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Chapter3:「インターバル」
Part23:「星の身姿、珈琲の嗜好」
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「――今さらだけど、現実の俺の体はどうなってるんだろう」
食事を終え。引き続きウィンドウを眺めて戦利品のアイテム整理をしつつ。淹れたインスタントコーヒーを片手間に啜る、食後の一時を過ごしていた二人だったが。
星宇宙がふと思い浮かべ、ポツリと零したのはその時であった。
《言われてみれば》
《星宇宙おじさん本体は眠ってて、意識だけゲームに飛んでるとか?》
現実世界もすでに夜遅い時間になっているらしく、それぞれの生活事情もあって視聴者、コメントの数はいくらか減ったが。
それでもポツポツとコメントウィンドウには、返しの推察の言葉が流れる。
「お話とかでよくあるパターンだと、そんなトコだろうけど……モカ。ひょっとしてモカは何か知ってたりする?」
星宇宙もコメントに返し。そして次には星宇宙は対面のモカに向けて、尋ねる言葉を向ける。
「あーぅ……ゴメンね星ちゃんマスター。あたしの意識も星ちゃんと一緒にこっちの世界に来たから、向こうの星ちゃんがどうなったのかは分かんないカンジ……」
「そっか。いやゴメン、ありがと」
しかしそれにモカから返るは、微かな困惑と申し訳なさの色の混じった、そう言った旨の回答。
星宇宙はそれにしょうがない事と返す。
《今さらだけど星宇宙おじさん本体に心配が……》
《これってひょっとしてリアル安否確認が必要系……?》
《おじさんのリアル生活の方、大丈夫?》
そして事が思ったより重大である一抹の可能性が浮かび、そんな案ずるコメントがコメント欄に流れる。
「ううん……自分でも心配ではあるけど。事を大きくするのは一旦待って欲しい」
その心配に星宇宙は同意しつつも、しかしそう表明する言葉を次には紡いだ。
「向こうで事件性を有する事になってるかはまだ不確定だ。そもそも俺自身まだこれがリアルに起こってる事態だって確証も持ててないし、皆に証明する事もできない。ちょっと大きく動くには躊躇がある」
まず自身の率直な考えを言葉にする星宇宙。
「それに何より――FLHさん?この世界に自分を導いたらしい原因の存在は分かってる。事故とか災害の可能性は低いと見てるんだ」
続け、何らかの被害の可能性は低い旨を紡ぐ。
「幸い俺は連休に入るトコだったし、何よりこの世界の時間は圧縮されてる。リアルの時間は少しの猶予がある、その間にメインクエストのクリアを目指してみようと思う。そこに事態解決の可能性が高いと見てる」
そして、そう行動指針を改めて明かして見せる星宇宙。
今の所示されてる情報指針から、それで状況自体が解決できる可能性が大きいものと考えての判断であった。
《なるほど……》
《たしかに〝そのため〟に色々用意されてる感は分かる》
《ちょっと事態を信じてもらえるか、判断材料は乏しいか……》
《でも不安じゃない……?》
それに視聴者の皆からは一応の納得、理解の旨のコメントが流れるが。
それでも皆も不安、懸念は払しょく仕切れない様子で。その旨のコメントがまた打たれ、気配も伝わって来る。
「俺も正直、色々不確定要素なのは分かってる。でもやっぱり現状、ゲームを進めるのが一番の道筋だって考えが強い。だからひとまずはその方向で行こうと思う」
それを理解しつつも、しかしひとまずはその方向性で固める意思を表明する星宇宙。
《オッケー》
《把握》
《ぶっちゃけ未知数な事態だし、手探りもやむなし》
《そういう流れが出来てる感はあるもんねー……》
《ヤバい気配したら運営とかに連絡相談するつもりで居ときます》
その星宇宙の意思表明には、了解するコメントが。
同時に不測の事態に備えておこうとする旨を伝えるコメントが流れる。
