蒼き瞳

秋月

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*雪白族と不穏な影

雪白族と不穏な影#4

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-エマside-


くそ…体が動かない…
少しでも動かせば激痛が走る

奴等散々いたぶって殺さずに帰っていった
このまま惨めに行き耐えて逝けって事?
傲慢な奴等…

敵の視察を1人でするなんてやっぱり無謀だった
結果はこの通り…敵に気付かれてこの様
でも少なくても情報は手に入れた
なんとか仲間に情報を届けたいけど…反対に意識が遠退いていく


駄目…ここで気を失っては…
噂じゃ夜になると私達妖魔を消す為に動いている種族がいるって聞く
そんな奴等に見つかったらそれこそおしまい…早く逃げなきゃ…

だけどその時近づいてくる足音…
残った力を振り絞って前を見ると綺麗な人が立っていた
その澄んだ蒼い瞳に思わず見とれてしまった

だけど蒼い瞳…もしかしたらこの人が噂の月夜一族のお姫様…
見つかってしまった…殺されてしまうかもしれない…


華夜「今すぐ楽にしてあげましょうか?」


刀を私に向けて呟く
殺すならすぐ殺せばいいものを…
だけどこんな所で死んだら情報は仲間に届かない
皆の為にこの情報は絶対に届けなければいけない
まだ私は死ねない

そしたらその人は刀をしまっておかしな事を言った


華夜「貴方の事気に入っちゃった。よかったら私と一緒に来ない?」


優しそうに笑って私に差し出す手…
この人は一体何を言っているの?
貴方達にとって私は敵でしかないのに、敵に手を差し伸べるの?
おかしな人……


華夜「私は華夜。貴方名前は?」


夜光「華夜!離れるなって言っただろ」


その時もう1人蒼い瞳をした男の人がやって来た
誰…?この人の仲間?


華夜「夜光!私この子を一緒に連れていく!」


何故か話が進んでいる…


夜光「え!?」


ほら、仲間の人も凄い驚いてるじゃない
だけどどうしてかな…この人に惹かれるみたい


妖魔「へへ!本当だ。旨そうな匂いがすると思ったら月の奴等がいるぜ?」


華夜「妖魔!」


あいつ等さっき私を痛めつけた奴等…
わざわざここに戻ってきたのか…
最悪な状況…
だってここは既にあいつ等に囲まれているんだから

まさかこんな事になるなんて今日はとことん運がない
この状況で動けない私が生き残る可能性は凄く低い

妖魔を消しているこの人達でもこれだけの人数に囲まれてしまったら勝てる可能性なんてないでしょ?
そしたら私を置いて逃げるに決まっている
そして私は奴等に殺されるんだ


夜光「のんびり話も出来ないな…
俺がこいつ等を惹き付ける!その間に華夜はその子をなんとかしろ!」


え…?驚いていた癖に私を庇ってくれている?月夜一族は妖魔に容赦ないって聞いていたけど話が違う…
それでも妖魔も馬鹿じゃない
ついて行かずに残った妖魔が私達を狙ってきた


妖魔「毒針!」


奴等の毒針が真っ直ぐ私達に向かってくる
動けない私は避けることが出来ない
殺られる…そう思った
だけど私の前には華夜と言われる人が私を毒針から守るように立っていた
その人のお陰で私には1本も針が刺さっていない
変わりにその人の身体中に毒針が刺さってる


華夜「…っう…この子に…手は出させないわ…」


どうして?死にかけている私みたいな妖魔なんか放っといて逃げれば良かったじゃない
なのにどうして体を張って…自分を犠牲にしてまで私を守ってくれるの?
でもそれだけの毒針をくらって立っていられる訳がなかった
その人は膝をつき、苦しそうにしながらも敵を睨み付けていた


妖魔「ははは!もろに毒をくらってそんな死にかけの女を守るとは馬鹿な奴だ!」


華夜「…良かった…貴方は大丈夫?」


優しい瞳…こんなお人好しな人居ない
純粋に私はこの人についていきたいと思った
死にかけの妖魔を守るなんて変な人…

私は持っていた解毒剤をその人に打ち込んだ
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