陸上自衛隊 異世界作戦団

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Part2:「潜み待ち構える、〝ヤツ〟さ」

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主人公の雰囲気顔見せ回。


――――――――――


 クリエールの率いる第231独立戦車大隊は、師団の作戦の先鋒を務める。

 大隊が組み見せるは、戦車や装甲車による巨大な楔形の隊形。

 その一番先頭を導き率いるように、雄々しく駆け進むは大隊長車のレオンファーツ重戦車。そしてその車上で、まさに戦場の女神の様相で姿を見せるはクリエールだ。

「――各車、各部隊っ、陣形を崩すなっ!互いに援護し合うことを忘れるなっ!」

 雄々しく走行するレオンファーツの車上で、クリエールは揺らすその身で風を切り。透る声色で通信により、指揮下に指示を送る。
 草原を我が物のように走破し、丘を容易く駆けあがって越え。機動行動を魅せるレオンファーツ重戦車に、各戦車たち。

「おっとっ!」

 その最中。クリエールの戦車の真上を、低空を掠めるように何かの飛翔体が、交差し飛び抜ける。
 見上げれば、見えたのは上空を羽ばたき飛び去っていくリヒュエルの姿。少し振り向くその仕草には、こちらを揶揄うような色が見えた。

「まったく――ふふっ。皆、空の仲間たちに遅れを取ってはいられないぞっ!」

 見せられたそれに少しの呆れを零しつつも。しかし同時に頼もしく思い、また微笑を見せるクリエール。
 そしてクリエールはまた通信で指揮下の兵たちに告げ。相棒のレオンファーツと共に駆け進み続ける。

 彼女たちによって一帯をキャンパスに描かれるは。荒々しく重々しくも、惚れ込むまでの勇敢で優美な進撃だ。

 対して、相手である同盟軍側の抵抗は散発的で貧しく、劣悪とすら見えた。

 時折接触する、単独の小型戦車や少数の地上部隊が。申し訳程度の、その場凌ぎの抵抗攻撃を見せたかと思えば。
 しかし次には、恐れ臆したまでの様相で逃げ去っていく。

 地域に点在する村町も、多くは放棄されもぬけの殻。突貫で作られた小さな防衛陣地も、クリエールたちが近づくや彼女たちの目の前で捨て去られる有様だ。
 完全に臆し戦意を損じた、敗軍のそれであった。

「少し、気の毒にすら思えてしまいますな」
「同情が無いではないが……心を揺るがしてはならない、これは戦だ」

 痛ましくすら見えるそれに、クリエールにも同情の念が無いわけでは無かったが。言葉通りこれは戦、情け遠慮は己を滅ぼす事に繋がりかねない。
 喰らい狩らなければ、狩られ喰らわれ奪われる。
 クリエールにとって教え子たる新皇帝が、討って出ることを謳い掲げたのも。その生存競争においての本質から。
 帝国を狙う近隣諸国を、こちらより討ち出て狩り喰らうことこそ。帝国を護る術と考えてのことであろう。

「陣形を広げるぞ――各中隊、以降は中隊ごとの判断に任せる。雄々しく駆け、その勇猛さを見せつけてやれ!」
『『『了解!』』』

 そしてクリエールは次の作戦段階への以降を示し。身に着ける通信機にて、各隊ごとの判断での行動許可を各中隊へ伝える。
 各中隊長からは頼もしい了解の返答がまた返り。
 クリエールの大隊は、地域に大きく散会しての作戦へと移る。

 戦場の状況は帝国側の、先鋒を務めるクリエールたちの大隊の独壇場なまでの形に終始していた。

 クリエールの配下の中隊や小隊に。追従する師団主力の各部隊は。進行からこの地域の町村に、各要所へと進入し。
 そのほとんどが防衛抵抗を放棄して、慌て逃げ去っていく同盟軍を。追い立て追い出し、もしくはその逃走すらも認めずに屠り滅し。