「ははっ。ありがとう、ごめんね変な心配かけて」
それに星宇宙は、微かな笑いと合わせての礼の言葉で返した。
《――そういえば……あっ、アウトな質問だったらスルーしてください。星ちゃんおじさんってリアルではどんな感じなんですか?》
星宇宙のリアル安否に関わる話が一区切りした所で。その流れか、そんな尋ねるコメントが打ち込まれ流れて来た。
「うん?あぁ、俺のリアルの見た目性格とかのこと?別に俺はVの人(Vtuber)とは違うから、全然明かすけど」
それに対して星宇宙は「なんだそんな事?」とでも言うように零し返す。
《そんなら、ぶっちゃけ気になります》
《おじさんの支障ない範囲でよければ》
《個人情報周り気を付けてもらえれば》
《むしろVの人たちこそ、中の人ダダ零しはザラなので無問題》
それに視聴者の皆からは、少なからずの興味を示すコメントが返る。
「って言っても、見た目や声はこのように変わっちゃってるけど、性格はこれが素だよ。キャラ作ったりとかは全くしてないし、ここまでそんなどころでも無かったし」
それを受けて星宇宙は回答を始める。
とは言っても星宇宙自身に暴露する程の事実はなく、差した事は無い本当の所をただ改めて伝えて見せる。
「で、見た目は……自分で言うのもあれだけど、まぁ普通な三十路のおっさんだと思うよ……?うん、自分の容姿を自分で言うって塩梅がムズいな……」
続け、自分の容姿に在っても触れ、しかし少し戸惑う様子で明かしてみせる星宇宙。
「え?そうかナ?」
しかし。そこへモカがそんな一言を挟んだのは直後だ。
「星ちゃんマスターの男の人モード、ビジュアルは結構特徴あると思うけどなー?」
「え、モカ?」
続けモカが紡いだのは、そんな星宇宙の元の容姿に言及する言葉。唐突な、そして予想していなかったそれに、星宇宙は思わず疑問の声を上げた。
「モカ、俺の元の姿を知ってるのか……?なんで?」
「え?だってあたしが〝ソフト起動〟された時に見たもん?」
「え?……あっ……!」
疑問の声を投げかけた星宇宙に、対するモカがキョト(0ω0)?とした顔で返したのはそんな回答。
それに一瞬疑問を覚えたが、すぐにその示す所に思い当たり、欲しい中は声を零した。
改めて言及するが、モカの正体は〝路宵郷 もか〟という名称の音声合成ソフトキャラクターだ。
今は星宇宙の名の美少女となっている、その正体の星図は。元はTDWL5の実況プレイ動画を作るつもりであり、そのために購入してPCにインストールしたのが彼女。
「モカ、あの時にすでに自我認識があったのか……?」
「うんっ」
少しの驚き交じりに尋ねる星宇宙に、あっけらかんと答えるモカ。
――どうにも聞く限り、彼女がインストールされて星図の持つPC内で起動された段階で。彼女は最低限の自己認識を持ち、そして現実世界の星宇宙もとい星図の事も認識していたと言うのだ。
そういえば今程にモカは、「あたしの意識も星ちゃんと一緒にこっちの世界に来た」と言った。それは元世界の星図の存在から知っていたという意味を含んでいたらしい。
モカはあっけらかんと言ってのけたが、本来〝路宵郷 もか〟は文章読み上げソフトに過ぎず、AIなどが実装されている訳でもない。
それが現実での起動段階で自己認識を持っていたと言う事実は。星宇宙がこのTDWL5の世界に転移してしまった事とはまた別件の、大変に驚くべき発覚であった。
《驚き……》
《モカちゃんはやっぱりイレギュラー……?》
発覚した事実に、コメントにも驚く色のコメントが流れる。
「でも、転移との関係性が偶然とはまた考えにくいが……」
しかし同時に星宇宙は。転移とモカの存在の二点が、まったくの無関係との考えもまた捨てきれなかったが。結局考えても導き出せるものは、憶測の域を出ない諸々にしかならなかった。
《……ところで、そのモカちゃんから見た星宇宙おじさんってどんな風だったの?》
そこで煮詰まった空気を換えるように。
