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心療内科
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心療内科はあまり得意ではないけど、診察とセットになっているから受けるしかない。
「失礼します」
中から「どうぞ」と声がかかり、診察室の中に入っていく。少しお香が焚かれて甘い匂いがするこの部屋の持ち主の趣味なのだろう。患者が座る椅子も回転する椅子ではなく革張りの1人がけの椅子にそっと腰を下ろした。
「こんにちは朝陽君。今日は突発ヒートを引き起こしたと報告があるけど身体つらくない?」
兄が詳しく書き込んでの病院予約だったので余計な説明をしなくても本題に入れるから楽でいい。
「こんにちは阿南先生。身体は少し辛いです」
辛いと素直に言えば先生は立ち上がり僕の方に近寄り椅子の側面を触り僕の椅子を操作して背もたれが倒れ、膝から下がゆっくり持ち上がり、僕は少し寝かされている状態になった。
「ありがとうございます」
「コレもどうぞ」
膝掛けを掛けてもらい折り畳み椅子を僕の横に置き先生が座った。
「少しは楽になりましたか」
「はい」
「では、始めましょうか。朝陽君はヒートが16歳4ヶ月に始まり今まで狂う事は無かったですね。それなのに、初めて突発性ヒートのきっかけはなにかありましたか?」
「センパイに誘われてコスプレのお茶会に行ったんです」
「コスプレ同好会の皆さんとは良好な関係を築いてると言ってましたね」
診察は偶数月の土日祝日は前後するが10日と決まっているので、大学に入ってすぐと、先月受けたばかり。
その時にコスプレ同好会に入ったことは話した。
「同じ趣味の人達が集まる場所だから不安はあったけど、全くの素人の僕でも歓迎してくれて、特に都センパイや上野センパイにはお世話になってます」
「そう、2人はβなのかな?」
「はい。センパイには僕がΩってまだ伝えたことは無いですが」
「一緒に参加したお茶会でなにがあったの?」
「お茶会の参加条件がプリンセスとプリンスのペアでの参加で僕がセンパイに頼まれて一緒に参加することになったんです」
「そう、朝陽君はどちらの格好で参加したの?」
「センパイが貸してくれた王子様コスプレの衣装での参加でした。会場に入るのもプリンスがプリンセスのエスコートでの会場入りが条件で、会場入りの扉が開いた瞬間、大勢の人が居たんです。それなのに、1箇所だけスポットライトが当たって浮かび上がってきたんです。お姫様が」
「1箇所だけスポットライトが当たったの?なぜ?」
「実際に当たったとかではなく、輝いて見えた。と言った方が分かりやすいのかな。他の人が見えなくなって、その人だけしか見えなくなった。そしたら身体中の血液が逆流した感じになって苦しくなって、その場にうずくまった途端に、匂いがしたんです。物凄く落ち着ける匂いは僕だけのものだって思ったら少しだけ落ち着けた。でも、苦しいのは変わらなくてどうしようって思ってたらその人が来てくれて、僕をシェルターに連れていってくれたんです」
「その人は初めて会った人」
「初めて会った人でした。兄以外に初めてαの人に会ったから分からないですが、でも強くこの人だって思えたんです。この人以外は要らないって。この人が運命の人だって」
「運命の人ってつまり」
「運命の番です。その人は僕の事を番だって言ってます。僕も間違いないって思ってます」
「通常通りだったヒートが運命の番に会って狂ったと」
「2日前に終わってたんです。なのに突然ぶり返した理由が見当たらなくて」
「それは、兄弟であるαの真陽さんしか知らなかったのに、突然他のαに初めて会ったからなのでは?」
「兄以外のαの人に会ったことなかったけど、その人、美玲さんって名前なんですけど、美玲さんのお父さんもきっとαなんです。でも、この人αなんだな。って思っただけで、美玲さんに対して思うような気持ちまでは全く持てなかった」
「美玲さんですね。美玲さんのように強く思えなかったと言うと、それは恋愛感情を持てなかったという事ですか」
「恋愛感情ですか?うーん、コレが恋愛感情なら僕の恋愛感情はわがままですね。美玲さんを誰にも奪われたくない。僕だけを見ていて欲しい。僕のことだけを受け入れて欲しい。僕だけに時間を使って欲しい。2人だけの世界で暮らせたらきっと幸せなんだと思う。
実際には出来ないですけど、でも美玲さんにこの気持ちを言ったら全て叶えてくれそうで、叶えて貰えたらきっと幸せなんだろうなって思う。でも、それは出来ないです。きっと色んな人に迷惑かけて、心配もされて、怒られるのは美玲さんだけになると思う」
「少なからず恋愛の始まりは独占欲から始まる事もありますよ。だから離れてても安心出来る時間が信頼関係の時間に結びつくデータなんて調べる人も出てくる」
「そんなデータがあるんですね」
「ありますよ。それに誰もがありのままの姿で受け入れて欲しいと思うのも普通ですよ。よそ見をしないでなんて誰でも持ってる思い。まだ恋愛の始まりなら、別におかしいことは無い。2人だけの空間もじっくりその人だけと交わりたいと思う自然の流れですから」