 川を越え、丘を越え、その全てを占拠して手中に収めながら。
 まさに流れる広がる、美麗ななでの機動戦を展開して見せつける、クリエールの大隊と帝国軍。
 気づけば、掌握を計画していた作戦地域の。すでに8割は帝国軍の手に陥ちていた。

「少佐、アイン中隊のエリスン大尉より知らせです。アイン中隊は地域の最奥の村へと迫り、間もなく進入とのこと」

 獣人軍曹のウェフェルから、知らせの言葉が寄越されたのはその折り。
 上がって来る配下の各部隊の快進撃の報が、拍子抜けなまでの進行の順調さを知らせる。

「舞台の幕は、思いのほか早くに降りてしまうかもなっ――戦車、前進っ!!」

 丘に草原を雄々しく駆け進む、相棒たるレオンファーツ重戦車の上で。クリエールはまた風を身で切りながらも、ニヒルに零し。
 そして次には、また高らかに命じる声を響かせる。

 帝国の、彼女たちの勝利は約束されたものと。
 帝国軍の誰もが、確信に近いそれを抱いていた――



 ――場所は、視点は。
 人物は移り替わる。

「――あちらさんは?」

 一つの建造物の内。薄暗く、埃っぽい空間で。
 大分人相のよろしくない存在が――陸上自衛隊の幹部自衛官が、そんな尋ねる言葉を零した。

「ウチからの要請通り。適当な抵抗から敗走を演じて、後退して来てもらいました。今はバックアップのために再編してもらってます」
「そしたら、こっからこっちの仕事だな――」

 次には、同伴する指揮下の自衛隊員からの回答が返され。
 それを受けてさらに、その幹部自衛官の彼は端的に促す言葉を零す。

「敵戦車、目と鼻の先ッ」

 さらにそこへ、建造物空間の上階。上下階を隔てる天井を無くし、ぶち抜かれている向こうより。
 監視観測に着く隊員よりの知らせの声が届く。

 その事実を知らせるように、外部より聞こえ来るはキュラキュラと金属の擦れる音。‶〝待ち構える側〟としてはお世辞にも歓迎したくない音。

「備えろッ」

 それを聞き、その幹部自衛官の彼は端的に、しかし確かに発し伝える。

 尖り、良く言えばストイックそう。はっきり言えば人相が悪く、ゲスな悪役のように陰険そうで堀りの深いその顔は。
 一層の険しい形相に顰められ。
 今の空間の壁側に設け、隠蔽偽装を施した開口部のその向こうを、外部を。射貫くまでに尖る眼で注視している。
 見計らうは、自身が発するべき「号令」のタイミング。

「ッー――」

 口を鳴らし、瞬きの一つすらを惜しみ。来るその時を一瞬でも早く認識すべく、神経を尖らせ。
 ズッ――と。開口部の向こうに鋼鉄の巨体が。〝敵戦車〟がそのどてっぱらを現し見せたのは、瞬間。

「――今ッ!」

 直後。最低限の声量で、しかし確かに発し響かせ。
 同時に彼は拳の底を、側面に鎮座し潜めていた鋼鉄の巨体に――90式戦車の砲塔側面に合図として叩きつけ。

 ――瞬間、轟音が響き劈いた。

 90式戦車の主砲たる120mm滑腔砲が、その唸りを上げた音。

 それは幹部の彼始め、周りの随伴隊員の。専用のイヤープロテクタで守るその鼓膜を、だがそれでも心配になる音量と衝撃で劈き揺さぶる。

 そして射ち放たれたAPFSDSが、腹を晒した敵戦車を横殴りに叩き。
 直後には、千切られたボロ切れの如く、向こうへと吹っ飛ばした。

「ッォ――――うまく入ったッ――」

 まだキィーンと続く微かな耳鳴りに、少し唸りつつも。
 叩き込まれた有効打を開口部の向こうに確かに視認し、それを言葉に零す彼。

「――始めろッッ!!」

 そしてその幹部自衛官の彼は。轟くまでの声量で、指示命令の声を発し上げた――
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