コメントの一つが話題を戻し、モカに向けてそんな尋ねる言葉を向けた。それは星宇宙の容姿様子を当たり障りなく尋ねるもの。
「うん?あぁ、えっとねー」
それにモカは、表現する言葉を探しているだろう、少し考える様子を見せ。
「星ちゃんマスターはー――〝エロゲの悪役おじさん〟みたいなカンジっ!」
――次に言葉にして見せたのは、そんな表現の一言であった。
「――え゛」
それを聞き、直後に濁った反応の声を上げてしまったのは星宇宙だ。
《え、えぇ……?》
《……エロゲのおじさんて?》
さらにコメント欄にも困惑のコメントが流れる。
「うんっ――あ、でもでも全然不細工とか嫌なカンジはしないんだよ?だけど結構濃くて堀の深い顔でー、〝女の子をどんな手段にでもモノにしようとする、鬼畜なエロゲおじさん〟――ってかんじっ」
そんな反応に、しかしモカはと言えば引き続きのあっけらかんとした様子で。つらつらとそんな現実世界の星図を表現する言葉を紡いで見せた。
《えぇ……》
《エロゲのおっさん……》
《星宇宙おじさん、そうなの……?》
そんな明かされた事実?に、コメントには困惑のコメントが。合わせて星宇宙自身に尋ねるコメントが流れる。
「い、いや……俺に聞かれても……自分としてはそんな自覚全く無かったんだけど……も、もか……?」
しかし一番困惑しているのは当の星宇宙本人だ。
なんとも言えない絶妙な困惑の顔を浮かべ、モカに探る様に言葉を向ける。
「えー?星ちゃんマスター、すっごいそういうキャラな見た目だとあたしはそう思ったけどなー?」
しかしモカはまたキョトとした顔でそう正直に発し。
「最初に星ちゃんマスターを見た時は、『きゃー♡鬼畜そうなおじさんマスターに買われちゃったーっ♡どんなコト言わされちゃうんだろ、どんなコトされちゃうんだろっ♡』ってドキドキしたもんっ♡」
そして次には、両手を頬に当てて「やんやん♡」と少し嬉し恥ずかしそうな身振りを見せながら。そんな言葉を紡いで見せた。
「……」
そんなモカを、星宇宙はジト目と顰めっ面の混じったなんとも言えない表情で見ていた。
それは、自分がそんな風に見られていた事への衝撃。
相棒たるモカの露わになった、言ってしまえば変態的な一面。
そして、「新品で買ったソフトなのに、モカはどこでそんな知識を仕入れたんだ」という疑問と呆れ。
などなど様々が含まれていた。
《衝撃の事実》
《美少女星ちゃんの正体が鬼畜な見た目のおじさんだったとは》
《美少女を調教しそうな鬼畜おじさんが、鬼畜おじさんに調教されそうな美少女にTSしてしまったのか》
《↑なにそれエロいやん》
《モカちゃん元気溌剌キャラなのに変態さんやん》
《モカちゃん、セクハラ社長なのは知ってたけど受けもいけるのか……》
《↑ホントにエロいな》
《↑おぉ、ホントにエロいな》
《↑なんで二度も言うのよ》
《↑二度目は木霊だ》
そしてコメント欄にはそんな衝撃の事実を受け。
夜も深くなり減っていたはずのコメント欄が、どこから湧いて来たのかまた賑わい出す。
「いや、あの……見た目そういう風に見られてたのは、まぁそうなのかなって受け入れるしかないけど……別に俺は鬼畜とかじゃないからね……?」
そんなコメント欄に対して、星宇宙は顰め困惑する顔と声色で、一応の断っておく言葉を紡ぐ。
「だいじょーぶっ、それは分かってるよ星ちゃんっ。実際冒険して、星ちゃんがすっごく気さくで頼りになる人だって確信できたもんっ」
そんな星宇宙へ、モカはまた溌剌さの見える様子で言葉を向ける。
それは本来であれば、照れ臭くも嬉しく受け止めるべき言葉であるのだが。
「でも――星ちゃんマスターも、キチクでスケベなコトに興味とかあったら――そういうトコ、見せてくれても大丈夫なんだよっ?♡」
しかし次には、また少し顔を赤らめた可愛らしい表情姿で。モカはそんなことを星宇宙に宣って来た。
「……――」
しかしそれに対して星宇宙は、怒涛の展開やネタに最早ツッコミも追いつかず、その気も起きず。
