白昼夢の中で

丹葉 菟ニ

文字の大きさ
上 下
22 / 59

恵雨

しおりを挟む
抱きついて泣いていたものの  なぜか晃さんに緩く引き剥がされ 晃さんの腕の中に囲われてしまった。

「須賀巡査、鈴は私の大事な大事な 番 なんです」

嘘を付いてたとしても 俺の事をまだ番だと言ってくれる晃さんに心が温かくなる。

「私は 浅嗣の実の兄です。邪な目で私を見るのは止めて貰えますか織田警視」

まさか 晃さんはそんな事を思う人じゃないよ。兄さんの思い過ごしだよ、それに 晃さんはかっこよくて 優しくて とっても強いαで 俺がもっとも安心 出来る人なんだ。どうやってお兄ちゃんに伝えるべきか?

「ええ、確かに兄なんでしょうが 兄弟で抱き合うのも5秒も有れば十分でしょ?心の広い俺は10秒も待ってやったんですよ」

あれ?なんか 俺が思ってたのと違う。心が広いとか言ってるけど 何年ぶりかに会えた 兄弟で抱き合うのも10秒。秒単位で計ってる時点で心が広いのか?

「11年も会えなかった弟との再会なんですが?」

なんか 逆らっちゃいかん物が晃さんから出てるけど 兄は怖気付くこと無く正論を言ってるが、嫌な顔をせず笑って受け流した晃さんは部下に命じて話を聞くために移動することになった。

「ええ、そのようですね。感動の再会の様ですが此方も色々と聞きたいことが有りますので、このまま隣の部屋に移動して下さい。永田  山里を連れて一緒に話を聞いてくれ」

やっと 兄との会えたのに引き離されてしまうと慌てて、後で電話していいか?と聞くと 笑顔で 待ってる 答えてくれた。

「中々 度胸が座った方ですね。鈴君のお兄さんにしては合格点でしょう」

如月さんの満足気に言ってることが分からない。何をもっての基準の合格なのかは謎だが、晃さんに真っ向から反論するのは確かにすごいと思った。


園での様子や、退園してからの事、俊の事をこと細かに聞かれて気が付けば夜になってた。
最後に晃さんと如月さん ダブルで道に飛びだすな と怒られた。晃さん1人でも 怒られると怖いのに如月さんが加わる事でかなり 気力と体力をごっそり奪われ 送り届けられた先は晃さんの家だ。

車から降りて 住宅フロアの前まで送ってくれた久保さんにお礼を言い 帰り着けば 食事の用意をして持ってきてくれた。

ありがたく受け取り 夕飯をたべて 一件の電話番号からショートメールを送ると直ぐに返信があり 何回かやり取りをしてそのまま眠りについた。





チャイムがなる 時間を見れば8時過ぎだ。起きないといけないなとは思いつつも 眠気に勝てずに 深い眠りに落ちそうになるが、けたたましくチャイムを連打し始めた。この家に尋ねてくる人はチャイムを連打する人ばかりなのか?

けたたましくなる鳴るチャイム、晃さんや湊さんに怒られたので 気をつけてインターホン越しに見ればお母さんと男性がいる。

「今開けます」と言い 玄関に走る。

「おはよう 鈴ちゃん」

「お、おはょぅございます」

あー、なるほど。この男性 晃さんのお父さんだろう。雰囲気がよく似ているし なにより目元がそっくりだ。

「君が 鈴だね。朝早く済まないね。初めまして 晃の父で勝己 です。よろしく 」

「えっと・・・・よろしくお願いします」

咄嗟に田中 鈴と言いそうになったが 言えなかった。自分の名前、どっちを言えばいいか分からないなんて世界中探しても俺だけだよな。

「鈴ちゃん お邪魔してもいい?」

「はい!すみません どうぞ」

「ありがとう お邪魔させてもらうよ」

うん、声も似てるよね。低過ぎず高過ぎず丁度よく鼓膜に響くいい声。

ご両親をリビングに案内して直ぐにお茶とお菓子の準備をしてご両親にだした。

「鈴ちゃん、昨日 道路に飛び出したわよね。なんであんな危険なのことしたの?私の 心臓が止まるところだったのよ」

昨日の事を怒り始めたお母さんに すみません と素直に謝った。

「湊からも話を聞いたが、人を追いかけたくても 道路に飛び出して車に轢かれたら 追いかける事も出来ないだろ。次からはそんな無茶をせずにプロに頼めばいい。分かったね」

