を差し出す朝陽の腕は白くて細すぎる腕になぜか心が痛む。
「て、手にぎってていい」
一瞬何を言ってるのか分からなかったが直ぐに理解でき手を出してやる。
「あぁ、もちろん」
女性とまではいかない、でも男らしい手とも言いがたいが、ほっそりと長い指だなと自分の手に重ねられた朝陽の手を幸せな気持ちで見ていたら突然握力でも測るかの如く馬鹿力で手を握ってきた。
馬鹿力で握ってきた朝陽を見れば目をつぶり必死に採血に堪えてる姿で、振りほどけない。ここは我慢するしかない。が、兄なら当然この状況になる事は知ってるなら教えてくれてもいいはず。
「終わったぞ」
サッと離された手を見ればどこからあんな馬鹿力が出せるのかと疑問に思いながらも、自分の指が折れてない事をソッと確認して胸を撫で下ろした。
初めて手を繋いで指が折れたなんて冗談にもならない。
「カルテを持って5番に行ってください」
カルテを渡され採血室を出た。
「お疲れ様。次は何番」
「5番だって」
5番は身長体重腹部心電図を測るところだ。
「1人で行けるね。ここで待ってるから行っておいで」
「うん、行ってくる」
本当に病院が嫌いなんだろうとぼとぼ歩く後ろ姿に行かなくてもいい。と、言ってしまうそうになる。
「手、繋ぎました?」
朝陽の後ろ姿が見えなくなって直ぐに質問されたが言いたいことはよくわかる。
「ええ、初めて番と手を繋げて幸せな気持ちになれました」
「さすが、運命の人は言うことが違いますね。あのボンヤリ父さんでも朝の採血には二度と付き合わないのに」
「自分の父親をボンヤリとは、ご本人が聞いたら傷つきますよ。それに前はどうあれ今は俺が居ますから手なんて簡単に繋いだりさせませんよ。まぁ、中のいい兄弟は別ですが」
「喧嘩らしい喧嘩もした事ないですね。って、あんた相手に駆け引きはアホらしくなってきた」
少し構えた言い方だったのが完全に崩れた兄は遠くを見つめて話し始めた。
「本当にいい子に育ってくれた自慢の弟なんです。父さんは素直な人で、母さんは和み系のふんわりした人。
どちらも聞こえは良いですけど、どちらも深く考えない人、良くも悪くも2人によく似てるから目が離せない。
俺がαだとわかった時は親戚が先祖返りって騒いで祝福してくれた。朝陽の期待が高まってたからこそのΩと分かった時の落胆は凄かった。でも、両親と母方の祖父母だけは違った。朝陽が元気ならそれでいいってバース性にこだわらなかった。
バース性を重視したのが父方の祖父母と親戚で俺を巡る醜い争いが起きた。αによる恩恵とかなんとか。あの時は大変だったな。親戚の話を鵜呑みにして朝陽が俺を誘惑して兄弟でって。有り得ないのに俺の親権を誰に渡すかって話にまで勝手に進んでるとわかった時は母方の祖父母に助けを求めて先ずはシェルターを作れば問題ないって両親を説得。あとは俺が誰の養子になっても働かずに恩恵なんて1mmも与えるつもりは無いって言ってやったら、養子の話は無くなった」
「αの恩恵ってどれだけ昔ばなしなんだって話だな。αが総じて優秀って勘違いされてた時代の話だろ」
αってだけで優秀と思われてたが事実は違う。α同士でどちらが上でどちらが下と無意識に階級を付けている。
それは動物の本能に近く誰も上手く説明出来ないが、α同士はわかってる。そんな事はβにはわかるはずも無いが、世の中には上があれば下がある。βよりかは少しばかり頭の出来が良かったαでもβ達にしたら格好の甘い汁に見えてたのだろう。総じてαに富があると思われてた時代の昔ばなしとは言いきれない話だ。
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