啜ろうと口につけた冷めかけたコーヒーカップを、しかし口に注ぎ込むのに失敗して、ダーと一筋口から零すギャグみたいな姿を見せたのであった。
食事を終え。引き続きウィンドウを眺めて戦利品のアイテム整理をしつつ。淹れたインスタントコーヒーを片手間に啜る、食後の一時を過ごしていた二人だったが。
星宇宙がふと思い浮かべ、ポツリと零したのはその時であった。
《言われてみれば》
《星宇宙おじさん本体は眠ってて、意識だけゲームに飛んでるとか?》
現実世界もすでに夜遅い時間になっているらしく、それぞれの生活事情もあって視聴者、コメントの数はいくらか減ったが。
それでもポツポツとコメントウィンドウには、返しの推察の言葉が流れる。
「お話とかでよくあるパターンだと、そんなトコだろうけど……モカ。ひょっとしてモカは何か知ってたりする?」
星宇宙もコメントに返し。そして次には星宇宙は対面のモカに向けて、尋ねる言葉を向ける。
「あーぅ……ゴメンね星ちゃんマスター。あたしの意識も星ちゃんと一緒にこっちの世界に来たから、向こうの星ちゃんがどうなったのかは分かんないカンジ……」
「そっか。いやゴメン、ありがと」
しかしそれにモカから返るは、微かな困惑と申し訳なさの色の混じった、そう言った旨の回答。
星宇宙はそれにしょうがない事と返す。
《今さらだけど星宇宙おじさん本体に心配が……》
《これってひょっとしてリアル安否確認が必要系……?》
《おじさんのリアル生活の方、大丈夫?》
そして事が思ったより重大である一抹の可能性が浮かび、そんな案ずるコメントがコメント欄に流れる。
「ううん……自分でも心配ではあるけど。事を大きくするのは一旦待って欲しい」
その心配に星宇宙は同意しつつも、しかしそう表明する言葉を次には紡いだ。
「向こうで事件性を有する事になってるかはまだ不確定だ。そもそも俺自身まだこれがリアルに起こってる事態だって確証も持ててないし、皆に証明する事もできない。ちょっと大きく動くには躊躇がある」
まず自身の率直な考えを言葉にする星宇宙。
「それに何より――FLHさん?この世界に自分を導いたらしい原因の存在は分かってる。事故とか災害の可能性は低いと見てるんだ」
続け、何らかの被害の可能性は低い旨を紡ぐ。
「幸い俺は連休に入るトコだったし、何よりこの世界の時間は圧縮されてる。リアルの時間は少しの猶予がある、その間にメインクエストのクリアを目指してみようと思う。そこに事態解決の可能性が高いと見てる」
そして、そう行動指針を改めて明かして見せる星宇宙。
今の所示されてる情報指針から、それで状況自体が解決できる可能性が大きいものと考えての判断であった。
《なるほど……》
《たしかに〝そのため〟に色々用意されてる感は分かる》
《ちょっと事態を信じてもらえるか、判断材料は乏しいか……》
《でも不安じゃない……?》
それに視聴者の皆からは一応の納得、理解の旨のコメントが流れるが。
それでも皆も不安、懸念は払しょく仕切れない様子で。その旨のコメントがまた打たれ、気配も伝わって来る。
「俺も正直、色々不確定要素なのは分かってる。でもやっぱり現状、ゲームを進めるのが一番の道筋だって考えが強い。だからひとまずはその方向で行こうと思う」
それを理解しつつも、しかしひとまずはその方向性で固める意思を表明する星宇宙。
《オッケー》
《把握》
《ぶっちゃけ未知数な事態だし、手探りもやむなし》
《そういう流れが出来てる感はあるもんねー……》
《ヤバい気配したら運営とかに連絡相談するつもりで居ときます》
その星宇宙の意思表明には、了解するコメントが。
同時に不測の事態に備えておこうとする旨を伝えるコメントが流れる。
「ははっ。ありがとう、ごめんね変な心配かけて」
それに星宇宙は、微かな笑いと合わせての礼の言葉で返した。
《――そういえば……あっ、アウトな質問だったらスルーしてください。星ちゃんおじさんってリアルではどんな感じなんですか?》