確かに 自分が車に轢かれたら元も子もない。それはわかるが、 プロに頼むってなに?人を追いかけるプロって居るのか。うーん、でも それって人を雇うことになるなら お金を掛かるよね?俺には無理な話だ。でも、ハッキリした。そんなことを 平気で言えるってことは、やっぱり 晃さん家はお金持ちなんだ。俺とは住む世界が違うんだな。
なんと答えたら良いのか分からず 曖昧に笑ってやり過ごした。

「それと コレ」

お母さんから受け取った領収書に あの時手から滑り落ちてしまった支払い書を思い出し慌てる。

「あ! すみません!!お金を 今お持ちします」

「落ち着いて。鈴ちゃんは我が家のお嫁さんなんだから そんな事を気にしないでいいのよ。ね、勝己さん」

「あぁ、やっと晃にもこんなにも可愛い番が出来たんだ 大歓迎だよ。それに 晃 1人に任せてたら話が進まなくなるから さきに話を進めたくて 大至急 時間を作って来たんだ」

話しを進めるとはなんだろ?








鈴を自宅に送り届けてる間に 緊急 捜査会議を開く。

須賀 高嗣が証言したとおり 自分の弟が違うと学校の先生に訴え、一緒に交番に行き 2人の警察官が、関わってる資料も出てきた。
証拠となる子は俺の番だし、その兄は警察官。DNAを調べれば1発で兄弟だと証明されるだろ。

仙竜会と祠堂 正嗣との黒い噂は度々に上がってきてた名前だ。 
今回 ひかり園の原 人志 理事長が仙竜会と繋がってる事実を掴んでる。

仙竜会は言うことを聞かない所には 青葉組に依頼をしてた事もある。点と線を繋げば きっちり繋がってる。後は 動かない証拠を揃えればいい。

佐々木 拓也の身柄は此方にある覚醒剤使用と強制わいせつ罪が付いてる。

そして、今現在の浅嗣の本名を見つけ出すことが肝心だ。11年前、実子がΩだったとこに激怒し、そのまま捨てαの子を養子にせずにそのまま実子にしてしまった。その為にバース性を二度検査させてる。1度目の時は風邪気味だた為に 態々違う病院でもう一度と なってる。5件の発砲事件。青葉賢治との繋がりを調べた結果、自分の仲間と売りを目的としたデート倶楽部をしてる事が判明。銃の入手経路も多分 青葉賢治からだろう。

この事件を何処からも邪魔されないためにも、天上人に報告。どの時代にも、陽と陰は1つの円の中に収まってる。表があって裏がある。
表を支配する者が居れば、当然裏を支配する者が居る。そこに独自の法があり 掟があり秩序がある。そこを確りと把握し 多少なりとも己を自由にさせたければ、フィクサーなどと古くさい時代の者でも庇いきれないと判断されれるだけの物を用意すればいい。1時間もしない内に 一部を除き好きにしろとの返答を頂いた。
天上人が背を向けたという事は ある程度は何処からも横槍が入らずにスムーズに捜査が勧められ、祠堂の手首に手錠を掛けても問題無いと判断された。

「上からも今回の件は徹底的に洗い出せとの命令が入った。皆 気合を入れて証拠を持って帰ってきてくれ」

色々と因縁がある捜査員達の怒濤が響き渡る。今度こそはと、やる気に満ちあるれる 捜査本部はにわかに活気づいたが、今回の最初の検挙はあくまで発砲事件だと釘をさす。後は芋ずる式に引っ張ればいい。途中で切れない為にも証拠を1つでも多く集めろと 激を飛ばすが、集めるのは 容易い。

ほぼ天上人が背を向けたのだ、今頃 繋がってる所は尻尾切りが始まってる。後は我々が宝探しの要領で少し探ればザグザグと見つかるはずだ 正嗣だけの犯行が。
偽物の祠堂 浅嗣の所在も直ぐに分かるだろう。






引き攣る顔が元に戻らない。

「あの、晃さんとも話し合って 
「ダメ。晃の性格を分かった上で鈴に話してるんだ。なに、人生でたった一度っきりのことだ 誰も 慣れる人なんていない。自信を持ちなさい」

お母さんも推しが強かったけど お父さんも押しが強そうだ。それに 妙に説得力ある様な無いような、でも 反論できる所が無いので 頭を抱えてしまった。





 
しおりを挟む

処理中です...