「そうなんですか。今まで恋愛したことないから」
今まで友達と遊んでばかりいた。そんな中でも普通に学校の友達とは誰が可愛いとかカッコイイとかの話をしてきても恋愛はしたことないから戸惑うばかりだ。
「失礼します」
中から「どうぞ」と声がかかり、診察室の中に入っていく。少しお香が焚かれて甘い匂いがするこの部屋の持ち主の趣味なのだろう。患者が座る椅子も回転する椅子ではなく革張りの1人がけの椅子にそっと腰を下ろした。
「こんにちは朝陽君。今日は突発ヒートを引き起こしたと報告があるけど身体つらくない?」
兄が詳しく書き込んでの病院予約だったので余計な説明をしなくても本題に入れるから楽でいい。
「こんにちは阿南先生。身体は少し辛いです」
辛いと素直に言えば先生は立ち上がり僕の方に近寄り椅子の側面を触り僕の椅子を操作して背もたれが倒れ、膝から下がゆっくり持ち上がり、僕は少し寝かされている状態になった。
「ありがとうございます」
「コレもどうぞ」
膝掛けを掛けてもらい折り畳み椅子を僕の横に置き先生が座った。
「少しは楽になりましたか」
「はい」
「では、始めましょうか。朝陽君はヒートが16歳4ヶ月に始まり今まで狂う事は無かったですね。それなのに、初めて突発性ヒートのきっかけはなにかありましたか?」
「センパイに誘われてコスプレのお茶会に行ったんです」
「コスプレ同好会の皆さんとは良好な関係を築いてると言ってましたね」
診察は偶数月の土日祝日は前後するが10日と決まっているので、大学に入ってすぐと、先月受けたばかり。
その時にコスプレ同好会に入ったことは話した。
「同じ趣味の人達が集まる場所だから不安はあったけど、全くの素人の僕でも歓迎してくれて、特に都センパイや上野センパイにはお世話になってます」
「そう、2人はβなのかな?」
「はい。センパイには僕がΩってまだ伝えたことは無いですが」
「一緒に参加したお茶会でなにがあったの?」
「お茶会の参加条件がプリンセスとプリンスのペアでの参加で僕がセンパイに頼まれて一緒に参加することになったんです」
「そう、朝陽君はどちらの格好で参加したの?」
「センパイが貸してくれた王子様コスプレの衣装での参加でした。会場に入るのもプリンスがプリンセスのエスコートでの会場入りが条件で、会場入りの扉が開いた瞬間、大勢の人が居たんです。それなのに、1箇所だけスポットライトが当たって浮かび上がってきたんです。お姫様が」
「1箇所だけスポットライトが当たったの?なぜ?」
「実際に当たったとかではなく、輝いて見えた。と言った方が分かりやすいのかな。他の人が見えなくなって、その人だけしか見えなくなった。そしたら身体中の血液が逆流した感じになって苦しくなって、その場にうずくまった途端に、匂いがしたんです。物凄く落ち着ける匂いは僕だけのものだって思ったら少しだけ落ち着けた。でも、苦しいのは変わらなくてどうしようって思ってたらその人が来てくれて、僕をシェルターに連れていってくれたんです」
「その人は初めて会った人」
「初めて会った人でした。兄以外に初めてαの人に会ったから分からないですが、でも強くこの人だって思えたんです。この人以外は要らないって。この人が運命の人だって」
「運命の人ってつまり」
「運命の番です。その人は僕の事を番だって言ってます。僕も間違いないって思ってます」
「通常通りだったヒートが運命の番に会って狂ったと」
「2日前に終わってたんです。なのに突然ぶり返した理由が見当たらなくて」
「それは、兄弟であるαの真陽さんしか知らなかったのに、突然他のαに初めて会ったからなのでは?」
「兄以外のαの人に会ったことなかったけど、その人、美玲さんって名前なんですけど、美玲さんのお父さんもきっとαなんです。でも、この人αなんだな。って思っただけで、美玲さんに対して思うような気持ちまでは全く持てなかった」
「美玲さんですね。美玲さんのように強く思えなかったと言うと、それは恋愛感情を持てなかったという事ですか」
「恋愛感情ですか?うーん、コレが恋愛感情なら僕の恋愛感情はわがままですね。美玲さんを誰にも奪われたくない。僕だけを見ていて欲しい。僕のことだけを受け入れて欲しい。僕だけに時間を使って欲しい。2人だけの世界で暮らせたらきっと幸せなんだと思う。
実際には出来ないですけど、でも美玲さんにこの気持ちを言ったら全て叶えてくれそうで、叶えて貰えたらきっと幸せなんだろうなって思う。でも、それは出来ないです。きっと色んな人に迷惑かけて、心配もされて、怒られるのは美玲さんだけになると思う」
「少なからず恋愛の始まりは独占欲から始まる事もありますよ。だから離れてても安心出来る時間が信頼関係の時間に結びつくデータなんて調べる人も出てくる」
「そんなデータがあるんですね」
「ありますよ。それに誰もがありのままの姿で受け入れて欲しいと思うのも普通ですよ。よそ見をしないでなんて誰でも持ってる思い。まだ恋愛の始まりなら、別におかしいことは無い。2人だけの空間もじっくりその人だけと交わりたいと思う自然の流れですから」
「そうなんですか。今まで恋愛したことないから」
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