先祖返りの三毛猫さん

丹葉 菟ニ

文字の大きさ
上 下
38 / 86
第3章

素直に

しおりを挟む
注目された朝から解放されて、その後は俺を取り囲まれる事も無くなった。

「ありがとな 助かったよ」

「あのな!お前も姉ちゃんで慣れてるなら、思い込みの理不尽は正論ぶっ付けたらいいんだよ。なんでわかんねぇーの?」

「ミネよりタチの悪い思い込みに、正論も歯が立たないって 知らしめられてるから。なんか、最初から疲れるんだ」

「はぁ~・・・なんか敦も苦労してんだな。可哀想に」

「よく分からん 慰めだな」

「だな!」

カラカラと笑う幼馴染は良いもんだなと、改めて思った。




弁当を食べながら何気なく話してると、目の前にチョココロネがぶら下がる。

「えっと、食べていいの」

「なにいってんの!僕の大好物なんだから半分に決まってんじゃん!」

「お前・・・まるっと1つくれてやれよ」

呆れてる雄大と頬を膨らませるミネ。

「その前に謝れよ」

雄大がため息を付くとミネに優しく俺に謝れと言ってる。
パンの袋を破りパンを千切ると半分を俺の口に無理やり突っ込んできた。

「無理言って悪かった!」

一言謝ると明後日の方向を向いてモグモグと食べ始めた。
どんな形でも 素直に謝ってくれたミネを嫌いになれない。何時でも素直に居ようとするミネは物凄く強いんだ思った。

「行儀悪いぞミネ!ちゃんと座って食え」

「うっ五月蝿いな」

五月蝿いとか言いながら ちゃんと座って食べるミネは思い込みも激しいけど素直なミネは今からでも充分思い込み矯正出来ると思った。

「ミネはパンばっかりなの?よかったらなにか摘む?」

「ハンバーグ」

「えー 俺も好きだから取っておいたのに」

「だったら聞くなよ」

「半分やるよ」

ミネの口に半分にしたハンバーグを突っ込んでやった。

「・・・・なにこのハンバーグめちゃめちゃ美味いんだけど!」

「イイだろ!この弁当 イエメンの家のコック長が作ってる」

「はっ?」
「へ?」

「俺の姉ちゃんの大暴走で家に居られない状態で今 アイツの家にお世話になってる」

「お前 まだ 世話になったままなのかよ?」

「やらかす姉ちゃんって有名だけど、本当なの?」

「んう!?やらかす姉ちゃん?なにそれ?」

「あ・・・」

やばいって顔をするミネに小さな声で雄大がバカって言った。

「有名なんだ。思い込み暴走」

「・・・うん 従兄弟の兄ちゃんが 同級生で思い込みでぶっ飛ばしては回りに迷惑掛ける奴が居るって・・・話し聞いてる」

「はぁ~ ごめんな。そのまんま 噂通りのが俺の姉ちゃんなんだわ」

「わりぃ~ 、俺も他所でその話よく聞くわ。大半が知ってると思う」

「すげえぇ~。色々とやらかしてんのに未だに気づけてないとかなんなの?本当に勘弁してよ」

「僕も なーちゃんに やらかす姉さん そっくりになるよって言われて 頭が冷えた」

渋々白状するミネに笑うしかない。

「良かったな、反面教師が居てな。本当に大迷惑でしかないから」

「あっ君も大変だね」

「わかってもらえただけでも 儲けもんだな」

ミネと仲直りが出来て良かった。
しおりを挟む

処理中です...