星宇宙のリアル安否に関わる話が一区切りした所で。その流れか、そんな尋ねるコメントが打ち込まれ流れて来た。
「うん?あぁ、俺のリアルの見た目性格とかのこと?別に俺はVの人(Vtuber)とは違うから、全然明かすけど」
それに対して星宇宙は「なんだそんな事?」とでも言うように零し返す。
《そんなら、ぶっちゃけ気になります》
《おじさんの支障ない範囲でよければ》
《個人情報周り気を付けてもらえれば》
《むしろVの人たちこそ、中の人ダダ零しはザラなので無問題》
それに視聴者の皆からは、少なからずの興味を示すコメントが返る。
「って言っても、見た目や声はこのように変わっちゃってるけど、性格はこれが素だよ。キャラ作ったりとかは全くしてないし、ここまでそんなどころでも無かったし」
それを受けて星宇宙は回答を始める。
とは言っても星宇宙自身に暴露する程の事実はなく、差した事は無い本当の所をただ改めて伝えて見せる。
「で、見た目は……自分で言うのもあれだけど、まぁ普通な三十路のおっさんだと思うよ……?うん、自分の容姿を自分で言うって塩梅がムズいな……」
続け、自分の容姿に在っても触れ、しかし少し戸惑う様子で明かしてみせる星宇宙。
「え?そうかナ?」
しかし。そこへモカがそんな一言を挟んだのは直後だ。
「星ちゃんマスターの男の人モード、ビジュアルは結構特徴あると思うけどなー?」
「え、モカ?」
続けモカが紡いだのは、そんな星宇宙の元の容姿に言及する言葉。唐突な、そして予想していなかったそれに、星宇宙は思わず疑問の声を上げた。
「モカ、俺の元の姿を知ってるのか……?なんで?」
「え?だってあたしが〝ソフト起動〟された時に見たもん?」
「え?……あっ……!」
疑問の声を投げかけた星宇宙に、対するモカがキョト(0ω0)?とした顔で返したのはそんな回答。
それに一瞬疑問を覚えたが、すぐにその示す所に思い当たり、欲しい中は声を零した。
改めて言及するが、モカの正体は〝路宵郷 もか〟という名称の音声合成ソフトキャラクターだ。
今は星宇宙の名の美少女となっている、その正体の星図は。元はTDWL5の実況プレイ動画を作るつもりであり、そのために購入してPCにインストールしたのが彼女。
「モカ、あの時にすでに自我認識があったのか……?」
「うんっ」
少しの驚き交じりに尋ねる星宇宙に、あっけらかんと答えるモカ。
――どうにも聞く限り、彼女がインストールされて星図の持つPC内で起動された段階で。彼女は最低限の自己認識を持ち、そして現実世界の星宇宙もとい星図の事も認識していたと言うのだ。
そういえば今程にモカは、「あたしの意識も星ちゃんと一緒にこっちの世界に来た」と言った。それは元世界の星図の存在から知っていたという意味を含んでいたらしい。
モカはあっけらかんと言ってのけたが、本来〝路宵郷 もか〟は文章読み上げソフトに過ぎず、AIなどが実装されている訳でもない。
それが現実での起動段階で自己認識を持っていたと言う事実は。星宇宙がこのTDWL5の世界に転移してしまった事とはまた別件の、大変に驚くべき発覚であった。
《驚き……》
《モカちゃんはやっぱりイレギュラー……?》
発覚した事実に、コメントにも驚く色のコメントが流れる。
「でも、転移との関係性が偶然とはまた考えにくいが……」
しかし同時に星宇宙は。転移とモカの存在の二点が、まったくの無関係との考えもまた捨てきれなかったが。結局考えても導き出せるものは、憶測の域を出ない諸々にしかならなかった。
《……ところで、そのモカちゃんから見た星宇宙おじさんってどんな風だったの?》
そこで煮詰まった空気を換えるように。
コメントの一つが話題を戻し、モカに向けてそんな尋ねる言葉を向けた。それは星宇宙の容姿様子を当たり障りなく尋ねるもの。
「うん?あぁ、えっとねー」
それにモカは、表現する言葉を探しているだろう、少し考える様子を見せ。
「星ちゃんマスターはー――〝エロゲの悪役おじさん〟みたいなカンジっ!」
――次に言葉にして見せたのは、そんな表現の一言であった。
「――え゛」
それを聞き、直後に濁った反応の声を上げてしまったのは星宇宙だ。
《え、えぇ……?》
《……エロゲのおじさんて?》
さらにコメント欄にも困惑のコメントが流れる。
「うんっ――あ、でもでも全然不細工とか嫌なカンジはしないんだよ?だけど結構濃くて堀の深い顔でー、〝女の子をどんな手段にでもモノにしようとする、鬼畜なエロゲおじさん〟――ってかんじっ」
そんな反応に、しかしモカはと言えば引き続きのあっけらかんとした様子で。つらつらとそんな現実世界の星図を表現する言葉を紡いで見せた。
《えぇ……》
《エロゲのおっさん……》
《星宇宙おじさん、そうなの……?》
そんな明かされた事実?に、コメントには困惑のコメントが。合わせて星宇宙自身に尋ねるコメントが流れる。
「い、いや……俺に聞かれても……自分としてはそんな自覚全く無かったんだけど……も、もか……?」
しかし一番困惑しているのは当の星宇宙本人だ。
なんとも言えない絶妙な困惑の顔を浮かべ、モカに探る様に言葉を向ける。
「えー?星ちゃんマスター、すっごいそういうキャラな見た目だとあたしはそう思ったけどなー?」
しかしモカはまたキョトとした顔でそう正直に発し。
「最初に星ちゃんマスターを見た時は、『きゃー♡鬼畜そうなおじさんマスターに買われちゃったーっ♡どんなコト言わされちゃうんだろ、どんなコトされちゃうんだろっ♡』ってドキドキしたもんっ♡」
そして次には、両手を頬に当てて「やんやん♡」と少し嬉し恥ずかしそうな身振りを見せながら。そんな言葉を紡いで見せた。
「……」
そんなモカを、星宇宙はジト目と顰めっ面の混じったなんとも言えない表情で見ていた。
それは、自分がそんな風に見られていた事への衝撃。
相棒たるモカの露わになった、言ってしまえば変態的な一面。
そして、「新品で買ったソフトなのに、モカはどこでそんな知識を仕入れたんだ」という疑問と呆れ。
などなど様々が含まれていた。
《衝撃の事実》
《美少女星ちゃんの正体が鬼畜な見た目のおじさんだったとは》
《美少女を調教しそうな鬼畜おじさんが、鬼畜おじさんに調教されそうな美少女にTSしてしまったのか》
《↑なにそれエロいやん》
《モカちゃん元気溌剌キャラなのに変態さんやん》
《モカちゃん、セクハラ社長なのは知ってたけど受けもいけるのか……》
《↑ホントにエロいな》
《↑おぉ、ホントにエロいな》
《↑なんで二度も言うのよ》
《↑二度目は木霊だ》
そしてコメント欄にはそんな衝撃の事実を受け。
夜も深くなり減っていたはずのコメント欄が、どこから湧いて来たのかまた賑わい出す。
「いや、あの……見た目そういう風に見られてたのは、まぁそうなのかなって受け入れるしかないけど……別に俺は鬼畜とかじゃないからね……?」
そんなコメント欄に対して、星宇宙は顰め困惑する顔と声色で、一応の断っておく言葉を紡ぐ。
「だいじょーぶっ、それは分かってるよ星ちゃんっ。実際冒険して、星ちゃんがすっごく気さくで頼りになる人だって確信できたもんっ」
そんな星宇宙へ、モカはまた溌剌さの見える様子で言葉を向ける。
それは本来であれば、照れ臭くも嬉しく受け止めるべき言葉であるのだが。
「でも――星ちゃんマスターも、キチクでスケベなコトに興味とかあったら――そういうトコ、見せてくれても大丈夫なんだよっ?♡」
しかし次には、また少し顔を赤らめた可愛らしい表情姿で。モカはそんなことを星宇宙に宣って来た。
「……――」
しかしそれに対して星宇宙は、怒涛の展開やネタに最早ツッコミも追いつかず、その気も起きず。
啜ろうと口につけた冷めかけたコーヒーカップを、しかし口に注ぎ込むのに失敗して、ダーと一筋口から零すギャグみたいな姿を見せたのであった。
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